田牧大和著"翔ぶ梅 濱次お役者双六 三ます目"を読みました。
森田座の大部屋女形の濱次が主役のシリーズ三冊目です。
市村座の女形の平九朗から濱次を市村座へ欲しいと
言ってきます。
せりふも少ない端役の濱次です。
いったい何のためと不審がります。
やがて濱次が平九朗と姿が似ていて平九朗の次回の
出し物の早替りでいくつか濱次を替え玉にしようという
つもりだということがわかります。
森田座の中二階の役者たちは大騒ぎです。
濱次自身は相変わらずのんびりしていてどっちでも
いいという風です。
いったん替え玉となったらそこから這い出して上には
いけなくなると心配します。
濱次の師匠の仙雀は移ってもいいのではないかと
言い出します。
濱次が伸びる力を持っていることに周りの人々は
気づいています。
濱次自身がわかっていません。
端役でずっと芝居が続けられればいいと欲がありません。
濱次を見守っている人たちは歯がゆくてしょうがありません。
結局移る話は流れます。
今回の話はおもしろかったです。
たくさんの人が登場しますがみんないきいきと描かれて
います。
花形の役者も下っ端の役者もそれぞれがんばっています。
下っ端はどんなにがんばってもうまくても上には
上がれないと決まっているというのは辛いですね。
濱次はそれを破って花形になれると期待されています。
しかし本人は全然その気がないのは読んでいる方も
歯がゆいです。
シリーズになっていますが少しずつ前進していく
過程が描かれたらなぁと思います。
ずっとこのまま変わらないみたいですから。