雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

浅草色つき不良少年団

2011-08-31 22:01:06 | 

祐光正著"浅草色つき不良少年団"を読みました。
関東大震災やその後の戦争で東京が焼け野原になったのを
2度経験した神名火譲治が語る昔話という形式の連作
短編集です。
関東大震災後に浅草には「浅草紅色団」、「浅草黒色団」、
「浅草黄色団」 という3つの少年少女団が存在しました。
黒色団は犯罪めいた組織でしたがあとの2つは孤児に
なった子供たちが身を守り、生きていくため寄り集まった
集団です。
譲治は浅草黄色団のリーダーで似顔絵ジョージと呼ばれて
いました。似顔絵描きが仕事でした。

"幻景安佐淺草色付不良少年團"
黄色団のまだ12歳の辰吉と紅色団のお菊が黒色団に
おそわれました。ジョージが駆けつけ逃げ出した時には
すでに辰吉は刺されていました。ある家に逃げ込みました。
ジョージが目を覚ました時には辰吉は死亡していました。
もうひとつ知らない女性の死体がありジョージが疑われます。
当時の警察は思い込みで強引に犯人を仕立て上げていました。
警察を納得させられる犯人を見つけだすため黄色団、
赤色団は調べ廻ります。

"墨東鬼端啖事件"
踊り子マチコは双子の姉ミチコがいます。
この話はややこしい話です。わかったつもりで読んで
いても少したつとなんだかわからなくなります。
双子の少女と、もう一人双子に似た少女が登場します。
双子の父親がとんでもなくひどい男でこの男が原因で
起こった事件と言っていいでしょう。

"瓶詰少女"
江戸川乱歩こと平井太郎の家で出会った大水春栄の家へ
行くと透明な瓶の中に14,5歳の裸の少女が詰められて
置かれていました。
知らない少女だという平井を置いて警察へ行っている間に
少女も大水も家ごと消えてしまいました。

"イーストサイド物語"
似顔絵ジョージは15歳の天狗小僧の長吉が女の子を
相手に決闘をするから立会人をして欲しいと頼まれます。
ジョージはそのことをすっかり忘れて野球観戦に
行ってしまいました。
代わりを務めた六から長吉が相手のせんを刺し殺して
長吉、せん、せんのの立会人ともいなくなってしまったと
聞かされます。

"二つの墓"
関東代震災時のジョージの体験をつづったものです。
隣の家の地下室に閉じ込められてしまって逃げられなく
なります。起こった火災をやり過ごして奇跡的に助かります。
逃げた両親は亡くなってしまいました。
焼け跡で助かった従業員と共に始めた食べ物やが繁盛
します。孤児となった子供達が集まってきました。
これが浅草黄色団の始まりです。

関東大震災の状況が生々しく感じられます。
大正、昭和初期の東京浅草の雰囲気が伝わってきます。
紅色団のリーダーの冬瓜の百合子が人脈もあり統制力も
あり頭脳も冴えています。
美人で女装していたりしますが実は男性だというのが
おもしろいです。8/17

人形の部屋

2011-08-30 21:09:02 | 

門井慶喜著"人形の部屋"を読みました。
ミステリーです。ちょっとした出来事を主夫の八駒敬典が
解くという形式になっています。
13歳のつばめという名の娘がいます。
ほとんど登場しないので存在を忘れてしまいますが奥さん
がいます。彼女が働いています。
敬典は以前は旅行社で企画の仕事をばりばりこなしていました。
いろんなことに興味を持ち調べて知識としました。
歩く辞書として重宝がられました。
どうして主夫となったかは書かれていません。
連作短編集です。

"人形の部屋"
以前の職場の後輩が人形を持ち込みました。
ビスクドールです。写真撮影のため借りたのですがちょっと
したことで足を壊してしまいました。
豊富な知識の先輩に何とかならないか頼みにきたのです。
貸主は価値だけが大事な不動産屋の社長です。
いつのまにか敬典が壊したことになっていて法外な価格で
買い取れといいます。
詳しく調べていくとこの人形、不思議な経歴を辿っています。
結局後輩の会社で買い取りました。しかしこの人形の価値は…

"外泊1 銀座のビスマルク"
誕生日には家事から離れて旅行をする取り決めになっています。
今回は家の近所の銀座です。買いたかった万年筆を買います。
その姿を見ていた57歳の男性に声をかけられ喫茶店で話を
することになります。
能登の塩田で塩を作っている小さな会社に勤めています。
社長が急死して東京にいた社長の息子が社長を継ぎました。
新社長と万年筆にまつわる問題を敬典に話し出します。

