豊田の生活アメニティ

都市デザイン、街歩き・旅行、くらし

「住民発意の地区計画の提案条例」

2006-04-27 | 都市計画・まちづくり
 「住民発意の地区計画提案条例を」(大村議員、平成17年12月議会議事録抜粋)
 大村議員
今回の耐震偽造事件は、被害に遭われた住民個人だけでなく、近隣の住民や地域社会にも影響を及ぼすという問題を提起いたしました。マンションだとかホテルというのが問題になったわけですけれども、結局地域における建物の建て方が勝手放題に行われれば住環境やまちづくりに深刻な影響を及ぼす、こういう問題を提起したんだと思います。一方、最初からのご答弁にありますように、現状では行政による指導だとか規制というのに限界がある。
高層マンションの建設やラブホテルやパチンコ店、こういう進出、建築、こういうものにあたって住民との紛争になるケースが少なからずあります。住環境を守りたい、こういう住民の意思を尊重して建設を規制できるような行政としての仕組みというのはどのように整っていますかお答えください。
佐藤部長
現在、豊田市は、できる限り紛争を予防するねらいも含めまして民間事業者が一定規模以上の開発事業を行う場合、法令に基づく許認可の手続の前に事前協議を行うことを規定した豊田市開発事業等に関する指導要綱を定めて運用しております。よって、当面は開発指導要綱等に関する指導要綱を継続していきたいと考えております。
大村議員
私の住んでおります梅坪地域で、名鉄の梅坪駅の前にパチンコ店ができました。地区のいわば玄関口の真正面にパチンコ店であります。もっとそこに合ったような建物ができてほしいなという地域の願いでありました。ここに最初に建築の申請が出たときには、目的はパチンコ店ではありませんでした。もっと違うものでありました。それならいいでしょうということで地域の皆さんたちもお認めになった。ところが申請が出た後変わってしまったわけです。受け付けた後変わってしまってパチンコ店に変わった。だから変わってしまったという説明を受けた区長さんたちは大変怒っております。地域のまちづくりに規制力を持った地区計画を住民の側から提案して作れないかということであります。これは都市計画法の改正により可能になったと理解をしておりますけれども、受け皿としての条例が整備されないとできません。現状、豊田市としてはそのような受け皿になる条例はどうなっていますか、そのような条例を整備する必要性をどうお考えになっていますかお答えください。
佐藤部長
都市計画法では、地区計画を住民が主体的に検討し活用するため、地区計画の申出制度がございます。この申出制度は、市の条例で申し出る方法を制度化して運用できると規定されております。しかし、本市では、地区計画を目的としたまちづくり協議会に対し様々な支援体制により地区計画の積極的な推進を図っております。
 地区計画に申出に係る条例制定は、現在のところ考えておりません。これからも地区計画によるまちづくりを希望される地域については、ぜひ担当課のほうへご相談いただければと思っております。
 大村議員
これは行政が上のほうから作るのではなくて、必要なところで住民が発意でできるようになりましたよというふうに国のほうも法律を変えたんだから、受け皿を作らないとやれないのではないですか。高層マンションが建って困って紛争になって、結果的に建ってしまった地域がありますね。このときにはもう苦労した。しかし、二度も三度もこんなふうになるのは嫌だ、せめて地区計画できちっとしたいんだ、そういうところの住民発意で受け皿を作って条例にしておいてあげないとできないのではないですか。(詳細は豊田市の議会議事録をご覧下さい)
コメント (1)
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犬山市の景観地区

