孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

南スーダン  おぞましい内戦の実態 国連施設も襲撃される 日本のPKOは?

2016-03-05 22:33:13 | アフリカ

(【2月19日 AFP】)

戦争犯罪に「レイプキャンプ」、その衝撃的な実態 「書類上の和平交渉」】
アフリカ・南スーダンに展開する国連平和維持活動(PKO)は、現在、日本が唯一参加しているPKOです、南スーダンでは現政権と反政府勢力との事実上の内戦状態、それもおぞましいレイプや残虐行為が報じられる内戦状態が続いています。

****AFP記者コラム】「レイプキャンプ」の衝撃、南スーダン内戦****
私は戦争犯罪を探して南スーダンへ行き、それに遭遇した。
話をした女性の1人、38歳のニャマイさんは、5人の子供の母親だった。

2年近く続く内戦で政府軍による直近の攻撃があった4月、北部ユニティ州の村から連れ去られた。他の何百人もの女性たちと同じように、彼女も武装した男たちに拉致され、何日間も歩かされ、常に見張られ、頻繁に縛られた。

夜になると10人もの兵士が、彼女をレイプするために列を成した。「せめて1人だけにしてほしい、みんなで来るのは止めて」と懇願した。すると、棒で殴られた。

戦乱で打ちひしがれた人々を保護する施設で、6日間にわたって行った数十のインタビューにより、誘拐と性的虐待の組織的形態が明らかになった。

少女たち、女性たちは数日、数週間、あるいは何か月にもわたって拘束されていたレイプ・キャンプでのおぞましい体験を証言した。それは私がこれまで世界各地から報じてきた中で、あまりにも衝撃的な出来事の一つだった。

■残虐行為の噂
(中略)スーダンとの国境沿い、南スーダン北部の広大な沼地と森、油田が広がるユニティ州で今年初め、今回の内戦の中でも最悪の部類に属する事件が起きた。

残虐行為の報告は、4月から9月にかけて政府軍の攻撃がまだ続いていた頃から、少しずつ漏れ始めた。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)と国連南スーダン派遣団(UNMISS)は、似た特徴を持つ襲撃について一連の警告を発していた。

女性がレイプされ、多くは複数の武装した男たちに襲われて殺され、遺体が木に吊るされていることもある。それから、子どもたち、特に少年たちが殺されている。家が放火され、時に人が中にいようとも火が放たれる。少年たちは子ども兵として、少女たちは荷物持ちとして勧誘されている。村全体が徹底的に破壊され、わずかな財産や値打ちのある家畜が略奪されている。

明らかに戦争犯罪だと思われる状況を報道するために、私はユニティ州へ行くことを希望した。(中略)

和平協定が結ばれたにもかかわらず、平和は訪れていなかった。住民たちにとって、国連の基地は何にもまして安全な場所だった。ガーナやモンゴルから来た平和維持軍が監視塔で見張り、周囲のパトロールも行っているからだ。(中略)
キャンプの住民は大多数が女性と子どもで、私が最初に話かけた女性が取材に応じてくれた。それはすさまじい内容だった。

政府軍とその同盟部族の民兵たちが彼女の村を襲撃した。7人の男性が殺害されるのを彼女は目撃した。2人は住まいにしている小屋の中で生きたまま焼かれ、5人は銃殺された。義理の兄弟も1人殺された。

隠れていたやぶの中から、女性たちが襲われるのも見た。「幼い子どもがいて逃げることができなかった女性たちが、次々と違う男たちにレイプされた。結婚している女性たちをレイプし、少女たちを連れ去った」と彼女は言った。

「何人、連れ去られたのですか?」と、私は聞いた。「私が知っているのは4人。1人は18歳、2人は15歳、もう1人は12歳だった」と返ってきた。

どこまでも続いた。テントを訪れるたびに、個々が体験した恐怖が語られた。ただし、その類似性からは、体系的に、組織的に、計画的に行われていることがうかがえた。(中略)

多くの女性たちが、野営地について語った。女性たちはそこで日中は縛りつけられ、武装した男たちに見張られ、夜は列をなす男たちに集団レイプされた。「レイプキャンプ」というしかない場所だと思った。(後略)【2015年11月20日 AFP】
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あるいは、下記のようなニュースも。

****南スーダン軍、民間人50人をコンテナ詰めで窒息死させる*****
2年にわたり内戦が続く南スーダンで、政府軍が民間人約50人を運搬用のコンテナに詰め込み窒息死させたと、停戦監視機関がアフリカ連合(AU)へ提出した報告書で明らかにした。(中略)

