雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

ダイニング・メッセージ

2013-01-31 21:26:35 | コンピュータ

愛川晶著"ダイニング・メッセージ"を読みました。
ダイニングはダイイングの間違いではありません。

桐野刑事は六歳の根津愛を見て好きになりました。
それから11年経ち愛は高校生です。
愛のお父さんは元刑事です。
桐野は愛に打ち明けることはできず、他の女性と結婚も
できません。

根津は現在は料理学校の講師をしています。
家で食事を振舞うから来るようにさそわれます。
家には根津はいません。
新田靖香という女性が着物姿でいます。
だまし討ちのお見合いを設定されたのです。
愛の懐石料理が進んでいきます。
靖香は1週間前にも見合いをしています。
姉の夫の母の紹介です。
甥が好きな叔母を取られるようでビー玉を相手の
男性の佐藤にパチンコで打ちました。
その時の料理のシチューの中からビー玉が出てきました。
姉の立場を思って靖香は断れずに困っています。

靖香が警察に桐野を訪ねてきます。
上司の加瀬課長に強姦されそうになったといいます。
加瀬の部下の女性の豊原は匂いをかぎ当てることが
できるといいます。
弁当の蓋を開けずに中身を当てます。
加瀬は胃の調子がよくありません。
しかし病院へいくのをためらっています。
彼女は病院に勤めたことがあり末期の患者の
臭いに似ているといいます。
加瀬は自暴自棄に陥って乱暴を働こうとしたのです。
愛が話を聞いて推理します。
奥さんが当日の弁当をブログにアップしています。
豊原は社員の給与計算を一任されています。

桐野にメールが送られてきます。
その内容が異常です。
女性を切り刻んで食べるというカニバリズムの内容です。
実際に行われたのかと思われる内容です。

靖香はもう一人の見合い相手の佐藤に結婚するよう
迫られています。
断りたいのにビー玉の件を姑に知られたら姉の立場が
悪くなると脅されています。
靖香はあきらめて結婚しようとしています。

愛も桐野も靖香も好きにはなれません。
子供を恋愛対象として好きになりずっと思い続ける
なんてあんまり気持ちいいものではありません。
靖香の行動は最初から最後までおかしいと感じます。
姉のために我慢して結婚して、結婚が継続できると思う
のでしょうか。
この優柔不断さにはいらいらします。

カニバリズムの話が長く嫌な内容で苦痛でした。
本や映画に取り上げられることが結構あります。
この手の話はタブーだと思っていましたがそうでは
ないようです。結構目にします。
実際に行う人は日本にはまずいないでしょうが書きたい、
話したい、想像したいという人はいるのでしょうね。

100km!

2013-01-30 21:13:58 | 

片川優子著"100km!"を読みました。
三河湾で行われる100km歩け歩け大会の話です。
実際に愛知県で行われている大会です。
毎年こんな大会が行われているなんて知りませんでした。
大会のホームページでコースを見てみましたがうわーと
驚く長距離です。

高校1年のみちるは知らないうちに叔父に大会に参加の
申し込みをされてしまいました。
みちるの家族は母と弟です。
母は仕事を持ちしっかりした人でした。
しかし交通事故にあいすっかり変わってしまいました。
今も入院中です。
リハビリをすれば歩けるようになるといわれても
やろうとはせずにうつろな目をしてぼんやりと
暮らしています。
100km歩いたら何かが変わるかも、母も変わって
くれるかもと歩き始めました。

歩き始めて六時間経った時に宗方さんというおじいさんに
話しかけられます。
何回か参加している宗方さんにいろいろアドバイスを
うけます。
チョコをもらい食べます。元気が出てきます。
雨が降る予報は出ていませんが宗方さんは必ず降る
からとかっぱをくれます。
宗方さんはまだ完歩したことはありません。
30kmのチェックポイントでいっしょに写真を撮って
もらい別れます。

一人で歩き始めます。
夜になり懐中電灯を灯して進みます。
途中のコンビニで食料や飲み物を買います。
トイレを利用します。
マッサージをしてくれるサポーターが休息所にはいます。
みちるは順番待ちのための椅子だとは知らずに座っていて
マッサージを受けることになりました。
去年は歩いたというサポーターの男性にマッサージして
もらい足は楽になりました。
彼は靴下を重ね履きすること、靴の紐をきつく締めすぎない
ことなどアドバイスしてくれます。

同年代の男の子といっしょになりしばらくいっしょに
歩きます。
男の子は父親が毎年参加していて今年は自分が参加して
みようと思ったと話します。

80キロを過ぎ足はまめだらけですが歩いています。
ここを超えた人はほとんど完歩するといいます。

ゴールの近くで宗方さんに出会います。
今年は宗方さんは完歩しました。
男の子もいっしょにゴールします。

ゴールにはお母さんがきていました。
おじさんが連れてきてくれたのです。
いままでほめてくれたことがないお母さんがほめて
くれました。
みちるはお母さんにも歩いて欲しいと訴えます。

お母さんは杖をついて歩けるようになりました。
家にいて元気に迎えてくれます。
なんでがんばり屋だった人がリハビリ投げ出してしまった
のだろうとその心の内を思います。
お母さんは仕事に復帰する気になっています。

