豊田の生活アメニティ

都市デザイン、街歩き・旅行、くらし

アベノミクスを切る

2015-01-30 | 気になる本
伊東光晴(2014)『アベノミクス批判-四本の矢を切る』岩波書店
 著者はケインズ研究者で86歳という高齢ですが、アベノミクスに騙されている世論を危惧し、病弱でありながら4本の矢を折るために書かれたものです。そのことは、はしがきに良く表れています。それは理論的根拠が全くないこと、株価上昇と為替正常値はアベノミクスと関係がないこと、公共事業のばらまきの逆流、成長戦略は原発再稼働、労働法の規制緩和、TPP算入、法人税減税である。そして安倍政権は例外的な「極右政権」であり、中国への侵略戦争を認めないことであると、主張は具体的で明快です。その要点を列記します。(  )内は私見です。
 第1章では、日銀の「量的・質的緩和」は景気浮揚につながらない。第2章では、安倍・黒田氏は何もしていないとして、なぜ株価が上がり円安になったのか説明している。株式は外国人筋の動きで決まる。海外投資家は、日本株を所有するとはいえ、企業経営を行おうなどとは、つゆほども思っていない。第2章では、安倍・黒田氏は何もしていないとして、(アメリカも輸出を増やそうとしていたので円安を良しとしていなかったが、)円安のための円売り、ドルなどの買い、そのドル等は外国国債、ほとんどがアメリカの長短期国債に換えられる。これがアメリカ政府の望むところなのである。
 2013年トヨタの決算は、営業利益1兆3200億円で、内訳は販売増6,500億円(全利益の49%)、コスト削減(34%)、円安効果1500億円(11%)である。円安効果は少なく、利益の大部分は自己努力(下請け、非正規へのしわ寄せ)である。(トヨタは5年間法人税0、法人市民税も1割程、そればかりか消費税の還元が毎年1500億円程度ある)cf藻谷「金融緩和の罠」
第3章では、国土強靭化政策にかかわるもので、10年間で200兆円が確保できるのか、小泉改革で減らしてきたのに、財源は国債の一層の累積である。90年代と同じ減税と公共投資政策による財政破綻である。東北以外にもばらまき、画一的な高い堤防であり、高台移転も成果が出ていない。古い自民党の利権構造の復活である。第4章では、人口減少化の経済で、労働慣行を壊し成長となるのか?現実成長率は高まらない。トヨタは13決算で社長が国内市場の縮小を言明した。住宅数の増加と空家率の増加がともに進んでいる。日本は住宅(街も)のストックがなく、若者が自分の家を建て続けなければならない。低賃金の派遣労働増大によって国内需要は低迷し、02年からの景気上昇が好況感を伴わなかった。(同感である。猿田編08.4『トヨタ企業集団と格差社会』)21世紀の経済は量でなく質の時代である。90年代以後、日本経済の分配関係が悪化し続けている。財政赤字は先進国中最高、最悪である。今の政策は成長願望でなく、成熟社会に見合った政策である。有料職業紹介所を廃止し、派遣労働を禁止し、福祉社会(生活保障制度充実)を施行することである。
第5章予算から考えるでは、日銀の長期国債の大量買い入れは、低金利を持続させるものの、今までの大量の国債発行による予算編成を続けるためにすぎない。金利が正常に戻ると、国債の利払いが巨額になり、予算編成が不可能になる。問題を将来に先送りするだけである。(消費税を増税しても福祉は切り下げ、軍事費は増大、法人税は下げるというアベコベの予算編成です)
第6章3つの経済政策を検討するで、①原子力政策は国内の再稼働を認め、インド、トルコなどに設備、技術を売り込もうとしている。放射性廃棄物の処理技術がないのに、地震国日本で地下深くに埋めることが可能であろうか。(豊田市小原地区も候補地で「手付金」を毎年貰っている)原発のコストは安くない。②労働政策の逆転では非正規の増大が有る。非正規雇用に安住する企業は必ず将来報いを受ける。若者を大切にしない企業は必ずその対価を払うことになるだろう。(新車は売れない、結婚できない、少子化、住宅は持てない、犯罪の増加など社会不安は広がると思う)国益にならない③TPPに参加しようとしている。
第1の矢の量的・質的緩和は、株価の上昇、為替の変化に何の関係もない。第2の矢の国土強靭化政策は予算化されていない。第3の矢の経済成長政策は具体化の姿が見えない。
第7章安倍政権の狙うもので、安倍政権は戦後最も右に軸を置いた政権である。戦争責任の取り方でドイツとの違いは何か。戦争遂行の最高責任者は責任を問われなかった。国家神道の中心靖国神社も、これを支えた神官も批判されなかった。それに代わって一億総懺悔であった。国旗も国歌も変わることなく、戦前が戦後につづいていく。アメリカの対日政策が再軍備と国境問題の背後にある。冷戦の進行とともに、日本の自衛隊にアメリカの軍事力の一部を担わせるという動きがアメリカに生まれた。それを受けて日本は軍事力を強める。政権交代に期待を持たせたのは鳩山の時だけであった。アメリカの圧力も加わり、鳩山から菅になると、通産官僚の意のままに海外に原発を売り歩いた。野田になると何のための政権交代だったのか、解散時期を誤り国際感覚もない。彼は右の思想の持ち主で、前原と同じく松下政経塾の出身である。
安倍の「日本を取り戻す」、「戦後レジームからの脱却」は平和国家や憲法9条の改正で、軍隊を認め交戦権を認めることである。維新の党は自民党より右、極右政党である。安倍首相の政治家としての資質はどうか、虚勢を張り、大見えを切るのが好きである。東日本大震災から3年目、「復興住宅は計画の3%」であり、増え続ける汚染水、メルトダウンの恐ろしさを分かっていない。「コントロールできている」とは口先だけである。権力は分散しなければならない。言論は政権から独立しなければならない。NHKのトップ人事を政治のトップが決めるなどあってはならない。戦前の一元国家神道による支配の危険性を感じさせる。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