"お花当番"
庭の花の世話をしている時に隣に越してきた夫婦の奥さんと
話を交わしました。
彼女はお花は嫌いだと言い放ち、朝美さんの名前を持ち出します。
井村朝美は大学時代の知り合いです。ゼミの教室へ交替でお花を
飾っていました。それだけの知り合いです。
彼女のメールアドレスを友人から聞いて隣の人とはどういう
関係か問い合わせます。
返ってきた返事は花の名前を連ねた暗号分でした。
娘のつばめといっしょにメールの謎を解きます。

"外泊2 夢見る人の奈良"
次の年の誕生日は奈良に行きました。
今回は筆を求めました。またしても話しかけてくる若者と
出会います。
書道家に弟子入りしたいのだが何回いってもあれこれ
理屈をつけられて追い返されてしまいます。
あきらめた方がいいという敬典の言葉にいや何度でも
頑張るという若者でした。

"お子様ランチで晩酌を"
娘のつばめが家出をします。
同じ時に新潟の姉が旅行の途中に立ち寄ったと現れます。
娘を探す話です。

結構おもしろい話でした。
知識豊富な主夫が主人公というのもおもしろいです。
敬典は主夫に満足しているのですが、その言葉と裏腹に
本心なのか、という感じが本から発散しているように
思います。
まわりの人々が気を使っています。
男性だってこういう生き方があっていいと思います。
専業主婦に対してその生き方でいいのですか、などと
思う人はそうはいないでしょう。
いつか何かをしたくなったら敬典は飛び立つこと
でしょう。8/17

船に乗れ! Ⅰ合奏と協奏

2011-08-29 21:01:42 | 

藤谷治著"船に乗れ! Ⅰ合奏と協奏"を読みました。
音楽科の高校生を描いたものです。
Ⅱ、Ⅲ巻まであるのですがⅠで挫折しました。
おもしろくないわけではないのですが、読み進みたい
という気持ちが湧いてきません。続きはいつか読みます。

津島は音楽一家に生まれました。幼少のころピアノを
祖母に習っていましたが中学になってチェロに転向しました。
高校は芸大の附属高校を受けるつもりで勉強しました。
附属の受験に失敗しました。
祖父が理事長をしている新生学園大学附属高校の音楽科へ
入学することになります。
この学校が三流だということが何度も出てきます。
学生のうちに一流だとか二流だとか言ってみたって何の
意味もないだろうにと思います。
音楽科の学生たちよく勉強しています。
オーケストラを編成して演奏会を年1回開くのですが
厳しい練習や合宿を経験します。

津島は別のクラスのバイオリニストの南に心をひかれて
います。
ずっと南は津島になんの感心をみせませんでしたが
二人とピアノの先生を加えてメンデルスゾーンの
ピアノ・トリオを演奏しようといっしょに練習する
ことになりました。文化祭での発表は先生が加わっている
からとできませんでした。
この発表会は津島の祖父の自宅で先生たちや津島の
音楽科の叔父、叔母の前で開かれることになります。

中学、高校で将来の進む道を決定してそのために
勉学に励む姿はすごいなぁと感じます。
自分のいい加減さと比べてしまいます。
迷いがない分、何をすべきかがはっきりわかって
いてうらやまいです。
厳しい練習というものは、喜びでもあると言えます。

最初の部分で津島が本当に音楽家を目指しているのか
ただ大人の言葉に流されて進もうとしているのかよく
わからなくてなかなか話に入っていけませんでした。
厳しい練習をこなしているところをみるとプロを目指して
いるのだと納得しました。8/16

あの時のアルバイト学生は・・・

2011-08-28 20:43:49 | コンピュータ
若かった時の話です。ふと思い出しました。
社員は4人であとは時々アルバイトの人が来るという
ITのベンチャー企業に勤めていました。
たぶん他の会社ではアルバイトは計画的に出勤日や、
時間が決められていて仕事の内容も決まっていると
思います。
この会社ではアルバイトは来たい時に来て、帰りたい
時に帰ればいい、仕事も期日までに結果を出さなければ
いけないというものではありませんでした。
出退勤の時間はいつでもいいというのはアルバイトだけ
でなく社員にも適用されていました。
後に就業規則が出来て残業代も出るようになったのですが
規則なし、残業代なしの時の方が一生懸命に働いていた
様に思えるのはどういうことなのか不思議です。
昼ごろ出勤してきたとしても夜中まで働く、というように
長時間勤務していました。
私はというと決まった時間に出勤して決まった時間に
さっさと帰っていました。