著者の片川さんは実際に100km歩け歩け大会に
参加されたそうです。
恩田陸さんの"夜のピクニック"を思い出しました。
児童書に分類されている"100km!"の方があっさりと
していてさらさらと読めます。
お年寄りも参加されているようですがとても参加
しようとは思いません。
もっとうんと若い時だったら参加したかったなとは
思います。
チェックポイントごとに何時間の間に通過しないと
失格という大会です。
制限時間なしというわけではないので厳しいです。
たくさんあるコンビニが大会開催には必要不可欠ですね。

しあわせのパン

2013-01-29 18:38:26 | 

三島有紀子著"しあわせのパン"を読みました。
北海道の月浦のオーベルジュ式のパンカフェマーニを
営む夫婦の元を訪れる人々を描いた話です。
月浦って架空の場所かと思ったら実在するのですね。
洞爺湖のほとりにあります。

香織は恋人と沖縄へ旅行の約束の当日にすっぽかされ
携帯の連絡も切られてしまいました。
北海道に行き先を変え傷心旅行へ出かけます。
空港の案内所で人がいなくて湖がきれいでどこまでも
続く草原があって北欧みたいな場所といって紹介
されたのが月浦です。
そのパンカフェは水縞くんとりえさんという夫婦が
経営しています。
おいしいパンとコーヒーと水縞くんとりえさんと
泊り客のトキオとの月浦で過ごして気持ちは
落ち着いていきます。

小学4年の未久のお母さんは家を出て行きました。
お父さんはホテルで働いています。
母がいなくなった悲しみを抱えている娘に寄り添おう
とはしません。
仕事に逃げている父親です。
水縞くんがパンを小学校に納めています。
マーニへ未久と父親のそれぞれを招待します。

神戸の銭湯を経営していた坂本文生は病気の妻アヤ
を連れて月浦へやってきました。
娘は震災で亡くしました。
死のうとしてこの場所へきました。
雪の中へ出て行きましたが止められました。
アヤがそれまで食べることがなかったパンをおいしいと
食べるのを見て死ぬ気持ちが離れました。

水縞くんとりえさんは愛し合っている幸せな夫婦
なのだと思っていました。
りえさんも心に何かを抱えています。
水縞くんに月浦で暮らそうと言われてきましたが
月浦で暮らしていてもまだ解決はできていません。
いろんなお客さんと出合ってりえさんもやっと
ふっきれたようです。
ずっと待っていてくれる水縞くんはやさしい人ですね。
月浦はすてきな場所のようです。
行ってみたいです。
映画になっていますが見ていません。

最果てアーケイド

2013-01-28 19:01:47 | 

小川洋子著"最果てアーケイド"を読みました。
寂れたアーケイド街が起死回生を図る話かと思ったら
ぜんぜん違いました。
現実感がないアーケイドの商店街です。
語り手はアーケイドの大家の娘という設定です。
娘の年齢がいくつなのかよくわかりません。
小さなころの話がありますしかなり大人になっている
話もあります。
彼女は商店の配達を引き受けています。
現実にありそうもない店が多いです。
かといって絶対にないとも言い切れません。
古着についていたレースをはずして売っているレース屋が
登場します。
芝居の衣装につけるには古いものでなくては合わないと
いわれればそうだねと思います。
日本中に一軒ぐらいはそんな店があるのかもしれません。
剥製につける義眼を売る店もあります。
一種類のドーナツだけを売る店があります。
誰かが誰かに出した絵葉書を売る店があります。
遺髪でレースを編む人が出てきます。
そんなことする人はいないと思いました。
インターネットで検索すると遺髪レースってあります。
びっくりしました。
思いもつかない仕事ってあるのですね。

不思議なアーケイド街での出来事を描いた話です。
なんだか妙な気分になってくる本でした。

質破り 濱次お役者双六 二ます目

2013-01-27 18:25:01 | 

田牧大和著"質草破り 濱次お役者双六 二ます目"を
読みました。
"花合せ 濱次お役者双六"の続編です。
今回の本の方が単調な感じがします。
濱次はそれまでの長屋を追い出されてしまいます。
紹介された長屋の大家は質屋の竹屋で姉弟が経営しています。
住んでいるのは後家さん三人と浪人の親子です。
役者の雑用を引き受ける奥役の清助が引越しの手伝いで
長屋へ来て質屋の姉のおるいに会って片思いの恋に
落ちてしまいます。
しかしおるいは大の芝居者嫌いです。
おるいと弟の佐兵衛の叔父は濱次の座元の勘弥です。
子供のころには勘弥にかわいがってもらっていたのに
今では全然つきあいがありません。

竹屋に濱次の小屋の三味線引きの豊路が質入れに
きました。
質草は何かというと掛け声です。
清助が見張りを引き受けました。

おるいと豊路は知り合いです。
昔つきあっていました。
しかし豊路が仲間とおるいのことをさんざんにけなして
いるのを聞いてしまいました。
おるいの芝居者嫌いはここからきています。