家族そろって夕食を

2015-01-25 | traveling, town walking
 1月24日(土)国民救援協会・豊田みよし支部総会の記念講演会に参加しました。講師は労災認定を勝ち取った、トヨタ過労死遺族の内野博子さんです。つらい経験を乗り越えて、再びこのような体験者を出さないで、という強い思いからでしょうか。昨年には過労死等防災対策推進法が超党派で制定されました。関係者のご苦労に敬意を払います。
 お話は、先ず会社は利益を挙げるところ、労働組合は労働者の働きやすい環境を作るところと、説明されました。(労働組合・幹部がその役割をどこまで果たしているか、一部幹部だけの「過重負担」の取組から、取り組まない組合など様々です。賃金、時間外抑制、年休取得、非正規、雇い止めなど苦しめられている労働者が増えていると思います。)外部の労基署が機能しているか、NPOに助けられたこと、労働弁護士の味方などがあります。夫はトヨタ堤工場のEX(班長)で、苦情処理係でした。当時の働きは通常の仕事以外にも、QC,提案、交通安全リーダー、新人教育係など多く時間外は155時間にもなったそうです。性格は「優しく、努力家、がまん強い」(要注意)、趣味は洗車で車が大好きなようでした。被災したのは2002年2月9日の早朝4時半ごろ会議中に倒れたそうです。豊田労基署で労災が認められなかったので、裁判を起こし5年半かかり、やっと勝利できました。ところが労災年金は106時間の時間外の判決を無視して、38時間しか時間外が認められないということでした。これに納得できず厚生労働大臣にも要請し改善されました。その結果、トヨタはQCや改善提案も会社のための仕事と認めるようになりました。
 増え続ける過労死や労働災害をなくすために、3年前から運動を起こし超党派で取り組んでもらいました。昨年全会一致で法律が成立しました。まだまだ理念法ですが、調査、PR、年次報告、大綱の作成を行い、具体化を数年かけて良くしていくそうです。現在の支援活動は、関岡恵美子さん(岡崎)寺井土木、美輪香織さん(安城)トヨタの孫会社エーエスシー、田口さん(名古屋)トヨタファイナンスチャイナ、Tさん(大阪)豊田通商です。
 コメント
 自殺者数も法律ができて年間3万人を切るようになりました。安倍さんは岩盤規制の改革と称して、労働法制を懲りずに改悪しようとしています。過労死を防止する気があるなら、労働法制の改悪は直ちに止めて欲しいです。「家族そろって夕食を」豊田市のスローガンでもあったような気がします。あったか~ぃ家庭と家族の未来のために、過労死を出さない働きやすい職場、家庭と職場を大切に「ディーセント・ワーク」を築きましょう。
 家族などに心配する人がいたら、具体的には①労基法を学ぶこと、②良い相談先を見つけること、まともな労働組合、労基署、労働弁護士、③健康が一番、適切な医者にかかること、④当事者に寄り添い、ノーと言えるか、辞めるか、闘うか、無理しないこと。などです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

福島から<放射能被ばく>の報告

2015-01-25 | 平和・人権・環境・自治制度
名古屋市立大学で9条の会とベーシック・インカム主催の市民学びの会に参加しました。
 荒木田岳(福島大学・行政学)『福島原発事故後の環境汚染と被ばく問題』1・23
 福島へは昨年5月に行きました。帰還準備をしている飯館村、居住困難な浪江町、「希望の牧場・ふくしま」などに行きました。除染作業はしているけれど、多くのされない山林は残っています。地元の人は住めない、と言っていました。安倍さんはコントロールされていると言うが本当なのか、などが気になっていました。話の内容は、原発事故は収束していない、今も放射能が出ている、汚染水はコントロールされていないと、危惧したとおりでした。危惧すべきというのが話の本筋です。100億円もかけたSPEEDIの放射の放出量をなぜ公表しなかったのか?様々なデーターが充分公開されないのは、科学の問題というより政治の問題でした。荒木さんは行政学が専門で、科学者でないとされていますが、公開された資料から明らかな事実で問題点を、バイアスに捉われず論理的に指摘されています。例えば、メルトダウンは直ぐに始まっていた、兆候は12日「テルル132」をモニタリングチームが検出したとしています。今も放射能が壊れた原発から出ていて、除染しても福島は危ない・住めないとしています。そればかりか東京も危ないとされています。特に「脱原発よりも脱被ばく」を強調していました。屋根の高圧洗浄はホットスポット作るだけでは、100mSVは安全か、レベル7の事故で「逃げたいならどうぞ」補償はしませんでは人権は守れないなど、問題点を述べています(「週刊金曜日」13.3.1)それに、「右から左」までの「オール福島」での「復興支援」は、現地に人々をとどめ置くことを意味することだそうです。「直ちに健康に被害はない」(枝野さんなど)と言ってたけど、安全基準は信用できるでしょうか。おいしんぼの鼻血事例やがんの発症などありますが、因果関係での証明が困難です。風評被害は困るかもしれませんが、「安全」保証はありません。東電、政府の情報公開も不十分です。原発再稼働中止、被ばくの対応、事故の原因究明・収束など難題は先送りされたままです。考えさせられる福島からの報告でした。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

