孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イギリス  EU離脱か残留か キャメロン首相、イギリスの将来をかけた大勝負は6月23日

2016-03-10 22:18:31 | 欧州情勢

(やや古いデータではありますが、高齢者ほどEU離脱派が多いという傾向が明確です。イギリスの将来が自分の問題となる若い世代は残留を希望しているようです。【http://zhivago.xsrv.jp/fxblog/post-767】)

英残留のために、EU側は譲歩
イギリスのEU離脱を回避するためキャメロン首相が要求していたEU改革案に関する会議は異例のマラソン会議となりましたが、概ねキャメロン首相の要求をいれるかたちで話がまとまりました。

合意では、移民が大量流入したときに社会保障給付を最大4年間制限する緊急措置や、ユーロ圏の救済で非ユーロ国が負担を受けないことなどが盛り込まれました。

イギリスに多くの移民を送り出している東欧諸国の強い抵抗はありましたが、EUとしてもイギリスの離脱を傍観する訳にもいかないし、キャメロン首相としてもEUへの不満を募らせる国民しめせる成果が必要ということでの、ギリギリの選択でした。

****<EU>改革案に首脳会議30時間「英国とどまってほしい****
欧州連合(EU)からの離脱を問う英国民投票を巡るEU改革案は約30時間という異例のマラソン首脳会議で合意を得た。

背景には、「統合を失ってはEUにも英国にも敗北になる」(トゥスク欧州理事会常任議長=EU大統領)との強い危機感がある。そのため、児童手当の減額措置など細部にまで気を配った協議が延々と続くことになった。

首脳会議は18日夕方に始まったが、各国が意見表明した後、難民問題の協議で中断。19日未明から、キャメロン英首相と各国の2国間協議が明け方まで続いた。19日の朝食会で結論を出すはずだったが、予定は遅れ続けた。最終合意は結局、協議開始から約30時間後の午後11時過ぎだった。

EUでは、社会福祉制度は統合の課題にはなっていないうえ、児童手当などの細かい措置は担当大臣や官僚のレベルで協議するのが常識だ。しかし、今回は例外的に首脳自身が細部にわたって協議にあたった。

会議後に記者会見したメルケル独首相は、「キャメロン首相は議会や政府を説得しなければならない。英国にEUにとどまってほしい」と、英首相の立場に立って努力した事情を説明した。

EUからの移民への福祉サービスの受給制限で実害をこうむる東欧諸国も強い抵抗は示さず、「終始協力的な姿勢」(東欧外交筋)で交渉にあたった。

キャメロン首相自身は、EUへの残留を「英国の利益になる」と支持しているが、与党・保守党にはEU懐疑派が少なくない。さらにEUからの離脱を唱える独立党も伸長しており、キャメロン首相は板ばさみになっている。こうした事情から他の加盟国は最大限の配慮をした模様だ。【2月20日 毎日】
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“加盟国の最大限の配慮”によって、キャメロン首相は「英国はEU内で特別な地位を得た」と強調していますが、EU懐疑派を説得できるかは不透明です。

****EU首脳会議、合意でも残る英離脱の火種 キャメロン英首相「特別な地位得た」と残留訴え****
約30時間に及ぶマラソン協議となったEU首脳会議を終えて帰国したキャメロン英首相は20日午前、緊急閣議を開き、EU改革案をめぐる合意で「英国はEU内で特別な地位を得た」と強調した。だが、6月にも行われる国民投票の行方は予断を許さず、EU分裂への不安は消えない。

首脳会議では、焦点だった移民に対する社会福祉抑制策について、英国に多くの移民を送る東欧諸国が反発したが、社会保障給付を最大で4年間制限する緊急措置に加え、最終的に緊急措置を認める期間を7年間とする英国の要求を全面的に受け入れた。

子供手当についても、移民の子供が母国に居住する場合、母国の生活水準に合わせて減額する措置も英国の要求通り可能とした。

キャメロン首相は首脳会議後の記者会見で「EU内で英国に特別な地位を与えた。EU残留を(国民に)勧めるのに十分だ」と成果を強調。「英国は改革されたEUの中でより強く安全になる」と訴えた。

