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世界共通通貨単位の構想

2012年10月29日 13時02分15秒 | 経済関連
ケインズの「Bancor」に倣い、新たな共通通貨をBと略すことにしよう。簡単に書くと、次のようなものとする。


①B通貨の管理及び発行は、世界中央銀行(仮称)が行う
②ある時点(乃至過去のある期間の平均)のドル換算レートを置換する


以下、各論について述べる。

①について:

現在、IMFと世界銀行が存在しており、他にはBISやG7orG20蔵相・中銀総裁会議なんかもあるわけである。これらを統一的機関として整理したものを、世界中央銀行として設置する。

FRBに似たような理事会形式でもよいだろう。理事国は、主要経済大国(GDP)の上位10~15カ国(任期6年常設)、他に選挙で選出された5カ国(任期3年で入れ替え)の、合計20カ国で構成。投票権は1カ国1票。運営に関する最高決定権は、理事会が持つものとする。常設国は、統計結果で6年毎に入れ替え、漏れた国は選挙選出枠に回る。理事は、基本的に各国中央銀行総裁、代理として財務担当大臣、ということになるだろう。

当初は、出資国は常設理事国として入れるのが妥当と思う。
世界中央銀行への出資金として、各国が支払い、資本とする。通貨券(バンコール)を発行し、主要国の安全度の高い国債を買って資産とする。各国政府や中央銀行への貸出金も資産計上。

バンコール通貨券は、通貨券を保有する国の通貨又は市場調達可能な通貨(保有国債払いでもよいか?)に交換する義務を世界中央銀行が負うものとする。バンコール通貨券の発行は、取引額に応じて決め、発行については全て理事会の決裁(承認?決定?)を受けるものとする。買入資産についても同様。基本的には、株式などのリスク資産を購入するということは想定できない。



バランスシートは普通の中銀のような感じになるだろう。

資産         負債
A国国債 200    通貨券  3000
B国国債 200
C国国債 200
…          資本
貸出金  200    出資金  1000
_________________________________________
合計   4000         4000


イメージとしては、こんな感じ。
資本には金塊を含んでも、勿論よいです(笑)。


各国政府や中央銀行はバンコール通貨券を保有し、外貨準備の準備金や通商取引の支払いなどに充てることになる。保有国は、世界中央銀行に「換金してくれ」と申し出れば、公定の時価交換レートで申出国の通貨(国債)か、市場調達可能な主要通貨で支払うものとする。通貨券の額面は、取引が各国政府や中銀などに限られる為、かなり高額のものでよいと思われる。また、必要に応じて、各国政府向けの貸出にも対応し、これまでの既存機関(IMF、世銀、開発銀等)と大差ない役割も担うものとする。


出資金は、創設時の各国経済規模及び取引通貨量などで割当を決める。出資額で投票権が変わるわけではないので、1国1票は1票である。
利息収入などは、機関運営資金とか、途上国向け貸出基金としたりできるのではないかな。



②について:

常に問題となりそうなのが、交換レートの決定であろう。確かに、思惑なんかやボロ儲けの手口なんかがありそうで、混乱に乗じて問題が生じる可能性はあり得る。
対策を講じれば、そんなに困難とも思わない。

具体的なレートの設定について、述べることにする。

ある時点から、為替取引や各国の国際統計などの表記を、これまでのドル表示からB(バンコール)表示に変更する。例えば、2015年1月1日に切替、ということにすると、その日から一斉に変わる。

交換レートの設定については、切り替え時点でのレート、過去1年間の平均レートと切り替え日時点との調整値、などがあるだろう。簡単なのは、昨日までのデータをそのまま使う、ということであるが、その場合には「恣意的操作」が切り替え日直前まで行われてしまうという可能性もあるので、事前に問題点の精査が必要。


で、切り替え方法について、最も簡略化した例を書くことにする。

切替直前まで為替レートが、次のようになっていたとする。

1円=0.0125ドル
1ユーロ=Eドル
1ポンド=Pドル
1元=Cドル


仮に切り替え日を2015年1月1日とすれば、その瞬間から、

1円=0.0125(B)
1ユーロ=E(B)
1ポンド=P(B)
1元=C(B)

とすればよいのである。

つまりは、ドル表示だったものを、単純にB(バンコール)に置き換えればよい、というだけである。1ドル=1Bに変わるわけであるが、これ以後、バンコールの通貨価値が下落してゆくというわけではないので、ドル安が進んだ場合にはバンコールに対して下落方向へと変動するということになる。
つまり、ドルとユーロの為替レートは、バンコールを介するクロス取引と同じ結果になるだけである。1ユーロ=105円、1ドル=80円の時、1ユーロ=1.3125ドルと計算できるのと変わらない。

