孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

シリア停戦で「目に見える成果」も 和平協議再開は再延期 望まれる和平に向けたアメリカの強い姿勢

2016-03-08 22:16:03 | 中東情勢

(3月3日 アレッポ 夜間営業の店が増加 【3月5日 AFP】)

【「停戦はおおむね保たれている」(デミストゥラ特使)】
シリア・アサド政権、反体制派の双方は2月27日から停戦に入ってから10日以上が経過しました。

停戦当初は、互いに相手の「違反行為」に関する非難合戦もありましたが、ここにきて停戦状態に関する記事をあまり目にしません。

「無沙汰は無事の便り」とも言いますが、停戦違反の衝突に関する目立った記事がないということは、概ね状況は落ち着いているということではないでしょうか。

非常に単純な推察ではありますが、それぞれの停戦及び今後への思惑はいろいろあるにしても、激しい内戦を続けてきた政権側も反体制派側も、正直なところ出口の見えない戦闘に「疲れている」のではないでしょうか。
思惑はいろいろあるにしても、表向きの発言は異なるにしても、「ちょっと休みたい」という誘惑には逆らえない・・・ということでは?

ロシアの「テロリスト」空爆を名目にした反対派空爆がつづくことで、停戦の実効性が疑問視されていましたが、ロシアにしても空爆続行は大きな負担となっています。

“実はプーチンは焦っていた。ロシア軍は西部ラタキア空軍基地から週に約510回ものペースで出撃していたが、
こうした大攻勢は数力月が限界だ。”【3月8日号 Newsweek日本版】

「疲れている」「ちょっと休みたい」というのは換言すれば、また、非常に楽観的なもの言いをすれば、和平協議に関して「機が熟しつつある」ということでもあるでしょう。

脆弱な「停戦」ではありますが、「目に見える成果」も出ています。

****犠牲者数、大幅減か=支援届かず不満も―シリア停戦1週間****
内戦が続くシリアでアサド政権と反体制派が一時停戦に入ってから5日で一週間。停戦前に比べて市民が巻き添えになるケースは大幅に減少したとみられる。

一方、人道支援が円滑に進まないなど市民への恩恵は必ずしも行き渡っておらず、内戦が収束に向かうめどはなお立っていない。

シリア各地での停戦は、米ロの呼び掛けに応じる形で2月27日に始まった。停戦違反の攻撃や衝突の情報は多数確認されているものの、以前に比べて規模は縮小している。内戦の和平仲介役を務める国連のデミストゥラ特使は3日、「停戦はおおむね維持されている」と語った。

在英のシリア人権監視団によると、2月27日から3月4日までの7日間で民間人87人が死亡。このうち、停戦の枠組みに入っていない過激派組織「イスラム国」(IS)の支配地域を除く死者は30人だった。

停戦直前の2月26日は1日で民間人63人が命を落としたとされ、監視団は一般市民の犠牲者数が「大きく減少した」とみている。【3月5日 時事】 
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1日50~60日だった民間人犠牲者が7日間で87人ということであれば、単純計算で300人前後の命が停戦で救われたことにもなります。

市民生活も一息ついているようにも。

****夜間営業の店が増加、シリア停戦発効後****
シリアで先月27日に発効した停戦が7日目に入った。政府軍の管理下にある北部アレッポでは、比較的安全になったことで、あえて夜間に外出する住民の需要が増え、飲食店や商店が遅くまで営業するようになっている。【3月5日 AFP】
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いかにシリア国民の命と生活を守るかという視点で進めたい和平協議
今後の展開に保証がない「停戦」、あるいはロシアペースで進む状況に不満の声もありますが、こうした成果は非常に大きなものであり、なんとしても更に成果を膨らませる方向で取り組んでもらいたいものです。

敢えて言えば、その結果どこかの国が、あるいは勢力が「点数を稼いだ」「得をした」ことになったとしても、救われる命の大きさ比べれば些末なことに思えます。

重要なのは国家間・勢力間のパワーゲームではなく、いかにシリア国民の命と生活を守るかという視点です。

充分に進んでいない人道支援に関しては、ロシアが軍事基地利用を申し出ています。
もちろん、印象をよくするためのパフォーマンスではありますが、結果的に人道支援が進むのであれば結構な話です。

