(国境なき医師団(Médecins Sans Frontières MSF)によって治療を受けるジンバブエのコレラ患者 上下水などの衛生環境の悪さが感染を拡大します。11月22日撮影
“flickr”より By Sokwanele - Zimbabwe
http://www.flickr.com/photos/sokwanele/3092811870/)
アフリカ南部のジンバブエにおける政治・経済崩壊についてはこれまでもたびたび取り上げ、11月29日ブログでは、同地で更にコレラの被害が拡大していることについても書いたところです。
何度も同じようなことを取り上げるのは「またか」と言われそうなのですが、いかんせん事態が改善せず悪化するばかりなので、再度今日もジンバブエの話題です。
経済崩壊で水道水給水もままならない状態で、これがまたコレラ感染拡大を拡大しています。
****コレラ流行のジンバブエ、首都で給水停止*****
コレラ感染が拡大するジンバブエで、国営メディアが1日に報じたところによると、首都ハラレでの給水が停止された。また、保健相は、感染防止のため握手をしないよう呼びかけた。
ハラレでは過去数年間、崩壊寸前の経済状況のため、広範囲で電力不足となり給水ポンプが停止し、断続的に給水が止まることがあった。
しかし、今回のハラレ全域での給水停止は、周辺の未処理の水の流れを止める目的があるとみられる。ハラレはコレラ流行の中心地で、8月下旬以来425人の命が奪われている。その大部分は前月1か月で亡くなっている。
給水が完全に停止したため、住民の多くは驚いて容器を手に井戸や貯水タンクに水を探しに出ている。ロバート・ムガベ大統領統治下での生活苦に新たな困難が加わった。
水を見つける望みを込めて庭に井戸を掘りつつ、トイレ代わりに別の穴を掘るという手段に出る住民もおり、コレラ感染拡大の原因となった衛生状態の悪さに拍車を掛ける恐れがある。
一方、政府系日刊紙ヘラルドによると、水を消毒する薬品を入手できないため、ジンバブエ水道当局は給水を停止したと報じている。【12月2日 AFP】
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断水については“首都ハラレでは、浄水に用いる硫酸アルミニウムが不足したため、前月29日から断水が続き、市民らは水を確保するため井戸を掘り、自主的に水を売買するなどしてしのいでいたが、政府関係者によると、3日に断水は復旧したという。”【12月4日 AFP】とも報じられています。
【医療制度も崩壊】
ジンバブエ政府は3日、コレラ感染拡大による死者が560人を超え、病院での患者受け入れが限界に達したとして非常事態を宣言し、国際社会に支援を要請しました。
保健・児童福祉相は「わが国の中央病院は機能していない。わが国の医療スタッフはやる気をなくしている。医療スタッフを職場に戻し、保健システムを再び機能させるため、わが国はあなたがたの援助を必要としている」と述べています。
確かに、断水によって、主要病院の職員らが欠勤しているとも報じられています。
しかし、“首都ハラレで3日、銀行預金の引き出し制限に抗議する労働組合員らによる抗議デモがあり、警棒などで武装した機動隊が出動し、抗議デモ参加者ら数十人を拘束した。また、同国の医療システムが崩壊している現状を訴える請願書を届けようとしていた医師や看護師らも警官隊に解散させられた。”とも報じられています。【12月4日 AFP】
医療を崩壊させているのは“医療スタッフのやる気”といった問題ではなく、ムガベ政権の無策・機能麻痺の問題です。
また、首都ハレラでは複数の店舗で軍兵士による略奪が起きたとも報じられています。
軍の広報官は「何があったにしても軍の公式な行動ではない」と語っているとか。【12月3日 AFP】
ムガベ大統領と政治的に対立している野党MDCのツァンギライ議長は1日夜、セネガルの首都ダカールで記者団に対し、「ジンバブエは崩壊しつつある」と述べています。
