§4 東京裁判――日本に犯罪国家の烙印を押すために演じられた政治ショー
◆日本の戦いは自衛戦争だった――東京裁判を否定したマッカーサー発言
米国は約8千万人の日本国民を4つの島に封じ込めた。理解しなければならないのは、日本人は労働の尊厳と称すべきものを発見しており、その労働力は質的にも量的にも大変優れており、どこにも劣らないということである。だが、日本には蚕(かいこ)以外にこれといった資源がなかった。多くの資源はアジア海域にある。この供給を絶たれれば1千万人から1千2百万人が失業する――マッカーサーはこのように述べ、だから、日本が戦争に入っていった主たる目的は、securityのためであった、と証言したのである。
Their purpose, therefore, in going to war was largely dictated by security.
したがって、彼ら(日本および日本人)が戦争に入っていった目的は、
主として安全保障のため余儀なくされたのです。
連載第178回 歴史の教訓――渡部昇一・上智大学名誉教授
(h『致知』2011年10月号、p116 )
日本を占領した連合国軍の最高司令官として君臨したダグラス・マッカーサー元帥は、朝鮮戦争に際し、背後の満州への攻撃を主張してトルーマン大統領の方針と対立、昭和26年4月、最高司令官を解任された。その直後の5月3日マッカーサーは米国議会で最も権威があるとされる上院の軍事外交合同委員会に召喚され、証言した。その中で問題の証言は出てきたのである。
ヒッケンルーバー上院議員の質問に答えて、マッカーサーはこう言ったのだ。
「Their purpose, therefore, in going to war was largely dictated by security」
訳せば、「したがって、彼ら(日本および日本人)が戦争に入っていった目的は、主として安全保障のため余儀なくされたのです」となろうか。
証言の中のtherefore(したがって)は、この発言の前にマッカーサーが語ったことを受けている。それは概略、次のようなことである。
――米国は約8千万人の日本国民を4つの島に封じ込めた。理解しなければならないのは、日本人は労働の尊厳と称すべきものを発見しており、その労働力は質的にも量的にも大変優れており、どこにも劣らないということである。だが、日本には蚕(かいこ)以外にこれといった資源がなかった。多くの資源はアジア海域にある。この供給を絶たれれば1千万人から1千2百万人が失業する――マッカーサーはこのように述べ、だから、日本が戦争に入っていった主たる目的は、securityのためであった、と証言したのである。このsecurityは「安全保障」というより「生存」といったほうがより適切である、と私は思っている。
日本を占領したマッカーサーは、日本を侵略のために戦争をした悪の権化と思っていた。そして、東京裁判で日本を悪辣(あくらつ)な侵略国家として徹底的に糾弾(きゅうだん)させ、日本の骨抜きを図った。東京裁判はマッカーサーの対日観を如実に示す舞台装置だったと言っていい。そして、この舞台装置は成功した。日本人の多くは自国の歴史を恥じ、罪悪感にまみれて自分の国をとらえる心情と態度に染められた。この言葉は私がおそらく最初に使い、浸透させたという意味で、私が元祖と言ってもいいものだが、いわゆる東京裁判史観である。
ところが、東京裁判史観の発信源であるマッカーサーは、日本を占領統治する中で日本の実像を知り、考え方を変えていったのだ。それがthereforeの前提として語ったことなのである。
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