(中国銀行も入る大型ショッピングモール「ビエンチャンセンター」【2015年9月26日 東スポ】)
【各地で問題を惹起する中国の経済進出の在り様】
ラオスで中国人が襲われたという事件が報じられています。
****中国人狙った可能性、国際長距離バスに銃撃で死傷者 背景にはラオス人強制労働事件も****
中国・新華社によると、同国雲南省を出発し、ラオスの首都、ビエンチャン市に向けて運行していた国際長距離バスが23日夜、ラオス領内で銃撃され、死傷者が出た。中国人は6人が負傷したという。
ラオスでは1月に中国人が襲撃され2人が死亡、1人が負傷した。2月には武装した中国人がバナナ農園でラオス人を強制労働させていた事件が発覚した。
バスが襲撃されたのはビエンチャン県内。同県は、ビエンチャン市があるビエンチャン都の隣の行政区画。タイとも国境を接している。新華社は、中国の駐ラオス大使館も襲撃は事実として、乗っていた中国人6人が負傷し、うち2人は重体と伝えた。
銃撃により死者も出たとされるが、今のところ中国人の死亡は伝えられていない。
ラオスでは1月24日、自動車に乗っていた中国人が襲撃され、爆弾の爆発で2人が死亡、1人が負傷した。中国国際放送は襲撃したのは「正体不明の暴力組織」と伝えた。
2月13日には、ラオス北部のバナナ農園で、中国人がライフルなどで武装し、ラオス人を不当に安い賃金で強制的に労働させていたと報じられた。ラオスでは外国人の武器所持が認められていない。同農園は、農薬で周囲の土壌を汚染しているとも伝えられた。
ラオスは内陸国で、中国と国境を接している。人口は約690万人で、東南アジア諸国連合(ASEAN)の中で、シンガポールとブルネイを除き、人口が最も少ない。現在も社会主義体制で、1979年に中国と国交を断絶したが、89年に回復。最近では経済面で中国の進出が著しい。【3月24日 Searchina】
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ラオスは東南アジア諸国のなかにあっても一番情報が少ない国ですが、近年は中国の経済進出が進んでおり、そうした中国との関係強化を背景にASEANなどの会議においても、南シナ海問題などで批判の矢面に立たされがちな中国の利益を代弁するような言動も指摘されています。
****ラオスと中国は関係を強化****
ラオスへのODA(政府開発援助)は、日本が長年トップの座を維持しているが、近年は中国政府がラオスとの関係を強化し様々なODAを実施している事からも、中国は日本のトップの座を脅かす状況となっている。
ラオス政府は、このラオス・中国の友好関係を更に強化し、今後も更なるODAを受け取る方針であることを発表した。
このラオス政府の発表によると、6月末に中国の外務副大臣がラオスのビエンチャンに訪問しており、その際にラオス政府高官と実施した会談において、両国関係の更なる強化および中国から各種支援が行われる事が決定した。
中国の外務副大臣からは、両国の関係は包括的戦略パートナーシップであり、中国はラオスの発展および人々の生活改善のために様々な支援を継続して実施する方針であることが伝えられた。
ラオス政府からは、今までの支援に感謝の意を伝え、今までの伝統的に築かれた友好関係に感謝するとともに、両国関係を強化するために様々な施策を実施する方針であることを伝えた。
また、ラオスと中国は来年に外交関係樹立55周年を迎えるため、これを祝うために様々な式典などを実施することを約束した。今後も両国の首脳は相互に訪問し合い、更なる友好関係を築く事に同意した。【2015年7月1日 ASEAN PORTAL】
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****中国とラオスが鉄道建設で調印、「中国からシンガポールまで結ぶ鉄道の一部になる」=中国メディア****
中国メディアの中国経済導報は14日、中国とラオスが13日に両国を結ぶ鉄道の建設で正式に調印したことを伝え、「中国が主に投資、建設、営業を行い、中国国内の鉄道網と直接連結する」と伝え、全線にわたって中国の技術および設備が用いられると紹介した。
さらに、総工費は約400億元(約7721億円)に達し、中国側が大部分を負担することを紹介。また、中国とラオスの両国の企業が出資して共同事業体を設立することになると伝えたうえで、鉄道の総延長は418キロメートル、最高速度は時速160キロだと紹介している。
中国とラオスが鉄道建設で正式に調印したことで、両国は鉄道で結ばれることになるが、中国はラオスだけでなくタイやマレーシアなどを相互に連結させることを視野に入れ、鉄道インフラ建設を目論んでいる。
鉄道インフラは閉鎖的であるよりも、各国間で相互に乗り入れができるほうが旅客にとっても物流面においても利便性が高いのは言うまでもない。中国は自国の鉄道技術で各国の鉄道インフラを整備することで商業的な利益だけでなく、地域における影響力を拡大させたい考えだ。
中国メディアの参考消息は、中国とラオスの鉄道計画について、「中国雲南省昆明からラオス、タイ、マレーシア、そしてシンガポールまでを結ぶ全長3000キロメートルにわたる鉄道計画の一部になる」と期待を示している。【2015年11月20日 Searchina】
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そうした中国の経済進出、関係強化の一方で、ラオス国内では、必ずしも中国の進出がラオス住民の利益となっていないとの指摘や、中国が乱開発を起こしているなどと訴える声も増えています。