キャメロン首相は20日の緊急閣議で合意内容を閣僚に説明し、22日に議会で報告するとともに、いずれかの段階で国民投票の実施を発表する。英メディアでは6月23日の実施が有力視されている。

しかし、今回の合意が国民投票でEU残留派の追い風になるかは不透明だ。

キャメロン首相側近のゴウブ法相やジョンソン・ロンドン市長などEU離脱派には、EUが改革されてもされなくても無関係に離脱を望む強硬派もいるためだ。

最大の争点である移民問題に関しては、離脱を目指す団体「リーブEU」が、離脱で英国がEU諸国との国境を管理できれば、移民が激減すると主張。これにより英国人に仕事が回り、学校や病院など社会福祉負担も軽減され、サービスが向上すると訴える。

BBCによると、英国は2013年、EUに対し、08年比で4倍以上となる約113億ポンド(約1兆9000億円)の負担金を支払った。これを医療に回せば社会福祉を充実できる、との意見もある。【2月20日 産経】
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不透明な先行き 与党内・閣内にも多くの離脱派
国民投票は6月23日に行われることがすでに発表されています。
2月行われた6つの世論調査によりますと、EU残留支持は平均51%、EU離脱支持は平均49%で、ほぼきっ抗しています。

EU離脱派の急先鋒、英国独立党(UKIP)のファラージュ党首は「6月23日を独立記念日に」と気勢をあげています。

****反EUの英党首、離脱主張「6月23日を独立記念日に****
欧州連合(EU)残留の是非を問う国民投票を6月23日に行う英国で、離脱を掲げる英国独立党(UKIP)のファラージュ党首は27日、英中部スランディドノで開かれた党大会で演説し、「6月23日を独立記念日にしよう」と訴えた。

英BBCなどによると、ファラージュ氏は移民問題に焦点を当て、「大量の移民流入は私たちの生活や社会のまとまりにとって良くない」と主張。

パリのテロ事件や独西部ケルンで難民申請者らが起こした集団暴行事件に触れ、「こうした事件を防ぐ最善の策は、EUを離脱して国境の管理権限を取り戻すことだ」と述べた。

一方、キャメロン首相の腹心のオズボーン財務相は27日、主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で訪れた中国・上海でBBCのインタビューに応じ、「EUを離脱すれば世界経済を揺るがす。国民の雇用と暮らしにかかわる深刻な話だ」と残留を呼びかけた。【2月28日 朝日】
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ただ、キャメロン首相にとって最大の難関は、英国独立党(UKIP)のような外部の存在ではなく、与党・保守党内部に多いEU離脱派でしょう。

****ロンドン市長、EU離脱に傾く 国民投票でキャメロン首相に逆風 与党内での対立さらに険しく****
ロンドンのジョンソン市長は21日、欧州連合(EU)から離脱が英国には有利だとして、6月23日に行われ、EU残留か離脱かを問う国民投票に向け、離脱派の運動に加わることを明らかにした。

人気が高く次期首相候補と目される保守党の有力者だけに、離脱派への合流を牽(けん)制(せい)していた同党党首キャメロン首相のEU残留戦略に逆風となりそうだ。

市長は記者団に、キャメロン氏がEUとの交渉の末に引き出した合意を評価したが、EUの抜本的改革には至らないと批判。苦渋の選択だが、離脱の方がEUに委ねた立法や司法権限も取り戻せ、財政的にも有利だと語った。

与党保守党には、ゴーブ司法相やビリアーズ北アイルランド相ら閣僚数人を含め、離脱に賛成する議員が多い。ジョンソン市長が離脱派に加わったことで、下院で単独過半数を占める保守党の対立がより厳しさを増し、国民投票の行方が一層混とんとしそうだ。

野党の右派の英独立党は離脱を訴えている。【2月22日 産経】
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エリザベス女王は離脱派?】
ここにきて、エリザベス女王もEU離脱を希望している・・・という話が大衆紙にスクープされ話題となっています。
もちろん王室側はそうした政治関与を否定し、新聞業界の自主規制審査機関に不服申し立てを行うという異例の展開となっています。

