孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

温暖化対策  今月末からCOP18 日本は国際公約「25%減」の扱いで立ち往生の懸念

2012-11-13 23:36:22 | 環境

(巨大化したハリケーン・サンディ “flickr”より By Trevon Haywood Photography http://www.flickr.com/photos/trevonhaywood/8138578872/

【「気候は変動している」】
10月末にアメリカ北東部を直撃した巨大ハリケーン・サンディは、アメリカだけで死者110名という大きな被害をもたらしましたが、浸水、更に大停電によって社会機能にも大きなダメージを与えました。

風速のうえではさほど強くないサンディでしたが、“巨大化”が大きな被害につながりました。
巨大化した理由については、下記のようにも説明されています。

****サンディ、5段階で一番下…巨大化した理由は****
サンディのピーク時の最大風速は秒速40メートル程度で、ハリケーンとしてはそれほど強くなく、米国立ハリケーン・センターの5段階の分類では一番下のカテゴリー1だった。

しかし、カリブ海諸国に被害を及ぼした後、北米大陸の東側を北上。西側から接近した冬の低気圧に引き込まれて合流した。さらに、北のカナダから南下してきた冷たい空気とも一体化し、巨大化した。(中略)

2005年8月に米ルイジアナ州ニューオーリンズなどを襲った大型ハリケーン「カトリーナ」の最大風速は秒速78メートルで、同センターの分類で最大のカテゴリー5だった。【10月30日 読売】
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被害が大きくなった理由には、人口が集中する米東海岸沿いを進んだこともあげられます。
また、電力会社の敷地内で爆発が起こり、大規模停電が起きたことで混乱に拍車がかりました。

巨大ハリケーン・サンディと地球温暖化の直接的関連性はよくわかりませんが(下記記事によれば、メキシコ湾流に乗ったハリケーンは暖かい海水によって勢力を増し、海面上昇が洪水を増幅させた可能性があるといった指摘もあるようです)、ここのところ人々の関心が薄れていた気候変動・温暖化への関心を改めて呼び覚ましたように見えます。

ニューヨーク市のブルームバーグ市長は、昨年8月のハリケーン「アイリーン」に続く今回のサンディの襲来という異常事態について「気候は変動している」と強調し、気候変動問題に対するオバマ大統領の取り組みを評価するという理由でオバマ支持を表明、大統領選挙にも影響を与えました。

2100年には4.4℃上昇?】
地球温暖化については、どの程度の変動が起きるのか・・・という基本的なところが不明確なため、その後の議論も進みにくいところがあります。
下記National Geographic記事は、21世紀末の大気中で二酸化炭素(CO2)濃度が予測通り現在の2倍になった場合の気温上昇は、これまで予測されている数値のなかでは最悪の4.4℃の可能性が高いことを論じています。

****地球温暖化、最悪のシナリオが現実に*****
巨大ハリケーン「サンディ」をきっかけに、多くの人々が気候変動を意識し始めている。いくつかの報告によれば、メキシコ湾流に乗ったハリケーンは暖かい海水によって勢力を増し、海面上昇が洪水を増幅させた可能性もあるという。

最新の研究によれば、温暖化は既に進んでいるという。しかも今後の進展は、数ある予測の中でも高い値に沿う可能性が大きいと研究チームは結論づけている。

アメリカ、コロラド州ボルダ―にある国立大気研究センター(NCAR)の大気科学者ジョン・ファスーロ(John Fasullo)氏とケビン・トレンバース(Kevin Trenberth)氏は、ある問題の答えを探すため、地球湿度のパターンを研究した。21世紀末の大気中で、二酸化炭素(CO2)濃度が予測通り現在の2倍になった場合、どれくらい暖かくなるかという問題だ。

平衡気候感度とも言うCO2増加による気温の変化量は、2100年前後までに摂氏2.8度ほど上昇すると見積もられている。ただし、予測値はばらばらで、1.7度から4.4度まで倍以上の開きがある。
この違いは無視できる差ではない。気温上昇の度合いが高いほど問題も拡大するためだ。海面上昇や異常気象といった災厄が増え、海洋循環も激変する。その結果、地上でも大きな変化が起きる。