【拡大するコレラ、更に炭疽病も・・・】
国連は5日の時点で、ジンバブエではコレラで589人が死亡、1万3960人が感染していると推定しています。
しかし、ユニセフは「これらの数字はジンバブエの保健所への報告を基にしており、多くの保健所はもはや機能しておらず、実際の数字はもっと大きいだろうと」と話しており、また、WHOは“ジンバブエでは最悪の場合、最大6万人がコレラに感染する可能性がある”とみていると報じられています。
悪い知らせはまだあります。
英国際援助団体セーブ・ザ・チルドレンは、“ジンバブエ北部で炭疽病の感染が確認され、これまでに3人が死亡し、家畜が全滅する恐れがある”と発表しています。
炭疽病は通常家畜にのみ被害を及ぼしますが、感染した動物を飼育したり食べたりすることで、人間にも感染することがあるそうです。
セーブ・ザ・チルドレン責任者は、ジンバブエは深刻な食料不足で、住民は炭疽病で感染死したと知っていてもその動物の肉を食べざるを得ない状況にあると語っています。【12月2日 AFP】
【インフレ率は推定2億3100万%!】
ジンバブエでは“歴史的”なハイパーインフレーションが続き、経済は崩壊しています。
“ジンバブエ中央銀行は4日、深刻な紙幣不足に対応するため、新1億ジンバブエ・ドル札と新5000万ジンバブエ・ドル札を発表した。深刻なインフレが続くジンバブエでは、人びとが預金を引き出すために銀行窓口に長蛇の列をつくっている。だが、数時間かけて並んでも、紙幣不足のためほとんどの場合まったく引き出せない状態で、引き出せても片道分のバス運賃程度にしかならないという。”【12月5日 AFP】
こうした事態に抗議する労働者のデモを警官が警棒で蹴散らしている・・・というのは先述のとおりです。
なんとも、希望の見えない状況です。
確かに、海賊騒ぎでやっと国際社会が目を向けてくれた無政府状態のソマリア、紛争が続くコンゴ、忘れられたのか最近あまり状況が報じられなくなったダルフール等々・・・もっとひどい場所がない訳でないですが。
【国際批判、されど居座るムガベ大統領】
ジンバブエ・ムガベ大統領に対する厳しい批判は以前からありますが、いくら言っても“国家主権”の前では力を持ち得ない現実に苛立ちも感じます。
****ジンバブエ大統領に国際社会が辞任圧力****
欧州各国首脳は8日、コレラの流行や深刻な食糧不足による国民の困難を無視しているとしてジンバブエのロバート・ムガベ大統領に対する辞任圧力を強めた。
ボツワナやケニアなどアフリカ諸国や米国は前週、ムガベ大統領は辞任すべきとの見解を示していた。欧州連合(EU)やフランス、英国もそれに続いた。
ニコラ・サルコジ仏大統領はパリで、もはや交渉の余地はないとし「ムガベ大統領は辞職すべきだ」と発言した。
(中略)
米国のコンドリーザ・ライス国務長官は前週、「ロバート・ムガベ大統領が辞任すべき時はとうに過ぎている」と述べた。また、コフィ・アナン前国連事務総長は前週末、ジンバブエ現政権は危機を終わらせる能力がないと述べていた。(後略)【12月9日 AFP】
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ムガベ大統領は辞任を拒否しており、ムガベ大統領の報道官を務めるGeorge Charamba氏は、欧米諸国が、ジンバブエを国連安全保障理事会に持ち込むために、コレラ流行と食糧不足によってムガベ政権が機能不全に陥ったと主張していると非難しています。
また、ジンバブエの国営メディアは7日、コレラの発生についても、ムガベ政権に対する欧州の制裁措置のせいであると伝えています。
ミャンマーの場合もそうですが、頑な国家主権の前では、国際世論には限界があります。
こうしている間も大勢がコレラによって死んでいきます。
ユニセフは9日、ジンバブエで感染が拡大しているコレラに対処するため、1750万ドル(約16億円)が必要だと発表して協力を求めています。