南スーダンでは金属製コンテナが仮設の刑務所としてしばしば用いられている。戦闘が起きているユニティ州北部では、日常的に気温が40度を超える。

報告書では他にもレイプや殺人、国連(UN)の運搬船の捕捉や略奪といった犯罪が挙げられている。

南スーダンでは昨年8月に和平協定が結ばれたにもかかわらず戦闘が続いており、書類上の和平交渉を気にも留めない複数の民兵部隊が、各地域の問題や復讐を動機として戦闘に加わる状況になっている。【2月2日 AFP】
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4万人が餓死の危機
直接の戦争被害だけではありません。
こうした内戦状態は、当然のように生産活動を停滞させ、食糧難・飢饉を招きます。しかし、援助も戦争状態では充分に行えません。

****南スーダン、4万人が餓死の危機 国連が報告書で指摘***
国連(UN)は8日、南スーダンの紛争地域が飢饉(ききん)の瀬戸際にあり、少なくとも4万人が餓死の危険性に直面しているとする報告書を発表し、同国で対立を繰り広げる諸勢力に協力を訴えた。

報告書は、2年以上にわたり内戦が続き、食料の輸送路の閉鎖など、残虐行為や戦争犯罪が横行する南スーダンの状況が最悪のレベルにあると指摘している。

国連食糧農業機関(FAO)、国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)、および世界食糧計画(WFP)は、共同で発表した声明の中で、状況は「悪化して」いるとした上で、「人口の25%近くが緊急の食糧援助を必要としており、少なくとも4万人が危機的な状況にある」と述べた。

ユニセフ南スーダン事務所のジョナサン・ベイチ代表は、「援助を最も必要としている地域の多くは、治安の問題で支援の手が届かないため、制限なくアクセスを確保することが急務だ」と述べている。【2月9日 AFP】
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実現しない統一政府
今年1月には「統一政府」が樹立される・・・という話がありましたが、未だ実現していません。

****南スーダン 統一政府実現のめどたたず****
アフリカの南スーダンでは、政府軍と反政府武装勢力との間で和平協定が締結されたあとも各地で武力衝突が続いていて、統一政府を樹立するはずの期限であった22日を過ぎても実現のめどはたっておらず、多くの市民が飢えや命の危険にさらされています。

南スーダンでは、キール大統領が率いる政府軍と、前の副大統領を支持する反政府武装勢力との間で激しい武力衝突が続き、去年8月に和平協定が締結されたあとも各地で衝突が繰り返されています。

22日には、和平協定に基づいて統一政府を樹立する期限を迎えましたが、大統領側が一方的に州の数を増やし知事を任命したことに反政府勢力側が反発し、実現のめどはたっていません。

国連によりますと、南スーダンでは、2年におよぶ激しい武力衝突によって数千人が殺害され、240万人が家を追われるとともに、深刻な食糧危機が広がっています。

さらに国連人権高等弁務官事務所などによる21日付けの報告書では、戦闘に伴って、虐殺や、女性への性暴力が相次いでいるうえ、多数の子どもが少年兵として戦うことを強制されるなど、重大な人権侵害が起きていると指摘されています。

現地では、日本の陸上自衛隊も参加して国連のPKO=平和維持活動が展開していますが、国民をないがしろにして紛争が続くなかで、多くの人たちが飢えや命の危険にさらされています。【1月24日 NHK】
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実質的な停戦に向けて若干なりとも期待が持てる話としては、キール大統領が反乱軍を率いてきたマシャール前副大統領を副大統領職に再任命したということがあります。

****<南スーダン>停戦期待 反乱軍トップ、副大統領に再任命****
政府と反乱軍との内戦状態が続いてきたアフリカ東部・南スーダンで11日、キール大統領が反乱軍を率いてきたマシャール前副大統領を副大統領職に再任命した。国営テレビが伝えた。2年以上続いてきた内戦状態に完全な終止符が打てるか期待される。

2011年7月にスーダンから分離独立した南スーダンでは、キール氏が13年7月にマシャール氏の副大統領職を解任。同年12月に首都ジュバで政府軍とマシャール氏を支持する反乱軍との戦闘が勃発した。

