シェリーの姿が見えなくなっていることに鬼童とヴィクターが気づいたのは、シェリーが出て行ってからちょうど一時間が経過したときのことであった。二人は、ようやく合流した麗夢に問われ、初めてシェリーがいなくなっていることに気が付いたのだ。
「でも、確かついさっき外へ行くって言ってましたから、そんなに遠くに行っているはずはないんですが……」
鬼童の覚束なげなその言葉は、シェリーが出ていってもう一時間になると証言した従業員によって、見事に否定された。
「そ、そんなに前だったのか?」
ヴィクターと鬼童が狐に鼻をつままれたような顔を互いに見交わしている前で、麗夢は苛だたしげに溜息をついた。
「もう、夢中になるとこれだから……。私が遅れたのは悪かったけど、シェリーちゃん一人ほったらかして外に行かせるなんて、信じられないわ……」
「……申し訳ない」
二人はしおらしくしょげ返って、麗夢に頭を下げた。しかし、あのシェリーが見知らぬ土地を出歩いて一時間も帰らずじまいというのは、一同に不安を惹起させるには充分な時間である。
「と、とにかく探しに行きましょう。どこかで迷子になっているのかも知れないし……」
「あ、ああ! 早く見つけてやらないと、この暑さだし、心配だ!」
全く、心配なら目を離さないで欲しい。麗夢がきっと二人を睨み付けると、再び二人の頭ががっくりと垂れた。
「で、シェリーちゃんはどっちに行ったの?」
「そ、それが……」
「まさかそれも判らないの?!」
「面目ない……」
二人とも並べば東京都庁のようにそびえ立って見えるのに、今は小柄な麗夢よりも小さく錯覚されるほど、がっくりと肩を落としている。そんな二人を見かねて、おずおずと社長が口を開いた。
「確か、出てすぐに左へ行ったはずや。なあ」
社長に問われて、麗夢の前に麦茶のコップを置こうとした従業員が、何度も頷いて社長の言葉を肯った。
「確かに左やった。あれから前を通りかかってないから、右の方には行ってへんはず」
「ありがとう、左ね!」
麗夢は努めて明るく礼を言うと、厳しい目つきに返って突っ立っている二人に言った。
「さあ、行くわよ! 鬼童さん、ヴィクターさん。早くシェリーちゃんを見つけないと!」
「でも、確かついさっき外へ行くって言ってましたから、そんなに遠くに行っているはずはないんですが……」
鬼童の覚束なげなその言葉は、シェリーが出ていってもう一時間になると証言した従業員によって、見事に否定された。
「そ、そんなに前だったのか?」
ヴィクターと鬼童が狐に鼻をつままれたような顔を互いに見交わしている前で、麗夢は苛だたしげに溜息をついた。
「もう、夢中になるとこれだから……。私が遅れたのは悪かったけど、シェリーちゃん一人ほったらかして外に行かせるなんて、信じられないわ……」
「……申し訳ない」
二人はしおらしくしょげ返って、麗夢に頭を下げた。しかし、あのシェリーが見知らぬ土地を出歩いて一時間も帰らずじまいというのは、一同に不安を惹起させるには充分な時間である。
「と、とにかく探しに行きましょう。どこかで迷子になっているのかも知れないし……」
「あ、ああ! 早く見つけてやらないと、この暑さだし、心配だ!」
全く、心配なら目を離さないで欲しい。麗夢がきっと二人を睨み付けると、再び二人の頭ががっくりと垂れた。
「で、シェリーちゃんはどっちに行ったの?」
「そ、それが……」
「まさかそれも判らないの?!」
「面目ない……」
二人とも並べば東京都庁のようにそびえ立って見えるのに、今は小柄な麗夢よりも小さく錯覚されるほど、がっくりと肩を落としている。そんな二人を見かねて、おずおずと社長が口を開いた。
「確か、出てすぐに左へ行ったはずや。なあ」
社長に問われて、麗夢の前に麦茶のコップを置こうとした従業員が、何度も頷いて社長の言葉を肯った。
「確かに左やった。あれから前を通りかかってないから、右の方には行ってへんはず」
「ありがとう、左ね!」
麗夢は努めて明るく礼を言うと、厳しい目つきに返って突っ立っている二人に言った。
「さあ、行くわよ! 鬼童さん、ヴィクターさん。早くシェリーちゃんを見つけないと!」
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