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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

日本  外国人労働者を襲う雇用不安 日本の移民政策の方向は?

2008-12-15 21:02:01 | 世相

(“flickr”より By 神酒 Coal
http://www.flickr.com/photos/mi-ki/2547511555/)

【“関税引き下げより労働力流動化を”】
ニューズウィークの記事に、“関税障壁は現在すでに十分に下がっており、今更WTOでこれ以上の関税引下げ交渉にエネルギーを使っても得られるメリットは大きくない。”という趣旨の記事がありました。
本当にそれほど関税障壁が低くなっているのかどうかはわかりませんが、その記事の最後のほうで、“今取り組むべきは、関税引下げではなく労働力の流動化である”とありました。

確かに、世界の富の偏在を是正するためには、労働力移動が有効です。
実際にアフリカ・アジア諸国からの出稼ぎ労働者、EU圏内での労働力移動などの人の動きがあります。
出稼ぎ者の送金が国家経済で大きなウェイトを占めている国も珍しくありません。

しかし、移民・出稼ぎ労働者は受け入れる国にとって、経済・社会的に不足している人材を穴埋めしてくれる“便利”な存在であると同時に、異なる文化・価値観の人々と共存することで、文化的摩擦を引き起こし、差別・治安の悪化・排斥運動・暴動などネガティブな面を惹起しやすい、非常に厄介な問題です。

【蜘蛛の糸のカンダタ】
日本は従来から外国人の受け入れに消極的な国で、その結果として、国内における文化・価値観の同一性が保持され、治安もよく、ある意味摩擦の少ない社会を維持してきました。
しかし、承知のとおり、少子高齢化の進行に伴い人口減少に転じることが確実ですので、このままの“鎖国”を続けている限り、社会・産業の活力は次第に衰退していくことが想像されます。
“沈みゆく難破船”というと言い過ぎでしょうか。

そうした“日本側の事情”のほかに、そもそも、日本で働きたいという人々を拒絶し、自分たちだけの住みやすい豊かな社会を守ろうとすることについて、それでいいのか?という疑問を感じます。
“外の世界の貧困は日本のせいではない、それなりのODAを負担しているじゃないか、日本だって大変なんだ、受け入れたらとてつもない厄介ごとを抱えることになる・・・・”という考えには、現実に存在する周辺国の経済事情を考えると、居心地の悪いものを感じます。
日本人としてもっと世界に胸をはれるような国であってほしいとも思います。

【外国人介護者】
社会・経済的必要性と“厄介者はかかえたくない”という思いのはざまで、かなり厳しい条件つきで、介護労働者の受け入れが始まっています。

****外国人介護者:「先進地」台湾、在宅ケア7割依存 言葉の壁承知で雇用、欠かせぬ存在*****
介護労働者の国際移動が活発化している。欧米先進国やアジア新興国で、少子高齢化や女性の社会進出に伴う介護者不足が進んでいるためだ。日本も経済連携協定(EPA)でインドネシアとフィリピンからの介護福祉士候補受け入れを決めた。ただ、定住には国内の資格取得など高いハードルが課され、本格的な受け入れにつながるかは定まっていない。(中略)
日本は今夏、インドネシア人の介護福祉士候補104人を受け入れた。日本語研修を終えた来年1月末から全国で働き始める。来年も最大300人受け入れる。フィリピンからも09、10年に最大600人の介護福祉士候補を受け入れる予定だ。
アジアは介護労働者の国際移動が最も活発な地域の一つ。送り出し国は、日本が受け入れる2カ国とベトナム、タイが主力で、受け入れ側は香港、台湾、シンガポールなどが中心だ。
ただ看護師と異なり、介護士は資格制度を持たない国も多く、仕事内容や呼称は異なる。
受け入れ国の多くは外国人労働者の資格や経験を問わないが、日本は自国での資格に加え、日本の国家資格取得まで求めるなど厳しい条件を課している。インドネシアは日本とのEPAを機に介護士資格を創設した。各国は日本の動向を注目している。【12月14日 毎日】
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上記記事の省略部分に、台湾でのインドネシアからの介護労働者のケースが、“失業率が長期にわたり10%前後のインドネシアは国策で労働者を海外に送り出している。スリさんはシンガポールでも働いたが、母国に残した夫と11、12歳の子ども2人の生活を支えるため、2倍以上の収入が得られる台湾に移った。「電話で子どもから『会いたい』と言われるとつらいが、ここでは毎日が楽しい」。今の仕事にやりがいも感じている。”と、比較的肯定的にルポされています。

しかし、同じ台湾での外国人介護労働者について、数ヶ月前、TVで取り上げていたケースは、長時間労働・低賃金・暴力・・・など“搾取”“虐待”といった言葉を連想させるものでした。
どちらが、より実態を表しているのか・・・よくわかりません。

