孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ大統領選挙 投票始まる 大接戦で混乱の可能性も

2012-11-06 23:27:25 | アメリカ

(“flickr”より By mark_m517 http://www.flickr.com/photos/62212535@N07/8053625256/

おおらかなアメリカ式選挙
今日11月6日はアメリカ大統領選挙の投開票日です。
連日の報道のように大接戦となっており、特に勝敗のカギを握るとされている激戦州オハイオなどでは郡レベルの動向が注目されており、いくつかの郡の選挙結果がオハイオ州の結果を、ひいては全米の勝敗に結びつく可能性があることなども報道されています。投票率も大きく影響しそうです。

現在(日本時間21時半)、東部時間で朝の7時半ですから、そろそろ投票が始まったあたりでしょう。
ただ、自由の国アメリカですから、投開票時間は地域ごとに大胆な設定も可能なようです。

****最初の開票はオバマ氏1勝1分け=東部の小村で未明投票―米大統領選****
米東部ニューハンプシャー州の二つの小さな村で6日未明(日本時間同日午後)、全国に先駆けて大統領選挙の投票が行われ、CNNなどによると、開票結果は現職オバマ大統領の1勝1分けだった。

ハーツロケーションでは33人が投票。オバマ大統領が23票を獲得し、9票のロムニー共和党候補を圧倒した。午前0時に投票が始まり、1分以内に終了したディクスビルノッチでは両候補が5票ずつ分け合った。
ハーツロケーションは1948年から未明の投票を行い、有権者数も少ないことから全米で最も早く開票結果が出ることで知られる。前回2008年の大統領選では、この二つの村でオバマ氏がマケイン共和党候補を破っている。【11月6日 時事】
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未明に投票を開始し、1分以内で終わる、しかもまだ殆んどの地域で投票が開始されていないのに開票結果が発表されるというのは、日本的な感覚では“そんな勝手なやり方でいいのだろうか?”とも思えてしまいますが、そこはそれ、アメリカですから。

そもそも、広いアメリカ国内では時差があります。
最近は電子投票が導入されてきていますので、結果は投票終了と同時に瞬時にわかる州も多いでしょう。
東部と西海岸では3時間、アラスカとは4時間、ハワイとは5時間の時差がありますから、西海岸ではまだ投票が続いている時間に東部各州の結果が発表される、ハワイで投票が続いている時間にはすでに勝敗が確定している・・ということにもなります。細かいことは気にしないアメリカです。

法廷闘争に発展する可能性も
しかし、今回のような接戦となると、逆に結果がなかなか判明しないという混乱の可能性もあります。
2000年のブッシュ対ゴアのときの混乱の再現も危惧されています。

****米大統領選 きょう投票 2000年の混乱 再来警戒****
米大統領選は民主党のオバマ大統領(51)と共和党のロムニー前マサチューセッツ州知事(65)が大接戦を展開したまま、6日投開票が行われる。米紙ワシントン・ポストとABCテレビの最新調査ではオバマ氏が1ポイントリード。CNNテレビの調査では両者とも49%で互角の戦いだ。票の再集計をめぐり混乱した2000年の大統領選同様、法廷闘争に発展する可能性も取り沙汰されている。

共和党ブッシュ候補と民主党ゴア候補が争った2000年の大統領選では、フロリダ州が採用したパンチカード式の投票用紙をめぐり大混乱を引き起こした。それ以降、電子化や期日前投票を利用することでスムーズな開票を目指してきたが、今回は、機器の誤作動や投票確認作業の複雑化などが懸念されている。

問題になりそうなのは、一部の州が導入するタッチパネル式の電子投票だ。米メディアによると、コロラド州では、ロムニー氏に投票しようとパネルを押しても、誤作動でオバマ氏への投票に切り替わってしまうケースがあった。共和党幹部が一部地域の使用機器の再点検を求める事態になっているという。