アルバイトの中に大学4年の男子学生がいました。
一月か二月に1度ふらりとやって来るという感じです。
彼がやってくるとソフト担当、ハード担当のどちらもが
喜んで彼の周りに集まってきて「これどう思う」、「あんな
情報が流れているけどどうなの」と意見を聞きます。
実社会で働いている方が学生に聞いているのです。
彼に聞くような高度な知識は持ち合わせていない私は
なんという不思議な光景なのだろうと傍から見ていました。
彼の仕事は知識や情報を求められるままに置いていくと
いうものだったのだろうと思います。

彼にはある噂がありました。
パジャマ姿で電車に乗って会社にやって来たというものです。
そんな人を見たらそうとうおかしな人だと思われたこと
でしょう。
まことしやかにそんな噂が流れていましたが実際の
現場を見た人はいないようです。
ある人が、パジャマをぬがずにその上からズボンをはいて
セータを羽織ってきたっていうことだよ、と言っていました。
その説明の方が真実味があります。たぶんそうなのでしょう。

彼、今何しているのでしょう。大学教授になっていても
おかしくありません。起業して最先端の技術を駆使して
驚くようなもの作っているかもしれません。
ただ大企業でサラリーマンをしている姿は思い描けません。
枠にはめられて生きていける人ではないように思います。
当時のあの会社に集まっていた人たちも同じ雰囲気を
していました。
彼の名前はすっかり忘れました。残念です。

どまんなか祭り

2011-08-27 19:14:48 | 最近の話題
昨晩、というより今日の午前3時ごろものすごい雨音で
目が覚めました。
天に大きな水桶があってそれの底がいっきに抜け落ちた、
そんな気にさせる雨でした。
寝てていいのだろうかと恐怖心さえ起こさせました。
土砂降りはわりと早くに弱まりました。
でもおかげで目がしっかり覚めてしまいました。
もう眠れないかと思いましたがそのうちに眠りに落ちた
ようです。
朝起きたら雲っていましたが、夜中の雨は夢だったの
だろうかと気がしました。

どまんなか祭りが始まりました。
明日もあります。名古屋の町のあちらこちらで踊って
います。もうじき夏休みも終わることですし最後の
思い出に名古屋のどまんなか祭りはいかがですか。

夕方1時間ばかり見てきました。
ただパチパチやっているだけですのでいい写真は撮れません。
スピードがある動きはぜんぜんだめです。
何枚かアップします。

彼らは北海道大学のグループです。この後赤ふんどしの
集団となりました。写真を撮っている人の前でしっかり
ポーズを取っている人もいました。
どこかに知らない人の手元にずっと裸に近い写真が残る
のにいいの?って思ってしまいました。
みんなこの日のため鍛えたような美しい肉体でした。
美しいからいいか。







長瀬良司ジャズライブ

2011-08-26 22:09:27 | 日常の出来事
夕方の7時からのJAZZコンサートに行ってきました。
以前にノリタケの森でのコンサート時にトランペットの
長瀬さんが配布したチラシを見て行きました。
場所は文化フォーラム春日井です。春日井には行ったことが
なくどうやっていくのだろうと調べてみました。
なあんだ名古屋から春日井までJRの中央線で約20分です。
その後20分ぐらい歩きます。地図を頭の中に叩き込んで
出かけました。たまにとんでもないところへ行ってしまい
ますがだいたいは行きたいと思うところに着きます。
今日もすんなりと着きました。
いい会場でした。円形になっていて正面はガラス張り。
カーテンが下りていて残念ですが外はみえません。
でもカーテン越しに町の明かりがちらちらみえます。
天井は高いです。普段はロビーになっているのでしょうが
催物がある時はホールになる作りです。1階です。
早く着きました。椅子が3列ぐらいしか並べてありません。
あれ、こんなに少ない?と思いました。
人がやってくると積み上げてある椅子を自分で持ってきて
座る、そういうシステムみたいです。

トランペット 長瀬良司、ギター 砂川康弘、ベース 大村守弘、
ピアノ 林祐市、ドラム 砂川裕史朗 のメンバーです。

会場はいつの間にか人でいっぱいになりました。
とても楽しいコンサートでした。
みんなとてもリラックスした雰囲気で笑顔のコンサート
でした。
ゆったりとしてのんびりとした気分になりました。
会場もひろびろとして気分よく演奏が出来、聞く方も
雰囲気よくきけました。
間のおしゃべりも楽しさを盛り上げました。
行ってよかったです。
1時間強の無料コンサートです。
ただこのコンサート、春日井市民の方を対象にしている
のでしょう、よそ者が混じっていてよかったのでしょうか。
チラシもらったんだものいいですよね。