掛け声は役者の動作のきっかけになっています。
豊路は立女形になぜ掛け声を掛けないかと叱られ
約束を破ってしまいます。
清吉は知らせる約束をしていましたが、できなくて
知らせませんでした。
しかしおるいに知られてしまいます。
おるいが怒って座元のところへ来たことから
豊路は三味線を弾けなくなり組んでいた太夫も仕事を
おりました。
濱次もとばっちりで仕事を下ろされてしまいます。

濱次はもともとが仕事に欲がない人ですから下ろされても
平気です。
いろいろな人達の思惑がからまりあってたいへんです。
豊路は人形浄瑠璃の三味線引きでしたがクビになって
芝居の方へ来ました。
やがて芝居の方が自分に向いているのだと理解します。

品物でないものを質草にするというのはどうも
ピンときません。
本当にそんなことがあったのでしょうか。
おもしろいですね。
芝居の世界の人々の意地だとか面子だとかほんとに
ややこしいことです。
あちらに頭をさげたりこちらの人のことを思ったりと
なんて面倒なことなのでしょう。
おもしろかったです。
でも主人公の濱次があんまり活躍していなかったような
気がします。
清吉の恋はどうなるのでしょう。

先生のお庭番

2013-01-26 19:52:00 | 

浅井まかて著"先生のお庭番"を読みました。
先生とは江戸時代の長崎の出島のオランダ商館医の
シーボルトです。
お庭番って忍者とか隠密とかのスパイのことを意味
しているのかと思ったら文字通りのお庭を世話する
人でした。
シーボルトはオランダ人ではなくてドイツ人だそうです。
熊吉は15歳で奉公していた植木商から園丁として
シーボルトの館の庭作りに通うことになりました。
阿蘭陀人の所で働くことを敬遠して一番下っ端の熊吉に
押し付けられたのです。
シーボルトの館ではコマキと呼ばれました。
すでにある庭の管理と聞かされていたのに更地でした。
熊吉は自分の才覚で庭造りを始めました。
植物は各地のシーボルトの弟子から送られてきました。
庭は訪れる人たちを感嘆させるものとなりました。
そのことを知って奉公先は熊吉を辞めさせ店主の息子に
やらせようとします。
怒ったシーボルトは熊吉を自分で雇うことにします。
熊吉は館に住み込みで仕事をすることになります。

館には滝という奥方がいます。
シーボルトはオタクサと呼んでいます。
シーボルトの教えを受けたい人達がたくさんいます。
出島の外の鳴滝に塾を開き教えています。
シーボルトは植物学にも造詣が深く日本の植物に興味を
持っています。
日本の文化を吸収しようと弟子たちに課題を課して
情報を集めています。

熊吉は何回か日本の草木を船積みしてオランダへ送って
います。
船の上では草木の面倒をみてくれる人はいません。
面倒を見てもらえなくても生き延びる工夫を凝らします。
多く送ったうちの何本かは海外で生き残りました。

シーボルトが日本の地図を海外に持ち出そうとしていた
ことがわかってシーボルトの立場は悪くなります。
シーボルトの教えを受けていた人達も弾圧されます。
熊吉も捕まって拷問されます。
シーボルトはオランダへ帰っていきます。
奥方には娘が生まれましたがシーボルトは二人を
連れていきませんでした。

この本を読んでいるとシーボルトの来日がスパイのためと
いうのが大きな目的ではないかとと感じられます。
人をうまく操って欲しい情報を手に入れることは
一流スパイです。
大勢の門弟に新しい医学の手ほどきをしたことや
植物学等に力を注いだことなど学者としても
日本人に影響を与えまた日本からも学んでもいます。
彼がいったい何を考えていたのかよくわかりません。

熊吉にしろ滝にしろシーボルトより、シーボルトに
関わった日本人の方が、よせた思いが大きかった
のではないかと感じる話でした。

春はそこまで 風待ち小路の人々

2013-01-25 20:26:08 | 

志川節子著"春はそこまで 風待ち小路の人々"を読みました。
最初は連作短編集かと思いましたが長編です。
絵草紙屋の粂屋の店主笠兵衛で、息子は瞬次郎です。
瞬次郎は奉公先から戻して店の手伝いをさせ始めた
ばかりで笠兵衛はまだ力を認めていません。
半襟屋のおちせは店が焼けて叔父夫婦と亭主を亡くしました。
再建して自分で絵を書き刺繍をした半襟を売ろうと
しています。
笠兵衛の妾のお孝は魚屋と逃げてしまいました。

生薬屋の円満堂の亭主は亀之助で女房はおたよです。
亭主は女道楽が激しくて遊び歩いています。
おたよは店の力になりたくて現代でいう通信販売を
始めます。
詐欺に会うこともありましたが起動に乗り始めました。
亀之助に強くいうことができなかったおたよでしたが
妊娠したことではっきり意見するようになります。

祐太の父母は洗濯屋でした。
母は酒びたりです。
父は家を出て行ってしまいました。
母は生まれたばかりの子を亡くしています。
父が博打に凝り病気になった赤ん坊の薬代を博打に
使ってしまい死なせてしまいます。
母はそれが許せなくますます酒におぼれていきます。