2006-04-27 | 都市計画・まちづくり
 ken@taroさんのTrack Backで「疑惑の高さ制限緩和地区」を知りました。高層ビル・日照問題は私の最大テーマの一つで、さっそく犬山市都市計画課に電話でヒアリングしました。景観地区の地図は犬山のHPか、ken@taroさんのブログをみてください。
 犬山市では現在、景観整備地区、重点地区、高さ制限緩和地区があります。これは景観法によるものでなく独自の条例による先進的なものです。本町通りでは重伝建より低い伝建地区を目指しているそうです。現在の重点地区は歴史的な城郭の地区で、条例により制限をしています。景観法に基づいて、条例化の見直しはしているそうです。しかし、都市計画決定を必要とする景観地区の準備はしていません。
 さて問題なのは高さ制限緩和地区です。この高さ制限は自主条例によるもので、現在31m+アルファーつまりお城より高くしてはいけないというのは納得です。この景観エリア外にある写真のマンションがきっかけで、この自主条例を制定したと聞いています。今回問題になっているのは景観整備地区の上方にある僅かな川端の地区で、マンションの建設が問題になっているようです。なぜここに高さ制限緩和地区なのか疑問がでますが、経過は区画整理を行ったからとの説明でした。ここでの計画概要は確認していませんが、31mは高いと思います。対岸の各務ヶ原との調整でも木曽川の景観から、市も低く指導するようです。私も川べりから犬山城の景観が最も美しいと考えています。国宝の如庵もありますが、隣の犬山ホテル始め川沿いにはホテルが建設され、景観の価値を下げていると思われます。開発者の利益と市民的共有財産である景観との調整が、どのように図られるか見守りたいです。
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「まちづくりと景観」

2006-04-24 | 気になる本
「まちづくりと景観」田村明、岩波新書、2005年
 田村氏は今年で80歳になられる都市政策プランナーです。飛鳥田一雄横浜革新市長の時期(1968~81年)に、請われて部長になっています。「横浜の中心部を走る高速道路を地下にもぐらせ、都市を美しくするアーバンデザイン行政を市民と共に進めたこと、タテ割り行政を改め、企画調整という本来の市役所の都市づくり行政のモデルをつくったこと」(川瀬光一)などの実績があります。このことは「まちづくりの発想」(岩波新書、1987年)にまとめられています。私は97年19刷りを読みましたが、余り記憶にありませんでした。しかし、その延長線上にある今回の本は、国内外の豊富な事例があり分かりやすくなっています。また、まちづくりの単位を生活の小単位にすること、発想が現場から、行政の総合調整機能の重要性など体験からも、感動と納得の本です。豊田の市長も「公正」「市民」「現場」の視点を強調されますが、お勧めしたい本です。キーワードとしてアメニティ、歩行者空間、都市の風格、景観基準、事後解決の困難などが体系的に分かりやすく整理されています。アメニティについてはブログのテーマでもありますので引用します。イギリスの都市計画ではアメニティが大切にされていて、「どんなに単体としては優れたものでも、周りとの関係が場違いならばアメニティを壊す。つまり関係性の価値を重視するのがアメニティで、人間と周りの事物との関係がうまくいっていること、人間らしいゆとりをもち、安らかで、気持ちよく、穏やかでいられることを評価する。」としています。私も関わった1998年の、豊田市駅周辺のバリアフリーまちづくり計画のコンセプトを、「歩行者空間ネットワーク」としたことは評価されると思います。本では「愉しいのびのびした歩行者空間をつくるのは、クルマ社会にたいする人間社会の挑戦である。」と述べています。先日の犬山市長の話も「街を歩く」がキーワードでした。風格のある都市、「都市格」という言葉は宮本憲一氏が以前使っていたと思います。同時代のプランナーには美濃部都知事の下で活躍した、柴田徳衛氏がいます。また、西では京都の故西山卯三氏とその「門下生」が活躍されています。「妻籠の町並みに価値を見出したのは、南木曽町の職員小林俊彦」氏というのも印象的でした。自治体の景観政策は、「総合的な政策をおこなう調整部局が担当すべきだろう。」と、述べていますが、以前は豊田市役所にも「都市景観課」があったことを思い出します。また、建築確認が民間でもできるようにしたことについて、「民間事務所が機械的に確認し、責任所在を不明確にしてよいかは大きな問題」、「望ましいのは、建築確認ではなく、市民の承認という意味での建築許可にして自治体の責任にしてゆく方向だ」と述べているのは同感です。
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滑らない大理石