アンコールが終わって終了したら今度は皆さん椅子を
片付け始めました。おぉ、ここはこういう仕組みなんだ、
もちろん私も片付けました。







ピアノの方は私の席からよく見えなくて写真ありません。

モップの精と二匹のアルマジロ

2011-08-25 20:58:09 | 

近藤史恵著"モップの精と二匹のアルマジロ"を読みました。
シリーズ物の4冊目です。今回は前の3冊が連作短編の
事件を推理するというものでしたが今回のは長編ですし
推理物とは言えないです。

ねたばれです。これから読もうという方は見ないでください。
清掃作業を仕事としているキリコと夫の大介が主要登場
人物です。
キリコが派遣されているビルに越野友也という男性が
勤めています。
友也の奥さんの真琴に友也が浮気をしていないか調べて
欲しいと頼まれます。
数日後に友也は車にはねられ現在から3年前までの記憶を
失ってしまいます。真琴とはその3年の間に出会い結婚を
したので友也には見ず知らずの人に思えます。

真琴は自分の外見に自信が持てないし自分が人に愛される
わけがないと思っています。
友也はAセクシャルです。
男性にも女性にも誰にも性的な感心を持てない人のことを
いいます。
そんな人が結婚した理由が上司に結婚を勧められてうるさい、
外見がいいので女性に言い寄られるからめんどう、だから
偽装結婚してしまえと結婚したというのです。
もちろん真琴にはそんなこと打ち明けてありません。
アルマジロは硬い殻を背負った動物です。
殻を抱えた二人が寄り添ってもちっとも温まらないという
意味でつけられた題名です。

友也は人を愛せないことに絶望して死ぬことを望んでいます。
性的な感心がないのと、人を愛せないのとは違うと思います。
会社に勤めて人とコミュニケーションが取れるのなら
人として問題がないではありませんか。
結婚したくなければ高らかに「独身主義だから絶対結婚は
しないのだ」と宣言しておけば何ら問題なく生きていけます。
今は男女を問わず独身者は多いのですから。
なんで偽装結婚なんてするのかなぁ。
まったく人に感心がなく、生きていくのに支障があるという
ならそれは精神の病気です。
でも友也に社会性がないというのではありません。
だからどうもこの本は納得できない内容です。

キリコは業務開始前のオフィスを清掃する仕事です。
朝が早くキリコと大介の生活はすれ違い気味ですが
うまく協力してやっています。
こちらの二人はうまく結婚生活をしているようです。

天才たちの値段

2011-08-24 20:07:50 | 
門井 慶喜
文藝春秋
発売日:2006-09


門井慶喜著"天才たちの値段"を読みました。
短大の美術の先生の佐々木と神永美有という不思議な男
とが出会う美術品に関係した謎を追求する話です。
神永は美術に詳しい古書店の息子です。
本物を前にすると甘みを感じるといいます。
連作短編集です。

ねたばれあります。
"天才たちの値段"
画商からボッティチェリの絵が発見されたと連絡があり
佐々木と神永が見にいきます。
壁に埋め込まれています。神永は甘みを感じるから本物
だといいます。
神永は買うといいます。値段はボッティチェリの絵に
したらとても安い値段です。
佐々木がボッティチェリではないと調べた結果を告げますが
神永はそれでも買います。
その後、神永から壁から取り外したキャンバスが金の糸で
編まれた貴重な技術のものだと知らされます。
とても値打ちのあるものです。そのことを知っていて
買ったのです。
佐々木と神永の出会いのシーンです。

"紙の上の島"
佐々木の短大の自由奔放な女性学生がいます。
彼女の双子の姉が徳島から地図を持って訪ねてきます。
江戸時代にポルトガル人モラエスが曽祖父にくれたものだと
いいます。

"早朝ねはん"
お釈迦様の涅槃絵が出回りました。
お釈迦様がエアロビスクをしているようにみえます。
この絵を自分の寺のものだったので手に入れたいという
女性に手助けを頼まれます。
絵を盗まれた寺も手に入れたいと乗り出してきます。
おかしな格好をしていますが見方をちょっと変えて
みるとこの絵が隠れキリシタンが拝んでいたキリスト像
なのだと神永が指摘します。

"輪点はフェルメール"
父親と息子がある絵をめぐってディペート対決をすること
になりました。

"遺言の色"
佐々木の祖母が亡くなります。母親は入院しています。
祖母が遺言を残します。叔母がいます。
美術品を大切に扱ってくれる方に託したいと、クイズが
出題されます。
叔母と、母親の代理として競うことになります。
佐々木は神永に手伝ってもらって問題にあたります。

