(オリンピックのセレモニーで中国の子供達となごむオーストラリア・ラッド首相
中国語が堪能で中国寄りとも言われる首相ですが、中国の人権問題については「一歩後退、二歩前進」とのことです。
“flickr”より By publik16
http://www.flickr.com/photos/publik16/2745531668/)
【発足1年 なお6割超の支持】
アメリカ・オバマ大統領が“チェンジ”の代名詞になっていますが、昨年12月に登場したオーストラリア・ラッド首相(労働党)も、それまでのハワード保守党政権からの“チェンジ”を国内外に強く印象付けました。
京都議定書を批准、イラクからのオーストラリア軍部隊撤退、そして一番印象的だったのは国会で行った先住民アボリジニへの公式謝罪、「歴代の議会・政府の法や政策によって、われわれの仲間であるアボリジニに多大な悲しみ、苦しみ、損害を負わせたことを謝罪する」という言葉でした。
自らの過去の過ちを認め、きちんと謝罪することは、自虐でも“自国を悪い国だと言うこと”でもなく、“良い国”の証だと私は思います。
いずれもハワード保守政権が拒み続けていたもので、「時代が変わった」と強く国民に印象づけ、支持政党を超えた支持を獲得しました。
その国民の強い支持を獲得したラッド首相、依然6割を超える支持を維持し続けているそうです。
****金融危機、素早い対応で高支持率保つ 豪ラッド政権*******
オーストラリアのケビン・ラッド首相(51)率いる労働党政権は発足から、3日でちょうど1年。クリスマス前の「支援金」支給策など素早い金融危機対応が評価され、首相は支持率が6割を超えて好調だ。ただ、相次ぐ景気刺激策に財政赤字への転落を危ぶむ声も出始めている。
ニューズポール社による11月下旬の世論調査では、首相の支持率は63%。野党・自由党のターンブル党首の21%を大きく上回った。就任以来、首相は6割前後の支持率を保っており、同社も「調査開始以来初めて」と驚いている。(中略)
金融危機が表面化すると、最初の住宅購入への最大2万1千豪ドル(約130万円)の補助や、クリスマス前の1人あたり1千~1400豪ドル(約6万~8万円)の支援金支給など総額104億豪ドルの緊急経済対策を発表。11月には追加策として、向こう5年間で教育や医療分野の公共事業に151億豪ドルの拠出を決めた。
バラマキともとられかねない矢継ぎ早の対策に、自由党は「根拠や効果が不明確で、場当たり的だ」(党首)と批判を浴びせるが、ラッド首相は「行動しなければ、この危機には対応できない」と動じない。政権発足当初の諸施策が一段落し、支持率が息切れしかけた矢先の金融危機が「追い風」となった形だ。
【12月4日 朝日】
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【オーストラリアの支援金支給】
こうした大盤振る舞いが躊躇なくできるのは、オーストラリアの国家財政がハワード前政権時代に黒字になっており、石炭や石油、鉄鉱石などの資源輸出国であるオーストラリア経済が世界的な資源高の恩恵を受けて好景気だったことが背景にあります。
10月に発表された景気刺激策にかかわる出費はすべて、5月の予算案発表時に明らかにされていた217億豪ドルの黒字幅から拠出されます。
しかし今後については、昨今の資源価格下落、輸出先である中国経済の減速という今後の環境で、これまでのような政策が続けられるのかは疑問を呈する向きもあるようです。
そのオーストラリアのクリスマス前の支援金支給が開始されました。
“給付対象となるのは、一般家庭200万世帯と年金受給者400万人で、クリスマスまでの2週間以内に給付金を受け取る。障害年金受給者や単身の老齢年金受給者には1人1400豪ドル(約8万7000円)、夫婦で年金を受け取っている家庭ではあわせて2100豪ドル(約13万円)、低中所得家庭については子ども1人につき1000豪ドル(約6万2000円)が支給される。”【12月8日 AFP】
年金受給者と家族優遇税制や各種福祉手当の対象となる低中所得家庭世帯を対象にした給付金ですが、ラッド首相は給付金を貯蓄にまわさずに子供や孫のクリスマスのための買い物で使ってほしいと訴えています。
【日本の麻生総理は】
他方、日本では麻生総理の支持率がここひと月で暴落状態です。
原因としては資質の問題もありますが、政策的には2次補正予算の先送り、その主要項目である定額給付金をめぐる一連の問題があります。
かたや、クリスマス前に給付金政策を断行して6割の支持率を維持、かたや、二転三転・先送りで支持率暴落・・・と、つい比較もしたくなりますが、まあ、先述のようなオーストラリア財政の好調といった事情など、それぞれ異なった環境での決定ですから単純比較は麻生総理に気の毒でしょう。
