電脳筆写『 心超臨界 』

ものごとの意味するところはそれ自体にあるのではなく
そのことに対する自分の心構えにあるのだ
( サンテグジュペリ )

◆清瀬弁護人の活躍

2024-08-07 | 05-真相・背景・経緯

§4 東京裁判――日本に犯罪国家の烙印を押すために演じられた政治ショー
◆清瀬弁護人の活躍

清瀬弁護人は、はじめから裁判の管轄(かんかつ)権を問題にした。この指摘にウェッブ裁判長は何も答えられなかった。さらに清瀬弁護人は、ウェッブ裁判長がニューギニアの戦犯問題で検事役を兼務していたころを指摘し、裁判長としての資格がないと主張した。それで裁判官忌避(きひ)が行われたのである。結局、連合国軍の司令長官であるマッカーサーの命令で任命されたのだから裁判官の忌避は認められない、ウェッブ裁判長のままでいくということになった。法的に自分の地位を守ることすらできず、マッカーサーの命令でのみ動いた裁判だったのである。


『「戦後」混迷の時代に』
( 渡部昇一、ワック、p37 )

裁判というものに関する重要なことだから繰り返すが、まず、裁判官が中立国から一人も入っていない。本来は中立国からだけ、裁判官を出せばいいのだ。それが無理でも、戦勝国と同数の裁判官を敗戦国から出して、裁くべきである。

裁判官が、戦勝当事国からしか出ていないというのは、普通に考えればおかしな話であろう。

しかし、そんな中でも清瀬(きよせ)一郎弁護人は、涙が出るくらいの活躍をした。当時は占領軍がいて、日本は武装解除されているのだから、何をされても文句が言えない状況だった。その中で、毅然(きぜん)として日本国の弁護をした。

しかも、弁護人は検事と違って費用もほとんど自腹を切っていた。後から、これはひどいということで裁判所からお金が出たらしいが、検事側から見れば雀の涙ほどの金額である。検事は権力を使ってどんな証拠でも引っ張ってくることができたが、弁護人の方は手弁当で証拠を探したのだ。

清瀬弁護人は自分の家でもない焼け跡の建物に住んで、畑を耕して芋を作り、それを食べていた。そのおかげで、戦前からの糖尿病が治ったくらいだという。彼は後に衆議院議長になったが、それも当然で、首相にしたいような人だった。

その清瀬弁護人は、はじめから裁判の管轄(かんかつ)権を問題にした。この指摘にウェッブ裁判長は何も答えられなかった。アメリカのスミス弁護人も同様に管轄権を問題にしたが、その時もウェッブ裁判長は答えられなかったのである。スミス弁護人は、「管轄権も明らかにできないような裁判は公訴棄却(ききゃく)にすべきだ」と主張したほどだった。

さらに清瀬弁護人は、ウェッブ裁判長がニューギニアの戦犯問題で検事役を兼務していたころを指摘し、裁判長としての資格がないと主張した。それで裁判官忌避(きひ)が行われたのである。結局、連合国軍の司令長官であるマッカーサーの命令で任命されたのだから裁判官の忌避は認められない、ウェッブ裁判長のままでいくということになった。

法的に自分の地位を守ることすらできず、マッカーサーの命令でのみ動いた裁判だったのである。

東京裁判で、ただ一つよかったのは、その中でだけは、言論の自由が保障されていたことである。当時の日本は、前章で述べたプレスコードでもわかるように一切の言論の自由がなかったわけだから、これはよかった。

なぜ言論の自由が保障されていたかというと、弁護人の中にはアメリカ人もいたからだ。東京裁判は主として英米法に基づいて執(と)り行われたが、日本人は英米法に慣れていないという理由からアメリカ人が起用された。

そのアメリカ人の弁護人たちは戦勝国の味方をしたかというとそうではなく、彼らは弁護士精神に燃えて、本当によくやってくれた。ジョージ・A・ファーネス(重光葵(しげみつまもる)担当)弁護人、ベンブルース・ブレークニー(開戦時および終戦時の外相・東郷茂徳(しげのり)担当)弁護人らは、「国際法上合法である戦争で人を殺しても罪になるはずがない」「公正を期すために中立国の判事を入れよ」などと東京裁判の問題点を指摘した。

さらにブレークニー氏は「原爆を投下したものが裁く側にいる。長崎、広島に投下された原爆の残虐(ざんぎゃく)性は誰が裁くのか」という主旨の発言をしている。

アメリカ人の弁護人の一人は、最初は「やりたくない仕事を仰せつかった」と思ったが、引き受けて調べてみると、被告の無罪を確信するようになり、裁判自体が不法であると思うようになったと公開の場で述べている。

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