豊田とトヨタ

2015-01-19 | 気になる本
丹羽、岡村、山口(2014)『豊田とトヨタ』東信堂
この本のポイントを以下に書きとめます。(  )内は筆者コメントです。
はしがきに研究目的で、従来も企業城下町として位置づける研究はあったが、地域特性をふまえて、広く都市社会学的な座標軸に位置づけるような分析は存在しなかった。豊田(トヨタ)といえば企業経営、生産方式、労働に関する研究、日系ブラジル人の集住や支援活動をめぐる研究は有名であるが、本書は異なるパースペクティブをとり、地域社会・都市をテーマとする。立場が違う人ですら認めざるをえないような「事実」や「データを前提」にし、積み上げることが重要と考える。先行研究の事実も受け入れるが、選択的に取り上げる危険性がある。これを避けるために、「量的調査データ」(アンケート?)を用いて、統計的な代表性を確保する。
序章で研究の視点があり、これまでのトヨタと地域の先行研究の概要が紹介されている。豊田市をめぐる社会経済的条件の変化で、第1に80年代の国内生産からグローバル化と成長、90年代の日本経済低成長における相対的安定した豊田、第2に08年のリーマンショックを期に景気低迷と自治体財政への落ち込み、第3に定住化が進み、一つの企業を頂点とする企業城下町で、半世紀も地域経済の安定成長が続くのは例外に属する。(地域経済は疲弊していないのか、08年までは地域経済は恩恵があったのか?空洞化をどうみるか、市財政の積立金取り崩し運営をどう評価するのか?など興味が湧きます)本論での「都市空間」(土地利用、都市計画との関係は?)は、シカゴ学派とは対照的で、新都市社会学とも異なる。海外進出が本格化した90年代からは成熟期で第3の時期である。地域外部にも投資し、子世代を育てる成長期に、産業都市は衰退を向かうことが多い。(衰退の指標を何に見るか、市の法人市民税は08年までは堅調であった。中小下請け企業、農林業、個人店主などの衰退をどうみるか論議がある)期間工、外国人労働者等「市民」としてのステータスを持たない人は、別のカテゴリーとして区別したほうが良い。(しかし定住できない派遣労働者がなぜ生まれたのか根本的問題に触れていない)
 コメント
全体的にはロジックを整理し、トヨタと豊田の社会を多様な人が論じていますが、結果的にはコミュニティ形成の限定した見方に思えます。「製造業で空洞化した地域が有る中、立地した産業が繁栄し長期間存続しえた時に、地域コミュニティがどのよう変貌していくのか、豊田の事例は雄弁にその典型事例を示している」としています。市民活動やまちづくりをみるうえで、市行政と地域住民、市行政と企業との関係をとらえる必要を言っているが、行政と企業との関係で、総合計画、都市計画、インフラ整備、都市問題、合併と地域会議など触れて欲しいと思うのは、科研補助の学術書では欲張り過ぎでしょうか。豊田がアジアにおける産業都市の典型に成りうるのか、全国に文化的で快適に住み良い都市と市民が誇れるのか、比較検証も必要です。
個別的項目は飛ばして、終章の岐路に立つ豊田とトヨタで、デトロイトの衰退を挙げていますが、自動車に特化した産業・「企業都市」でも300万台体制が維持される保証はありません。グローバル企業が競争に生き残るには、労働者も下請けもがまんして協力せいということでしょうか。2003年までは地方からきた正社員による定住が、期間工・派遣切りで人口の社会減になり、不安定要素が底流にあります。自治体側もトヨタ依存体質から抜けきれていません。円安、EV・FCVなど、将来予測も気掛かりです。図の「都市化の類型」と表の「都市研究の3類型」に本書の特徴が出ています。図書館で借りて、さらっとしか目を通していませんが、興味あるテーマが多く、異論も含めて多くの発想がされます。一度返却して、改めて各章もそのうち読もうと思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