その後、キール氏の出身民族ディンカ人と、マシャール氏のヌエル人との民族対立に転化され、戦闘は各地に拡大。難民・避難民は200万人以上になったとされる。

その後、政府軍と反乱軍はたびたび停戦に合意しながら戦闘が収束しなかった。しかし昨年8月の停戦協定調印以降、協議を進め、解決を模索していた。

今回の副大統領職再任命について、マシャール氏は米政府系放送「ボイス・オブ・アメリカ」の取材に「(停戦)合意実現のために大きな一歩を踏み出した(キール)大統領に対し、まずは感謝したい」と好意的な受け止めを表明した。

マシャール氏の政府「復帰」をきっかけに、政府側と反乱軍側の権力分担が進めば、内戦の完全終結につながる可能性が出てくる。【2月13日 毎日】
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両者の“手打ち”で是非とも内戦の完全終結に向けて動き出すことが望まれますが、これまでも何回も「和平」の話には裏切られてきているので・・・・。

国連施設が襲撃され、難民保護に失敗
政府軍も反政府軍も非人道性では同じように信用できないなかで、“住民たちにとって、国連の基地は何にもまして安全な場所”のはずですが、それすらも揺らいでいます。

先月、国連が管理する避難民キャンプが武装集団に襲撃される事態となっています。施設内における異なる部族間の衝突という報道もありましたが、やはり外部からの襲撃であったことを国連が認めています。

****2月の南スーダン避難民キャンプ襲撃、国連が報告書 死者25人に*****
南スーダンにある国連の民間人避難施設が先月17~18日に襲撃された事件について、国連は4日、政府軍の軍服を着用し、銃で武装した集団による襲撃と放火だったと述べ、少なくとも25人が虐殺され、120人が負傷したと発表した。

2日間にわたる襲撃があったのは、南スーダン北東部マラカル)にある避難民キャンプ。国連人道問題調整事務所(OCHA)は、平和維持部隊がキャンプに避難している民間人の保護に失敗した詳細についての報告書を出した。

同キャンプでは、2013年12月の内戦勃発後に避難してきた4万7000人以上が避難生活を送っていた。国連は、今回の攻撃について戦争犯罪の可能性があると述べている。

OCHAは、政府軍の軍服を着た部隊がキャンプを襲撃して「民間人に発砲した」という報告は「信頼できる」と表明した。これに先立ち国連は、戦闘は部族間の「若者」の間で起きたものだったとしていた。

また、OCHAは「戦闘と火災により約3700世帯の仮設住宅と、医療施設や給水車、栄養センター、学校などの人道支援施設が破壊されたり、損傷を受けたりした」と述べた。

同キャンプで避難生活を送っている人々は、襲撃で46人が死亡したと述べている。国連は死者を18人としていたが、今回25人に修正した。

支援活動従事者3人も死亡したが、そのうち2人は国際医療支援団体「国境なき医師団(MSF)」の南スーダン国籍の医療スタッフだった。【3月4日 AFP】
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難民保護の失敗に関する報告がなされるまで半月も要したというのも理解しがたいところです。
施設を守っていたはずのPKO部隊は、襲撃を許したことはともかくとして、事後にどのような報告を国連に行ったのでしょうか?

PKO部隊の“質”にも問題がありそうです。
国連は、コンゴなどアフリカで活動するPKO部隊の要員による性的暴行疑惑が相次いでいる問題で、2015年の被害申し立てが69件に上り、関与したとされる兵士らの出身国は21か国にまたがるとする報告書を3日までにまとめ、「深い懸念」を示しています。

関与が疑われる兵士の出身国の多くはアフリカ諸国ですが、カナダとドイツの警察官、モルドバとスロバキアの兵士らも含まれているとか。

日本 「駆けつけ警護」は参院選後
こうした状況のなかで、国連は“日本への期待”を表明しています。別に、日本に武力による治安維持を期待するという話ではなく、G7や国連安保理で南スーダン問題を取り上げて欲しいという意味の“期待”のようです。

****<南スーダン>国連の副人道調整官、日本への期待を表明****
国連のスー・ラウツィ南スーダン副人道調整官が、東京都内で毎日新聞の取材に応じ、内戦状態が続く南スーダンについて「主要7カ国(G7)やアフリカ開発会議、国連安全保障理事会で南スーダン問題を取り上げてもらいたい」と日本への期待を表明した。

南スーダンには国連平和維持活動(PKO)部隊の国連南スーダン派遣団(UNMISS)が展開。ラウツィ氏は「人道支援活動はPKOと密接な関係にある」と述べ、「PKO部隊の青いヘルメットを見ると『守られている』と安心する」と強調した。

