孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

日中関係  反日の逆風のなかで続けられる中国市場重視の日本企業努力

2012-11-23 21:57:55 | 中国

(15日深夜 北京の日本大使館前のバリケード撤去作業 “TBS News i”より http://news.tbs.co.jp/20121116/newseye/tbs_newseye5183369.html

今後に不安を抱える政治情勢
冷え切った緊張関係が続く日本と中国ですが、先日のASEAN首脳会議では表立っての批判は両者とも行わず、関係悪化は一応避けた形となっています。

****あうんの呼吸?日中首脳、尖閣応酬なし*****
野田首相は19日、プノンペンのカンボジア首相府で、東南アジア諸国連合と日中韓(ASEANプラス3)の首脳会議に出席した。

首相は地域情勢に関し、北朝鮮問題を取り上げる一方、沖縄県の尖閣諸島については、先に発言した中国の温家宝首相が取り上げなかったため、言及しなかった。中国とフィリピンなどが対立する南シナ海の領有権問題についても言及を控えた。

今月6日のラオスでのアジア欧州会議(ASEM)首脳会議では、日中双方が尖閣諸島の領有権を巡り激しい応酬を繰り広げた。今回の両首脳の対応について、「日中関係がこれ以上こじれないよう、あうんの呼吸があった」(同行筋)との見方が出ている。【11月19日 読売】
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ただ、野田総理のいない中国・韓国の首脳会談では、日本の姿勢に対する批判が依然としてなされており、基本的な状況に変化は見られません。また、恒例の日中韓3カ国による首脳会談も見送られました。

****軍国主義」「右傾化」警戒=中韓首脳、対日憂慮で一致****
東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会合出席のためカンボジア入りしている中国の温家宝首相と韓国の李明博大統領は19日、プノンペン市内のホテルで会談した。韓国大統領府の発表によると、両首脳は尖閣諸島や竹島問題をめぐり対立する日本について「軍国主義」「右傾化」と指摘、憂慮する考えで一致した。

温首相は日本と中韓との対立に関し「日本が軍国主義を清算できなかったためだ」と主張。これに対し、李大統領は「日本の右傾化は周辺国の不安要因になり得る」と述べる一方、「この問題は友好的、平和的に解決されねばならない」と訴え、温首相も同意したという。(後略)【11月19日 時事】
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日中韓とも政権過渡期にあり、しばらくは政治の場での大きな動きは期待できませんが、日本の総選挙後の政権はこれまでより対中国・対韓国で強硬な姿勢になることも予想されており、中国・韓国の警戒感も高まりそうです。

経済面では関係強化の動きも
経済面においては、政治の世界よりは関係改善の兆しも見えます。
“野田首相が環太平洋経済連携協定(TPP)への参加に意欲をみせていることや、日中関係悪化が中国経済にも悪影響を与えていることから、中国共産党の党大会が終了したのを機に、中国政府が経済協力へ動き始めた可能性がある”【11月18日 読売】とのことで、日中韓自由貿易協定(FTA)交渉に入ることが合意されています。

****日中韓 FTA交渉入り RCEPでも合意 対立より経済関係強化を優先****
日本と中国、韓国は20日、カンボジアの首都プノンペンで経済貿易担当相会合を開き、自由貿易協定(FTA)締結に向けた交渉に入ることで合意した。来年の早期に第1回会合を開く。また日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)、中国、韓国、インドなど16カ国はプノンペンで同日、東アジア包括的経済連携(RCEP)の交渉開始を宣言した。2013年の早期に交渉を始め、15年末までの妥結を目指す。

日中韓FTA交渉入りは、沖縄県・尖閣諸島や島根県・竹島をめぐる対立とは切り離し、経済面の関係強化を優先した。東アジアサミットに合わせた3カ国首脳会談は見送られ、担当相レベルで合意する形となった。

日中韓がFTAを結ぶと、世界の国内総生産(GDP)と物品貿易(金額ベース)で約2割を占める巨大な貿易圏が生まれる。関税の引き下げや撤廃が進めば、製造業を中心に中韓向け輸出の拡大につながり、日本企業に追い風となりそうだ。
一方、アジア広域FTAとも呼ばれるRCEPが実現すれば、人口約34億を抱える貿易圏が誕生することになる。【11月21日 SankeiBiz】
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【「首をすくめて騒ぎが収まるのを待つのではなく、今こそ積極的に打って出る必要がある」】
こうした国家レベルの動きとは別に、日本企業にとって中国市場の重要性は避けて通れない問題で、反日感情の逆風が残る中でも生き残りを賭けた企業努力が続けられています。