****<英王室>大衆紙サン報道、異例の不服申し立て****
英王室は9日、英大衆紙「サン」が欧州連合(EU)からの英国の離脱の是非を巡り、「女王が離脱を支持」とした報道に対して、事実と異なるとして、新聞業界の自主規制審査機関「独立新聞基準組織」(IPSO)に不服申し立てを行った。英王室が報道に対して不服申し立てを行うのは極めて異例。

サンは9日付の1面で、匿名の関係者の話として、エリザベス女王が2011年にEU残留派のクレッグ副首相(当時)と会食した際、「EUは誤った方向に進んでいる」と副首相を叱責。同席者はがくぜんとしていたと会食の様子を報じた。

英BBCなど英メディアによると、英王室の報道官は「女王は過去63年間続けてきたように、政治的に中立だ」との声明を発表。クレッグ氏は自身のツイッターで「ばかげた報道だ。そのようなことがあれば覚えているが、記憶にもない」と否定した。一方、サンの広報担当者は「確実な2人の情報源を基にしている」と反論している。

英国ではEUの離脱の是非を問う国民投票を6月23日に実施予定で、連日のように離脱や残留を巡る動きが報じられている。

IPSOは14年に設立された新聞業界の自主規制組織で、報道に関する苦情の受け付けや調査を行う。業界からの独立性が問題視された報道苦情委員会(PCC)の後を継ぎ、外部の有識者を幹部にまじえ結成された。

英王室がIPSOに不服申し立てを行うのは初めてだが、前身のPCCには、08年にフィリップ殿下の健康状態に関する報道に対して不服を申し立てている。【3月10日 毎日】
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スコットランドの独立の是非を問う住民投票に際しては、エリザベス女王は「スコットランドの人々が将来について慎重に考えるよう望んでいる」と述べ、王室の政治的な中立性を損ねることなく反対派の支持を暗に表明する発言だと受け止めれていました。

ドラマや映画などを観ると、対外的にはともかく、英王室は内々では相当に明確な政治的発言を行っているようにも表現されています。日本の皇室については・・・よその国の王室よりわかりません。

オランド大統領はイギリスを牽制
話が横道にそれました。イギリスのEU離脱問題です。

フランス・オランド大統領は「脅迫したくないが、真実を言う」とした上で、難民問題でEU離脱がイギリスに深刻な影響を与えかねないと牽制しています。

****仏、EU離脱なら「移民が英国に押し寄せる」と牽制****
フランスのオランド大統領は3日、キャメロン英首相と仏北部アミアンで会談し、移民・治安問題で協力を推進することで合意した。オランド氏は共同記者会見で、英国が欧州連合(EU)を離脱すれば2国間協力にも「影響が出る」とし、EU残留の是非を問う6月の国民投票を前に英国内の離脱派を牽制(けんせい)した。

両首脳は、英国を目指す移民らが集まる仏北部カレーのキャンプ周辺の安全対策や移民らの収容などのため、英側が約2千万ユーロ(約25億円)を追加支援することで合意。次世代型無人機の共同開発への投資といった軍事協力も決めた。

キャメロン氏は「テロや治安、国境(対策)に関しては、われわれはEUにとどまる方が強い」と強調。オランド氏は「脅迫したくないが、真実を言う」とした上、英国が離脱すれば、「移民への対処を含め、多くの分野で影響が出るだろう」と述べた。

両国間では英仏海峡トンネルなどを通じた移民らの英国への流入抑制のため、カレーなど仏領内に英国の国境警備を配置することを認める協定を締結。キャメロン氏はEU離脱はこの協力に影響を及ぼすと訴えており、オランド氏もその主張を後押しした形だ。

英仏の協力は2国間協定だが、英国がEUを離脱すれば問題が生じる可能性があると英メディアは報道。マクロン仏経済相は3日の英紙で、「(離脱すれば)カレーに移民はいなくなるだろう」と述べ、移民らが英国に押し寄せる可能性を強調した。【3月4日 産経】
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誇り高い英国優位の反欧州意識が根底に
イギリスでEU離脱が強く意識される背景には、移民問題などの具体的問題の存在もさることながら、歴史的にも「大陸」と一線を画してきたイギリス人の意識があるように思えます。

