いい国作ろう!「怒りのぶろぐ」

オール人力狙撃システム試作機

AIGボーナスベイべー(笑)

2009年03月31日 19時56分12秒 | 経済関連
あっちでもこっちでも、話題を振りまいている一件について。
「米べー」とか揶揄されるのはどうしてなのかは知らない。別に、ロックミュージシャンとか及川光博には関係ない(「○○だぜ、ベイべー」みたいなキメ台詞を吐きそうだから、笑)とは思うけど。


従業員たちが身の危険を感じるとか、泣きの手紙とか、そこまで行くか、という大フィーバーぶり。別に日本で問題にしているわけでもないし、身の危険を感じさせているのは、自国民だということをまず理解して欲しい。誰の税金を使ってもらっているか、ということも関係しているのですけどね。米国国民が怒るかどうかは、自由にさせてあげたらよろしいと思いますので、私から見れば、どっちだっていいんですがね。けど、高額ボーナスを支払わねばならないと考える会社側にも、貰う権利があると強硬に主張する従業員側にも、大いなる疑問しかわいてきませんね。全く理解不能。だって、昨年から政府支援を受ける企業のトップがジェットでやってくることさえ、あんなに槍玉に挙げられてバッシングに遭ったというのに、どうしてわざわざ国民の怒りを一層煽るようなことをするのかな、とは思いますよね。火に油を注ぐようなもんじゃないですか。それは、「火を見るより明らか」(笑)ではありませんか。なのに、多くの米国民を怒らせるようなことを、ワザとやってるとしか思えんのですよね。


まず一番に思うのは、もしも政府支援が受けられていなければAIGは破綻していたであろう、ということですよね。そうなれば、多くの債権者たちが列を作るわけですよ。こっちに払え、という取立てが殺到する、ということに他ならないわけですよ。そんな状況でAIGの幹部だの従業員だののボーナスや給料なんて、債権者の列の何番目か判らんけど、列の後ろの方でしかないわけです。順番が来ても、満額もらえることなんてまず有り得ないでしょうよ。ボーナスを貰う権利がある、なんて、いくら意気込んで主張してみたところで、他の債権者たちだって同じく法的に貰う権利がある、という主張をするんですから、優先順位に従って配分がなされるだけでしょう。

つまり、AIGの幹部や従業員の取り分なんてほぼゼロか、あっても微々たる額でしかない、というのが、法的権利なわけでしょう?もっと優先順位の高い債権者たちに分配されてしまうんですから。私が貰えるはずだ、と正当な権利を主張するのは勝手だが、法は「破綻したAIGの幹部や従業員のボーナスまでは守ってくれない」というのが当たり前なんですよ。

これを免れただけでも万々歳、というのが、ごく普通の感覚だろうと思います。貰えるものがあるだけまだマシ、ということです。政府支援がなかったら、恐らく1セントだって手に入らなかったんじゃありませんか?ま、記念の社名入りマグカップくらいは、回収できるかもしれませんがね(笑)。

こういう、潰れた場合よりはマシでしょう、という仮定の話をしても、「いやいや、現実には潰れてませんからw」とか言うのかもしれません。開き直りの典型ですかね。


第二に、優秀な人が辞めてしまう、とか言うんですが、大規模なリストラが必要な昨今、高額年俸の従業員が減るなら好都合なんじゃないですかね。プロスポーツ球団でも、高額過ぎる年俸の選手を放出して、もっと安価な選手を雇うというのは、よくある話じゃありませんか。高給を払わないと他へ行くよ、という人たちは、行けばいいんじゃないですかね。欧米金融機関を中心に、金融セクターの人員を大幅に削減することになるだろう、というご時世で、そんなにいい働き口がいくつもゴロゴロとあるとも思いませんけど。
でも、優秀な人ならばいくらでもポストがあるんでしょうから、数億円とか数十億円のボーナスがないとやってられないぜ、という方々は自由に移動してもらっていいんじゃないでしょうか。本当にそんなに優秀な人たちばかりだったのなら、もっとマシな経営になっていたような気もしますがね(笑)。