****軍事拠点の使用認める=シリア人道支援でロシア****
ロシア国防省は7日の声明で、シリアでの国際人道支援を促進するため、同国内にあるロシアの軍事拠点の使用を認める方針を明らかにした。

声明によると、人道支援物資の積み下ろしや一時保管の場所として、ロシアはシリア西部のタルトゥス海軍基地や北部のラタキア空軍基地を開放する。物資輸送のために車両を提供する用意もあるという。【3月8日 時事】
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こうした行為を冷やかに眺めるのではなく、敢えてその申し出に応じて人道支援の共同作業を行うことで、少しでも信頼が醸成されるように努めるべきでしょう。

再延期された和平協議再開 「アサド退陣など、どうでもいい」なら、その方向で和平を現実のものに
この停戦状態をより恒久的なものにつなげていくための肝心の和平協議は、1月下旬に始まりましたが、本格的な協議に入らないまま中断しています。政権側は「テロ組織」と「反体制派」を明確に区別するよう要求。反体制派は協議入りの前に政権側が空爆や包囲戦術をやめるよう求めています。

当初、3月7日の再開を目指していましたが、双方の参加準備のために一旦9日に延期されました。
そして、更に延期が発表されています。

****シリア和平協議の再開延期・・・国連特別代表****
シリア内戦の和平協議を仲介するデミストゥラ国連シリア特別代表は5日付のアラブ圏紙アル・ハヤトで、9日に予定されていた協議再開が延期されるとの見通しを示した。

関係者の現地入りが9〜14日になるため、再開は早くても「10日になる」という。(後略)【3月6日 読売】
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動き出すのは来週以降ではないでしょうか。それでも動き出せばいいのですが。また、それまで停戦が続けばいいのですが。

その際重要なことは、先述のように、国家間・勢力間のパワーゲームではなく、いかにシリア国民の命と生活を守るかという視点ですが、現実政治の視点からしても、リビア・エジプト・イエメンなどの現状を考えれば、アサド政権抜きの今後のシリア政治の安定はあり得ないところでしょう。

そうした認識は欧米の本音ともなってきており、もはや「アサド退陣など、どうでもいい」ことにもなりつつあるとも指摘されています。

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(ロシアの)怒濤の外交攻勢で、シリア内戦の焦点だった「アサド退陣」はうやむやとなった。

アラブの春は既に輝きを失い、選挙で選ばれた政権を倒したエジプトのシシ政権への国際社会の非難も聞かれなくなった。欧米にとって、アサド退陣は今や「どうでもいいこと」になりつつある。

反政府派は政治的にも軍事的にも完全に力を失っているし、ISISにとってはアサドがいてもいなくても、シリア政府が敵であることに変わりはない。【前出 Newsweek】
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それならそれで構いません。その線で和平を実現させることに取り組むべきです。
従って、今後の和平協議にあっては行うべきことは、勢いづくアサド政権側に、今後の国民和解に向けた方向での制約を科すこと、反体制派については、戦闘行為ではなく政治参加の方向でやっていく道筋をつけてやることでしょう。

もちろん反体制派が簡単に納得するとは思えませんが、もはや引導を渡す時期でしょう。あくまでもアサド排除を目指した戦闘にこだわるなら、ISやヌスラ戦線などと同等にシリアの平和を脅かす存在と見なすと強く迫るべきでしょう。

サウジアラビアやトルコは反対するでしょうが、アメリカが和平の枠組み構築に向けて強い姿勢を見せれば、それに逆らって独自に地上軍を派遣する等の作戦はとれないでしょう。

アサド政権に非人道的行為があった・・・というのは事実ですが、戦争・内戦以上に非人道的行為はありません。
闘い自体が自己目的化したような戦闘・内戦を継続するのは、愚かしく罪深いことです。
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