UNMISSには自衛隊の施設部隊約350人も参加しており、首都ジュバでの道路建設や国連施設に避難した住民のための敷地整備などをしている。ラウツィ氏は「自衛隊の活動も住民らに安全を提供している」と語った。

南スーダンは2013年12月、政府と反政府勢力による内戦に突入。昨年8月に和平協定が締結されたが、その後も全土で戦闘が散発している。国民の半数に当たる約610万人が人道支援を必要とし、難民・国内避難民は計約235万人に上る。【2月29日 毎日】
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南スーダン情勢は上記のように“内戦の混乱”にあると言え、実際、PKOに参加する自衛隊も緊張を強いられる場面もあったように報じられています。

安倍政権は、昨年成立させた安全保障関連法で、自衛隊のPKOでの任務や武器を使用できる範囲を大幅に広げ、自衛隊部隊が「文民保護」のために武器を使用することも可能としています。

しかし、参院選までは国民世論を刺激するような新たな対応は控える方針のようです。
南スーダンについては、「武力紛争が発生しているとは考えていない」とも。

****武器携える新任務、先送り 安保法3月施行予定****
「情け容赦ない戦闘が続き、当事者は伝統的避難所、国連の基地まで攻撃している。まさに内戦が続いている」
2月4日の衆院予算委員会。共産党の志位和夫委員長は、南スーダン情勢について1月21日に国連人権高等弁務官事務所などが発表した報告書を引用し、安倍政権の姿勢をただした。

岸田文雄外相が「武力紛争が発生しているとは考えていない」と答弁すると、志位氏は「政府軍と反政府軍がともに民兵を動員し、区別がつかない。自衛隊が戦後初めて殺し殺されるという危険が現実になると強く危惧している」と指摘した。

日本は1992年以降、カンボジアや東ティモールなど13のPKOに自衛隊員ら延べ1万人以上を派遣。停戦監視や道路整備などで実績を積んできた。

ただ最近のPKOは、こうした伝統的な任務から、文民保護のために武器使用も辞さない「積極的PKO」に変容している。南スーダンPKOもこうした流れの中にある。

安倍晋三首相は4日の衆院予算委員会で「PKOの変化を踏まえ、我が国は世界の平和と安全に一層取り組んでいく」と答弁し、積極的PKOへの参加に前向きな姿勢を強調した。ただ、積極的PKOに関わっていくことは、それだけ自衛隊の危険が増すことになる。

昨年成立した安保法により、自衛隊のPKO派遣部隊の任務に「駆けつけ警護」が新たに加わる。宿営地から離れた場所で武装勢力に襲われた民間人や他国軍兵士を武器を持って助けに行く任務だ。自衛隊が武器を持って検問や巡回に当たることも可能にした。

つまり、安保法が適用されれば、南スーダンPKOの自衛隊部隊が「文民保護」のために武器を使用する可能性が出てくる。事実上の内戦状態の中で、自衛隊の任務や武器使用の範囲が広がれば、それだけ隊員らの危険は高まる。

安倍首相は昨年、「訓練を含めた対応体制を早急に整備するためにも、一日も早い法制の整備が不可欠」と主張。「時間をかけて議論すべきだ」との根強い世論の反対を押し切って安保法成立を急いだ。しかし、南スーダンに派遣した部隊への対応は、首相の言葉とは違っている。

安保法にはなお世論の反対が残る。野党は今国会で安保法廃止法案を提出した。そうした中で南スーダンの部隊が安保法に基づく新たな任務につけば「安全保障問題に注目が集まり、この夏の参院選の結果に影響する」(政府関係者)。安保法は3月末に施行される予定だが、安倍政権は新たな任務を南スーダンで行うのは、参院選後まで先送りする方針だ。【2月21日 朝日】
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「“政治”というのはこういうものだ」と言えばそれまでですが、本当に国民に問うべきことは、なるべく目立たないように・・・というのは・・・・。

私個人としては、安全保障関連法を推し進める安倍政権の姿勢全般には違和感も感じていますが、ただPKO活動に限定して言えば、誰かが住民保護のために武器を手にする必要があるのであれば、日本だけがその責任を免れることは許されないと思いますし、それによってPKO参加部隊に犠牲が出ることもやむを得ないと考えています。

混乱する国際社会において人間としての責任を果たそうとすれば、「誰も殺さないし、誰も殺されない」という訳にはいかないのではないでしょうか。
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