物語が立ち現われるのは、明確な二分法をあいまいにする境界であることが多い。虚実の被膜の間、つまりトワイライトゾーンにこそ物語が立ち現われるというのである。よいテーマを貰うと、こちらの心も活性化される。そして、ここから「庭」というイメージが浮かんできた。庭はまさにトワイライトゾーンである。屋外であるが家の敷地内である。 . . . 本文を読む
「ただ、体力をつけたり、他の能力をつけたりするのと違って、意志の力をつけることの難しいのは、それに挑戦するのが意志の力の弱い人の場合が多いので、挫折しやすいということですね」。なるほど、と、まいは心の中で呟いた。「さあ、もう部屋に戻って明日からのプランを練りましょう」。まいがリビングから出ようとしたとき、おばあちゃんは何げなく付け足した。「私は、まいの意志の力が弱いと思ったことはありませんよ」。 . . . 本文を読む
おばあちゃんも別のじょうろで裏庭に撒いていた。紫色のキャベツの外葉に注がれたハーブティーは、くるくると透明な琥珀色(こはくいろ)の玉となって揺れた。眠っていたような青虫やアブラムシはあたふたと逃げ出した。 . . . 本文を読む
戦局が日増しに悪化する中にあっても、私たちは日々訓練に励んだ。訓練とはいえ命懸けだった。急降下は一歩間違えば死につながる。実際、飛行訓練中にも多くの学生が事故で亡くなった。私の無二の親友、伊藤もそれで死んだ。急降下訓練で機首の引き起こしに失敗して、そのまま地面に激突したのだ。 . . . 本文を読む
室町時代にかぎらず、いつの時代でも、庶民はあくせく働くよりほかありません。その現実の苦悩の中で、だからこそ庶民は、《一期は夢よ たヾ狂へ》と歌ったのです。それはある意味で、彼らの願望でありました。いや、願望というよりも、むしろ現実と闘うための思想的根拠であり、武器であったと思います。 . . . 本文を読む
私は最近、豊橋にあるホワイト商会の代表取締役・山口幹夫さんから1冊の冊子をいただいた。それは五日市剛さんの講演を講述録として冊子にしたものだった。話は、五日市さんがイスラエルのおばあさんからツキをよぶ魔法の言葉を教えてもらうことから始まる。 . . . 本文を読む
「固定為替相場」と「独立した金融政策」が両立しない理由は、為替介入です。固定相場というのは放っておいても相場が維持されるというものではなく、相場を維持するために介入し続けなければいけない制度です。介入のために嫌でも円を刷らなければいけないことがありますので、独立した金融政策を行なうことができなくなります。 . . . 本文を読む
男女の「性別」という差異をことさら強調することによって女性を弱い立場に置き、それを「蔑視する人間」として1人の人間を差別主義者に仕立て上げて葬り去ったのだ。そんな日本のマスコミの手法は、あらゆる意味で愚劣である。そこには事実も礼儀も、容赦も、遠慮も、何もなかった。私はマスコミに対してだけでなく、日本そのものに深い失望を覚えた。世界に、自分たちが思い込んだ“日本の恥”を晒(さら)し、貶(おとし)め、侮蔑する人々。つくり上げられた「新・階級闘争」に踊らされ、SNSを通して集団リンチに加わった人々には言うべき言葉もない。 . . . 本文を読む
一般に採択替えは4年ごとに行われる。一度採択替えで選ばれた教科書は、4年間同じものを採択し続けることが法令で義務づけられている。この縛りを一時的に解いて「採択の特例」とした。その際、自由社のみならず他社も改めて検討の対象となる。つまり、新制度では採択替えが全国一斉に行われると解釈するのが普通の人間の感覚である。自由社も1年遅れで検討対象の資格を与えられると期待する。ところがその期待は見事に裏切られる。
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この戦いで日本軍がまだ持っていなかった電探(レーダー)2基を無傷で鹵獲(ろかく)した。早速構造を調べたものの「YAGI」と表示されたシステムの意味が分からない。捕虜を尋問すると「お宅の八木さんのつくったアンテナのことさ」だと。調べたら確かに東北大の八木秀次教授が指向性超短波の受信装置をつくり日英米の特許も取っていた。 . . . 本文を読む
2006年1月6日付各紙亡者(もうじゃ)欄に財田川事件の谷口繁義(しげよし)さんの名前があった。亡くなったのは昨年夏。享年74歳だったとある。事件は戦後間もない頃起きた。香川県財田村のヤミ米ブローカーが殺され、地元の不良だった谷口さんが捕まった。死刑が確定してから20余年後にやっと再審が始まり、無罪を勝ち取った。いわゆる冤罪事件の一つで、同じ頃に起きた島田事件、松山事件なども同じ昭和50年代に再審、そして無罪となっている。 . . . 本文を読む
しかし、実際には先に挙げたものをはじめ、日本に対するヘイト作品群に税金が投入されたことが問題になっていた。私自身は開会直後に観覧していたので、マスコミがなぜ隠蔽(いんぺい)するのかも分かった。一部の右翼によって表現の自由が日本では侵されていると報じたいのである。そのためには、日本への度を越えたヘイト作品群であることは隠さなければならなかったのだ。 . . . 本文を読む
【渡辺】 島原の乱とその歴史的背景については宮崎さんとの前著『激動の日本近現代史1852-1941』で詳しく論じているので、本書では一点だけ指摘すると、島原の乱は幕府の弾圧に対するキリスト教徒の反乱ではなく、その背景には、ポルトガルとオランダの対立、すなわち、カソリック対プロテスタントの信仰をめぐる戦いがあった。 . . . 本文を読む
「従軍慰安婦」が問題であったのは、旧日本軍の官憲による朝鮮人女性たちの「強制連行」を主張する吉田証言があったからである。他に尤もらしい理由はない。「強制連行」がなかったのだとしたら、たしかに人権を奪われた不幸な女性の悲運のテーマは残るかもしれないが、日本が政治的に責められる問題ではもはやない。慰安婦問題はただちに「問題」ではなくなるのだ。それは世界中の売春一般の問題と同じことになる。 . . . 本文を読む