豊田・みよし市(愛知11区)の政治構造メモ

2015-01-14 | 市民生活・企業都市
愛知11区総選挙での主要政党別の比例得票数から、地域の政治構造の特質とその背景を探るものです。愛知11区は旧稲武町を除く豊田市とみよし市です。この区はトヨタの大企業のある都市的地域と農村的地域です。
トヨタはグローバル企業で政府・自治体・地域に大きな影響を与えます。奥田氏は経団連の会長を(99~)02~06年、小泉政権と同じ時期に就任しました。「小泉純一郎内閣では経済財政諮問会議の民間議員として、小泉構造改革の推進役を担った。政治とは一線を画する方針のトヨタの中では異色の経営者と言えた」(Business journal)。総選挙は小選挙区並立比例選挙で、ストレートに民意を反映しませんが、政党別の比例得票数の推移をみると、11区の政治構造の特質の一端が概観できると思います。直近の3回の選挙では有効投票数は投票率等の違いがあっても、ほぼ24万票台であり得票数だけで比較することが可能と考えます。11区では民主党が強くて、自民党は小選挙区で候補者を立てられないこともありました。自民党から出た土井氏が比例復活したこともありますが、重徳氏の時は比例復活できず、先回から隣の12区より維新の党から出馬し、当選しています。公明党は自民党と連立し、小選挙区は重点区に集中し11区では候補者を立てず、自民党支持か無効票になっているようです。11区小選挙区での候補者は民主党、自民党、共産党です。候補者を立てなくても、維新の党、公明党は比例で一定の得票数があります。先回は多党乱立でしたが、今回は「1強多弱」とも言われ、自・公、民、維、共の5つの政党に収斂されつつあります。長いスパンで経年変化をみると良いのですが、取り敢えず09年、12年、14年総選挙の5つの政党の得票数の推移からみます。
愛知11区総選挙での政党別、比例得票数
        09年 *12年 * 14年
自民党    62,331 * 68,015 * 89,564
民主党    127,669 * 63,246 * 69,822
公明党    22,499 * 22,511 * 22,817
維新の党   無 ** 44,680 ** 29,953
日本共産党 8,123 *  7,801 * 14,016
その他       略  
    計   245,215 * 247,888 * 240,713
 各選挙時の情勢と結果
2014年は天候が寒波、年末、任期残が多く解散の大義がないなどで、投票率は低い。11区の投票率は67%で、愛知県は55%と相対的に2割ほど高い。2014年末は消費税増税不況で安倍自公政権に陰りが現れ、追い込まれ解散した。自民党は290(293)に議席減だが、公明党35(31)により自公政権は2/3を確保した。自民党はアベノミクスによる「景気期待」、TPP、「戦争法案」隠し、世論に反し小選挙区の比較優位で多数の議席を確保した。公明党は軽減税率の8%は財源も示さず、自民党の下支えで与党のうまみを生かし、議席を伸ばした。野党、特に民主党は準備が遅れ、過半数の選挙区に候補者を立てられず、政権崩壊の後遺症もあり73(62)と伸び悩み、党首が落選した。維新の党は「身を切る改革」を主張、票を減らしたが民主党との連携もあり、41(42)と踏み留まった。安倍暴走を批判した共産党が、全選挙区に候補者を立て、野党の受け皿となり21(8)に躍進した。沖縄は基地反対派(共、社、生、無保)が全勝した。第3局は消滅ないし激減した。一部政党は政党助成金欲しさに合流した。
 2009年は「政権交代」を掲げた民主党が躍進した。民主党・鳩山の沖縄米軍基地移転で、最低でも県外が守れなかった。菅は消費税増税を打ち出し、10年参院選で敗北した。ねじれ国会で、マニュフェストは守られずTPP、消費税など自民党と政策的には違いがなくなった。野田は3党合意で消費税増税を決めた。2012年自民党が敵失で政権復帰し、第3極がマスコミに持て囃され、革新政党は苦戦した。(2013年参院選で、民主党は惨敗し、自民党が過半数を確保し、共産党は躍進した。)
 11区政党別の得票数の推移と政治構造
 自民党は12年から14年時で大きく票を伸ばした。先回八木が比例で思わぬ復活当選を果たした。今回は厳しいことが予想され、日常的に組織活動し15年選挙の市会議員をフル動員で小集会を行った。また、スタジアムでは小泉政権以来、安倍総理を呼んで集会を行っている。小選挙区では民主党に勝てないが、惜敗率による当選をばねに滑り込んだ。豊田市議会では33年間自民と民主が市長与党の同一会派・「思政クラブ」を組んできた。「全国的にも特殊」で、2005年の市町村合併による増員選挙で大きくなりすぎ、思政クラブを解散し30人で「自民党会派を結成」(加茂みきお)した。「一昨年(03年)の総選挙では自民党は選挙区で候補者を立てられず、比例区で票を減らした」(加茂)。
 民主党は09年の政権交代から12年に比例票が半減した。それが今回票を伸ばしたが、全力投入できず信頼回復できていない。トヨタ系労組は「地域組織」(ゆたか会)を2002年8月に「だんまり解散」(スパーク231)し、市議選も2007年より工場単位の組織活動に変更した。職・住分離で自・民との棲み分けができた。最近ではトヨタの定年者も増え、一部地域保守に組み込まれるが、縛りが薄れた。古本の事務所での出発式あいさつは、自動車税の軽減が強調されたが、民主党の政策はほとんどない。古本は消費税増税の立役者、野田、藤井の三者で、豊田市のホテルで集いを行っている。トヨタにとっても消費税増税は、年間2000億円ほどの「還元」メリットがある。
 維新の党は44,000から30,000に得票を大きく減らした。11区での日常的な政治活動はないが、共産党よりも得票が多い。第3極が消えていく中、地域政党でもあるが党首のマスコミ演出で浮動票を得ている。
 公明党は安定的に、学会票を基礎に20,000票を確保している。
 日本共産党は急な解散であっても、全小選挙区に候補者を立てた。政策争点で消費税増税・アベノミクス反対、集団的自衛権、TPP、原発再稼働反対など対案を示した。第3極がほぼ消えて、安倍暴走ストップの受け皿になり、豊田では得票を8,000から12,000と大きく伸ばし、東海ブロックで2議席を得たが、過去の3議席には届かなかった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

