布施祐仁(2022)『日米同盟・最後のリスク -なぜ米軍のミサイルが日本に配備されるのか』創元社
ロシアのウクライナ侵略が一方的に始まり6か月が立ちました。ロシアに非がありますが、停戦の兆しはありません。ブロック化や武力対武力で多くの国民が殺されています。日本の自公政権は、日米同盟の強化、核共有、防衛費の倍加、憲法の改悪を煽っています。7月の参院選挙の最終盤に安倍元首相が、旧統一教会で家庭が崩壊したことを恨み、関連がある元首相を銃撃しました。その元首相を閣議決定で、キシダ内閣で国葬を決定しています。自民党と統一協会との関係が、選挙癒着や反社会オカルト組織であることが明らかになりつつあり、国葬や内閣の支持率が急落しています。
この本は強調ポイントが太字でかかれ、興味ある個所を読めば理解できます。以下、そのポイントをメモ書きします。
(はじめに)米ロ対立の主戦場はウクライナと欧州ですが、米中の対立は東アジアです。
アメリカが中距離ミサイルを配備するのは、沖縄に限らず日本全土です。
最後のリスクは、米中戦争に日本が巻き込まれないようにどうするかです。INF条約を生んだ欧州市民の反核運動があります。
(序章)アメリカの戦略は、日本にミサイルを配備して中国を攻撃させ、米軍の主力部隊はグアムやハワイにいったん避難させる計画だと伊波氏は指摘します。ロシアとINF条約を廃棄したアメリカは、核搭載可能中距離ミサイルを日本に配備する計画です。新型中距離ミサイルが全土に配備されれば、中国はそこを攻撃目標とします。アメリカにとって、中国の攻撃目標が日本に多いことが狙いです。この配備は、日本の防衛のためではなく、アメリカの国益と覇権を守るためです。
(1章)三矢研究で注目したのは、いきなり日本本土が攻められるのでなく、朝鮮半島などで発生した戦争が日本に波及してくる、ということでした。日本が巻き込まれる要因は、①米軍の後方基地、②米軍が基地として使用、③自衛隊が共同作戦。(「台湾有事」も同様ではないか)
(2章 日米共同作戦計画)1976年にはじまった「ガイドライン」の策定協議はもめた。目的は「米軍の軍事行動の支援」であった。「戦争になったら、米軍指揮下で戦う」という指揮権密約があります。1976年ガイドラインがまとまり、日米共同作戦がスタートしました。
(3章 シーレーン)自衛隊は米軍の戦力を補完する役割、「シーレーン防衛」によって強化された。ヨシハラ氏は、「自衛隊はアメリカの槍を支援するための盾」と称します。大幅な軍備増強に、なんとか応じてきた日本政府、だがアメリカはエスカレート。1982年鈴木政権は、P3C100機を150機に上方修正しました。「シーレーン防衛」の本当の意味は、「日本の海上輸送路の防衛」ではなく、米ソ間で戦争が勃発した際の「米軍艦船の防衛」だったのです。
「日本の防衛は日本自身でやれ」「しかし世界戦争が起きた時はアメリカの指揮下で戦え」
(第4章 日米共同化)
日米同盟のさらなる強化の原動力となったのは、「北朝鮮の脅威」なかでも1994年の核兵器開発疑惑でした。
1997年「ガイドライン」が改定され、米軍への日本の支援が強化されることになりました。1998年弾道ミサイルが日本列島を飛び越え太平洋側に落下し、北朝鮮への脅威認識は一気に高まった。2002年ブッシュ大統領が、北朝鮮を「悪魔の枢軸」と呼び、日米同盟が許可されました。
2001年9月11日の米同時テロ事件から、アメリカはテロとの戦いを強化しました。2015年ガイドライン再改定で、米軍支援の自衛隊の武力行使が可能となりました。2015年安保法制の成立で、40年間アメリカの思い通りの方向づけしたといえるでしょう。
2010年代半ばになり、本格的な米中対立が幕開けしました。
(第5章 米中対立と核ミサイル戦争)米軍と自衛隊は、宮古島や石垣島が戦場となることを想定した図上演習を行っています。
米軍の目的は、南西諸島の防衛ではありません。南西諸島を丸ごと「米軍基地」として、そこで中国と闘う計画です。台湾をめぐる米中戦争が始まった場合、米軍の主力が到着するまでは、日本の自衛隊が最前線で戦うことが予想されます。南西諸島に配備された自衛隊のミサイルは、自国(南西諸島)の防衛ではなく、他国(中国)への攻撃のために使われます。中国とロシアは、アメリカが中距離ミサイルを配備したアジアの国に対して、照準を合わせたミサイル配備を進める姿勢を見せています。
宮古島に配備するミサイルは百数十キロですが、これを900から1500キロの射程をめざします。中国内陸に届きます。自衛隊が日本国内に配備する中距離ミサイルは、米軍の要請により発射される可能性が高いのです。敵基地攻撃能力を持つことは、アメリカの情報に基づき、アメリカの指揮の下に戦争することになります。中距離ミサイルは核兵器を容易に搭載できます。核共有は、核保有国が自国の核兵器を非核保有国と共有することです。(つまり、非核三原則と矛盾します。配備すれば攻撃目標となります。核はなくても原発は攻撃目標となります。NPT会議の決議は採択されませんでした。核兵器保有は抑止でなく、攻撃目標の危険となります。NPTでなく核兵器禁止条約への参加が必要となります。)
米軍が中国を核攻撃した時に、報復の対象となるのは、まずは日本です。日米安保条約では、日本全土を潜在的な米軍基地として使用できる、米軍司令官は日本国内で制約をかせられない、のが本質です。
(6章日本を再び戦場にしないために)台湾が現状維持の立場を変えない限り、中国が近い将来、台湾に侵攻する可能性は低いと思います。中国がアメリカと戦争することは、自殺行為です。台湾有事の危機を煽って日本の防衛費の大増額をねらっています。いま日本が行うべきは、抑止力のこうかではなく、緊張を和らげる仲介外交の促進です。米中が間違って戦争を起こさないように、柳澤氏は仲介外交を勧めています。ASEANは「仲介外交」のお手本です。ASEANは大国の代理戦争とならず、平和な東南アジアをつくっています。フィリッピンは日本と同じアメリカの同盟国ですが、憲法で非核政策を定め、東南アジアを非核兵器地帯条約、核兵器禁止条約にも、参加しています。
日本とアジアの平和な未来の5つの提案
- 米中衝突(台湾)を避け、仲介外交
- 尖閣での衝突回避
- 安全保障の対話のテーブルつくり(ARP,OSCEなど)
- 核・ミサイルの軍備管理の枠組み(米中ロ核競争、INF条約、核不使用)
- 北東アジア非核兵器地帯(日本、韓国、北朝鮮)の提唱(核兵器の開発、保有、実験、配備などを禁止。アメリカ、中国、ロシアにも核使用と威嚇を禁止。)
「日本がアメリカの戦争に巻き込まれるリスク」を低減てきます。核の傘の幻想から脱出できます。(核は人類皆殺しの兵器です。)
おわりに
力が全てを支配する時代に逆戻りすれば、その先に待っているのは、核戦争による人類の破滅という悪夢です。
日本の存亡の危機があるにもかかわらず、その危機感が国民にありません。最大の要因は、「いざという時はアメリカが守ってくれる」という「安全神話」の存在です。