第三に、損失を出したのは我々ではない、あっちの部署の人間だからオレは関係ない、だからボーナスは頂くぜ、という主張も、何て頓珍漢なご意見なのかな、とは思いますよね。そんな組織があるんですかね。大手電機企業が製品Aの失敗で大赤字になって倒産したとすると、その部署の人間だけが倒産責任を負うんですかね。そんな話は聞いたことがない。製品Bの部署の人間も一緒に負うでしょう。それが組織ってもんです。都合の良い部分だけは「法的権利」を主張し、都合の悪い部分には一般的な法的整理の場合とかけ離れた意見を主張する、という使い分けが卑怯ですね。倒産する時は、自分又は自分の部署が損失の直接原因か否かになんて何の関係もなく、会社は潰れるってもんですわ。そういう決まりになっているんですから。そんな時に、いくら「オレは何ら悪くない」とか言ったって、会社の債務は逃れられないし、自分の持つ債権順位が上がったりはしないでしょうよ。



まるで金融機関の従業員が悪いものみたいに非難するとか、穢い仕事であるかのように言うとか、被害者意識丸出しの同業者諸君も大勢いるみたいですが、多くの納税者が怒っているのはそういうことではないわけで。金融システムに無関係な企業であると、普通に潰されるし、それで従業員に給料もボーナスも払えなくなったとしても、「しょうがないね」で終わりだろ。明日から、職探しの路頭に迷うことになる従業員が大勢いるんだよ。だが、重要な金融機関だから、ということだけで潰れることから救済され、その上巨額報酬まで配られるとなれば、こりゃ怒るでしょう。事実上の「倒産に準じて」やってくれや、という意見が出されても不思議ではないですよ。


AIGは言うなれば人質を取っている犯人みたいなものですよ。そこで犯人曰く、
「オレを殺せば人質を閉じ込めている場所も判らなくなり、必ず人質は死ぬぞ、それでもいいのか。死んでもいいなら、オレを殺せw、できるもんならやってみな」
ということですわ。

確かに、この犯人の言う通り。悪いヤツだから死刑でもいいと大勢に思われているんだけど、そうすると人質(金融システム)が助からない。なので殺せない。しょうがないから、犯人の要求を受け入れて、刑事(政府+納税者)が命を助けてやることにしたのに、犯人は「オレは腹がへってるんだなあ、だから、特上ヒレカツ重を食わしてくれ」とか言って、刑事に内緒でこっそり食ってしまったんですよ。大勢の人たちが「本来は死刑だな」と思っている犯人を仕方なく救ったら、本当に特上ヒレカツを食ってしまったんです。刑事さんたちは昼メシも晩メシも抜きで、空腹なのを必死で我慢して頑張っているのに、本来死刑である犯人は高級ヒレカツ重を好き勝手に食ってるわけですよ。これは、誰だって怒りますぜ。映画みたいな荒くれ刑事(笑)だと、「分らないなら、分らせてやるぜ」ということで犯人の腹に悶絶ボディブローを入れて、今しがた食ったカツを吐き出させてやろうか(=支給ボーナスにほぼ全額課税)、と言いたくなるだろうね。


消費者金融に債務が1億円あるXがいて、「オレが破産したら、お前らみんなも潰れるんだからな、イーヒッヒャッヒャッヒャ」とか言われ、破産を防ぐ為にはY銀行が追い貸しを1億円せざるを得ないとしよう。嫌々ながらも、しょうがなく1億円を貸して返済に回させたのに、Xは銀行から金が入ったもんだから「早速使わせてもらうぜ」ということで、200万円の高級腕時計を購入。Y銀行は怒って、「真面目に返済しろ、お前は1億円の追加融資がなければ破産していただろ」と説教した。するとXは、「1億はオレのもんだ、自由にさせてもらうぜ。これは正当な権利だからな。1億円に比べれば、どーせ200万円なんて微々たる端金じゃねえか」と言い返してきた。
この時、Y銀行がカチーンと来ないわけがないでしょ。
そんなこと言うなら、即座に1億返せ、と言いたいところだが、もしそれをやるとXは破産し、連鎖倒産の嵐になってしまう。だからY銀行には、それができないのだ。だからこそ、余計に腹が立つのだよ。


そういうことを分っていながら、金をばら撒こうとする会社や、自分の持つ債権だけを最優先する従業員といった面々には、要するに金融危機招来の根底にある、過信と強欲、自己の過大評価という傾向があるのだろう。そして、思ったより「金を生まない仕事」に変わってしまったはずの金融業が、今なお「高額な報酬を得るに値する、非常に生産性の高い仕事」であると信じて疑わないのである。
「巨額の利益」を稼いでから高額ボーナスを要求すべし、というのが、資本主義社会のルールなのにね。こういう所だけは、彼らにルールは通用しないらしい(笑)。