豊田の生活アメニティ

都市デザイン、街歩き・旅行、くらし

豊田PCB処理施設の安全性

2014-03-24 | 都市計画・まちづくり
住みよい豊田を創る会主催で、PCBの処理状況と安全対策の現状について、豊田市議会議員の大村さんより報告を受けました。PCBは無色無臭の液体で体内に入ると、1968年カネミ油症事件のように大問題になります。また水に濡れると発火、火災となります。72年に製造・使用中止が行政指導されました。それまでトランス、コンデンサーの絶縁油、感圧複写紙に使用されていました。PCB廃棄処理施設は全国5か所で、豊田市の細谷町のトヨタの駐車場を借り、東海地区のPCBを処理しています。はじめはトヨタ単独で作る計画でしたが、中小企業の処理が進まないこともあり、国の責任で処理することになりましたが、今は株式会社JESCOとなっています。設置の時は北九州など都市計画決定で厳しく審査する動きもありましたが、15年で終わる一時施設ということで建築基準法第51条の施設の許可となりました。海外では焼却によりほとんど処理が終わっていますが、日本は利権がらみか化学処理方式でなかなか終わりません。さらに操業を10年延長して2025年までの要請があります。地元説明の時は絶対安全と言われていましたが、蒸気漏洩、設備不具合、非常用排煙装置誤作動、撹拌洗浄機からの漏洩など度々事故が起き、操業停止等見直しをし再発防止策を出していますが、事故が止まりません。一つの原因に職員の経験、技術不足があります。正社員がほとんどいなく、派遣社員で運営されているからです。また、作業工程で動線が交錯する等、狭い敷地での建設による無理な設計もあります。「事業たより」も一方的にお知らせが出されていますが、事故を起こしても地元説明はありません。万一事故を起こした場合の避難計画は公表されてなく、あるのかどうかも疑問です。施設許可が下りてからハザードマップで、この地区は逢妻男川の2m~5mの洪水区域にされた危険地域です。迷惑施設受け入れの条件で、矢作川流域の安永川開削の大事業が国で行われていますが、逢妻男川の洪水対策こそ行われるべきです。大村議員が視察した北九州の場合は、沿岸地で民家のほとんどない所に建設されているそうで、それでも住民の反対運動があったそうです。企業都市といえども豊田市でも安全が最優先されるべきでしょう。
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心の力

2014-03-23 | 気になる本

姜尚中(2014)『心の力』集英社新書     2014.3.18
 グローバル資本主義で、「格差や貧困の拡大、金融優先の経済システムの脆弱さやモラル・ハザード、激化する優勝劣敗や雇用不安、ヘイト・スピーチなど」不幸や悲惨、憎悪がばらまかれ、問題解決の制度も安定した秩序も廃れているとしています。このような社会を背景に、トーマス・マンの『魔の山』と漱石の『心』をベースに書かれた本書は、「物語人生論です」。漱石の生きた明治の新時代では、近代化が進み尋常ならぬ変化で精神を病む人も増え始め、時代状況に注目して漱石はやわらかく「こころ」というタイトルをつけたとしています。陰湿ないじめや、無差別な凶行、ヘイト・スピーチ。「グローバル資本主義の敗者たちや没落の不安に怯える人々の中で、排外主義や社会の異物への攻撃に捌け口を乱す傾向が顕著になってきているように思える」。百年後のいま、「私たちはすでに心なき時代の心に向かいあっている」としています。大学を卒業しても職につけない人、リストラで再就職できない人、健康保険料を払えず病気の治療もできない人など増えています。見て見ぬふりをする、かかわりを持たない、隣人を失い無縁社会になっています。相互扶助の精神を忘れ、「働かない物になぜ金をやるのか」など自己責任論が横行しています。漱石もまた、人の心は時代と密接に関係している、それゆえこの文明の時代を生きるわれわれは生き苦しいのだという主張です。「息子を死なせてしまった」。偉大なる平凡は染まらない。「ただ真面目なんです。真面目に人生から教訓を受けたいんです」(こころ)。「死に対して健康で高尚で、死を生の一部分、その付属物、その神聖な条件と考えたり感じたりすることです」。死を生に対立させ、忌わしくも死と生を対立させることがあってはならないのです(トーマス・マン)。「私は死ぬ前にたった一人でいいから、人を信用して死にたいと思っている」(こころ)。『こころ』は「私」が先生という人の人生を語り継いでいく話で、もっとも感動した点です。私たちの周りを見渡したとき、どれほどこの自尊心を踏みつけられ、ないがしろにされている若者が多いことでしょうか。受験や就活、婚活だけではありません。いたるところで人間の尊厳が傷つけられることに事欠かない制度やシステムが幅を利かしているのです。最後に著者は、まじめであるから悩み、その中で悩む力が養われていくのです。そしてこの悩む力こそ、心の力の源泉です。
(写真は実家より移植した実のなる桜の木で、3月16日に一輪咲きました)
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こころ