日の出横丁という商店街が出来て風待ち小路は人出が
少なくなっていきます。
新しい商店街は活気があります。
瞬次郎は仕事で知り合った半襟屋のおちせが好きになり
芝居にさそいます。
風待ち小路の若手の男たちが集まって日の出横丁に
対抗するためにお芝居をやろうと話がまとまります。
瞬次郎はおちせに櫛を贈ろうと思いつき知り合いの
女性に品選びを頼みました。
二人で歩いている時におちせが武士と歩いているのを
目にします。

五十嵐半之丞は池田伝内に斬られました。
池内は逃げ出しました。
その時半之丞の息子の銀之進は六歳でした。
半之丞の弟の又次郎と妹のおちせが銀之進の後見して
池内を追いました。
それから7年が経っています。
半襟屋のおちせがそうです。
銀之進は息子として暮らしています。
岩井半四郎の芝居小屋で見た黒子が仇の池田では
ないかと思います。
瞬次郎が見かけた侍はおちせの義兄です。

風待ち小路の若手たちが助六を演じようとしている時に
年配者たちも同じく助六を演じようと稽古をしています。
それがわかって午前、午後で演じ分けることになります。
前日に宴会をして演じ手が食中りをしてしまいます。
見にきた半四郎が揚巻をやり後は年配者、若手の中で
出られる者で上演することになります。
池田伝内は半四郎についてきています。
銀之助は芝居を手伝うことにしてすきがあったら池田を
討つことになりました。

おちせは瞬次郎と結婚することになります。

始めのうちは町の人々の出来事をつづったものかと
思っていましたが敵討ちの話になっていきました。
だんだんとおもしろくなっていきました。

話虫干

2013-01-24 21:44:54 | 

小路幸也著"話虫干"を読みました。
支離滅裂な話でした。
話虫は物語の内容を書き換えてしまいます。
夏目漱石の小説「こころ」が話虫によって書き換えられて
しまいました。
馬場横丁市立図書館員の糸井馨と榛は本の中へ入って
いって話の内容を元に戻す虫干に行きました。

圖中の下宿へ桑島と桑島の妹の京子が引っ越して
きます。
糸井と榛も登場してきます。
おかしなことに作者の夏目漱石も登場しています。
ラフカディオ・ハーン、舞姫の登場人物のエリーズ、
それにシャーロック・ホームズまで登場してきます。

登場してきたと思ったらいつの間にか国に帰ったと
いうことで退場しています。

こんな風に支離滅裂な夢を見ることはありませんか?
私はたまに見ます。
いったいどうなるんだろうとその先をわくわくして
みまもっている観客の自分が別にいます。
話が動いてほぉそうなったかと感心したりしてます。
へんな話ですね。
夢を考えているのも自分ではないのかと思うのに
それを楽しんでいる自分も夢の中にいるのです。
でも目がさめてしまうと一瞬で内容は忘れてしまいます。
残念です。

この本もそんな夢の中の出来事みたいにありえないと
いうものです。
最後には登場人物がこれはなんかおかしいと言い出します。
圖中と桑島は「こころ」から取り出されて別の物語に
登場することになります。
その話がこの話虫干ということになるのでしょう。

真面目に読もうとすると頭が変になりそうですから
寝ているときのようにぼーとして読むのがいいのではと
思います。

こういうなんだかわけがわからない話が好きだという
人はいらっしゃるでしょうけど私はちょっと苦手です。

「こころ」の一部分は教科書に載っていたような気がします。
若いころに全体を読んでだいたいの内容は覚えていますが
登場人物の名前までは覚えていません。

クローバー・レイン

2013-01-23 19:24:35 | 

大崎梢著"クローバー・レイン"を読みました。
とてもいい本でした。
大手の出版社の編集者が忘れられた作家の作品を偶然
読んで感激して必ず自社から出版しようと奔走する
話です。

彰彦は大手出版社の千石社の若手編集者です。
新人賞受賞式で国永嘉人に出会います。
酔った国永を家に送りそこにあった作品の「シロツメ草
の頃」を読みました。
夜間中学の教師や貧困や差別にさらされている国籍も
さまざまな生徒たちとの交流が描かれたものです。
彰彦はこの本に感激して千石社で出版させてくださいと
あまりいい顔をしない家永から無理やり原稿を預かって
きます。

編集長は家永の名を聞いただけで原稿を読みもしないで
だめだと即答します。
千石社では売れていない作家の作品は出版しないという
方針です。
一方家永からは本の中で流用した詩が作者の許可を
もらわずに載せたので問題があると連絡してきました。
作者は家永の娘の冬美です。
冬美は家を出て父娘の交流はありません。
この詩は小説のキーポイントになっています。
はずすわけにはいきません。
彰彦は冬美に交渉しにいきます。
冬美は家永の二度目の妻との間の子です。
冬美の母は前の妻を追い出して妻になりましたが男を
作って離婚しています。
冬美は前の妻に会いに行ったことがあります。
自分が生まれたばかりにと後ろめたい気持ちを
持っています。

彰彦には10歳年上の叔父の尚樹がいます。
祖父が愛人に生ませた子です。
母親が死んで父である祖父の家に引き取られました。
祖母は受け入れられず言葉で苛め抜きました。
彰彦はなおちゃんと呼んで友人の川上良嗣ともども
かわいがってもらいました。
読書の手ほどきをしてくれたのもなおちゃんです。
彰彦はなおちゃんがどこにいるのか知りません。

