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寺島「人はなぜ戦争をするのか」その②

2023-03-18 | 気になる本

実態経済の成長率よりも金融活動による資本収益率が大きい状況を政治主導で誘導することは、必ず経済に歪みをもたらす。2001年エンロンの崩壊、2008年リーマンショックと、金融不安を繰り返し、格差と貧困は一段と深刻になっている。「資本主義の死に至る病」とまでいわれるマネーゲームの肥大化をどう制御するのか。

 震災から1年半、民主党政権への失望から、「やっぱり経済」という意識が回帰し、「デフレからの脱却」の「リフレ経済学の誘惑」に引き込まれた。異次元緩和はアベノミクス前から始まっている。日銀のマネタリーベースは、2010年平均98兆円から2012年平均で121兆円に拡大していた。日銀黒田は市中の資金量を4倍にした。

 経済は「経世済民」といわれるが、勤労者世帯可処分所得は、2010年月額43.0万円から2015年の42.7万円と減っている。(21年49.3万円)異次元の金融緩和も豊かにしていない。(2019年には毎月勤労統計の偽装が明らかになった)

 Ⅲ沖縄が拓く視座(略)

 貧困化が進んだ背景には、就業構造の変化がある。失業率は増えていないが、報酬の低いサービス業が増えた。介護、ガードマン、沢岻0運転手などで、きつい労働の割には報酬が低い分野である。

 日本における「分配の歪み」が大きくなっている。法人企業会計における付加価値配分における労働分配率は、2000年度の63.7%から2013年度の61.6%へと下落した。背景には労働組合の弱体化という要因が存在する。連合の組織率は18%を割り、経営が緊張感を持って対峙する相手ではなくなった。血相を変えて「存続のためのリストラ」を迫る経営に対して、「分配よりも雇用の維持」に動かざるをえなかった労働組合の悲哀が見て取れる

 静かに進行する貧困化の一方で、アベノミクスによる異次元の金融緩和によって株価が上昇して恩恵を受け、懐が豊かになった人もいる。2012年に9108円だった日経平均が、2013年には1万3,578円になり、現在は1万9千円台と2倍となった。(23年は2万7千円台である。欧米のインフレと利上げ、銀行の破綻で世界バブル崩壊の予兆か?)

 日本経済はアジア依存が高まっている。2014年に日本を訪ねた外国人は、1341万人、1位台湾283万人、2位韓国276万人、3位中国241万人、4位香港93万人、5位米国89万人である。(2019年3189万人、1位中国959、2位韓国558,3位台湾489、4位香港229、5位米国172である。貿易額は1995年■1995年1位:アメリカ / 184,094億円 (25.2%)、2位:中国 / 54,428億円 (7.4%)、3位:韓国 / 45,500億円 (6.2%)、4位:台湾 / 40,566億円 (5.6%)、5位:ドイツ / 31,964億円 (4.4%)。■2020年1位:中国 / 325,898億円 (23.9%)、2位:アメリカ / 200,644億円 (14.7%)、3位:韓国 / 76,082億円 (5.6%)、4位:台湾 / 76,021億円 (5.6%)、5位:タイ / 52,626億円 (3.9%)

 「国境なき記者団」の世界の報道自由度ランキングで、日本は2011年11位、15年には61位に下落した。(22年71位)

 「バンドンの先人たちの知恵」は何が讃えられるべきか。中国を牽制して、「強うものが弱いものを力で振り回すことがあってはならない」と語る前に、アジアにと向き合ってきた過去と未来について、真摯で筋道の通った、米国頼みだけではない経験を語るべきである。

 「日米安保マフィア」が指摘し始めたが、「日米安保の片務性」であり、基地縮小を回避するためのハードルとしての「集団的自衛権」であった。

 民主党の迷走の根源は、鳩山政権が普天間・辺野古問題を沖縄の負担軽減問題としか捉えきれず、「抑止力」なる言葉に幻惑され、冷戦後の米国との同盟関係を再設計する意思を貫けなかったことにある。戦後70年たっても、外国の軍隊が占領軍同様にステークスを維持し存在することに疑問も抱かぬものに変革を語る資格はない。(手厳しいが同感である。今になれば「抑止力」の欺瞞がよくわかる。ND政策提言の「抑止一辺倒・・」が参考になる。)