2014-03-23 | 気になる本

夏目漱石(2009)『こころ』やのまん(1914朝日新聞連載) 2014.3.15
 姜尚中の本『心』を読んで、どうしても漱石の『こころ』を読みたいと思いました。漱石の本は坊っちゃん、吾輩は猫である、三四郎ぐらいしか読んでいません。近頃はほとんど小説は読まず、社会、政治、経済、都市計画、建築デザイン、まちづくりなど社会科学系のものばかりです。若いころにはこころも手に取った記憶はありますが、興味のわかない本でした。しかし、近頃は友人や身内のものが亡くなり、死とは何か生とは何か、自分の過去の生きざまはどうかなど考えるようになりました。小説にコメントなど必要ないかも知れませんが、気になったキーワードを思い留めるために書きました。
 先生の出会いと直感、淋しい、信用、恋は罪悪、幼馴染に恋はない、人間はいざという時に悪人になる、父の死とふるさと、人の過去などです。
(平芝公園3.12、平日午後でしたがかなりの賑わいでした)
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生活保護から考える

2014-03-06 | 気になる本
稲葉剛(2013)『生活保護から考える』岩波新書
 自公政権で生活保護パッシングをやって、生活保護費が下げられようとしています。この本は、著者の弁護士として生活弱者の相談等実践的な運動を通して、具体的で総合的に論点整理がされています。
 まず「働いたものがバカを見る制度」なのかという声に、決してそうではなく憲法に保障された最低生活の確保の手段です。むしろ働いても不安定雇用で、安い賃金で長時間働かされることが問題です。2008年のリーマンショックで派遣切りが行われ、職を失い、住居を失った人が路上に溢れ、年越し派遣村が設置されました。生活保護の受給者が増加しました。生活保護は病気、高齢、無年金、DVなど様々な社会的弱者の生活保障です。
 1章崩される社会保障の岩盤で、自公政権は社会保障の根幹である生活保護の削減を狙ってきました。タレントの家族問題、生活保護で働かない、引き下げのためのデフレ論などマスコミも使い攻撃してきました。極わずかの人が不正受給はありますが、本来対象となる人の多くが申請せずにいて、外国と比べても補足率は低くなっています。引き下げは就学援助、非課税限度額と減免制度など多くの影響があります。スティグマという負のレッテルで、生活保護を攻撃することに本質のすり替えがあります。
2章、3章で弱者の生活実態が体験を通して、餓死、路上死、窓口排除などの問題が書かれています。年金、医療制度が改悪され、労働者派遣法も改悪されようとしていて、最後のセイフティネットが崩され、不安な社会へと向かおうとしています。働く意思があっても正規雇用は少なく、再起をかけても失業保険や研修制度は不十分で、けがや病気をすれば行き先がありません。国の借金財政を減らし、社会保障の維持、そのための増税という民・自・公の「社会保障と税の一体改革」はどうたったでしょうか。公共事業のばらまきで借金は増大し、一方で年金改悪、医療費の引き上げ、社会保障改悪で、4月から消費税の3%増税では、みんなの生活は悪くなるばかりです。円安や外国からの投資で株価の上昇などをみて、「アベノミクス効果」などと浮かれていられません。
4章では、当事者が声を上げられない事情が説明されています。『ハリー・ポッターと賢者の石』の著者J・Kローリングが、20代にシングルマザーで生活補助制度を利用していたことが紹介されています。5章の問われる日本社会で、今日的課題と解決策が指摘されています。TPPでは日本のメリットは何もないと思いますが、アメリカ並みの医療制度に成りかねないことを指摘しています。余談ですが、アベノミクスをぼろくそに言う敬愛すべき浜矩子氏は、TPP交渉の批判はするが交渉の脱退は否定しないと、テレビで言ってたのにはがっかりでした。
生活保護法改悪、生活困窮者自立支援法に問題有りとしています。住宅については脱法ハウスも現れ、住宅手当が家賃補助に代わる制度への提案は同感です。貧困の3点セット、雇用、住宅、生活保護が基本的人権を保証するもので、人的、社会的ケアも含めて総合的な政策でなくてはなりません。著者も生活保護法を生活保障法に変えるよう提案しています。この点では以前、反貧困ネットワークあいちで調査した韓国の方が進んでいます。
コメント (2)
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西洋美術史入門

