電脳筆写『 心超臨界 』

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( ヘラクリトス )

読む年表 古代~中世 《 『万葉集』成立――渡部昇一 》

2024-08-18 | 04-歴史・文化・社会
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『万葉集』の本質にかかわる大きな特徴は、作者が上は天皇から下は兵士、農民、遊女、乞食に至るまで各階層におよび、身分の差がまったく見られないことである。もちろん、男女の差別もない。地域も東国、北陸、九州の各地方を含んでいる。文字どおり国民的歌集なのである。


◆『万葉集』成立

『読む年表 日本の歴史』
( 渡部昇一、ワック (2015/1/22)、p40 )

7世紀後半~8世紀初頭
『万葉集』成立
「歌の前に万人平等」だった「言霊(ことだま)」の栄える国

山上憶良(やまのうえのおくら)は、『万葉集』に収められた「好去好来(こうきょこうらい)の歌」で、日本という国を「皇神(すめろぎ)の厳(いつく)しき国」であり、「言霊(ことだま)の幸(さき)はふ国」であると定義している。これは神話の時代から王朝が絶えることなく続き、古代から歌があり、古代語で書かれた神話があるという意味である。

『万葉集』の本質にかかわる大きな特徴は、作者が上は天皇から下は兵士、農民、遊女、乞食に至るまで各階層におよび、身分の差がまったく見られないことである。もちろん、男女の差別もない。地域も東国、北陸、九州の各地方を含んでいる。文字どおり国民的歌集なのである。

では、その選ぶ基準は何であったかといえば、純粋に「いい歌かどうか」ということだけであった。当時の観念から言えば、「言霊」(言葉に宿る霊力)が感じられるかどうか、である。言霊さえ感じられれば身分は問わない。言い換えれば、日本人は「歌の前に平等」であった。

ユダヤ=キリスト教圏においては「万人は神の前に平等である」という考え方が支配的である。教会でどれほど高い地位を占めようと、神の目から見れば法皇も奴隷も同じなのだ。またローマでは「法の前に平等である」というのを建前としていた。ローマ帝国は多くの異民族を含んでいたので、それをローマの忠実な市民とするためには公平に扱わなければならず、その基準を「法」におかねばならなかったのである。

近代の欧米諸国では、だいたいこの二つの「平等」をよりどころにして人々は生きている。毎日の生活においては法の規範に頼り、死後は神の正義に頼るのである。

ところが日本の万葉時代の人々は、言霊をあやつることについて平等だった。「和歌の前に万人は平等である」という発想がなければ、『万葉集』のような体裁はとれなかったであろう。

『万葉集』に現れた歌聖(かせい)として尊敬を受けている柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)にせよ山部赤人(やまべのあかひと)にせよ、身分は高くない。とくに柿本人麻呂は、石見国(いわみのくに)の大柿の木の股(また)から生まれたという伝説があり、これは素性も知れぬ下賤(げせん)の生まれであることを暗示している。その人麻呂が和歌の神様として崇拝されるのである。

もっとも、「大宝律令」などを経て身分制度がやかましくなってくると、あまり身分の低い者や問題のある人物の名前を出すことをはばかって「読み人知らず」とするようになる。これは言霊思想と「和歌の前に平等」という意識が緩んできたということにほかならない。

それでも、和歌の前に身分の上下はないという感覚はかすかながら生き残っていて、現在でも新年に皇居で行われる「歌会始(うたかいはじめ)」に誰でも参加できる。毎年、皇帝が歌(詩)の題、つまり「勅題(ちょくだい)」を出して、誰でもそれに応募でき、作品がよければ皇帝の招待を受けるというような優美な風習は世界中どこにもないであろう。
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