雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

狐罠

2011-12-11 20:19:56 | 
北森 鴻
講談社
発売日:1997-05

北森鴻著"狐罠"を読みました。
旗師の冬狐堂、宇佐美陶子が主人公の話です。
いままで読んだ本は連作短編集でしたがこの本は長編です。
長編の方が格段におもしろいです。
この本が冬狐堂のシリーズの最初の本みたいです。
短編集は難しくてすらすらとは読めません。
こちらは難解なところはありません。
ミステリーとしてもすぐれています。

陶子は橘薫堂からガラス器を買わないかと持ちかけられます。
店へ行くとお茶を焙じて強い匂いをたてて鼻を封じました。
器を買って家で開いてみると贋作でした。
匂いで薬品処理したことがわかるのですがお茶の匂いで
ごまかしたのです。
だまして売りつけることを目利き殺しといいます。

陶子の保険会社の美術監査部調査員の鄭富健があらわれます。
橘薫堂の悪事の話をしていきます。
陶子は橘薫堂に目利き殺しを仕掛け返す決意をします。
器は80万円でした。
橘薫堂を陥れるための計画は壮大です。
前夫のプロフェッサーDに助けを求めます。
贋作の天才の老人潮見を紹介してもらいみずから贋作
作りに手を染めます。
橘薫堂の従業員の田倉俊子が殺される事件が発生します。
練馬署の根岸と四阿刑事が事件を追います。
陶子の前にもよく現れます。
橘薫堂の影にちらちらする元英国博物館の研究員細野も
見え隠れします。
30年前に罠を仕掛けられた骨董品を安く買い叩かれ
没落した一族がいました。
本物を偽物と証明してみせ誰もが妥当な値段で買わない
ようしむけられました。
陶子は大きな陰謀に踊らされました。

骨董の世界を垣間見るようでおもしろかったです。
古い材料を提供する仕事をする者がいます。
先端科学をさえクリアする知識と古典や歴史を理解し
なおかつ美術品を作成する能力のある人がいます。
市ではグループになって値段を操作することができます。
博物館員がグルになって鑑定書を発行している部分が
あります。現実にそんなことはないと思いたいです。

橘薫堂の悪事は暴かれ警察につかまります。
陶子と友人のカメラマンの硝子が殺されるかというボロ
ボロの状態の時、刑事が現れて捕まります。
普通クライマックスで気分が一番高揚する場面ですが
ぜんぜんそんなことなくあれこれで解決なの、なんか
肩透かしという気分でした。

最後にもうひと捻りあります。
でもなんか高揚する部分がないという感じはします。
そのへんがちょっと物足りなくはあります。
ミステリーとしてうまく出来ている話です。

冷静になってみれば陶子は騙されたといっても家が
滅亡するほどの痛手ではないわけで自分でも言って
いるように勉強代です。
ここまで全財産をかけ、まわりの人を巻き込み、
命まで危険にさらして敵討ちを仕掛ける気持ちが
よく解りません。
あくどいことをしていると噂になっている人が成功して
いままで生きてこられたということもわかりません。
どこかでこけると思うのですが、今回がこけ時だったの
せしょうか。
でもおもしろかったです。