ちなみに、給付金支給的な政策は日本・オーストラリア以外にもアメリカ、イタリア、台湾、ドイツなどでも実施、あるいは検討されています。
【アメリカの小切手】
アメリカ・ブッシュ政権は今年1月、所得税を還付する形で、個人には最大600ドル(夫婦合算申告の場合は1200ドル)、未成年の子供がいる場合は1人に付き300ドル追加支給する、所得税を支払っていない世帯でも、3000ドル以上の勤労所得、年金所得又は退役軍人手当てをもらっている場合には300ドル(夫婦合算申告の場合は600ドル)を受領出来るという内容で決定し、対象となる1億1700万世帯への小切手の送付を5~8月に実施しました。
家電業界団体(CEA)調査では、74%の消費者が還付金を受領後4ヶ月以内に使う考えで、家電製品購入を考えている人の内、53%がコンピュータ、39%がテレビ、23%が携帯電話を購入すると回答しているそうです。
【「カーク船長4761」さんのブログ http://plaza.rakuten.co.jp/kirkhanawa/diary/200809140000/】
【イタリアのカード】
イタリアでは、低所得者層約130万人に対して、クリスマスに120ユーロ入りの「キャッシュカード」が支給されます。
このカードは「ソーシャルカード」と呼ばれ、年金生活者、子どもが多い家庭については、追加支給分が後日「チャージ」される仕組みになっております。
この政策は、原油価格の高騰により大きな収益を上げている企業から企業所得税を超過徴収し、「低所得者層」への給付金の財源とする、いわゆる「ロビンフッド税」と称されるものです。
年金生活者への支給については年齢と年金支給額で制限が設けられています。
(65~69歳は6000ユーロまでの人、70歳以上は8.000ユーロまで、他に持ち家、自動車などについての規定もあり)
追加支給対象者にも制約があります。
((銀行口座の残金が15000ユーロ以下、持ち家、車なしなどの条件あり)
使えるのは、食料品店でのみ。ただし店に売っていれば、食料品以外も購入は出来るとか。
この支給政策について国民の76%が支持しているそうです。
【http://blog.h-h.jp/investnews/2008/11/28/economic-measures-in-major-countries/ 投資経済データリンク、 http://nikitoki.blog.so-net.ne.jp/2008-11-25-3 トクダス】
【ドイツも】
ドイツは10、11月に合計総額500億ユーロに上る景気対策を決めていましたが、不十分との声もあって、日本が進める定額給付金と同じようにばらまき型の「消費券」の配布計画を検討していることが報じられています。
総額は150億ユーロ(約1兆8千億円)に上るとみられ、配布が検討されている消費券は500ユーロ分、配布対象はサラリーマンなど約3千万人、早ければ年明けにも詳細を決定する可能性があるそうです。【11月27日 朝日】
【台湾の消費券】
台湾は日本で99年に交付された地域振興券に似た消費券を発行します。
当初、所得制限を設けるとされていましたが、「所得再分配が目的ではなく、消費を喚起して経済を刺激する施策なのだから、所得制限を設けるのは趣旨に反する」との考えで、全国民を対象とすることになったそうです。
消費券は国民一人当たり台湾元3600元(10,400円)のチケットで、旧正月にむけて1月18日に発行され、来年9月30日まで使用可能だそうです。
台湾の物価水準で考えると、日本円で2万5千円から3万円ぐらいの価値観だそうですから、世帯合計すればそれなりの金額になります。
大統領選挙で全国1万4千ヶ所余りに投票所が設けられたのと全く同じ場所を来年1月18日の1日間、消費券の「発券所」にして、通知葉書と引き換えに消費券をもらうことになるとか。
なお、1月18日に「発券所」へ行けない者は、2月中旬以降、4月末までに最寄の郵便局の窓口へ通知葉書と身分証明書を持っていけば消費券がもらえるそうです。
【国際派時事コラム「商社マンに技あり!」
http://archive.mag2.com/0000063858/20081127003000000.html?start=220】
【日本の定額給付金】
所得制限有無、小切手・商品券・カードなどの支給方法、支給額等々、各国様々です。
当然、国によって生活習慣も異なりますし、消費性向も異なり効果も異なります。
これだけ一斉に実施すれば、おそらく来年あたりは定額給付金とその効果に関する詳細なリポートがたくさん出そうです。
ただ残念ながら、それを待っていては遅いので、やるのであれば早くきちんと決めないと・・・・。