祐光正著"浅草色つき不良少年団"を読みました。
関東大震災やその後の戦争で東京が焼け野原になったのを
2度経験した神名火譲治が語る昔話という形式の連作
短編集です。
関東大震災後に浅草には「浅草紅色団」、「浅草黒色団」、
「浅草黄色団」 という3つの少年少女団が存在しました。
黒色団は犯罪めいた組織でしたがあとの2つは孤児に
なった子供たちが身を守り、生きていくため寄り集まった
集団です。
譲治は浅草黄色団のリーダーで似顔絵ジョージと呼ばれて
いました。似顔絵描きが仕事でした。
"幻景安佐淺草色付不良少年團"
黄色団のまだ12歳の辰吉と紅色団のお菊が黒色団に
おそわれました。ジョージが駆けつけ逃げ出した時には
すでに辰吉は刺されていました。ある家に逃げ込みました。
ジョージが目を覚ました時には辰吉は死亡していました。
もうひとつ知らない女性の死体がありジョージが疑われます。
当時の警察は思い込みで強引に犯人を仕立て上げていました。
警察を納得させられる犯人を見つけだすため黄色団、
赤色団は調べ廻ります。
"墨東鬼端啖事件"
踊り子マチコは双子の姉ミチコがいます。
この話はややこしい話です。わかったつもりで読んで
いても少したつとなんだかわからなくなります。
双子の少女と、もう一人双子に似た少女が登場します。
双子の父親がとんでもなくひどい男でこの男が原因で
起こった事件と言っていいでしょう。
"瓶詰少女"
江戸川乱歩こと平井太郎の家で出会った大水春栄の家へ
行くと透明な瓶の中に14,5歳の裸の少女が詰められて
置かれていました。
知らない少女だという平井を置いて警察へ行っている間に
少女も大水も家ごと消えてしまいました。
"イーストサイド物語"
似顔絵ジョージは15歳の天狗小僧の長吉が女の子を
相手に決闘をするから立会人をして欲しいと頼まれます。
ジョージはそのことをすっかり忘れて野球観戦に
行ってしまいました。
代わりを務めた六から長吉が相手のせんを刺し殺して
長吉、せん、せんのの立会人ともいなくなってしまったと
聞かされます。
"二つの墓"
関東代震災時のジョージの体験をつづったものです。
隣の家の地下室に閉じ込められてしまって逃げられなく
なります。起こった火災をやり過ごして奇跡的に助かります。
逃げた両親は亡くなってしまいました。
焼け跡で助かった従業員と共に始めた食べ物やが繁盛
します。孤児となった子供達が集まってきました。
これが浅草黄色団の始まりです。
関東大震災の状況が生々しく感じられます。
大正、昭和初期の東京浅草の雰囲気が伝わってきます。
紅色団のリーダーの冬瓜の百合子が人脈もあり統制力も
あり頭脳も冴えています。
美人で女装していたりしますが実は男性だというのが
おもしろいです。8/17