民主党大崩壊

2015-01-14 | 気になる本
小泉俊明(2012)『民主党大崩壊』双葉社
 著者は元民主党副幹事長、減税日本党幹事長です。民主党の内部にいて、民主党を離党した原因は消費税増税の方針に反対したからです。亡国の消費税増税、TPP参加は道理ある説明です。小泉氏は消費税増税法案の採決に反対し、党員資格処分を受け離党し、野田内閣の不信任案に賛成した経過を持ち、説明に説得力があります。民主党を崩壊させた黒幕は誰なのか?脱「米国依存」、脱「財務省」を目指した鳩山内閣の挫折、小泉政権以来の緊縮財政路線を守る財務省の逆襲、菅・野田政権下で急速に新米追従路線へ転換し、民主党は変節しました。菅より輪をかけて悪くなったのが野田政権で、消費税増税をやらないと言っていたのにやるとか、TPPもやると言ってないのにやろうとしたり、3年で自民党化した民主党です。尖閣・竹島問題も外交会議に欠席した野田政権に元凶があります。我が国の債務は課題に公表されているとして、理由に粗債務1019兆円から総資産647兆円(09年)を引いて純債務372兆円にすぎないとしています。アメリカはなぜ消費税増税をさせるのか?「自民党の10%案を参考に」と、菅首相は参院選のマニュフェスト発表で言及し、参院選で大敗し捻じれをつくりました。これは鳩山とアメリカの関係がギクシャクしていたのを修復するため、トロントサミットでオバマとの会談で約束したのです。TPP参加の検討も表明します。それは外資系企業による日本企業のM&Aがしやすくなり、消費税増税で景気が悪くなり株価も低迷し買収しやすくなります。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

人生を豊かにする発想ー「しないこと」リストのすすめ

2015-01-12 | 気になる本
辻 信一(2014)『「しないこと」リストのすすめ-人生を豊かにする引き算の発想』ポプラ新書
 効率、競争社会の中で、著者はスローライフの生き方を、哲学的で具体的に提案しています。競争とは何か?2割の上位所得層が所得全体の8割を占める。2割が勝って8割が負ける。(資本主義社会)競争主義社会では目指すべきゴールは、みんな同じで経済的成功とそれによってもたらされるはずの富や豊かさ、だろう。競争という名の不自由こそが、現代日本人の不毛な忙しさの原因だろう。「すること」リストは、「しなければならない」リストになるしかない。あなたも、甘んじて「できない人」と呼ばれることにして、「しないこと」リストをつくるのだ。(「できない人」になれるだろうか?怠けている若者をしかる大家の小咄は面白い)
 2章で具体的に、腕時計をしない、駆け込み乗車しない、寝る間をおしまない、テレビを見ない、などである。(周りの人と孤立しないか不安にならないだろうか?)3章の引き算的発想で、我々はmore, fasterを競う大量生産、大量消費、大量廃棄によって、生態系を破壊し続け、ついに地球温暖化などという人類生存の土台を脅かす危機を生み出してしまった。資源と市場をめぐる熾烈な競争は、世界のさまざまな場所に紛争や戦争の種をまき散らし、人々を少数の富める者と、多数の貧しいものに引き裂いてしまった。ここでは、モノを少なくスペースを生む、「量より質」が大事、便利さに不便を感じることを提案している。携帯、全自動の炊飯器・風呂、ネットなど便利であるが、人間関係が疎遠になることもある。
第4章未来のために「しないこと」リストでは、子どもの頃から「急いで」「早く」と親や先生から何回言われるのだろう。いつも急がされていては、しまいには、すべての「すること」が苦役になってしまうだろう。この社会の多くの人があまり楽しそうに見えないのはそのためだろう。(では、どうしたらそこから脱出できるのか?)職人仕事がベルトコンベアによる大量生産となり、効率化された農場はある限度を超えた時に、工場へと変質してしまう。人間を相手にする教育や福祉といった領域にも、効率化や合理化の波は打ち寄せている。そして家庭の中にさえ・・・。(意味深長です)僕は確信している。試験制度をなくせば日本人の幸せ度ばかりでなく、生徒や学生の学力も倍増するだろう。日本ほど学生の質問が少ない国はなかった。試験制度はすぐになくせないから、北欧の社会の本を読んでみるのもいいだろう。自殺者数2万7千人、引きこもり約70万人、うつ病患者数95万人・・・。日本人はまだまだがんばりが足りないのだろうか?無数の核兵器や原子力発電所を、その毒性が半永久的に消えないような放射性廃棄物とともに、後世に残して死んでいくことになる。「負の遺産」の生産を即刻ストップすべきだろう。
(第5章略) おわりにで、今のこの瞬間にも、福島の原発では高度に汚染された水が増え続けています。(安倍さんの言うコントロールされているって、どういうこと。)その汚染水の処理をめぐって、国内外の企業が装置や機械を売り込んでいます。戦争がそうであるように、社会にとって大きな困難や不幸は、常にビジネスチャンスなのです。3.11の後、福島の、日本の、世界の親は悟ったのです。一番大切なものは、子どもたちの、そのための空気、水、安全な食べ物であると。人間が幸せに生きていくために必要なものはそんなに多くありません。「足るを知る」という伝統的な知恵を現代の日本に甦らせ、新しい時代の糧にすることができるはずです。 
コメント
若者がこの本を読んで発想の転換をし、21世紀を切り開いて欲しいと願います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