 沖縄知事選や国政選挙の結果で明かなごとく、「振興予算を貰って基地を引き受ける」ことを拒否し、しかも「他のどこかに基地が移転すればいい」という次元ではなく、「東アジアの紛争の場ではなく、安定と交流の起点としての沖縄」という視界を開き始めている。日本が東アジアの緊張を高める方向で軍事志向を強めれば、米国をアジアの紛争に巻き込む危険が現実味を帯びていく。(台湾有事は米国が仕掛けたのか、火元は2+2か?岸田内閣は2000発のトマホーク購入を米と約束した。石垣島などに基地開設を進めている)

 敗戦後の昭和20年から25年に生まれた世代を「団塊の世代」という(S21年生まれからと思う。敗戦はS20年8月とされている。私は翌年の21年12月生まれである。中学入学の時、それまで5クラスが7クラスに増えた。正確には44~46年のデータがない)。

 アベノミクスの論理はとっくに破綻している。2020年にGDP600兆円は虚構に過ぎない。国民の多くが「株高誘導の「景気刺激」という共同幻想に乗っている。(株高は日銀が国債購入と株を買い、年金資金迄株買いで釣り上げてきた。実態経済、GDPは上がらず、実質賃金も上がらず、景気がよくないことに気づきつつある。物価上昇は「一過性」で終わるのか疑問?欧米のように利上げは出来ない。それでも日銀は金融緩和継続であり、日本沈没の可能性が出てきた。豊田織機のフォークリフトの排ガス不正が明るみに出た。)

 「日本の内向と右傾化の深層構造」(2015)で、勤労世帯可処分所得が、2000年~14年の間に年間58.8万円減少し、「中間層の貧困化」が進行した。家計消費支出も32万円も減少した。社交費が減り行動的でなくなり、学習費が減って学ばなくなった。こうした時代の空気が、視界を狭め、内向と右傾化の土壌となった。(20年~22年コロナで外出自粛がある。若者はスマホで新聞などを読まなくなっている)

 「解散は首相の専決事項」か。憲法7条から専決事項は誤りである。5年間で3回もの総選挙は異常である。(自民党の比例票が30数%で、投票率が50数%では国民の支持は2割弱の内閣である。さらに、内閣が何でも決める緊急事態条項を、憲法改悪の柱にしようとする動きは、ヒトラー張である)

 脳力のレッスンⅣ 「リベラルの基軸」課題

1 対米関係の再設計

2 公正な分配の実現

3 平和国家精神の再起動-憲法9条理念の実体化

4 原子力再考-「非核」のために原子力政策」(脱原発、再エネとの違い?)

5 代議制民主主義の鍛え直し-国会議員定数の1/3削減(その前に小選挙区を比例だけか中選挙区にした方がよいと思う)

 おわりに 「脳力」とはものごとの本質を考えようとする志向(思考)を示す言葉であるが、人間は社会的存在である。

*(  )内は私のコメント

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寺島「ひとはなぜ戦争をするのか」その1

2023-03-10 | 気になる本

寺島実郎(2017)『ひとはなぜ戦争をするのか』岩波書店

 21世紀になって紛争はあっても、大きな戦争はないのでは、と思うのは甘かった。ロシアのウクライナ戦争がまだ停まらない。核兵器廃止条約も核保有国はもちろん、被爆国日本も批准していない。北朝鮮はミサイルの発射を繰り返す。ロシアも核使用をほのめかす。人はなぜ戦争するのか?国連に権限がないのか?軍拡で戦争抑止になるのか?私のささやかな人生のテーマの一つである。人類はなぜ戦争を止められないのか、失敗の歴史から学ばないのか。以下、本からのメモ書きである。

 なぜ戦争になったのか。真珠湾攻撃より、戦争に突入した前の5年間の省察が重要である。

 アインシュタインの紛争解決の国連組織、カントの恒久平和論がある。

 1933年日本は満州国を建国、5・15事件で犬養首相が殺害された。

 北朝鮮のミサイル、ロシアのプーチン、中国の海洋進出と、時代環境は「力の論理への回帰」を誘い掛け、「目には目を」と報復の論理に傾斜しかねない。戦争をどう総括したのか歴史認識が問われている。日本は自らが欧米列強の植民地にされるかもしれないという緊張の中で、「開国・維新」を迎え、富国強兵で自信を深め、日清、日露戦争を戦勝で乗り切った辺りから、「親亜」から「侵亜」に反転し、自らが植民地帝国と化した

 1914年の1次大戦開戦、1915年の「対等21箇条の要求」、1917年のロシア革命に対する「シベリア出兵」と植民地帝国に豹変し、1919年のベルサイユ講和会議に列強の一翼を占める形で参加するまでの、「運命の5年間」が戦争の惨禍に引き込まれる転機であった。