神永は幅広い知識をもった人です。
大学の先生が神永に頼り切ってしまっている様子は
先生とあろう人がちょっとなさけないのじゃないという
気をおこさせます。
いい就職先を恩師に紹介されますが、神永と会えなくなる
のはつらいとことわろうとします。
東京と京都です。数時間で行き来できるし電話、メール
いろいろ連絡を取る方法はあるのに何言ってるのだろうと
あきれました。
でも結局は言い出さずに受けます。
確かに神永は魅力的な人です。

吉井堂 謎解き暦 姫の竹、月の草

2011-08-23 19:51:59 | 

浮穴みみ著"吉井堂 謎解き暦 姫の竹、月の草"を読みました。
第30回小説推理新人賞受賞作だそうです。
でも推理小説だという感じはあまりないです。
数馬、奈緒の兄弟は武士の出です。火事を出して家禄
召し上げ、御家断絶になり両親は次々となくなりました。
今は町人の子に手習いを教えて暮らしています。
数馬は今の数学、天文学、物理、化学、その他いろいろ
学ぶことが好きです。
妹の奈緒は何か事情があってもらわれてきた子です。
連作短編集になっています。
読みやすい本です。数馬、奈緒、数馬の年長の学問の友で
医者の長寿庵と好意を持って読めます。

"寿限無"
新しく入門してきた新吉が高熱で寝ていた時に異界に
迷い込みお母さんの幽霊を見た。お母さんは寿限無と
つぶやいていたといいます。
寿限無、…… ジュテーム …

"紅葉立つ"
手習いにくるおさとの知り合いの和香が大名屋敷に奉公に
行ったまま行方がわからなくなりました。
奈緒が奉公にあがり様子を探ることにしました。
そこに住む隠居した大殿様は隠居とはいえまだ37歳です。
奥方は犬のように四つん這いになり涎を流す病気に
なっています。
この病気の原因を突き止めます。
和香の行方もわかります。

"臘月尽く"
奈緒の出生の秘密に関する話です。

"ベルレンス・ブラアウの佐保姫"
無残に腹を割かれ足首を切られた遺体が複数見つかります。
生活のために残酷な絵を描いているはるの元に死体が
置かれている場所をしらせる文が届きます。

"耿と交わる"
孤児のお砂は寺で下働きをしています。あまりのひどい
扱いに八郎といっしょに寺を抜け出し江戸まできますが
八郎にも置き去りにされてしまいふらふらしているところを
数馬と長寿庵が日食の観察をしている所と出会います。
その数年後お菓子屋の伊勢屋喜兵衛の妻お波津の行方を
知らないかと訪ねてきます。
数年前に何かあれば訪ねてくるようお砂に渡した所書きを
お波津が持っていたのでした。

"姫の竹、月の草"
笛の名手榎木源之丞の息子の千之丞と知り合います。
源之丞は酒を飲むと乱暴を働きあいそを尽かされ田舎に
逼塞することになりました。
千之丞の住む家の近くの家に幕府にあやしまれそうな
文字を書いた短冊がつるされています。

最後に奈緒が数馬の家に連れてこられたいきさつを
知っている蕎麦屋の女将が、数馬にその経緯を話ます。

数馬に奈緒、これからもいっしょに生きていくことでしょう。
江戸の情景や人情が思い浮かぶ本でした。8/9

血液型について

2011-08-22 20:34:33 | テレビ・新聞から
今日の夕刊に就職試験のときに血液型を記入させられたり
面接で聞かれることがあると載っています。
血液型を聞いたら世間で言われているこの血液型の人は
こういう性格といわれている根拠のない常識にまどわさ
れるかもしれません。
なぜそんなこと聞きたいのでしょう。
百害あって一利なしだと思います。
新聞記事を見て本当にこんなことしているの、って首を
傾げてしまいました。
こんなことするということは採用担当者は血液型で性格が
わかるということを本気で信じているのでしょうね。
よく血液型はおしゃべりする時の話題になります。
それはみんな本気ではないという土台の上での冗談として
話していると思っていました。
科学的に証明されていることと間違って理解している人が
多いということですね。

遊びでああだこうだと楽しむ分にはいいのですが、人生を
分けるという大事な時に持ち出すことではないです。

追伸:
この新聞記事を読んですごく違和感を感じたのですが
それがなぜだか気づきました。
勤務先ではセクハラをしないための教育があります。
血液型の話はセクハラにあたるとされています。
血液型の話で相手を不愉快にさせたらコンプライアンス
委員会へ通報されるおそれがあります。
だから堂々と就職試験の時に聞くということが
なんかへんという気を起こさせたようです。