期日前投票の多さも頭痛のタネ。最激戦州のオハイオ州では約130万人が期日前投票を申請したものの、4日現在、まだ約24万人が投票をすませていない。仮に期日前投票を要請していた有権者が当日投票に切り替えた場合、二重投票防止の確認作業が不可欠となる。両陣営が細部の確認を強く要求することも予想され、それには10日以上かかる可能性があるという。
また、暴風雨の被害に見舞われたニュージャージー州は電子メールでの投票を容認した。ただ、ハッカーが介入する危険性を指摘する専門家もいる。

米メディアによると、両陣営とも法律顧問を激戦州に配置済みで、自陣営に不利な状況が出現すれば法廷闘争も辞さない方針を徹底させているという。
大統領選は各州に配分された選挙人の獲得数を争うが、1800年以来という獲得選挙人が同数で並ぶ珍事もあり得る。その場合、下院の投票で選ばれる。

【用語解説】2000年の米大統領選
フロリダ州で共和党ブッシュ候補のリードが州法の基準に満たない僅差だったため、再集計したところ得票差が縮小。集計機の精度に異議を唱える民主党側の要請で、一部で手集計が始まった。しかし連邦最高裁は、再集計する際の基準があいまいなどとして再集計停止を命令。投票から1カ月余り後にようやく獲得選挙人数が確定、ブッシュ候補の大統領選勝利が決まった。【11月6日】
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2000年選挙で話題となった、穴があいているのか判然としない“パンチカード式の投票用紙”には驚きましたが、最先端“タッチパネル式”も問題がありそうです。
勝敗を分けると言われているオハイオ州で二重投票防止の確認作業に10日以上かかる可能性があるということになると、勝敗の行方がしばらく判然とせず、各地で“意義申し立て”が頻発する事態も想定できます。

ユニークなアメリカ式選挙
そもそも、少数激戦州の結果で決まるという、あるいは特定州の特定郡の動向が大きく影響するというアメリカ大統領選挙の仕組み自体が、不思議と言うか、日本の選挙制度とはかなり異なる制度です。

まず、投票するためには“選挙人登録を行っていることが要件となる。 米国は日本のような戸籍制度が無い為、自己申告制の選挙人登録を行わなければ投票用紙は郵送されて来ない”【ウィキペディア】という点。
当然、選挙などには関心もなく選挙人登録を行わない者もいます。投票権のない永住権所持者も1300万人ほどいるようです。アメリカの場合、服役中の囚人も少なくありません。
それを考えると永住権者・服役中囚人も含めた全有権者の約50%程度という投票率というのはかなり高い数字とも思えます。

立候補者は民主・共和の二大政党だけではなく、今回2012年選挙でも全国規模で立候補している候補者がオバマ・ロムニー以外に4名いるそうです。
しかし、二大政党候補者とその他候補者には大きな差があります。
“多くの州では、二大政党以外の立候補に一定数の有権者による署名を必要としている。”
“立候補した州でも、始めから名簿(リスト)に名前が掲載されている候補と、有権者が任意で自書式投票による追記投票をする必要がある候補に分けられている場合がある(二大政党候補は必ず名前が掲載される)” 【ウィキペディア】
このあたりも、“泡沫候補”まで平等に扱われることを基本とする日本の場合とかなり異なります。
現実重視の割り切りも、いかにもアメリカ的です。

よく知られているように、アメリカ大統領選挙は形式上“選挙人”を選ぶ間接選挙です。
“有権者は一般投票日(11月6日)に「大統領候補と副大統領候補のペア」への投票を誓約する選挙人団に票を投じる。もっとも、実際の投票では、大統領候補と副大統領候補の名前のペアとその公認政党の組み合わせの書かれた選択肢に記入して投票すると、その候補ペアへの投票を誓約する選挙人団への票とみなされる投票方式がとられる” 【ウィキペディア】
後日(12月17日)、各州で選挙人団が集会し「選挙人投票」が行われ、大統領が選出されます。