2006-04-24 | 都市計画・まちづくり
 大理石の表面は磨くと美しくなります。でも、この石で転んだり、滑ったりした人は多いと思います。写真は表面に滑り止めを上手に仕上げています。交流会の会場へ行く途中、バリアフリーの東海地区の第1人者、中部大学の磯部さんと一緒になりました。そこで道中歩道を批評しました。全体的に犬山の駅舎はこれからだそうですが、周辺はまずまずということでした。細部では、横断勾配が2~3%と傾斜がきつい、店舗と歩道のすり付けができていない、交差点のすりつけ勾配がきつく横断歩道をマウントアップすれば良い、などでした。また点字ブロックが6つの山から5つの山になったのは何故かとの質問で、車椅子が通りやすく、山の凹凸を足で感じやすくするためではないかとの意見をいただきました。建築家やNPOが人にやさしい街づくりで尾張地区は活発でしたが、現在は停滞とのことでした。愛知県条例も制定時は先進でしたが、今年の改定内容は三重県条例に遅れをとったものです。もはや自治体独自で条例化すべきでしょう。国会ではハートビル法と交通バリアフリー法が合体して整備される法案が審議されていますが、運動体は休眠状態です。時の流れは防災まちづくり、美しい景観まちづくりでしょうか。時代の流れを読んで流されるか、竿をさして反体制派でいくのか悩ましいところです。なぜなら、自治体職員が市民のためにとがんばっても、上司と違った意見を言えば勤務評定で給料が下がる成績主義の時代でもあるからです。この制度は労働意欲を最も削ぐ制度だと実感しています。
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桃花色の壁

2006-04-23 | 都市計画・まちづくり
現地見学では改装された磯部家をみました。昨年は修理する前を犬山市のまち歩き講座で見学させてもらいました。やはり気になるのはもも色のじゅらく壁です。内部でこの程度なら問題ないでしょう。軽く丸みかかった起り(むくり)屋根は美的感覚との話しでした。また、なぜ間口が狭いのかという質問に、学芸専門家の回答は今井町の観光ボランティアと同じく税金対策だそうです。説明では建物は明治で濃尾地震の被害も受けたとのことでした。近くには防衛手段として集められたお寺の寺内町もあります。市長の家も改築されていますが、イメージは生きています。それでも解体する敷地が見られ、重要伝統的建築物郡指定への道はまだ大変です。しかし、夢として世界遺産を目指すと、市長は講演で言ってました。
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「美しい犬山のまちづくり」

2006-04-23 | 都市計画・まちづくり
都市計画・まちづくりの会議で犬山市長の基調講演、「美しい犬山市のまちづくりについて」を聞きました。話の気になった要旨は次のとおりです。
「私のまちづくりのテキストは選挙である。学者も原理・原則で意見は重要である。ライバルは金沢市で、磁力のあるまちである。小布施町も好きで何度か行った。犬山の美しいまちづくりで、歴史的まちづくりとして都市計画道路の決定を覆したことと、歩くまちづくりをコンセプトにしたことである。有松、足助と一緒に町並み保存運動に関わった。当時は反体制派の少数勢力であった。その後町並みゼミが、犬山の都市計画道路の拡幅による歴史的町並み破壊反対の決議が大きな支援になった。景観を壊しているのは今いるこの市の福祉会館である。
現在、自治体の一番の問題は合併である。西春町長や伊勢市長はそれが要因で自殺したと思われる。合併して広域になることは拡大の思想で、中心に向かわない、求心力が無い。現在最も重視していることは小学校単位のコミュニティ構築である。共同体は価値観の異なった人がおかげさま、おたがいさまなど協働の考えを持つ。そのベースは歩いて暮らせるまちづくりの単位である。運動論として教科書の副読本を先生に作ってもらった。先生は組合で左派系の人がいても、郷土を愛する地域のまちづくりは共通項があり、一生懸命やってもらえた。」(筆記メモ)
 石田氏の政治経歴は江崎真澄の秘書、自民党県会議員、市長。コミュニティ政策学会副会長。風貌は小泉首相に似ていますが、痛みだけを伴う小泉改革と、地域の住民、郷土を愛する市長とでは雲泥の差があります。こんな上司の下で働いて見たいと思いました。朝が早く眠たかったが、眠らずに楽しく聞けました。そして、豊田の広域合併とコミュニティ政策について研究しようと意を強くしました。
 (写真は評判の悪い福祉会館からの町並みです。)
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「生活道路の整備」