****中国:進出企業、流通など正常化急ぐ 拡大路線変更なく****
日本政府による沖縄県・尖閣諸島の国有化を機に中国で激しい反日デモが起きて2カ月あまり。
日本製品不買の動きで日系自動車メーカーなどはいまだに減産を続けるが、イオンが24日、反日デモで破壊された「ジャスコ黄島店」(山東省青島市)の営業を全面再開するなど、流通業を中心に日系企業の業務は正常化しつつある。
中国での反日機運は依然くすぶるが、中国進出計画を変えない企業は多く、逆境を乗り越えようという取り組みも広がっている。

「地元密着が足りなかったと反省している」。イオン中国の辻晴芳社長はそう振り返る。9月15日の反日デモで黄島店には暴徒化したデモ隊が乱入。商品を奪ったうえ店内を破壊した。被害総額は約7億円に上るという。
デモが収まると、中国人従業員が中心となり後片付けなど店舗の再開に向けた準備を進めた。地元の黄島区政府が外壁などを修理すると申し出たこともあり、10月1日から店舗の一部の営業開始に踏み切った。テナントとして入居する日系衣料品店などもすべて元通り入居することになった。

日本製品不買の動きも残っており、イオンの中国全店の売り上げもデモ以前の約8割にとどまる。だが、流通関係者の間では「市場が縮小する日本では前年の売り上げを維持するのがやっと。成長する中国で稼がなければジリ貧だ」(別の日系流通幹部)との危機感が強く、多くの企業は中国での事業拡大計画を変えていない。イオンもデモ後、2店舗を新規出店した。

「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングもデモ直後の9月29日に上海市内に新店舗を出店し、出店ペースを緩めない。湖南省長沙市内の店舗が襲撃された平和堂も、来年夏、同市内に4店舗目を出店する計画だ。

リスクを乗り越えるための試みも始まっている。イオンは、黄島店の全面再開を「中国事業の再出発」と位置づけ、「地元客を増やして味方にすることがリスクを減らす最大の対策」との方針を掲げる。12月から毎月、中国国内全50店舗(香港含む)で一斉セールを開催し、新規客などを呼び込む計画だ。
また、日本と同様に各店舗で毎月店舗周辺の清掃活動を行い、地元貢献もアピールする予定。辻社長は「首をすくめて騒ぎが収まるのを待つのではなく、今こそ積極的に打って出る必要がある」と話す。【11月23日 毎日】
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****日系各社が巻き返しに懸命 広州モーターショー開幕****
トヨタ自動車、日産自動車、ホンダが工場を構える中国南部の広州市で22日、モーターショーが始まった。尖閣諸島をめぐる反日デモが起きて以降、中国では初の大型ショー。日系各社がそろって出展し、変わらぬ中国重視を訴えた。巻き返しはできるのか。

■警戒態勢の中、中国市場重視訴える
会場では、日系メーカーの出展場所に限って、制服姿の警備員が数メートルおきに立つ姿が見られた。
「日本車を買った後に、またデモが起きるのではという不安がお客にある」。ホンダの合弁会社「東風ホンダ」の水野泰秀社長は記者団にこう語った。

9月のデモでは、路上で日系の自動車が襲撃を受け、けが人も出た。日本車各社の10月の新車販売台数は、前年同月比で4割から7割の減。ホンダもほぼ半分になった。逆に米独韓勢は台数を伸ばし、差をつけられている。給料が減った販売店員の流出や足元をみたお客からの値引きの要請がたえない。

しかし、世界一の自動車市場からは逃げられない。
「中国はホンダにとって最重要市場。中国への期待は変わることがない」。ホンダの倉石誠司・中国本部長は明言し、2014年に中国でハイブリッド車を現地生産する方針を披露した。中国人のデザイナーを集めたデザインオフィスを年内に設けることも明らかにした。

トヨタ自動車の大西弘致・中国本部長も「困難な今だからこそ、中国を愛し、中国のことを考えて進めていきたい」と中国への貢献を訴えた。来年には、東部の江蘇省常熟市の研究開発センターに、同社として世界最大規模のテストコースを完成させ、現地化を進めると発表した。