こうした選挙制度は、西部開拓時代に“選挙人”が馬車や汽車でワシントンへでかけ、大統領選挙に投票した頃の名残のようにも思えます。

これもよく知られているように、ほとんどの州では、他の選挙人団より1票でも多くの票を獲得した選挙人団がその州に割り当てられた全議席を獲得するウィナーテイクオール方式(勝者総取り方式)となっています。
なお、ネブラスカ州とメイン州は比例割当方式を採用しているそうです。

選挙人の各州への割り当ては、その州の上院と下院の議員数に等しい人数と決められています。
なお、上院議員は各州から2名ずつ、下院議員は州の人口に基づいて決められていますが、人口比を必ずしも反映してはいません。
その結果、最も選挙人が多いのがカリフォルニア州の55人、少ないのがアラスカ州、ノースダコダ州、サウスダコダ州、ワイオミング州などの7つの州の3人です。

55人対3人というのは大きな格差があるようですが、人口を考えると、逆の不平等が存在します。
ワイオミング州は人口56万人しかないのに選挙人は3人、カリフォルニア州は人口は3700万人なのに選挙人は55人です。単純に人口で考えると、ワイオミングが3人ならカリフォルニアは198人になります。
日本の“1票の格差”以上の格差がりますが、州が基本の“合衆国”アメリカではあまり問題にならないのでしょうか。

こうした、選挙人を選ぶ間接選挙、州毎の勝者総取り方式、各州に割り当てられた選挙人数の問題などから、2000年のゴア候補のように全体の得票数で勝っても、選挙人数では劣り敗北するという“奇妙な”結果も生じます。
また、オハイオなど一部激戦州の動向で勝敗が決まる・・・ということにもなります。

なお、“連邦法および合衆国憲法では(選挙人投票において)選挙人が(事前の)誓約に従って投票するよう義務付けているわけではなく(一部の州では州法によって義務付けている)、選挙人は一般投票と異なる候補者に投票することも可能である”【ウィキペディア】というあたりになると、なんともいい加減な制度のようにも見えます。
まあ、それで現実問題として混乱したケースはないようですが。

【「ロムニー大統領・バイデン副大統領」???】
大接戦を反映して、“もし獲得選挙人数が同数だったら・・・”という想定もなされています。

****選挙人互角なら下院決選=正副大統領に「ねじれ」も―米****
米大統領選は民主党のオバマ大統領と共和党のロムニー候補が激しく競り、勝敗は予断を許さない。州ごとに配分された選挙人は計538人と偶数のため、両者が269人ずつ獲得する「引き分け」も想定される。
この場合、来年早々に招集される新連邦議会での決選投票に持ち込まれ、正副大統領が別々の党となる珍事も起こり得る。

米メディアの分析によると、現時点で大統領は237人、ロムニー氏は206人の選挙人を確保できたもよう。残りは95人だが、大統領がオハイオ(18人)、ウィスコンシン(10人)、ニューハンプシャー(4人)の3州を押さえるなど、両者が同数になるケースは何通りか考えられる。

米国憲法によると、選挙人の過半数を獲得した候補がいない場合、大統領は下院に、副大統領は上院にそれぞれ決定権が移る。
下院は州ごとの議員団が1票を行使すると規定されており、過半数は26。現在、下院は共和党が多数を占め、同党の意向が通る州は30以上だ。
大統領選と同時実施の下院選でも、共和党は現有勢力をそう減らさないとの予測が一般的。3分の2とされる定足数を満たせば、下院でロムニー氏が新大統領に選出されることになる。
 
一方、上院は1人1票。現有53議席の民主党が何とか過半数を維持するとみられており、バイデン副大統領が再選される可能性が濃厚と言える。
民主党議員の何人かが「良識」を働かせて棄権し、共和党のライアン副大統領候補の当選に道を開くシナリオもあり得るが、論理的には「ロムニー大統領・バイデン副大統領」のコンビが誕生しかねない。【10月29日 時事】 
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いくらなんでも「ロムニー大統領・バイデン副大統領」はないだろうとは思いますが・・・・民主主義の守護神を自任するアメリカとしては、混乱を回避したすっきりした結果が望まれます。
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