伏 贋作・里見八犬伝

2011-08-21 07:44:13 | 
桜庭 一樹
文藝春秋
発売日:2010-11-26


桜庭一樹著"伏 贋作・里見八犬伝"を読みました。
滝沢馬琴の南総里見八犬伝は子供のころ子供用に書かれた
本を持っていて何度も何度も読んだはずです。
当時ラジオドラマでもやっていて夕方ラジオの前で
一生懸命聞いていた気がします。ラジオドラマだなんて
なんだか大昔の話しているみたいです。
それでもどういう話だったか、さっと頭に浮かんでこない
のが悲しいです。
伏姫が自害した時に八つの珠が飛び散りました。
その珠を持った人たちが珠に導かれるように集まり姫の
国のため力を発揮するみたいな話だったのではないかと
思います。
南総里見八犬伝は28年間かかって書き続けられた本だと
いいます。現代語版が出版されているようですがきっと
読み難いだろうし、読んでも子供ころのような感動は得ら
れないに違いないと思います。
せめて子供向けに圧縮したものをもう一度読んでみたいです。

伏の方の八犬伝は里見八犬伝からしたら負の話です。
三つに分かれていて最初の部分は山から兄を頼って出てきた
14歳の猟師の女の子浜路に視点を置いて描かれたものです。
真ん中は馬琴の息子の滝沢冥土が書いたという"贋作・
里見八犬伝"という小説中小説です。
伏姫と犬の八房の子供の子孫たちは伏と呼ばれています。
最後の部分は伏の信乃が語る話です。

伏は嫌われ怖れられています。人をむやみやたらと傷つけ
殺します。賞金がついて伏を狩る賞金稼ぎが現れます。
浜路と兄道節がそうです。
伏は見た目は人間と同じです。運動能力はすごく優れています。
人を襲うのを止められないのは持って生まれたものです。
伏の寿命は20ぐらいの短命です。

"贋作・里見八犬伝"この話はかなりおもしろいです。
前後がなくてこれだけでもいいぐらいです。
伏姫や弟の鈍色の子供時代の生活が活き活きと書かれています。
伏姫は男の子のように元気に野山をかけて過ごしています。
片や弟は女の子のように人形遊びが好きなような子です。
父親の里見義実が犬の八房に敵の大将の首を取ってきたら
娘をやろうというところは本物の八犬伝と同じです。
実際に八房が首を持って帰ってきます。
伏姫は八房を連れて銀の葉の森と言われている人が踏み
入らない不思議な森に入ります。
ここで10年過ごした後伏姫は普通の世界へ連れ戻されます。
その時は正気を失っていてもう何もわからない状態です。
城で生まれた子供達が散っていきました。
この子たちが伏の先祖です。
このような話です。

最後は伏の信乃を追いかける浜路と江戸城下の地下道で
語られた信乃の話が中心になります。
帯に伏の心情が書かれています。
「伏ってやつに生まれるとよ。なぜだか、世の中ってもんに
うまくなじめねぇ。ひとを愛せねぇし、愛するものを守る
力も、心ももたないぜ。殺し、謀り、怠け、犯し、そのくせ
夜毎、俺ぁ寂しい、寂しいとひとりで泣きながら生まれた
この姿で生きてゆくしかないのだぜ。」
伏に生まれてしまった悲しさが出ています。
なぜに伏というものが生まれてしまったのでしょう。
狩られる運命で生まれてきてもいいことない人生です。
狩られる伏とそれを追う猟師。いつまでも続く運命です。

本はおもしろくてぐいぐい読ませます。
でも悲しい話です。8/6

夜の蝉

2011-08-20 10:40:30 | 

北村薫著"夜の蝉"を読みました。
大学生の「私」が語る物語です。
私の知り合いの落語家の円紫が登場して謎を解き明かして
くれます。
前に読んだ"空飛ぶ馬"とシリーズになっています。

"朧夜の底"
大学の友人に高岡正子(しょうこ)と江美がいます。
正子は本屋さんでアルバイトをしています。
不思議な状態を見ます。
本が何冊かの本がさかさまになっていることが何度か
ありました。
その後箱入りの本の中身が別の本のものと入れ替わって
いることがありました。
円紫にその話をしたところ思わぬ推理を展開します。
ネタバレです。
この本を買って読み終わってから本の中身が違っていたと
本屋さんにお金の返却を求めるのではないかというのです。
びっくりしました。でもありそうです。
一般の本屋さんで売られている本ですから高いといっても
限りがあります。
でももっと大きな金額で同じような詐欺?をしようとすれば
できるのではないかと思ってしまいました。
これは犯罪とはいえないでしょう。本屋さんが本来の本と
交換するといえば結局いらない本を手にすることになります。
現実には本屋さんは箱と中身を確認するでしょうから
起こりえないことだろうとは思います。
これ読んだ時なんて心の貧しいことするんだろうとすごく
さみしい気分になりました。
こんなことする人はどうだ頭いいだろうと自慢げな
気分でいるんじゃないかと思えて嫌な気分です。
人それぞれゆずれないものがあります。
それが正しいことなのかどうか、なんともいえませんが
自分で情けないと思うようなことはしたくありません。