****中国資本に食い散らかされラオスが空洞化****
ラオスの首都ビエンチャンは今、猛烈な勢いで「中国化」が進んでいる。あちこち建設ラッシュだが、その現場のほとんどには中国語の看板が。中国企業が開発を進めているのだが、ラオスにとって利益は少ない。現地駐在員が明かす。
「下働きの作業員まで中国から連れてくるから、ラオスに金は落ちない。彼らの宿舎も中国企業がつくり、食事も中国人経営の中華料理店。そうして建設された高級マンションも中国人が買っていく。それも住むのではなく投資目的。だからビエンチャンには今、人のいないがらんどうの高級物件が増えていて不気味。こうして不動産市場に中国マネーが流れ込み、実体経済とは不釣り合いなくらい地価が上がってる。バブルだよ」
ラオスを舞台に中国人同士で金を回し合うシステムができてしまっているわけだ。そのきっかけは、2009年にビエンチャンで開催されたSEAゲーム(東南アジア競技大会)だといわれる。ラオスに詳しいジャーナリストはこう解説する。
「国力に乏しいラオスは、国際大会の開催が決まっても、スタジアム建設がなかなかはかどらなかった。そこに助け舟を出したのが中国で、巨大なスタジアムと体育館を無償で建設した。3年前にもビエンチャンでASEM(アジア欧州会議)が開かれたが、この時も中国は各国首脳が泊まる迎賓館、コンベンションセンターを無償で建設。その見返りとして中国が、首都中心部の開発権を得たといわれている」
今年に入ると、大型ショッピングモール「ビエンチャンセンター」がオープン。これも中国資本だ。高級ブランド店が軒を連ねるさまは壮観だが、客はかなり少ない。伝統的な市場で買い物をする人が多いラオスでは、高級モールはまだ需要が少ないからだ。
「値段が高すぎる。ラオスも経済成長はしているが、高級ブランド品に手が届く層はほとんどいない。誰のためのショッピングセンターなのか疑問」(前出ジャーナリスト)。大型施設をつくるだけつくって利益を得たら、あとは放置――。まるで日本のバブル時代のハコモノ行政のようなことが、ラオスで行われている。ビエンチャンだけでなく、中国・雲南省と国境を接する北部でも盛んだ。
「国境地帯に、カジノが売りのテーマパークをつくったこともある。中国国内では賭博が禁止されてるため大人気となり、中国人が殺到。それを見て売春と薬物を扱うマフィアも流入し、治安が一気に悪化した。ラオス政府もさすがにカジノの閉鎖を要請。街はゴーストタウンとなり、今でもカジノやホテルの廃虚が立ち並んでいる」と同ジャーナリスト。
インフラ整備やダム建設も、多くの案件で中国が関わっているが、果たしてどれだけ地元民のためになるのか。同じ構図はアフリカ諸国でも見受けられる。【2015年9月26日 東スポ】
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2010年タイ北部を旅行した際に、タイ・ミャンマー・ラオスが接する、いわゆる「ゴールデン・トライアングル」
を訪れ、ライス領内にある派手なカジノを眺めたこともありますが、あのカジノは今どうなっているのでしょうか?
中国の経済進出があまり地元に利益をもたらしていないこと、賄賂などの様々な悪弊を持ち込んでいること、環境破壊が進んでいることなどはラオスだけでなく、やはり中国の経済進出が著しいミャンマーなどでも報じられています。
中国のアジア諸国との関係に対する姿勢に根源的な問題がありそうです。
今回ラオスでの襲撃事件の詳細はわかりませんが、そうした中国の姿勢が惹起した事件のようにも思えます。
【ラオス人民革命党書記長交代で変化は?】
ラオスの国内政治については、3月20日に総選挙が行われていますが、ラオスはラオス人民革命党による一党独裁体制ですから、選挙で体制が変わる云々の話はありません。
****ラオスで総選挙=来月にも新政権****
ラオス人民革命党による一党独裁体制が続くラオスで20日、5年に1度の国民議会(国会、一院制)選挙が実施された。選挙を受けて4月下旬にも招集される新国会で、ブンニャン国家副主席の国家主席就任が承認され、新政権が発足する見通しだ。
国営メディアによると、国民議会選には定数149に211人が立候補した。候補者のほとんどが人民革命党員。
同党は1月の党大会で、チュンマリ党書記長兼国家主席に代わる党書記長にブンニャン氏を選出した。新国会でブンニャン氏の国家主席就任のほか、トンルン副首相兼外相の首相昇格が承認されるとの見方が強い。新政権も従来の経済改革路線を踏襲する見込み。【3月20日 時事】
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一党独裁体制ということで、“新政権も従来の経済改革路線を踏襲する見込み”ということにもなりますが、チュンマリ前党書記長兼国家主席とブンニャン新党書記長については、親中派のチュンマリ氏、親ベトナム派のブンニャン氏という若干の色合いの違いも指摘されています。【2月27日 産経より】
ベトナムが南沙諸島・西沙諸島問題で中国と利害対立を抱えていることは、3月3日ブログ“ベトナム 南シナ海での中国の強硬姿勢に「中国との微妙な関係への配慮」も変化が”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160303でも取り上げたところですが、ラオス新指導部の色合いの違いがどの程度の意味を持つものなのかはよくわかりません。