 70年談話に込められた歴史認識の歪みが、日本の未来を重くるしくしている。解釈改憲しての集団的自衛権を推進する「安保法制」、「共謀罪法」などに憲法改正の動きを注視するならば、「軍事力、警察力」という国家権力の強化で、「国民主権」を否定し、国家権力による過ちを繰り返すことになるであろう。

 ポピュリズムはファシズムではないが、国民の不満に照準を合わせ、心地よいメッセージで、問題の解決でなく国民を混乱させ、ファッシズムへの誘導路となる。

 国際金融機関の肥大化、マネーゲーマーにより、格差と貧困が深刻化し、21世紀の資本主義が制御不能な状態に向かっている。

 日本の領有権の主張が正当であろうと、米国は「施政権重視」である。尖閣についても「同盟責任を果たす」と言っているのであり、「米中戦争は避けたい」という本音を認識する必要がある。

 戦争をどう総括するか。「戦争は悲惨だ」でなく、なぜあんな悲惨で無謀な戦争に至ったのか、「軍閥の暴走」と単純化する前に、国民が大政翼賛会の空気に埋没し、総力戦に参加したのか、70年首相談話にない。結論は1914年の第1次世界帯大戦からベルサイユ講和会議までの5年間を考察することが、日本の針路に大きな意味をもつ。

 中国の文明・文化の影響を受けてきた。漢字、道徳観、遣唐使、仏教、儒教まで。富国強兵で力をつけ、日清戦争(1895)で勝利し、一部の日本人は中国を「チャンコロ」と見下した。(韓国人をチョン)アヘン戦争を横目に見て、自らが欧米列強の植民地にされるかもしれない恐怖心と緊張感の中で開国・維新を迎え、経済力・軍事力を高めるうちに、列強の植民地主義模倣の路線に入る。「運命の5年間」が「植民地帝国」の路線の時代である、「満州国の夢」、国際的孤立の中で真珠湾へという道の起点である

 言った言わないという次元でなく、忖度を超えて官邸主導の意思決定の持つ問題点を聞いてみたい。特定事業への恩恵をもたらすような国家戦略特区の現状について、それで良いと考えているのか。

 多くの日本の政治家は、北朝鮮の脅威と中国の危険性を語り、その脅威に「日米で連携して戦う」というレベルの話に終始する。そこにはいかなる東アジア秩序を創造するのか、グローバル・ガバナンスを構想するのか、という視界がない。と、ワシントンのアジア専門家は、「日本は小さいね」という。

 2014年、核兵器の非人道的側面を話し合う国際会議をオーストリアが主催し、外相が「オーストリアは核を持たないことを誓う」と演説した。2017年核兵器禁止条約が採択された。(2021年発効した)

 日産、スバル、東レなど日本の有力製造企業に不祥事が続き、データ改ざんの検査プロセスでの不正が噴出しているが、経営の弛緩と現場力の劣化とはコインの裏表といえる。東芝が不正経理から原子力部門の買収失敗によって、医療、半導体など優良部門売却によって消滅の危機に立つ

 第2次世界大戦期、ヒトラーがソ連に攻め込んだ時、ウクライナの独立志向勢力はヒトラーと手を組んでモスクワを揺さぶり、逆上したスターリンによって、ウクライナ人が「シベリア送り」となった。

 アメリカの核に守られながら、原発の再利用を考えるのは、コインの裏表の関係にあり難しい。小泉、細川の「脱原発」に向けて、米国に向き合う気迫も覚悟も感じられない

 外国人投資家の主力であるヘッジファンドは、株・債権・不動産・為替、あらゆる金融商品から「利潤を奪い取る」ことをビジネスモデルとするマネーゲーマーである。日本産業の復活を願って投資しているわけでない。

 円安に反転させても輸出は伸びず、3年連続で貿易赤字である。所得が伸びていない現状で価格を上げられない。所得は微増で、税・年金・保険を払って実際使えるお金は減っている。大企業だけの賃上げで、消費税も増税で、分配における格差と貧困である。生活保護の給付基準も下げられた。(勤労者所得の統計も偽装が発覚した。消費税は増税され、大企業の法人税は下げられたが、トリクルダウンはない。)工業生産力モデルだけで国を豊かにする戦略は限界に達している。「ものづくり国家」への陶酔でも駄目である。

 なぜ宗教のために人を殺すのか。根っこには石油権益や政治抗争などの要素が絡む。本質的問いとして、人間は何故、宗教のためとして人を殺すのか。本来、宗教は救済であり、救いであり、解脱(欲望の制御)であるはずだ。振興が深ければ、自分以外の信仰は誤りであり、排除すべきだと確信に変わる。

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