2006-04-20 | 都市計画・まちづくり
 「生活道路の整備について」抜粋(松井正衛議員、平成17年12月議会)
豊田市内における生活道路の整備についてであります。平成16年に監査委員から市民生活基盤整備の現状と課題に関する報告書が出されております。その中で生活道路は市民生活を直接支える最も基礎的、普遍的な生活基盤であり、優先的、計画的に整備すべきであると指摘されています。市道や生活道路に視点を置いた整備について質問をいたします。
 現在、建築基準法で定める都市計画区域内の主な道路とは、法第42条第1項1号の国道、県道、市道等道路法による道路、同3号の規定による法の公布以前より存在する幅員4メートル以上の道路、同2項による幅員4メートル未満のみなし道路であります。市街化区域における後退用地の整備についてであります。幅員4メートル未満のみなし道路に接続した道路に住宅を建築したい場合、建築基準法に基づき後退の義務が発生します。建築に関係することから後退用地の受付窓口は、建築相談課になっております。平成16年度における後退用地整備事業の実績は、届出件数が290件、寄附件数は260件、寄附面積が5,768平方メートル、そのうちの整備面積は3,091平方メートル、事業費が1億7,700万円となっております。そのほかにも建築を伴わない法定外道路整備工事分担金条例による後退用地もあることから、質問の一つ目としまして、後退用地取扱窓口の一本化及び事務処理体制や組織体制の見直しをして後退用地整備に取り組む必要があると考えますが、いかがでしょうか。(詳細は豊田市議会議事録をご覧下さい)
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建築基準法では建築物を建築する場合、4m以上の道路に2m以上接することが決められています。区画整理や開発行為のされた所では4m以上の道路が整備されます。しかし、既存の集落などでは狭い道路があり建て直しが困難となります。そこで4m未満に接する道路では、中心から両サイドが2m後退し、4mを道路とみなします。そうすれば立替がすすめばやがては4mの道路ができることとなります。豊田市では20年近く前から後退部分を寄付すれば、測量や整備を市が政策的に行なってきました。全国的にも先進的な成果を挙げてきましたが、路線が連続しなかったり、境界や工事範囲でトラブったり、下水道の敷設、路線整備や面的整備の進め方など問題が浮上してきました。また、囲にょう地・未利用地の問題、すみ切りをどうするのか、道路は4mがいいのか5mがいいのか、道路はクルマの通過交通がなくて行き止まりがよいのか、市民は整備の負担をどれだけ持つのかなど議論すべきです。法定外道路の整備は1割負担となっていることから、その区分けを明確にする必要もあります。これらの論点整理を1~2年かけ、中長期の方針を政策議論しなければ効率的な公共投資もできないし、計画的な都市計画・まちづくりはできないと思います。市民意識調査でも生活道路の整備は必要と読めますが、あまり重視されていないのではないでしょうか。
 (写真は栗林公園の石段)
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「拒否できない日本」