◆雲が鍵を握る
気候感度が1979年に初めて報告されてから、予測値の幅は全く狭まっていない。この謎を解明するため、ファスーロ氏とトレンバース氏は空に目を向けた。

ファスーロ氏によれば、気温上昇の度合いを正確に予測する上で鍵を握るのは雲だという。雲は地球のエネルギー収支に大きな影響を及ぼす。まず、白い雲は日光を反射して地球を冷やす。大気中の高さによっては、毛布のような役割を果たし、熱を閉じ込める。

しかし、雲は形や大きさ、明るさが目まぐるしく変わり、モデル化が難しい。人工衛星による観測は不完全で、誤差が生じる。ファスーロ氏とトレンバース氏はこれらの難題を回避するため、雲が生まれる仕組みに着目した。その環境は相対湿度が高く、水蒸気が豊富にある。

◆ドライゾーンの役割
ファスーロ氏とトレンバース氏は、大気循環によって生まれるドライゾーンという範囲を研究の対象とした。
雲が形成される対流圏のうち、高度1000メートル前後にあるドライゾーンは、未来の気候を決定づける上で主要な役割を果たす。北半球のドライゾーンは北緯10~30度の亜熱帯にある。ベネズエラからアメリカ、フロリダ州の間だ。

研究チームはドライゾーンの相対湿度の観測値を、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による最新の研究で使われた16種類の気候変動モデルと比較した。
その結果、相対湿度の観測値と最も一致していた3モデルはどれも、最も暖かい未来を予測している。21世紀末までの気温上昇は4.4度という値だ。最も不正確とされるモデルは、相対湿度の値を高く、気温上昇を低く予測していた。

ファスーロ氏は次のように説明した。「目に例えると、ドライゾーンは気候システムの虹彩だ。暖かくなるにつれて、虹彩は広がる。つまり、空を覆う雲が減り、より多くの熱を取り込むことになる」。ドライゾーンの拡大が考慮されていないモデルは、観測データと一致していなかったとファスーロ氏は述べる。
つまり、温暖化はどんどん進むという結論になる。

今回の研究結果は、11月9日発行の「Science」誌に掲載されている。 【11月13日 National Geographic】
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上記記事内容もよく理解できませんし、ましてや、指摘の妥当性については全くわかりませんが、4.4℃も気温が上昇したら恐らく大変な影響が出るだろう・・・ということぐらいは想像できます。
個人的には、老い先長くない身ですから、正直なところさほど切実な危機感は持ってはいませんが。(このような発想が、温暖化対策を考えるうえで最大の敵でしょう。)

【「25%減」事実上撤回、しかし代替目標もなく公約取り下げはせず
温暖化対策を協議する第18回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP18)は、今月26日にカタールで開幕されます。
京都議定書の「第1約束期間」が今年末で終わるため、来年から始まる「第2約束期間」に参加する国の削減目標などが議論されます。

日本は2008~12年度の「第1約束期間」の平均値で1990年度比6%の削減義務を負っていますが、環境省の推計ではこの数字は達成できる見通しとのことです。

「第2約束期間」については、日本は不参加を表明したため削減義務は負いませんが、09年に当時の鳩山由紀夫首相が国連で表明した「20年までに90年比で25%削減を目指す」が国際公約となっています。
しかし、福島第1原発事故を受けて「原発ゼロ」方針をとっているため、野田主要は、この国際公約実現を事実上撤回する考えを明らかにしています。

****25%減」撤回を事実上表明=温室効果ガス排出―野田首相****
野田佳彦首相は15日昼、都内で開かれた会合で講演し、温室効果ガス排出量の削減に向け、省エネの徹底と再生可能エネルギーの普及に全力を挙げる方針を強調した。一方、2020年の排出量を1990年に比べて25%削減する政府目標について「そうした(省エネなどの)努力を尽くしても、原発によって賄うことを想定していた二酸化炭素排出の抑制を代替するのは難しいものがある」として、事実上撤回する考えを示した。

25%削減は、09年9月、鳩山由紀夫首相(当時)が国連でのスピーチで表明、国際公約となっていた。しかし、政府は先月策定した「革新的エネルギー・環境戦略」で、温室効果ガスについて30年時点でおおむね2割削減を目指し、20年時点は「5~9%削減となる」とした。【10月15日 時事】
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とは言え、“国際公約”ですので代替目標も出さずに撤回するのも難しいところがあります。
さりとて代替目標を検討する時間もない・・・ということで、とりあえず今回のCOP18での公約取り下げは行わない方針です。

