2024/10/31 読売新聞オンライン
粉河産土神社で初の女性宮司に就いた蒲さん(紀の川市で)
粉河地域の神社を巡ると授与される「特別御詣印」
紀の川・粉河産土神社 ヨガも好評 楽しく参拝 身近な場所に
紀の川市粉河にある粉河 産土(うぶすな )神社は、同神社や周辺のお社を巡ると特別な御朱印を授与する「粉河七社 詣もうで 」に取り組んでいる。1200年以上の歴史を持つ同神社で初めて、女性の宮司になった 蒲かば 梓さん(36)が発案。自身も神社が大好きで神職になったことから、「神社へ訪れる機会を増やし、身近な場所にしたい」と意欲をみせる。
同神社は、西国観音霊場の第三番札所・粉河寺の鎮守として創建されたという。「たのもしの宮」とも称され、地域一帯の人々を守る神様でもある。7月の祭礼・粉河祭は紀州三大祭りの一つだ。
粉河出身の蒲さんは、19歳だった正月に同神社で 巫女 のアルバイトをした。大学では国際文化を学んでいたが、この体験で日本文化に関心を持ち、勉強を兼ねて神社へ通った。卒業後に就職したが、土日は神社へ。20代半ばには宮司を補佐する「 禰宜(ねぎ) 」になった。
神職として働く傍ら、結婚し、2人の子に恵まれた。そんな中、腰を痛めていた先代宮司らから2022年春、宮司を継いでほしいと要望された。でも、子どもはまだ乳幼児。不安は大きかったが、役員らの「後ろに私たちがいるよ」との言葉に背中を押され、23年4月に宮司に就いた。
朝は9時から境内を掃除し、 祈祷きとう をしたり御朱印を書いたりと様々な業務をこなし、夕方に退勤する。幼稚園への送迎や家事などもあって多忙だが、「神社に来てくれる人と交流することが好き。私も神社が大好き。この気持ちが原動力」と笑顔を見せる。
一方で「神社は遠い存在だと思う人もいる」とも感じている。楽しく気軽に参拝に来てもらえるよう、「粉河七社詣」を9月から始めた。粉河地域の須佐、岸本、熊野など計7神社の祭神を描いたカード形おみくじを5枚以上集めるなどすると、特別な「御詣印」を授与する仕組みだ。
また、境内ではヨガ教室も開いている。自然の音や、境内にBGMのように流している雅楽により、心がすっきりすると好評で、ほかにも企画を思案中だという。
新たな取り組みを進めつつ、神社が紡いできた歴史を後世に継ぎたい。蒲さんは「役員さんから神社の思い出話をよく聞く。年齢を重ねても心に残る場所にしたい」と話す。