豊田の生活アメニティ

都市デザイン、街歩き・旅行、くらし

科学者は戦争で何をしたか

2015-11-11 | 気になる本

益川敏英(2015)『科学者は戦争で何をしたか』集英社新書

 著者は「二足のわらじがはけなきゃ一人前じゃねえ」という、恩師の坂田昌一先生の影響が大きいと言います。研究者が研究するだけでなく、市民のために社会運動に関われという意味であろう。科学技術が社会進歩に役立っても、悪用されてはならず結果に責任を負うべきである。ノーベル賞受賞の記念講演で横やりがあっても、新年を通し「戦争」を語った。そもそもノーベルがダイナマイトで利益を得たのが賞の発端であり、科学は使う人間によって平和利用も軍事利用も可能である。するどい科学的視点は現在の安保法制に向けられ、発言もされている。「戦争法案」は非戦闘地域をなくす、自衛隊が海外で武器を使用する、安倍さんがアメリカに勝手に約束、安倍さんのごまかしの説明など鋭い考察である。さらに、領土問題、外交交渉、9条にノーベル賞など具体的な解決方法も提案してる。

 「原子力」はあるゆる問題の縮図として、平和利用と軍事利用を述べている。核兵器問題や平和運動にも関りが深く、核廃絶の壮大な展望、地球上から戦争をなくし着想など、経験と理論に裏付けられたわかりやすい論理に、説得力と含蓄がある。

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食の戦争

2015-11-09 | 気になる本

鈴木宣弘(2013)『食の戦争-米国の罠に落ちる日本』文芸春秋

 著者はTPP反対の第1人者の一人です。本のはじめにで『「今だけ、金だけ、自分だけ」は、最近の世相を良く反映している。』と、述べています。「原発事故でも思い知らされたはずだ。目先のコストを惜しんで、いざという時に備えて準備しなかったら、あとでとんでもない取り返しのつかないコストを払うことになる。食料についても、まさに同じ構造で捉えられるのではないか。」と警告しています。いくつかの論点を以下に列記します。「いいこともある」という意見もあるが、「食料に安さだけを追求することは、命を削ることと同じである。」というのが主眼です。

 安さに目がくらむ消費者になぜなったのか

 日本人は食の安全性に敏感というが、食料自給率は39%である。1俵作るのに1万4千円かかるが、3000円でおいしいコメが入れば、国産米は危機にさらされる。

 主要穀物の備えが食料危機回避の鍵

 アメリカには、トウモロコシなど穀物農家の手取りを確保しつつ政界に安く輸出するための手厚い差額補填制度がある。財政負担を減らすため、バイオ燃料推進政策を開始し、穀物価格のつり上げを成功させた。

 食の安全を確保せよ

 雪印乳業の食中毒事故が問いかけたことは何か。安全管理の手落ちと、スーパーの価格競争にある。

 BSEで何が?騒ぎを恐れて問題を先送りした。野田総理がアメリカの牛肉輸入緩和。TPP参加の入場料にした。

 遺伝子組み換え(GM)農産物は安全か?TPPに参加すれば、アメリカの基準に習って、表示義務はすべて廃止される可能性が高い。

 ポストハーベスト農薬についても日本の農薬が厳しすぎるからもっと緩めるようアメリカから求められている。

 食の戦争Ⅰ、Ⅱ

 闘えない日本と闘うEU。日本の小麦自給率は11%しかない。未承認や基準以上の農薬が残留していようが、もうアメリカの小麦を食べずには日本の消費者の食生活は成り立たなくなっている。食料自給率の低い農産物は、安全性を守ることも闘うこともできない。

 スティグリッツ教授によれば、TPPは多国籍な巨大企業中心の「1%の1%による1%のための」協定であり、大多数を不幸にするものだ。

 TPP交渉参加をめぐる欺瞞を振り返る

 「TPP断固反対、ブレない、ウソつかない」と訴えて、政権を取った人たちがTPPに着き進んだ。コメや乳製品といった1割程度の残された高関税品目までもゼロ関税にしたら。日本の農地は荒れ果ててしまう。まず水田でコメを作れなくなる。日本の田園風景は一変する。地域が衰退していく現象が全国に広がるだろう。

 アメリカの攻撃的な食戦略

 日本の食料は高くない。品質差が理解されていない。欧米諸国は価格支持政策を温存した。アメリカをはじめとする輸出国は食の競争力があるから食の輸出国になっているのではなく、国をあげての食料戦略と手厚い農業保護のおかげである。アメリカでは米などレーンレートで価格保証をしている。

 食料の国家戦略の再構築

 減反への予算でなく所得補填制度を活かす。地域の担い手への重点的な支援強化。就業意欲のある若者に、10年間の長期的な支援プログラムを準備する。農業が存在することによって生み出される多面的な機能の価値を評価する。コメ輸送のCO2も考慮すべきである。

 おわりに

 徹底的な規制緩和を断行し、市場に委ねれば、世界の経済的利益は最大化されるという論理は、単純明快だが、極めて原始的で幼稚である。市場原理を徹底すれば、ルールなき競争の結果、一部の人々が巨額の富を得て、大多数が食料も医療も充分に受け入れられないような生活に陥る格差社会が生まれる。

 コメント

 大筋合意されたとするTPPは問題が多いし、情報非公開ですすめられた内容は、知れば知るほど怒りが国民に沸き起こるであろう。本書は事例やデータを使い、わかりやすく問題の本質を説明している。ここでは触れていないが、ISD条項など日本国民の利益と安全を脅かすものである。さらに、国民皆保険まで危なくする問題がある。公約を破るアベ自公政権の暴走を早く止めなくては、日本の国益が損なわれる。

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