松田哲夫(2012)「はじける知恵」あすなろ書房
哲学と聞くと、カント、ソクラテスなど思い出し、、「われ思う、故に我あり」、「人間は考える葦である」、「存在が意識を決定する」など有名な著作や文を想像し、分かったような分からないような気になる。人生を永年やっていると死生観や自分の経験から、哲学は人生や生き方にたどり着く。クラシックや純文学など関心はあるが理解が出来ず避ける人が多いが、絵画も感じるまま、見る、聞く、対話する、で良いのではないか。そういう意味で、小説や随筆の中に、生活の哲学が分かりやすく隠れていて、それに相槌を打てる言葉が見つかれば楽しい。以下、気になった個所の抜き書きである。
茨木のり子「美しい言葉」詩集「対話」 その人なりの「発見」を持った言葉は美しい。(新たな挑戦、継承?)、「表現の正確さ」、「体験の組織化」
井上ひさし「言葉のパロディ」 「金のかからない選挙」、「美しい侵略戦争」
日高敏隆 「なぜ」をあたため続けよう。
白洲正子 水車を動かすものが知恵であって、水車の構造および水流その他は知識です。知恵は総合的であり知識は分析的である。
「教養とは」渡辺一夫 人間というものは結局自分のためにしか考えない。自分が殺されそうになったら相手を殺すのが当然だし、貧乏して困ったら盗みを働くのもやむを得ぬ。これが現実だね。他人を自分のことだけしか考えられないような窮地に陥れないようにすること。他人をその自我の奥底で尻をまくるような、土壇場へ追いこまんようにすること。これが教養というものだ。
「幸福より快楽を」澁澤龍彦 人間の生活には目的なんかない。人間は動物の1種だから、食って、寝て、性交して、寿命が来れば死ぬだけの話。幸福は主観的なものだが、快楽は主観的なものだ。文明の発達は人間を満足させない。神経過敏な文明生活を呪いたい。幸福の価値も、また主観的だと言うことになる。「現実原則」。幸福は、この世に存在しない。アリストテレス「幸福とは実践である」。