****大陸のルールには従いたくない」・・・EU譲歩でも満たされぬ英国人の大国主義 ロンドン支局長・岡部伸****
近頃英国に流行るものは、「Brexit」(ブレグジット)騒動だろう。Britain(英国)とExit(出る)を組み合わせた英国の欧州連合(EU)離脱のことで、離脱の是非を問う国民投票を6月23日に控え、議論が白熱している。

「改革した欧州にとどまる方が、英国は、より強く安全で豊かになれる」
EU首脳会議が残留を後押しする改革で合意したのを受け、キャメロン英首相は残留の旗を振る。合意ではEU側が譲歩して英国は移民抑制策などで「特別な地位」を得た。

それでも英国は満たされない。与党・保守党の次期首相候補とされるジョンソン・ロンドン市長が離脱支持を表明するなど離脱派が勢いを増し、残留に懸念の声が上がっている。

Brexitは世界経済のリスクにもなりかねない。しかし多くの英国人がBrexitが引き起こす混乱に気づいていないようだ。なぜ満足できないのだろうか−。

「Fog in the channel continent isolated」(海峡から濃霧 大陸から孤立)

かつてドーバー海峡に霧が立ちこめた際、高級紙タイムズがこう報じたことはよく知られている。霧がよく似合う英国では濃霧によって大陸(欧州)から切り離されるイメージが英国人に安堵感を与える。欧州と一緒にはなりたくないとの強い民族感情があるからだ。誇り高い英国優位の反欧州意識こそBrexit騒動の根底にあるように思える。

離脱を目指す英独立党(UKIP)が支持を広げ、保守党内でもEU懐疑論が強まる背景には、人の移動の自由を原則とするEUルールで東欧諸国から大量の移民が流入し、「雇用や福祉が不当に奪われている」という英国民の反欧州意識がある。EUの規制は過剰であり、「主権侵害」との批判も根強い。

歴史をひもとくと、分かりやすい。15世紀の百年戦争以来、英仏は19世紀に3回にわたって干戈(かんか)を交え、20世紀前半にはドイツと2度の大戦を経た。生活様式や価値観など欧州大陸より米国や豪州など旧植民地に親しみを感じる人も少なくない。

英国民には大英帝国として世界に君臨した誇りから、「自国だけでやっていける」との思いが強い。このため国民の多くが欧州統合への動きに一定の懐疑を抱いてきた。

英国がEUの前身、欧州共同体(EC)に加入したのは原加盟国に遅れること約20年。EUの中でも英国は初めから大陸諸国から一歩退いた「独自の立ち位置」を取り続けてきた。

単一通貨ユーロを導入せず、自国通貨ポンドを維持。EU域内でビザなしで移動できる「シェンゲン協定」に参加していない。国境撤廃や共通通貨導入など国家の根本で統合されることは避けてきた。独自の立ち位置は、英国が国家としての独立を重視しながらEUの意義を認めた折衷案であった。

いつしか国民の間では「EUと一線を画す」精神が共有されてきた。裏返せば「大陸のルールには従いたくない」という国民感情だ。輸出入の半分以上を依存する欧州大陸と断絶しては存立しないことを理解しながらも欧州とは一緒になりたくない。

もう一つ英国には不満がある。EUで独仏が主導権を握ることに我慢がならない。そもそも「統一ヨーロッパ」はチャーチル元首相の構想だった。ここには7つの海を制しながら衰退した挫折感や大英帝国を懐かしむ大国主義の名残が見え隠れする。

離脱回避の鍵は英国民が反欧州意識を払拭できるかどうかにかかっているように思えてならない。【3月7日 産経】
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「Brexit」のイギリス・EUへ与える影響については様々な考えがありますが、そもそもEUが形成されたのは政治的・経済的影響力を失いつつある欧州が共同体となることで一定の力を維持しようというところにあった訳で、そこから離れて孤高と道を選択するというのは「ジリ貧」の選択のように思えます。

欧州とは一線を画してイギリスだけでやっていけるというのは・・・ちょっと違うようにも。

なお、イギリスがEU離脱を選択した場合、EU残留を希望しているスコットランド独立派が独立問題を再燃させることも懸念されています。
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