正子は誕生日を言いません。円紫がわかりますよと
言います。誕生日を言いたがらない、正子をしょうこと
読むことからお正月に生まれたのだろうと予想します。
なるほど。

"六月の花嫁"
友人たち4人で軽井沢の友人の別荘へ遊びに行きます。
チェスの駒が一つなくなります。
その駒が冷蔵庫で見つかり卵が一個なくなります。
卵は脱衣室で見つかり鏡がなくなります。
鏡はチェス盤の中で見つかります。
一応誰かのいたずらで鏡の国のアリスの見立てだと
思われました。
円紫が別の見方をします。
チェスの駒がどこでなくなったかをごまかすために
思いついたことではないのかといいます。

"夜の蝉"
私とお姉さんとの確執を描いた話です。
といってもお姉さんが妹が生まれて感じる理不尽な
感情を何をきっかけに抜け出したかを妹に打ち明け
話です。
お姉さんは人が見つめてしまう超美人です。
お姉さんが付き合っていた男性は二股をかけるような
あまり感心しない人です。
会社でもらった歌舞伎のチケットの1枚を会社で
封筒に入れ彼の家宛に会社の前にあるポストから
投函しました。
劇場に現れたのは彼が付き合っているもう一人の
女性でした。
お姉さんが嫌がらせをしたと彼女と彼の両方から
非難されます。
円紫が謎を解き明かします。
ポストに投函された郵便を取り返す方法は?

この本実家に行った時に近所のBookOffで買いました。
裏表紙の所に我楽多書房の紙切れが貼ってありました。
この本屋さんも古本屋です。昔よく行きました。
同じ岐阜市内ですから本が回転していて不思議ではない
のですが、なつかしい気分になりました。8/20

この世にひとつの本

2011-08-19 20:49:09 | 
門井 慶喜
東京創元社
発売日:2011-04-28


門井慶喜著"この世にひとつの本"を読みました。
印刷会社がパトロンをしている書家が山奥の家から
姿を消しました。
消えたのは坂部幽嶺という名の老女です。
社長の息子の三郎が探すよう命令されます。
一流大学を出ているのに実務では役にたたず社史編纂室
へ追いやられてしまった建彦を連れて幽嶺の家を訪ねます。
同じ時に荒川区の尾久工場の無版印刷課にかかわった
三人が相次いで白血病で亡くなりました。
この原因もなにかあるのなら調べなくてはいけません。
社長の愛人である若い秘書の南知子が調べます。
幽嶺と白血病この二つの関わりがあるのかないのか
三郎、建彦、南知子の三人が協力して調査します。

頼りなさそうに思われていた三郎が力を発揮して
時期社長はこの人だと言われるようになります。
若いのに窓際に追いやられていた建彦も能力を
発揮します。
南知子も別の世界へ向けて歩き始めます。

それほど引き込まれる話ではないのですがそれなりに
おもしろかったです。
原子力発電所の事故で放射能に対しては過敏に
なっているのにその話題をよく取り上げたなぁと
思いました。
原子力発電反対とか賛成とかいう難しい話が
出て来るわけではありません。
白血病といえば放射能とすぐ頭に浮かぶではありませんか。
やはり原因は放射線を発するものがあったからなのです。
幽嶺もやはり変色しないインクを求めて放射線を発する
物質を探していました。
幽嶺が最後に行き着いた結論が傑作です。
なんだこの人、と思ってしまいました。
昔のものは今にも通じるということなんでしょうか。
題名の"この世にひとつの本"は幽嶺が金で書いた
源氏物語でした。8/2

MOMENT

2011-08-18 19:52:05 | 
本多 孝好
集英社
発売日:2002-08-26


本多孝好著"MOMENT"を読みました。
先日読んだ"WILL"とシリーズになっていて
MOMENTの方が数年前の話になっています。
学生で病院で清掃のアルバイトをしている神田が
主人公です。
時々葬儀屋を継いで数年の森野が登場します。
その病院には、"死を間近にした患者の願いを一つ
叶えてくれる人がいる”という噂があります。
神田が噂の願いを叶える人となったきっかけは米田
アケビという老女の願いをきいたことです。
昔の恋人の前で芝居を打つというものでした。