民主党政権失敗の検証

2015-01-10 | 気になる本
日本再建イニシアティブ(2013)『民主党政権失敗の検証』中公新書
「コンクリートから人へ」、「国民の生活第1」と華々しく2009年に政権交代し、そして期待を裏切り2012年に崩壊した民主党政権は何であったか。それを振り返る意義はあるでしょう。図書館で借りた2冊の本、「民主党政権失敗の検証」、「民主党大崩壊」を手掛かりに検討してみます。今でも昆明を象徴するように、14年末の総選挙で代表が落選し、現在3人が代表を争っています。総選挙では小選挙区に過半数の候補者を単独で立てられませんでした。1強自民党に対抗するため、維新の党と調整したようです。
本によらず個人的な各総理大臣の感想として、09年からの鳩山は理想を貫いたが、現場のことは知らないという印象です。普天間の米軍基地を国外へ、最低でも県外と言って頑張ったのは評価できます。それでも辺野古止むなしは、裏切りです。コンクリートから人への象徴である八ツ場ダムは中止と言っておきながら継続です。建設途中の物を中止するのは困難が伴います。それなら少し時間をかけて検討すれば良いのですが、マニュフェストとの齟齬が残ります。10年からの菅は財務官僚に言いくるめられたのか、公約にない消費税増税を唐突に言いだして、10年参議院選で負けたことです。原発事故の危機管理も迷走した印象です。11年からの野田は捻じれ国会での運営で自民党に引っ張られ、最後は消費税増税を中心とする税と社会保障の一体改革の3党合意で崩壊です。この間、壊し屋小沢の怪しげな政治資金です。選挙上手で小沢チルドレンもできたほどですが、公募の候補者は中央の顔や世間の流れが変わると浮かばれません。民主党の中には自民党から来た人や、社会党系、松下政経塾、タレント系と様々です。民主党は不運や自民党からの負の遺産を受け継いでいました。2008年のリーマンショックや財政の多額の借金です。さらに、2011年3月11日の大震災は、天災とはいえ困難な政局でした。それでも、子育て支援、高校授業料無償化、農家の所得保障、脱原発などの成果もあります。
「民主党政権失敗の検証」のはじめによれば、2009年の総選挙では、自民党にきついお灸を据えなければ、と思っていた。序章「旧民主党の結党から政権交代まで」で、96年結党から09年の13年の歩みを3段階に分けている。第1段階で、旧民主党の立ち上げは、自民党と新進党の保守2大政党に対して「第3極」をめざし、鳩山、菅を共同代表に、新党さきがけ、社民党を主な母体とした。民主党の基本理念は随所にリベラルな鳩山カラーが現れていた。第2段階は、98年新民主党の結成で、第1野党として新進党出身者、保守系、民社系などと合流した。基本理念は政権志向が強く、新自由主義的傾向がめだった。第3段階は03年の民主党が自由党を吸収してからで、小泉が01年以降の新自由主義的改革が混乱したからである。06年小沢が代表になると、「国民の生活が第1」路線に転換した。07年参院選で大勝して、参院第1党になった。09年小沢の秘書が政治と金で逮捕され、代表をじにんした。09年衆院選で民主党が圧勝し、鳩山内閣が実現した。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