身近な人を説得し、編集長に読んでもらいOKを
もらいました。
次のゲートを越えるために営業の助けを借りようと
若王子に頼みますがけんもほろろに断られます。
彼が本屋でしている仕事を理解していないと腹を
たてたのです。
営業の努力や書店員の努力を理解して若王子に
誤り協力を求めます。
周りを味方に変えてやがて出版OKが出ます。

冬美は前の奥さんに、彰彦は叔父に読んでもらい
たいと願っています。
この本が心をやわらげてくれる降り注ぐ雨になって
くれたらと思っています。

本が出版されるまでがわかる内容です。
編集者より作家さんの方が力は上と思っていましたが
そうとばかりはいえないのですね。
売れる本にするには作家さんはもとより編集者、営業、
装丁、イラスト、書店員と多くの人が関わっている
のだとわかります。

手にした人を暖めてくれる大事な1冊となる本、
そんな1冊と出会えることは幸せなことです。

しかしこの本の表紙はそぐわないなぁ。
川原に生えているようなこの草は何を表している
のでしょう。
せめて題名のクローバーであったならいいのに。

迷子の大人

2013-01-22 21:03:03 | 

坂井希久子著"迷子の大人"を読みました。
仕事小説かと思いましたがどちらかというとロマンス
小説の方が強いです。
畠山梓27歳は介護福祉士になったばかりです。
家々を回って老人の介護をするホームヘルパーの道を
選びました。
覚治という恋人がいます。
結婚願望が強くパートナーには専業主婦になることを
望んでいます。
梓は覚冶とつきあっていますが結婚したいという気持ちは
ありません。

最初に担当した星子さんには教えられることが多く梓は
星子さんが好きです。
しかし星子さんから担当を替えて欲しいという依頼が
あって会えなくなりました。
失望から計画もなくあずさに乗って高遠町に行ってしまいます。
夜遅く店も宿泊するところもなく困っているところを陶芸家の
山吹桂に助けられ民宿すやすやに連れて行かれます。
すやすやは友靖と泰子の夫婦が経営し、靖美、泰典という
子供がいます。
梓はすやすやの家族や近所のおばあちゃんたちと仲良く
なり、高遠が好きになりました。

仕事では星子のことがあり依頼者とは一線を引き心の
つながりを求めないようになりました。
仕事をてきぱきこなし話には深入りしません。
秋になってまた高遠を訪れ桂と会います。

覚冶は結婚の話を一方的に進めます。
覚冶の母親との会食や桂の家族との顔合わせも
梓の気持ちを確かめることなくどんどん進めて
しまいます。
冬になり梓はまた高遠を訪れ桂と会います。
顔合わせのために東京へ戻らなくてはいけないのに
梓はすっぽかして桂の元で過ごします。

梓はこのことで覚冶とのことは終わりにしたつもりです。
覚冶は怒り狂います。
覚冶は骨が折れたかと思うほど梓を殴りつけます。
梓の顔は腫れあがります。
覚冶はストーカーぎみになっていきます。
梓は高遠に住みたいと思うようになります。
すやすやの泰子に相談します。
仕事も探し高遠行きが現実化してきます。

星子さんの家に行きます。
死ぬときにはエリーゼのためにを聞こえるようにすると
前に言われていてその曲を耳にしたため駆けつけたのです。
星子さんは元気でいました。
梓を断ったのは梓が好きになってしまいヘルパーとの
間ではお茶もお菓子も振舞えないという関係が
つらくなったというものでした。

梓は桂とたぶん結婚することになるのでしょう。
覚冶は好きになれない人物ですが梓の取った行動は
いいものではありません。
結婚する気がないのならはっきり言葉や態度に表す
べきです。
結婚すると思わせておいて別の人に心を寄せている
のはちょっとどうかと思います。
覚冶が暴力を振るうのもどうかと思います。
男が女に暴力を振るうのは許されることと認識
されているのでしょうか、本やドラマでは多い
ように思います。
そんなことが許されるわけないでしょうに。
人間の程度が最低ランクに落ちる行動です。
本の中、映像の中に出てきて欲しくはありません。
なんだかそうしていいんだよといっているみたいに
思えてしょうがありません。

ホームヘルパーの仕事が書かれています。
ヘルパーの人達は確実にいなくてはいけない時代です。
1時間で買い物、掃除、調理するってほんとうですか。
そんなこととてもできないと思います。
お茶もお菓子も振舞われてはいけないそうです。
どこにやりがいを求めるのだろうという気がします。

梓が新しく生きていく方向を見出す物語です。
登場するのはたよりない人たちですが、こうやって
少しずつ前進していくのが人なんでしょうね。

夏天の虹 みをつくし料理帖

2013-01-21 21:40:48 | 

高田郁著"夏天の虹 みをつくし料理帖"を読みました。
みをつくしのシリーズの7冊目です。

"冬の雲雀-滋味重湯"
澪は料理の道を捨てることができません。
小松原との結婚をあきらめます。
小松原は澪の決意を聞いてすべて自分に任せるように
といいます。
身分が低い方からまとまった話を覆すとどんなことに
なるかわかりません。
小松原が澪を振ってもっといい結婚を選んだという形を
とってくれました。
小松原が非難を一身に引き受けてくれました。
自分で決心したとはいえ澪は心に大きな痛手を負いました。

"忘れ貝-牡蠣の宝船"
澪はつる屋の料理人に復帰しました。
又次も三方よしの日には手伝いにきてくれる前の状態に
戻りました。
澪の苦しさは去りません。
牡蠣を使って新しい料理を作り出そうとします。
しかし牡蠣は焼いて食べる以上のものはできそうに
ありません。
昆布で船形を作って底に牡蠣の剥き身を並べ酒を振り
かけて酒蒸しにします。
柚をかけて食べます。
お客さんに喜んで食べてもらえる新しい料理ができました。
お客さん同士の会話から小松原が結婚したということを
澪は知りました。

"一様来復-鯛の福探し"
澪は匂いと味を感じられなくなりました。
お医者さんは心理的なものだろうといいます。
直るのに何ヶ月かかるか何年かかるかわかりません。
料理人としては致命的です。
又次が二月間来てくれることになりました。
澪は補助作業にまわることになりました。
病気や高齢で食べることが困難な人たちのための料理を
考えます。
鯛の粗を手に入れて料理し、鯛の九つの道具を探し
ながら鯛を食べてもらうことを思いつきます。
食事をすることが苦痛になっていた人達に喜ばれます。

"夏天の虹-哀し柚べし"
又次が柚に味噌を詰めて蒸して干すという料理を
作りました。
店の軒先に吊るして干してあります。
澪の匂いと味の感覚はまだ戻りません。
又次に手伝ってもらう期限の終了がせまってきました。
三方よしの日の手伝いはしないという約束になっています。
又次はおだやかな顔つきになりました。
二月間つる屋での生活で幸せを味わいました。
又次が吉原へ返ったその日に吉原では火災が起きました。
又次は澪の友人であるあさひ太夫を助け出すために
命を落としてしまいます。

今回の本で澪は小松原と又次の二人の大切な人を
失くします。
友人のあさひ太夫こと野江を吉原から連れ出すことも
ぜんぜん前進しません。
これからどうなっていくのでしょう。
小松原への恋は無理がありました。
もっと早く自分の進む道がはっきりわかっていたら
周りを混乱に落とし入れなくてすんだのにと思わない
ではないですが、人は最後の場面になるまで自分の
心がわからないものなんでしょうね。
澪を責めることはできません。
しかし小松原はもっと大人ですからもう少し物事が
わかっていてもいいように思います。
小松原が責任を一手に引き受けたのは立派ですが
結婚相手が気の毒な気がします。
こうなったからには小松原は奥さんと幸せな家庭を
築かなくてはいけません。
もう二度と小松原は登場してはいけないと思います。
澪とまたどうかなるなんてことにはならないように
願います。

頼むから、ほっといてくれ

2013-01-20 17:44:34 | 

桂望実著"頼むから、ほっといてくれ"を読みました。
トランポリン競技に関わる人々を描いた話です。
トランポリンはあまりテレビで放送されることがなく
よく知らない競技です。
YouTubeで見てみました。
10回ジャンプして10通りの回転をするという競技
のようです。
日本の選手は強いのですね。オリンピックで銀を取って
います。
ものすごく高いところまで飛び上がっていて見ていると
怖いです。
床に叩きつけられるという恐怖はないのでしょうか。

一人の主人公を追った話なのだろうと思っていたら
多くの競技者、コーチ、審判員そして家族が登場します。
選手たちは子供のころからずっと休日もなしに練習を
続けています。

最初の登場人物は安井順也です。
両親が離婚し母親は学校が終わってから預かってくれる
ところを探していてトランポリン教室を見つけました。
子供の時は目立ちませんでしたが確実に伸びていきます。

青山諭はナショナルチームのコーチです。
自分自身はいい成績を残していません。
どのようにコーチしたらいいか迷っています。
隣で新体操をコーチしていた人にこつを尋ねます。
鬼コーチとなってとにかく厳しくきついことを言うこと。
そしてできた時にほめてやる。試合の前に大丈夫と
請合ってやることと教えてくれます。
青山はその後青鬼といわれる鬼コーチとなりましたが
選手には信頼されずにひややかに見られコーチとして
成功はしません。

野田遼は天才的な選手です。
人が何ヶ月もかけて身につける技をその場でできてしまいます。
しかし競技に愛着がありません。
女の子とデートをすることの方を優先してしだいに
競技から離れてしまいます。

石丸卓志の家は父親の仕事の具合で浮き沈みが激しいです。
細川洋充とペアを組んでいます。

細川洋充は皆を笑わせ明るく振舞るまう人です。

尾崎敬寛は審査員です。
選手たちのために正確な採点をめざしています。
情が入り込まないよう選手やコーチとは交わらないよう
心がけています。

松岡慎司の家は中華料理店です。
両親は息子の競技にまったく感心を払いません。
見に来たことがありません。
コーチの柳沢国徳とのつながりの方が両親よりみ強いと
感じています。
続けたいのにお金がなく引退しようと考えています。

順也と洋充がオリンピックの代表になりました。
順也は順当に選ばれましたが洋充は対戦相手が失敗した
ためうまいぐあいに代表に選出されたのです。

洋充は怪我をしています。
オリンピックまで数ヶ月なのに数週間はじっとしている
よう診断されます。
協会にはないしょにしています。

オリンピックで順也は銀メダルを手にします。
洋充は体が正常でないことが見てわかります。
出場しますがいい成績は出せませんでした。

卓司は引退し就職します。
しかしトランポリンを忘れがたく仕事をしながら
練習をしようと決めます。

オリンピックは個人だけですがワールドゲームには
ペアがあります。
順也は卓司と組んでペアーに出ます。
難しい技をやるか確実な技でまとめるかは戦略です。
卓司は難しい技でやりたいと順也に提案します。
順也も受け入れます。
しかし成功せずにいい成績は残せませんでした。

慎司は泣きながら引退しましたがまたやり始めました。
柳沢コーチはそれを見越してナショナルチームの
コーチができるよう上級コーチ資格を取って待って
いてくれました。

何十年過ぎて洋充はコーチになりました。
順也は子供たちの教室で教えています。
天才だといわれた遼は息子が問題を抱えていて親が
がんばっている姿をみせるようにとアドバイスされ
40歳を過ぎてトランポリンを再開し、競技にも
出場しようとしています。

大勢の人たちの何十年もの間の出来事が描かれて
います。
競技をやり続けるというのは本当にたいへんです。
成功する人、そうでない人いろいろいます。
青山コーチが一番みじめな人に描かれています。
本人はそうは思ってないからいいのかもしれません。
人の意見を鵜呑みにして自分で考えていないから
失敗するのでしょうね。

静おばあちゃんにおまかせ

2013-01-19 18:27:57 | 

中山七里著"静おばあちゃんにおまかせ"を読みました。
刑事の葛城が困った事件を知り合った法律家志望の
女学生の円に助けを求めます。
円は両親を中学生の時に交通事故で亡くしています。
裁判官だった祖母に引き取られました。
円も頭のきれる女性ですが本当に事件の本質を見抜く
のは家にいる祖母です。
祖母が円に人として、将来法律家として生きていくために
大切な人生訓を伝授していきます。
最後にびっくりするオチになっていると聞きました。
表紙を見ていてははぁとわかりました。
それはぴたりとあって合っていました。
だって表紙を見ているとなんか奇妙な気がするのです。
最初はイラストレーターのミスなのかと思いました。

連作短編になっているのですがそれとは別に円の両親の
事故の真相の追究の話が連続しています。
中山さんの作品には深刻なのと軽めのとがあります。
この作品は楽に読んでいけるものです。

"静おばあちゃんの知恵"
神奈川県の組織犯罪対策本部長の久世警視が拳銃で
撃たれて亡くなりました。
犯人として逮捕されたのは部下の椿本です。
久世は暴力団と癒着していました。
椿本は久世と対立していました。
椿本のピストルから発射された玉が解剖された体から
発見され椿本でしか犯人はありえないと思われますが
かつての部下だった葛城は無実を信じて捜査をします。

"静おばあちゃんの童心"
一人暮らしの女性高齢者が殺されているのを孫娘の
美緒と生協の従業員が発見しました。
彼女たちは円の境遇と似ていました。
違っているのは美緒の祖母が厳しいばかりの人
だったことです。

"静おばあちゃんの不審"
葛城は上司から私的に新興宗教にのめりこんでいる
娘を引き離してほしいと頼まれます。
その教団の師父は人々の見守る前で亡くなりちょっと
人々の目が離れたときに消えてしまいました。

"静おばあちゃんの醜聞"
スーパータワーの工事で高所にあるクレーンの操作室に
いた男が殺されました。
動機を持つ外国人労働者が疑われ捕まりました。
彼は別のクレーンの操縦席にいました。
どうやって実行できたのかわかりません。
彼は無実を訴えています。

"静おばあちゃんの秘密"
外国の大統領が妻と護衛の兵士三人を連れて日本に
滞在しています。
ホテルのスイートルームをワンフロア使っています。
護衛たちは大統領の部屋の向いに部屋をとりドアを
開けて監視をしています。
そんな中で大統領は撃ち殺されました。

静おばあちゃんは魅力的な女性です。

中山さんの作品の"さよならドビュッシー"が映画化
されて近く封切りされますね。

望月青果店

2013-01-18 17:46:46 | 

小手鞠るい著"望月青果店"を読みました。
こういう家族の話は苦手な部類ですが、でもこの話は
よかったです。

鈴子は50代半ばです。
ニューヨーク州北部の田舎で夫の誠一郎と犬の茶々と
暮らしています。
誠一郎は全盲で茶々は盲導犬です。
誠一郎は音楽家ですが、今は夫婦でB&Bを経営しながら
二人とも他のいろんな仕事もしています。
とても仲のいい夫婦です。

鈴子の両親は岡山の山奥の温泉街で望月青果店を経営
しています。
母は目が目えないことはないのですがかなり不自由です。
子供のころは母方の祖母もいっしょにくらしていました。
父は鈴子の子供のころの土日は岡山市に映画を見に行くと
いっては家を空けていました。

母は鈴子に向かって自分の人生は鈴子のせいで家に縛り
付けられ哀れでかわいそうな人生だといいました。
鈴子には忘れることができない言葉です。

中学生の時に隆史とよくいっしょに過ごしました。
大学生になったら二人で逃げようと約束しました。
しかしその約束を忘れたように鈴子は高校生になると
家からは通えない高校へ入学して知り合いの家に
下宿することになりました。
高校時代に下宿までやってくるという母を駅に迎えに
いくことになっていましたがすっぽかしました。
目が不自由な母がどんなにこまったことでしょう。

短大卒業後、東京の大学へ編入し就職しました。
故郷へはほとんど帰りませんでした。
鈴子は母とは不仲です。
しかし祖母は鈴子にやさしく接してくれました。
三十歳ごろに祖母は亡くなりました。

岡山で見合いをして結婚するつもりでしたが結局
婚約破棄して東京へ帰ってしまいます。
その後盲導犬の訓練士となる勉強をして訓練士に
なりました。
最初に訓練した犬を受け取ったのが誠一郎です。
盲導犬の飼い主になる人と盲導犬と訓練士といっしょに
数週間の訓練をします。
誠一郎とはこうして知り合いました。
訓練終了後に誠一郎から交際の申し込みがありました。

母が重大な病気に罹っていると父から連絡があります。
今すぐ危険な状態というわけではありません。
アメリカから岡山へ里帰りをしようとしています。
大雪で停電になり雪に閉じ込められています。
飛行場へいけるか、飛行機は飛ぶか心配しています。
数年に一度しか里帰りしてこなかったのに故郷にいる
2日間程度の間にもいつもいつも激しく母と娘は
対立してきました。
それでも鈴子には母は忘れられない存在です。

夫とは穏やかで幸せな関係です。
それとは反対に母との関係は厳しいものです。
でもかといって決して忘れることはできません。
母もやはり同じように娘のことを思っているのです。
本当にしょうがない二人です。
しかしこのようにしかできない関係なのでしょう。
父は子供のころは週末家を空けていてこの夫婦、父と
娘の関係はどうなるのだろうと思っていましたが、
その後に登場する父は母と娘の間の緩衝材となって
いい夫、父になっているようです。
高校生の時に母を駅に置き去りにした出来事は
あまりにもむごいことだと感じます。
まあ子供だからできたことといえなくはありません。
一生涯こうした関係でやさしい言葉を掛け合うという
ことはなさそうです。
母と娘は仲良くはできなくても心の底で思いあっている、
それでいいのでしょう。

くちびるに歌を

2013-01-17 20:39:13 | 

中田永一著"くちびるに歌を"を読みました。
中田永一さんは乙一さんの別名なんですってね。
乙一さんの作品も中田永一さんの作品もたぶん一冊ずつ
しか読んでいません。

五島列島の中学校の合唱部の話です。
顧問の松山ハルコが出産のため1年間の休暇に入り
代わりに東京にいた親友のピアニストの柏木が
受け持つことになります。
美人の先生につられていままでいなかった男子部員が
入部してきます。
先生は音楽家として挫折しておりそれほど熱心では
ありません。
男子たちはぜんぜん熱心ではありません。
NコンことNHK全国学校音楽コンクールに出場する
予定ですが今までは女声三部でしたが男性が入ったので
混声三部で出場することになります。
女子は不満がいっぱいです。

桑原サトルは自閉症の兄がいます。
親戚の工場へ通う兄の送り迎えをしています。
自分は兄のために生まれてきて生涯兄の面倒をみる
ことを義務ずけられていると考えています。
学校では口をきくことがありません。
自分の殻にこもっています。
合唱団にひょんなことから入部することになります。

辻エリが指揮者として部員を率いていきます。

サトルは長谷川コトミのことが気になっています。
コトミには上級生の恋人がいるとの噂があります。

中村ナズナは父は出奔してしまい、母は幼い時に
亡くなっており祖父母と暮らしています。

対立していた男子と女子ですが男子がやる気を出して
まとまってきます。
Nコンでは課題曲と自由曲があります。
自由曲は柏木先生の作曲の曲にエリがたたき台の
詩を書きサトルが整えた詩がつけられたものを
歌うことになりました。

Nコンは長崎で行われます。船で渡り1泊します。
サトルの両親と兄が会場にきてくれます。
父と兄は場内へ入らず会場外の映像を見ています。

Nコンは終わります。
残念ながら次へは進めませんでした。
しかしみんな達成感を味わっています。

サトルの兄がサトミが知りたかった母のことばを
話だします。
彼は聞いたことをそのまま記憶できる能力があります。
サトミは幼い時彼と会っていたのです。

すがすがしい話です。
読んでいて気持ちいいです。
それぞれいろいろ抱えているものはありますが合唱に
打ち込む姿はいいですね。
雰囲気から勝ち進むだけの実力は持てなかっただろう
ことは感じます。
猛特訓で勝ち進んだという話になったらかえって
ありきたりの話になったでしょうが負けたことで
真実味がありました。
柏木先生もやる気が出てきたようですし、松山先生も
体を心配されていましたが無事赤ちゃんを出産しました。