2014-03-04 | 気になる本

池上英洋(2012)『西洋美術史入門』ちくまプリマー新書
 絵とは何か、「何かを誰かに伝えるためのもの」とあります。宗教の場合は教義を広めるため、王様、殿さまに雇われ描いたもの、戦争鼓舞のものなどその時代背景、理由、人間の内面など考察の面白さがあります。画材道具や写真などビジュアルも時代と共に変化します。
 主題と社会背景で、例えば14世紀ではペスト(黒死病)が流行ったことがあります。絵は、当時の人々の暮らしであり、彼らの考え方であり、社会構造そのものです。大航海時代の前半を支えたのはスペインとポルトガルで、後半はイギリスとオランダでした。悲しきミレーの「落ち穂拾い」は、遠くに馬に乗った地主が眺めています。階級格差を読みとれます。画家も絵を売って食べて行くのだから、金持ちは描かれた貧困層の絵をかい「善行」を積み、天国へ行けることを願います。ドーミエの3等客車とソロモンによる1等客車の格差は歴然です。1等車に乗るような階層が同じ階層同士で知りあって結びつくことで、こうした格差が次世代にも伝えられるだろうという解説は、鋭いものがあります。
 「レジャーとしての旅」のパラグラフに、ルノワールの「舟遊びの昼食」があります。日常的な光景は当時の生活ぶりが垣間見えて楽しいものです。レストランはセーヌ河畔にあり、リゾート地で、一般市民が鉄道を使うような旅が庶民のものになっていたこと、レジャーを楽しめる経済的・時間的・精神的余裕を手に入れていたことを教えてくれます。
 4章の美的追求では、技法とジャンル、パトロンについて述べています。ほとんどの芸術作品はパトロンがあって成立したとあり、パトロンの歴史を図にしています。市民(古代ギリシャ、共和制ローマ)→君主(ローマ帝国)→君主、教会(中世)→君主、教会、ギルド(ルネサンス)→君主+貴族、教会、商人→富裕市民(産業革命、フランス革命後)→市民、企業(現代)です。
 私も含めて日本人の好きな印象派についての由来とは、細かなモチーフを正確に描写することでなく、一瞬の動きが残すイメージを描くことです。印象派の中心はモネで、後期印象派にゴーガン、ゴッホ、さらに点描画の新印象派と発展します。以上、気になった部分をメモしました。これから絵を見る視点で参考になります。
(写真はトレドの建物・ドアと窓)
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