企業社会・日本はどこへ行くのか

2015-01-06 | 気になる本
渡辺 治(1999)『企業社会・日本はどこへ行くのか』教育史料出版会
 第2章 日本の帝国主義化と企業社会の変容-新時代の「日本的経営」のねらうもの、から抜粋です。
 日本の多国籍企業化の遅れ、輸出主導にこだわったのは日本企業の強力な労働者支配と下請け支配にありました。安い賃金、長時間労働、QC等による労働密度ができました。また、下請けへの単価切り下げ、ジャスト・イン・タイムなどの在庫管理があります。これらは日本で生産するからこそ、享受でき多国籍化すれば消失します。多国籍生産へ全面的に移行せず、主要な生産部門を日本に残し、一方で輸出を続けつつ行われています。第2の特徴は、アジア地域への比重が大きいことです。欧米市場への進出した多国籍企業は、苦戦を覚悟したが、予想以上に採算がとれませんでした。日本企業はその穴埋めを輸出と、アジア地域での生産に求めたのです。輸出で利益をあげるには、超円高でも利益をあげるために、すさまじいリストラの展開が求められました。輸出主導が日本の帝国主義化を遅らせた、つまり財界が相対的に軍事費や自衛隊の海外派兵を求めなかったためです。90年代になって日本企業の洪水のような多国籍的進出は、日本の政治に対する帝国主義的改革や新自由主義的改革の要求は切実になりました。(95年新時代の「日本的経営」で雇用の流動化、04年製造業に派遣労働者)欧米の企業も日本企業をまねして過酷なリストラ、ジャスト・イン・タイムの下請けシステムを取り入れました。日本企業はアメリカとアジアのサンドイッチになるという危機感が強まります。
 小沢主導でつくられた細川内閣(93~)は、財界の希望通り、既存自民党政府が手をつけられなかったコメ自由化に踏み切り、「規制緩和」、「市場開放」を推進しました。こうした改革を遂行するため二大政党化をつくりだす「政治改革」を敢行しました。自民党も政権から離れ、財界に冷たくされる中で変身を遂げて、(筆者:利益誘導型政治、社会保障から)新自由主義と大国主義的改革を推進する党に暗転(筆者:「自民党をぶっこわす」小泉2001~、03「奥田ビジョン」)しました。
コメント
(前後しましたが、この続きが①「安倍政権論」になります)。特に、企業社会と自民党の暗転がキーワードとなります。この本を昔読んでアンダーラインしてありましたが、その意味が私的にはやっと繋がりました。この先、②民主党政権の崩壊を確認し、その後自民党と民主党が仲良くせめぎ合う、③企業都市・豊田の政治・社会構造を検討します。ただし、愛知県知事選を前に、県政の論点を挿入することもありえます。
捕捉
渡辺 治氏の講演を、昨年11月15日に中京大学で聞きました。その時のレジュメから抜粋します。詳細は『大国への執念 安倍政権と日本の危機』大月書店を読んで下さい。
1 安倍政権とはなにか?
(1) 安倍政権はなぜ歴代政権と比べて異質なのか?a、米、財界待望の政権-今までやれなかった2つの改革(改憲、新自由主義改革)を実現。B、米、財界のいいなりにならない顔-靖国参拝、慰安婦問題否認、河野談話と村山談話見直し。
2 安倍政権はなぜ改憲、集団的自衛権に固執するのか?
(1) 集団的自衛権は安倍が言い出したのではない!90年代初めからの宿題。
海外派兵には憲法9条とその解釈が障害になった。国民の運動が明文改憲を挫折させた。
 3 略
 4 安倍内閣はなぜ限定行使論で閣議決定を強行したのか
(1) 安倍政権の誤算-特定秘密保護法反対運動が誤算の始まり
マスコミの反対への移行、与党公明党の動揺、自民党内の動揺、内閣法制局の抵抗
 5 安倍政権の策動は、いま潰さないと大変-大国化への野望
(1) 自民党憲法改正草案の位置(資料略)
(2) 「世界で一番企業が活動しやすい国」づくり
医療・介護の構造改革、原発再稼働に固執するグローバル企業の市場づくり、地方創生で何をねらうか?
地球儀俯瞰外交のねらい、原発売り込み、武器輸出三原則撤廃のねらい
 ほかに、後藤道夫「安倍政権の社会保障改革と労働改革」、岡田知弘「『富国強兵』型構造改革の矛盾と対抗」の話を聞きました。なぜ福祉国家構想なのか、社会保障の企業・政府の責任、「地方創生」とTPP、「国家戦略特区」、政府追従の自治体への「選択と集中」など気になるテーマがありました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