「消費者に品質だけでなく安心も保証する」
日産自動車の合弁会社「東風日産乗用車」の任勇副社長は、「悪意」で車が破壊された場合に修理代を負担したり、けがを負った場合に治療費を支払ったりするサービスを、将来にわたって展開する方針を明らかにした。三菱自動車も同様のサービスを打ち出した。
三菱自動車の合弁会社「広汽三菱汽車」の辰巳大助社長は、工場がある湖南省長沙市の地元政府とも「密接で強い関係」を築いていると強調した。

■消費者は落ち着き取り戻す
「日系メーカーが(ショーを)集団欠席?」。ホンダ車のパトカーまでひっくり返された激しいデモに、9月末には、そう報じた地元紙さえあった。
だが、消費者はしだいに落ち着きを取り戻しつつある。広州市がある広東省の地元紙・新快報が10月に実施したアンケートによると、自動車の購入先として33.8%が日系メーカーを挙げ、ドイツ系の30.1%を抑えてトップだった。「広東は商売の街が多い。政治と経済とを分けて考えるのだろう」と水野・東風ホンダ社長は話す。

ホンダの発表会場にいた北京に住む会社員劉カクさん(24、カクは王へんに玉)は、昨年末にマツダのセダン「馬自達3(日本名・アクセラ)」を15万元(約187万円)で購入した。反日デモがあったころは路上に駐車できなかったというが、「買い替えで一番大切なのは経済性。安くて良い車なら次も日本車を買う」。

日本車の売れ行きは、雇用にも影響するため、地元政府や合弁先の企業の関心も高い。
広汽三菱汽車の辰巳大助社長は、デモ後に湖南省(中部)の工場を視察した地元政府幹部から「重要なプロジェクト。発展を期待する」と言われ、合弁先からも「生産台数を落とすと社員が動揺する。積極的にやろう」と声をかけられたという。

各社とも販売状況は徐々に戻りつつあるとしている。会場では、今後の見通しについては「実質的な回復は来春くらい」と期待する声が相次いだ。【11月23日 朝日】
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人皆有心。心各有執。彼是則我非。我是則彼非。我必非聖。彼必非愚。共是凡夫耳。】
激しい反日抗議デモの被害を受けながらも、「地元密着が足りなかったと反省している」「困難な今だからこそ、中国を愛し、中国のことを考えて進めていきたい」といった姿勢は、商売のためと言えばそれまですし、一部からは卑屈な対応との批判もあるのでしょうが、個人的には好意的に見ています。

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十に曰わく、忿(こころのいかり)を絶ち瞋(おもてのいかり)を棄(す)て、人の違(たが)うを怒らざれ。人みな心あり、心おのおの執(と)るところあり。彼是(ぜ)とすれば則ちわれは非とす。われ是とすれば則ち彼は非とす。われ必ず聖なるにあらず。彼必ず愚なるにあらず。共にこれ凡夫(ぼんぷ)のみ。是非の理(ことわり)なんぞよく定むべき。相共に賢愚なること鐶(みみがね)の端(はし)なきがごとし。ここをもって、かの人瞋(いか)ると雖(いえど)も、かえってわが失(あやまち)を恐れよ。われ独(ひと)り得たりと雖も、衆に従いて同じく挙(おこな)え。

(十にいう。心の中の憤りをなくし、憤りを表情にださぬようにし、ほかの人が自分とことなったことをしても怒ってはならない。人それぞれに考えがあり、それぞれに自分がこれだと思うことがある。相手がこれこそといっても自分はよくないと思うし、自分がこれこそと思っても相手はよくないとする。自分はかならず聖人で、相手がかならず愚かだというわけではない。皆ともに凡人なのだ。そもそもこれがよいとかよくないとか、だれがさだめうるのだろう。おたがいだれも賢くもあり愚かでもある。それは耳輪には端がないようなものだ。こういうわけで、相手がいきどおっていたら、むしろ自分に間違いがあるのではないかとおそれなさい。自分ではこれだと思っても、みんなの意見にしたがって行動しなさい。)【金治勇『聖徳太子のこころ 』、大蔵出版より】
http://www.geocities.jp/tetchan_99_99/international/17_kenpou.htm******************

皆がこうした気持ちを持てば、世の中から争いごともなくなるのでしょうが・・・・。
「首をすくめて騒ぎが収まるのを待つのではなく、今こそ積極的に打って出る必要がある」「実質的な回復は来春くらい」といった努力・期待が、政治の世界で対立が煽られることで無に帰することのないように願います。

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