老人にある家庭の様子を探ってほしいと頼まれます。
その人は戦争中に上官に命令されて殺した同朋の孫に
あたります。
脇坂というその人とゴルフ練習場で知り合い、家に
入り込んで娘の家庭教師になります。
幸せそうだったその家庭がどんどん壊れていきます。
神田のせいではありません。老人のせいです。
神田に嘘の話をしてさぐらせ、別の方から手をまわして
崩壊させていました。

心臓病をわずらった14歳の女の子の頼み。
修学旅行でいっしょに写真を撮った男性の大学生を
さがしてお見舞いに越させて欲しいというものです。
住所は聞いたが写真を送っても戻ってきてしまうと
いうことでした。
写真から相手の住所を突きとめます。
信用できそうにないいいかげんな男でした。
ほのぼのとした話になるかと思いきや嫌な展開に
なっていきました。

一人暮らしの女性
誰かに留守番電話をしているところをよく見かけます。
職場に荷物を取りにいってやったり車を持ち出して
ドライブしたりとしてやりました。
一人暮らしの女性の孤独を描いた話です。

借金があり借金取りに追われている死期間もない有馬と
いう人がいます。
病院長の息子がアメリカから帰ってきています。
借金取りをやり過ごして生命保険金を離婚した妻子に
残してやりたいと思っています。
ここでは医師が安楽死に関わってきます。

死が迫った人の願いを聞いてやるという話ですので
もっと心温まるものなのかなと思っていましたが
全然違いました。
穏やかな心ではいられないのかむしろ普通よりも
生臭い話になっています。
人間なんてそんなものなのかもしれません。8/2

警視庁幽霊係

2011-08-17 19:32:10 | 

天野尚頌子著"警視庁幽霊係"を読みました。
柏木は幽霊が見えて話ができます。
事件で亡くなった人の幽霊から話を聞いて事件を解決
するのに役立てています。
結花という殺された高校生の幽霊が柏木には憑いて
います。

"洋館の人びと"
階段から落ちてお金持ちのお婆さんがなくなります。
家には子供の時に養子にした息子夫婦に子供たち、
その友人、お手伝いさんがいました。
お婆さんの幽霊は押されて落ちたけど誰だかは
見ていないのでわからないといいます。
人は亡くなっていますが気持ちよく解決します。

"沈丁花の家"
被害者は水野泰明。駅から寮へ帰る途中で強盗に
会って切りつけられて亡くなりました。
幽霊に会ってみると柏木の体に入り込んでしまいました。
幽霊は電車に乗り大垣のもっと先まで行ってしまいました。
犯人に復讐して行くのかと思っていた柏木でしたが
子供達を遠くから眺め、奥さんに会って様子を確かめ
たのでした。

"幽霊が多すぎる"
お墓の墓石の後ろから白骨化した骨がみつかりました。
柏木が出かけて行きましたが白骨本人の幽霊は現れません。
お墓で待っているとたくさんの幽霊が現れます。
倒れていたお墓に入っていた鉄道王、文豪、その他
いろんな幽霊が現れますが言うことが違います。
久乃さんという幽霊が調香師だったという話を
していたと教えてくれます。

"幽霊はブラームスがお好き"
柳瀬理恵子が自宅で絞殺されました。
きれいに片付いた部屋の中です。
幽霊はストーカーだった男が犯人だといいます。
実際には幽霊が何かを隠しているようです。
殺されてなお相手をかばう幽霊です。

"五年目の月夜"
柏木の知り合いの刑事の娘が誘拐されます。
唐沢縞子はカリスマ霊能者です。この人が関わって
いるようです。三谷啓徳も霊能者です。
三谷は柏木に何回か手を貸してくれています。
実際に手をくだしているのは唐沢に操られている
秘書の秋月柚子だとわかってきます。
柏木に憑いている高校生の結花を殺した犯人も
わかりました。

幽霊が出てくる小説って多いですね。
怪談というようなうらめしやというおどろおどろしい
物ではではないです。
幽霊がいたら会ってみたいという人が多いのでしょうか。
幽霊とか信じないたちです。
降霊とか除霊とかテレビでやっていても興味ありません。
でも想像の世界で幽霊たちが出て来る分には別に
文句はいいません。
幽霊が現れて証言してくれたら事件が早く解決することは
間違いありません。
中には嘘をいう幽霊がいますからしっかりみきわめるのは
人間といっしょですね。8/2