安倍政権論

2015-01-04 | 気になる本

渡辺 治(2007)『安倍政権論-新自由主義から新保守主義へ』旬報社
 本書は1次安倍政権までの流れです。その後は「大国への執念 安倍政権と日本の危機」で述べられていますが、福祉国家構想研究会の講演が中京大学であり、その時のレジメを次回使います。
 アメリカは太平洋戦争後日本を占領していました。そして、日本が再び軍備を持たず、海外へ侵略することを抑制しました。しかし、1950年の朝鮮動乱、ベトナム戦争での沖縄の出撃基地化、イラク戦争での派兵など、日本にアメリカは金から人を出すように要望しましたが、憲法9条を理由に拒むことができました。イラク派兵は憲法違反と名古屋高裁で判断されました。憲法9条をどうみるか、太平洋戦争が他国への侵略戦争と見るか見ないかで替わると考えます(筆者)
 Ⅰ部 安倍政権は何をめざしているのか
 改憲による自衛隊の武力行使の解禁を強く求めたのは、アメリカであった。2000年にはアーミテージ報告というかたちで、日米の共同軍事行動の必要性を提言していた。つづいて、財界も2005年に9条を改憲し、自衛隊の海外での武力行使を解禁しろと要求を出した。日本企業の海外展開は2,000年に入り新たな段階に入った。やみくもに世界、とりわけアメリカだけでなく、東アジアの地域的経済圏を構築し、そこを拠点に世界市場に展開する戦略を打ち出したのである。これが03年奥田レポートである。小泉政権は公共事業投資、補助金切った。財政の肥大化、赤字の原因で、つけを企業が払いたくないからである。一方で大企業本位のリストラ、産業構造の再編を進めながら、他方、それで失業や倒産に陥る労働者や中小企業にたいする保護を打ち切ったのである。構造改革の執行を地方に委ね、地方自治体の「自主的責任」でこれを執行させる体制を目指したのである。「三位一体改革」では地方交付税、国庫負担補助金を削減し、代わりに自主財源を認めることで、事務・事業を地方に委ねようという改革である。経済財政諮問会議に日本経団連の奥田が入り、直接財界の意志を表明するかたちをつくった。日本経団連は93年以来止めていた自民党などへの政治献金を復活させ、自民党の利益誘導政治を支えた。自民党議員・地方議員のピラミッドをつうじての住民統合は政治の安定であったが、構造改革の遂行には足手まといであった。利益誘導政治と引き換えに当選している自民党議員は、大企業のためとはいえ、地方の農業や地場産業の切り捨てや公共事業の削減には簡単には賛成できない。グローバル経済の下で激しい競争を展開している巨大企業にとっては、その部品の価格、労働者の賃金、流通コストは安ければ安いほど良い。
 明文改憲と解釈改憲の二本立てが求められるのは、アメリカが「世界の警察官」としての行動に日本を引きずり込もうとしていることと、改憲の前から米軍の後方支援や共同作戦行動を求めるよう圧力をかけているのである。医療制度の構造改革を県単位で、適正化計画を作らせ、数値目標を作らせ、ガイドライン基準を設定し、数値目標でコントロールすることである。この手法は国立大学の法人化に対して、既に実施されている。
 Ⅱ部安倍政権の歴史的系譜
 安倍が敬愛する岸はどんな人物だったか。岸は戦犯容疑者として巣鴨に拘置されたあと、政治家として「帝国」としての復活、憲法改正+軍備拡充+対米自立の実現であった。「強力な政治」を実現するため「保守合同」を追求した。60年安保闘争の意義は何か、①国民が政治を動かし、岸内閣を打倒した、②総評、社共、学者などの共闘組織、③保守政治に甚大な影響を与えた。池田内閣は国家介入による経済成長とパイの拡大、公共事業投資や補助金による、そのパイの地方への配分という日本独特の開発主義的路線が採用された。高度成長政策・「所得倍増計画」である。佐藤政権では改憲政策を止めただけでなく、解釈改憲も停止し、9条を実体化する制度がつくられた。沖縄に配備されている核が本土に持ち込まれるのではという野党の追及に、非核3原則が国会決議された。防衛予算は量的制限がされ、GDPの1%以下とされた。ベトナム戦争での戦争加担に反対するという観点から武器輸出3原則も国会決議された。皮肉にも佐藤はノーベル平和賞を受賞した。
 利益誘導型政治をすすめる自民党は、「政治改革」に消極的であった。8党派連立の細川政権、羽田政権、それに返り咲きを狙った自民党が社会党と組んで村山政権で大国主義化も遅れた。軍事大国化を新たな段階に引き上げたのが、小泉政権であった。安倍政権は小泉の動きを受け、岸政権、中曽根政権時につぐ、大国化の第3のうねりにある。直接の契機は冷戦の終焉と、イラクのクウェート侵略であった。90年代は日本資本主義も高蓄積をなし、2つの圧力があった。1つはアメリカからの軍事分担を求める圧力、もう1つは海外進出を本格化した日本企業、財界からの圧力だった。
従軍慰安婦の軍の関与を認めた93年河野談話、さらに日本帝国主義の植民地支配と侵略戦争に一定の反省をした95年の村山談話がある。この政府対応の追求の先頭が安倍であった。従軍慰安婦に軍の「強制連行」はなかった、争点を全体のなかから1点に絞り、その信憑性に乏しい史料に食いつき、これを「完膚無きまで」に批判する。こうして事件の全体を否定してしまうやり方である。南京虐殺も虐殺の数が怪しいとか、アイリス・チャンをたたき南京虐殺全体をなかったものにしようとしている。安倍の戦後ナショナリズムの特徴は、第1に戦前の帝国主義による侵略戦争と植民地支配にたいする反省をまったくもっていない。第2に戦前の明治憲法体制や天皇制にたいする批判的視点が皆無である。第3にアジアとくに中国との連帯、反欧米という視点がない。
 安倍の政治思想の第1の柱は新自由主義で、第2の柱は新保守主義である。反福祉国家こそが新保守主義の「新」たる所以でもある。この反福祉国家という点では、新保守主義は新自由主義と歩調を一にするが、同時に、新自由主義にたいしても、それが、資本のグローバルな展開を加速化し、共同体と伝統をいっそう凶暴に破壊するとして避難を加えるのである。またグローバリゼーションによる国民国家の壁の揺らぎ、外国資本や外国人労働力の流入、さらに地場産業の崩壊にたいしても、新保守主義は鋭い危機感と反発をもち、既存の社会的紐帯の弛緩は、こうしたグローバリゼーションによる外国資本と外国人の産物だととらえ、排外的ナショナリズムを昂進させるのである。
(次回は「企業社会・日本はどこへ行くのか」と講演レジュメを使います)
写真は一色さかな広場からの夕陽
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする