明野照葉著"家族トランプ"を読みました。
風見窓子は33歳、化粧品を通信販売している会社に
努めています。毎日同じような仕事をしている一般職の
女性です。
一人っ子で両親と暮らしていますが、母親から30過ぎの
娘に食事の支度をしてやる必要はないと言われ、一人分
作って部屋で食べる生活です。
その上35歳になったら家を出て行けと通告されます。
親とは分かり合える関係ではありません。
家を出たら家賃と生活費で給料が消えるぎりぎりの
生活になって簡単には出て行けません。
有磯潮美は会社の副部長です。
ばりばりのキャリアウーマンです。
きびしいことを誰に対しても言いますが、誰もが一目
おいている女性です。
屋台村で潮美が男性と楽しそうに食事をしているのを
目撃します。
その数日後に潮美に食事にさそわれます。
まったく対照的は二人です。
リソさん、ザミちゃんと呼び合う付き合いが始まります。
窓子は潮美に心酔しきっています。
下町の三ノ輪にある潮美の実家は潮屋という食堂です。
なんでも出てくるような賑やかな下町のお店です。
お婆さん、両親、弟の由多加でやっている店です。
この店につれてこられてこの店や潮美の家族の
楽しげな雰囲気に惹き付けられてしまいます。
土曜日ごとに店に通うようになります。
この人たちと家族になりたい、潮美とずっといっしょに
いたいという欲望がわいてきます。
そして…、窓子は家族になりました。
最初のころの窓子はにっちもさっちもならない状態の
夢も希望もない女性でした。
潮実と出会ったことで人生が明るい方へと転換
していきます。
読んでいてとても楽しい本です。
ちょっとばかり他力本願で夢物語のような気が
しないではありませんが物語がハッピーエンドに
なる本は好きです。
手を差し伸べられた時、その手をつかむのはその人の
意思ですし、生かすことができるのはその人の能力です。
窓子の家族のひややかさと、潮美の家族の暖かさが
対象的です。窓子が幸せになり変っていけば両親も
変っていくことでしょう。10/26