【外国人研修制度】
日本での外国人研修制度も同様に、満足して働いている外国人も少なくないのでしょうが、悪い話を聞くこともしばしばあります。

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近年では研修生の急増に比例するように人権侵害や事件が多発している。
典型的な事例は、パスポート取上げ、強制貯金、研修生の時間外労働、権利主張に対する強制帰国、非実務研修の未実施、保証金・違約金による身柄拘束、性暴力などで、2006年にはトヨタ自動車の下請け企業23社での最低賃金法違反、また岐阜県内の複数の縫製工場では時給300円で残業させていたことなどが報道された。
また、制度の趣旨と実態の乖離も指摘されている。いわゆる3K職種など日本人労働者を確保できなかったり、中国などの外国製品との価格競争にさらされている中小企業が、本来の目的である国際貢献ではなく、低賃金の労働力確保のために本制度を利用するケースが目立ち、研修生の中にも技能修得ではなく「出稼ぎ」として来日する者がいる【ウィキペディア】
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先日もこんな記事が。

*****小渕元首相のおいに有罪判決******
中国人技能実習生の賃金を着服したとして、労働基準法(中間搾取の排除)違反罪に問われた日中経済産業協同組合(東京)の代表理事で故小渕恵三元首相のおいの小渕成康被告(41)の判決公判が12日、宇都宮地裁足利支部で開かれた。島田尚登裁判官は「賃金を全額受給できる実習生の権利を侵害しており、批判は免れない」として懲役1年、執行猶予3年(求刑懲役1年)を言い渡した。(中略)小渕被告は19年6月にも10社から実習生34人の口座に振り込まれた賃金約1327万円のうち、1070万円を着服した。【12月12日 産経】
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【外国人労働者の雇用不安】
雇用不安が深刻化するなかで、今や労働人口の3分の1を占める非正規雇用者に関する派遣切りや雇い止めの話が連日報じられています。
当然、国内ではたらく外国人労働者の境遇は、日本人労働者以上に厳しいものが想像されます。

*****自動車、電機の崩落で深刻化解雇が急増中!*****
米国金融危機を発端とし、自動車関連や電機などの製造業の現場で、外国人労働者の解雇や契約の終了が目立つ。
たとえば、外国人労働者の構成比が13.2%と、東京都に次いで多い愛知県の場合は顕著。名古屋外国人雇用サービスセンターは、10月以降、さながら風邪のシーズンの病院の待合室のような混雑ぶりだ。
来所者数が昨年に比べ、2倍以上に増え、11月もさらに増加傾向にある。担当者は「10月は1日平均28.8件だった相談件数が11月は42.2件に、新規求職者数も10月の15.8人から26.3人に増えた」と説明する。(中略)
バブル崩壊後、国内製造業各社は非正規雇用者への依存度を高め、なかでも外国人労働者(合法就労者数)は工場労働の担い手として1996年の35人から2006年の75.5万人と、その数を増やしてきた。岐阜県美濃加茂市のように、自治体の人口の約1割が外国人という事例もある。
生活弱者としての非正規雇用者の存在が社会問題として取り沙汰されるようになって久しいが、とりわけ外国人労働者は、本国から呼び寄せた家族の処遇などを含め、失業対策は容易ではない。
また、治安悪化との関連も深い。彼らを安易に景気の調整弁とすることによって生まれる社会的な悪影響は計り知れない。【12月3日 『週刊ダイヤモンド』編集部 山本猛嗣】
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“外国人労働者が多い浜松市で12年の歴史を持つブラジル人学校「エスコーラ・プロフ・ベネジット」が、12月末で閉鎖する。急速な景気悪化で、工場の派遣労働者などとして働く保護者の多くが職を失い、経営難に陥った。”【12月5日】といった記事もありました。
教育からも疎外される“2世”を生み出しつつあります。

【『多民族共生国家』】
今年6月には、自民党の「外国人材交流推進議員連盟」(会長=中川秀直・元幹事長)がまとめた、日本の移民政策に関する提言案が明らかにされました。
人口減少社会において国力を伸ばすには、移民を大幅に受け入れる必要があるとし、「日本の総人口の10%(約1000万人)を移民が占める『多民族共生国家』を今後50年間で目指す」と明記しているそうです。

最初に述べたように、日本社会の今後を考えたときの日本側の必要性の面でも、また、世界的な“格差”に対する人間的な対応として考えても、基本的には日本も、多少のリスクはとっても、門戸を今以上に開放していくことが必要であると考えます。
そのためには、“移民”対策も整備していく必要がありますが、セーフティネット拡充などを含め、現在の非正規雇用労働者に対する労働行政を抜本から改めることも必要です。
それなしに外国人労働者を受け入れても、日本人非正規雇用者と外国人労働者が職を奪い合うような状況で、互いへの憎悪が増すだけでしょう。

コメント
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