****日本、温暖化ガス25%減公約取り下げず COP18 ****
26日にカタールで開幕する第18回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP18)に向け、日本政府は9日、基本方針を決めた。温暖化ガスを2020年に1990年比25%減らす国際公約は「国際交渉に与える影響にも留意しつつ、慎重に検討する」とし、当面は取り下げない姿勢を示す。

政府のエネルギー・環境会議は年末までに新たな温暖化対策をつくる。25%目標はこの議論と併せて扱いを検討する。途上国支援では、09年に発表した「鳩山イニシアチブ」が終了する13年以降も「切れ目なく支援する」との立場を表明する。

温暖化対策の新たな国際枠組みでは、「全ての国が参加する公平で実効性のある国際枠組みが必要」と改めて強調する。京都議定書の第2約束期間への不参加方針も改めて示す。【11月10日 日経】
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年内に解散・総選挙が行われることが報じられていますが、そうなれば恐らく民主党政権から自民党を中心とした新たな政権に変わることが予想されています。
自民党は原発容認の姿勢ですので、「原発ゼロ」も撤回ということになるのでしょう。
エネルギー政策の根幹が大きく変わることが予想される状況では、温暖化ガス削減目標も立てようがありません。

【「今のままでは国際的に通用しない」】
こうした日本の状況に対する海外に視線は厳しいものがあります。

****温室ガス25%減目標に日本難渋 脱原発で行き詰まり****
地球温暖化対策の国際交渉で、日本政府が「温室効果ガスの排出を2020年までに90年比で25%減らす」今の目標の扱いに苦慮している。9月に脱原発の新戦略を決めたことで、原発頼みだった目標も行き詰まったが、今後の扱いは宙に浮いたまま。交渉では温暖化対策の強化が議論されており、日本への視線は厳しさを増している。

「(11月下旬からの)COP18には間に合わないかも知れないが、年末までに何らかの方針を示したい」
韓国・ソウルで23日に閉幕した国連気候変動枠組み条約第18回締約国会議(COP18)の閣僚級準備会合。日本政府代表の生方幸夫・環境副大臣は2日間の会期中、温室効果ガスの削減目標の説明に追われた。

22日に会談した中国の解振華・国家発展改革委員会副主任は「効果ある数値を出すことを期待する」と述べ、日本の目標引き下げをいち早く牽制(けんせい)。英国との会談でも、相手の閣僚が「高い目標を持つべきだと思っており、関心を持っている」と発言した。

日本側が説明に苦しんだのは、野田佳彦首相ら政権幹部が今の目標達成が難しくなったことを認める一方、撤回して新目標を作るかなど、今後の対応をあいまいにしているためだ。生方副大臣も現地での記者会見で、「原発を増やしていく前提は変わったが、それを理由に(25%削減目標を)すぐに取り下げるつもりはない」と強調した。

ただ、政府内では「今のままでは国際的に通用しない」(環境省幹部)との見方が強い。仮に目標を下げる場合でも、後ろ向きとみられないよう、途上国向け資金援助の増額などとセットで提示する「工夫」が必要との意見も出ている。一方、政権交代が起きると「原発ゼロ」路線が白紙に戻る可能性が取りざたされ、「しばらく対外的な動きは取りにくい」(外務省幹部)との声も聞かれる。

姿勢が定まらない日本を尻目に、温暖化対策の国際的な枠組みは今年末、大きな転機を迎える。京都議定書の第1約束期間が終わり、20年以降にすべての国が参加する新しい枠組みづくりの議論が、COP18から本格化する見通しだ。
日本も第1約束期間の終了に伴い、排出削減義務を負う枠組みから離脱。代わりに、自主目標に基づく取り組みの結果を国連に報告する。「公約」を守れるかで、温暖化対策への姿勢が問われることになる。

今回の準備会合ではCOP18の主要議題として、各国の削減目標をどう引き上げていくかが挙げられた。こうした中、日本は目標について明確な方針を示せないまま、「本番」に臨もうとしている。温暖化交渉に詳しい名古屋大の高村ゆかり教授(国際法)はこの状況を危ぶむ。「日本は信頼を失いかねない。今後の交渉を主導できない恐れがある」【10月24日 朝日】
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“「今後の交渉を主導できない恐れがある」”・・・・“恐れ”ではなく、間違いなく主導などできませんし、批判の矢面に立たされること、“お荷物”扱いされることも予想されます。
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