2006-04-17 | 気になる本
 関岡英之「拒否できない日本」文春新書、2004年
 「この驚嘆すべき恐怖の事実になぜ誰も気づかなかったのか!」と、帯にかかれています。私はそれとなく気づいていました。都留重人などが「日米安保解消の道」だけでなく、経済的服従の実態を書いてくれたらと、密かに期待していました。建築防災に興味のある者としては納得の本です。筆者は銀行員から建築の修士となっています。建築基準法改悪の背景がよく理解できます。他に競争社会、訴訟社会へと日本がアメリカ型社会に変えられる本質が、公文書から証明されています。サブタイトルの「アメリカの日本改造が進んでいる」は、小泉構造改革が中曽根内閣から続く新自由主義の改革で、アメリカのシナリオで小泉劇場を演じ、国民を煙に巻いていると読めます。
 今日本を騒がしてる耐震構造偽装事件の原点として、1998年の建築基準法改悪があります。これもアメリカの圧力です。中国のWTO加入と米中のグローバルスタンダードが、アングロ・サクソン主張に近くアメリカの建設業界に利益誘導するものです。建築基準法は1995年の阪神・淡路大震災を受けて、改定されたように装っています。しかし、建築審議会の答申では、「海外の基準・企画との整合等を図ること」と、「我が国の建築市場の国際化を踏まえ、国際調和に配慮した規制体系とすること」と書いてあることに気づいたとしています。そして、建築基準法の基本的な安全ルールを、誰でもわかりやすい「仕様規定」から、複雑な「性能規定」に変えました。「日本古来の匠の技を不要にし、外国の工法や建材がどっと日本に入ってくる道を開く」としています。性能規定に変更することは阪神・淡路大震災の教訓とは逆行です。また、「建築基準法の改正以外にも、たとえば賃貸住宅市場の整備を目的とする『定期借家権制度』の導入や、中古住宅市場活性化を目的とする『住宅性能表示制度』の導入なども、アメリカの建築資材供給業者のビジネスチャンスを拡大することを目的とした」と指摘しています。これらはアメリカの公式文書でも報告されています。今後何が起きるのか、アメリカの「年次改革要望書」を読めば書いてあるし、ルーツは古く1989年の日米構造協議でも、日本の改造が内政干渉されています。さらに1984年の日米円ドル委員会としています。
 90年の日米構造協議でアメリカ側は、貿易不均衡の問題を日本に是正するよう迫り、10年間で430兆円(95年には630兆円に変更)の「公共投資計画」を日本に要求しました。この時期はバブル崩壊の時期でしたが、無駄な大型公共事業が行なわれ、環境破壊と借金が膨大となり、今日の日本の財政を破綻させました。
 あとがきで、「アメリカがこれまで日本にしてきたことは、一貫してアメリカ自身の国益の追求、すなわちアメリカの選挙民や圧力団体にとっての利益の拡大、ということに尽きる。」としています。ではなぜ日本は国民が損をしても拒否できないのでしょうか。それは日本でも得をする人がいるからではないでしょうか。
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建築基準法、建築士法などの改正案について(2)