ドルは、あくまで米国の経済活動(金融政策等も含む)の結果として変動するようになり、決済通貨という役割からの影響は受けなくなる。また、ドルペッグ(半ペッグも含め)国はバンコールを基準として考えることができるようになる。国際的な取引価格はバンコール表示に変わるので、ドル安の影響などというのも基本的には考えずに済むようになってゆくだろう。需給での変動はあるが、通貨安の影響は少なくなるだろう。輸入国のどこかで通貨安が起こっている時には、その国単独の問題として輸入価格上昇になるが、それは他国の通貨政策や金融政策の結果ではなくなるはず、ということである。ドルの購買力が落ちて相対的通貨安となっていれば、その結果はバンコール表示であると時代を超えてはっきりと目に見える形になってゆくだろう、ということである。


ある国が自国通貨を無闇に発行して、バンコール交換を持ちかけてきた場合、無限に自国通貨を発行すると簡単にバンコール通貨券を手に入れることができてしまう、という危険性があるわけだが、これも基本的には「時価評価」での交換に応じることと、金融政策の不透明過ぎる国の交換申出には応じない、戦争・動乱・内乱などの事態においても同様に交換停止措置などを決定可能とする、などの措置で対応できるであろう。

バンコールという単位について、その価値をどう定義するか、という問題についてであるが、あくまで相対的なものであるとして、呼び名の一つと看做すだけでよいだろう。ドルとBを入れ替えただけでいいのは、どうしてか、という疑問はあるかもしれない。
理由としては、現在の経済取引の結果が為替レートに反映されているものとして、その妥当性をそこそこ評価しており、これを信頼してみる、ということである。バンコールの発行高は世界の国々が考え決める、買入資産も中立性維持を念頭に決める、ということになるはずなので、バンコールの価値はその時の世界経済によって相対的に決められるはず、ということである。新規通貨が登場しても、クロス取引は発生してくるはずであろう。それと何ら変わりなし、ということである。なので、絶対価値を敢えて決定(定義)する必然性もないだろう、というのが当方の考え方である。


外貨準備に積まれたドルは、基本的にバンコールに置換されてゆくことになるだろう。その調整スピードについては、切替後、数年間は一定量以上の取引を制限するか、ドルの下落スピードが速い場合にはバンコールとの交換停止か、政府間直接取引で時価での引き取りをしてもらう、といったことが必要かもしれない。ただ、米国が外貨準備に積まれてきた米国債を引き取って、バンコールで返してくれ、と頼まれたとしても、米国自身がバンコールに換金できる資産を世界中央銀行に差し出さないと無理なので、ちょっと難しい面もある。

世界中央銀行が米国債の引き取りを無制限にやってくれる、ということにするなら、資産サイドに米国債を積み、等量のバンコール通貨券を発行すれば済むわけであるが、その場合米国債がデフォルトになってしまうと、出資国全部に被害が及ぶことになる。米国への取立を世界中央銀行が担うことで、どうにか解決方法を探すということになってしまうかもしれない。


米国債がこれまで通りに滞りなく払ってくれるものならば、バンコール通貨券に変換しても問題はなく、いずれ返ってくるだろう。ドルの持ち高については、将来的な経済規模の変動が反映される時代が来るかもしれず、各国が外貨準備などに保有する準備金が、どこか特定国の通貨に一方的に偏っているよりも、世界共通通貨の方が中立性が高いはずであろう。リスク回避の為に、資金待避先を見つけたい場合でも、これまでは特定国の通貨・債券に集中するきらいがあったわけであるが、そういう事態も減ることになるだろう。バンコールへの資金待避を望めば済むから、である。


ただし、バンコールに資金が過度に集中してしまった場合、何の資産を買入するか、それとも債権(貸出金)とするか、という問題は残るかもしれない。世界デフレを招きかねないかも。バンコール通貨券を持っていても、利益は生まないし、投資増などの景気浮揚に役立つということもないけれど、価値毀損は防がれる、というだけだから。


少なくとも言えることは、ドルの通貨支配体制は、さっさと終わるべきだ、ということである。世界の各国通貨量、経済規模に応じた保有(買入)資産体制が築かれるなら、バンコールという中立性の高い共通単位が望ましいはずだろう、ということだ。




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