2006-04-15 | 都市計画・まちづくり
今回の改正案は日経アーキテクチャーのHP「構造計算偽装特集」(104)によれば、「建築基準法は、(1)確認検査の厳格化、(2)指定確認検査機関に対する監督の強化、(3)指定構造計算適合性判定機関に関する規定の整備、(4)建築基準適合判定資格者の登録の厳格化、(5)罰則の強化――などが改正案の主な内容」です。「建築士法は、(1)職責、(2)建築士免許の絶対的欠格事由の拡充、(3)建築士の免許および試験に関する規定の見直し、(4)建築士の業務の適正化、(5)建築士事務所の登録拒否事由の拡充、(6)建築士事務所の業務の適正化、(7)罰則の強化――などが改正案の主な内容」です。日経アーキテクチャーでは他に、「日本建築学会の中間報告」(99)で、責任があいまい、限界耐力計算法の問題」など指摘しています。さらに民間確認の「安い、早いを優先」(69)で、設計者の声が掲載されています。
 改正案の内容について、愛媛新聞(4・6)では、「この防止策では安心できない」としています。「法改正の最大のポイントは建築確認制度の見直しだった。耐震強度偽装事件で構造計算書の偽造を見逃したイーホームズなど国が指定、指導監督する民間の指定確認検査機関のあり方だ」。宅地建物取引業法改正案で、評価できる点もあるが、「売り主が倒産しても購入者に対する賠償責任を果たすことができるよう、売り主への加入を義務付ける保険制度の創設は先送りされてしまった。」ことは問題としています。
 日本共産党国会議員団「建築基準法改正案等の審議にあたっての提案」(HP)では、「問題の核心は、規制緩和によって・・建築確認・検査を民間まかせにし、チェック体制も整えないままコスト最優先の『経済設計』を可能にした。」としています。「1、建築確認・検査制度を抜本的に改善で、「民間検査機関を非営利法人とし、検査業務は地方自治体からの委託によって行なう」としています。細目で、責任を自治事務であるから地方自治体とし、確認申請を自治体が行なうとあり、基本的には責任がはっきりし賛成ですが、現実的には非営利団体では不可能で、自治体の人員増ができるかでしょう。「(3)ピアチェックの義務付け」は法案と同じ方向ですが、書類の保管は電子文書にしないと不可能です。この導入は国の指導により行なっていますが、費用だけかかって実現していません。工事監理者や施工者が中間検査の写真などを、マンションなどの管理人に保管させるシステムの方が現実的だと思います。「2建築基準の(1)耐震基準引き上げ」で、東京都などの1.25倍の行政指導について同感ですが、地方の自治体では地域係数の根拠資料をつくる財政と技術を持っていないので、マニュアルや財政支援などが必要です。「(2)構造計算プログラム見直しについて、「ブラックボックス」化していることから見直しは当然だと思います。「3建築士の独立性を確保」で、建築士の報酬を適切にするのは当然ですが、「増えすぎた」建築士と、工事監理費の正当な代価を払う制度が必要です。設計事務所での勤務は低賃金、長時間労働で、自立しても仕事が確保できないのが悩みではないでしょうか。「4瑕疵保証制度について」宅地建物取引業者の説明責任、売主などの瑕疵担保責任保険への加入義務、欠陥か否かの立証責任は企業側などは、現実的で具体的な効果のある提案です。企業の政治献金を受ける政党は賛成しないでしょう。「5住まいは人権で、今国会では『住生活基本法案』は住宅供給を市場まかせにする」ことや、「建設業界の重層的下請け構造を是正する」課題も基本的な解決をしないと、国民の住宅への不安は消えません。
 住宅は消耗品でなく国民の生活の基礎であり、社会的共通資本としてストックすべきものではないでしょうか。
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建築基準法、建築士法などの改正案について(1)

2006-04-15 | 都市計画・まちづくり
姉歯構造建築士の構造計算偽装が、民間検査機関による確認で建築物の安全性が問題となりました。その後自治体でも偽装見逃しが発覚し、大きな社会問題となっています。その背景には規制緩和による企業の経済利益優先があります。今回の改正案は国交省の社会資本整備建築分科会の、建築行政のあり方の中間報告案をベースにしています。建築行政のチェックの強化と建築士の罰則強化で一歩前進ではありますが、基本的問題に踏み込んでいないと思います。日弁連は建築行政のあり方の中間報告案に対して、建築物の安全性確保のため早急に講ずべき施策として以下の6つの事項で、意見(2・15)を出しています。
1.建築確認申請に際して提出すべき図面を質量ともに十分なものにする。
2.すべての建築物について中間検査を義務づける。
3.指定確認検査機関制度を廃止し、住宅検査官制度(仮称)を導入する。
4.建築士の建築業者からの独立性を実現する。
5.住宅供給にかかわる建築業者、住宅販売業者、建築士等に対する罰則を強化する。
6.住宅供給にかかわる建築業者、住宅販売業者、建築士等に、住宅建設に関する損害賠償責任保険への加入を義務づける。
 コメント 日弁連は欠陥住宅の問題を早くから取り組んでいます。指定確認検査機関制度導入時にも問題を指摘し、アメリカなどが実施しているインスペクター(「住宅検査官制度」)を主張していました。それが3の事項だと思います。また、4の「建築士の建築業者からの独立性の実現」も重要な指摘だと思いますが、いずれも今回の改正案にはありません。
(写真はイメージ; アパートの6階からの景色で下の子どもが確認できます。地方都市の共同住宅のヒューマンスケールはこれくらいの高さが限度では)
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