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日本人のための平和論

2020-01-14 | 気になる本

Johan Galtung・御立英史訳(2017)『日本人のための平和論』

 安倍首相・自民党議員は、本来の「積極的平和主義」を軍備拡大、日米安保によって戦争が抑止できるとして、悪用して使っている。そこで、本家の著者の積極的平和主義、平和論が書かれたこの本を読むことにした。実践的経験による解決策の提言と幅広い見識から示唆に富む平和への提言が多い。以下その要点のメモ書きである。(  )内は私のコメント。

 13 平和には消極的平和と積極的平和がある。ただ暴力や戦争がないだけの状態を消極的平和、共感に裏付けられた協調と調和がある状態を積極的平和という集会、署名、デモなど古いタイプの消極的平和である。知識や経験を生かして未来志向のアイデアを提案し、積極的平和の行動と発展を意識して取り組むことが望ましい。

 日本のジャーナリストは、権力の中枢近くで、国際的に悪名高い記者クラブを作り、ニュースの断片を提供してくれる政治家や官僚と親密な関係を築いている。(首相と新聞社の会食は論外であろう)今日の日本をみると、今や想像力も勇気も見る影はなく、ワシントンから聞こえてくる主人の声に従うという態度が蔓延している。国の独立と外交政策における想像力は足並みを揃えて進む。

 市民による国際交流を継続することができれば、異文化理解が進んで平和構築につながる。国を超えて地方自治体が姉妹都市関係を結ぶことも素晴らしい方法である。

 安倍晋三が登場して、憲法9条が存亡の危機に瀕している。9条の空文化が明らかとなった反戦憲法にとどまらず、積極的平和の構築を打ち出して欲しい。(昨年は自民党の改憲発議を提案させなかった。憲法審査会では、手続法の議論と憲法の内容を議論すべきだとする山尾議員の真意が図りかねる。)

3 専守防衛‐丸腰では国を守れない

 事例はスイスである。敵基地攻撃の長距離兵器は持たない。長距ミサイル、F35、軍艦などである(日本はすでに持っている)。日本のような島国では、海岸線の地雷と機雷が望ましいが、条約で禁止されている。スイスは攻撃されたら反撃する、しかし敵国の都市は攻撃しないとしている。領土防衛には自衛隊が必要で、徴兵制も必要としている。(日本では抵抗が強いが、アメリカからの独立には検討課題である)

4 尖閣、北方4島の問題では、一言で言えば「共同所有」を提案している。中国は海外への侵略は歴史的にしていないし、防衛的である。

6 北朝鮮は核を保有している。理由は、抑止力のため、反撃のため(イラクの経験から)、核戦争を望まないがアメリカは韓国に持ち込んでいて(沖縄にあるだろうし、原潜には積み込まれていると思われる。政府は神戸のように不搭載の証明を求めてない。)、交渉材料に必要などである。

7 歴史問題は双方で事実を検証する。南京事件では共同研究が行われた。南京を反戦都市から平和都市にする。(南京事件で軍の虐殺の数はともかく、市民も含め虐殺は歴史的事実である。従軍慰安婦も軍が関与したことも間違いない。これらは日本がアジアへ侵略した戦争の「結果」である。歴史修正主義はあったことも、自分に都合が悪いことはなかったことにすることである。森・加計問題、桜疑惑からも明らかである。その証拠となる資料も隠蔽、改竄である。)

8 日本の外交と防衛

 いま日本は、近隣諸国との領土問題、歴史認識問題、沖縄の基地問題、集団的自衛権の問題、自衛隊の海外派遣など、さまざまな問題を抱えている。それらすべての背景に米国の世界戦略と日本の対米追従にある。4つの代替案。

①   (紛争)領土の共同所有(新△検討)

②   東北アジアの共同体をつくる。(〇同意)

③   専守防衛(現状×、提案〇)

④   対米従属からの決別(〇)

東北アジアの共同体で、北朝鮮のことを知る。彼らの望みは、平和条約の締結、国交正常化、核のない朝鮮半島である。対立の原因は、北朝鮮と米国(日本に支援された)の間にある。

専守防衛について、敵を上回る兵力が必要と考える人々は、力で力を抑え込む方法で際限のない軍拡競争を生みだし、かえって一触即発の緊張を高めるだけである。(政府は北朝鮮のロケットの実験をJアラートで緊張を煽っている。トランプは金正恩と話し合いをしたが、安倍は合うこともしない、できない。)

真の独立国になるには、まず米軍基地の引き上げ、安保条約の有名無実化、食料の自給化である。一国の独立は経済面からも考えなければならない。特に、TPPのISD条項が問題である(20197事実上のFTAは日本の一方的な不平等の貿易協定である)。原子力発電からの離脱で、原発は攻撃対象となる。日本で原発を推進しようとする勢力は、政治的意図だけでなく、核兵器開発という隠された意図がある。

9 米国の深層文化の理解で、選民思想、例外主義、拡張主義の米国が、今日の不安定な世界をもたらし、IS(イスラム国)を生んだ。アメリカ人は、報復は禁止されているが先制攻撃や予防的暴力は禁止されていない、と強弁する(イラク攻撃、イランの軍司令官暗殺である)。「米国の軍事力の事実上の役割は、世界を米国経済にとって安全な場所とし、米国の文化侵略に対して開かれた場所とすることだ。その目的のためには、それなりの殺戮を行うことになるだろう」(ラルフ・ピーター「未来のために戦う」)。

 名前が持つ世論形成効果で、政府はPRというよりプロパガンダ、人身操作の術に長けている(日本政府も「働き方改革」や「全世代型社会保障」、「積極的平和主義」、「平和安全法制」などである。)。日本共産党の名前も誤解を生むから変えた方が良い、と提言している。

11 テロリズムの項で米国が勝てなかった理由として、米国の圧倒的な兵力があってもアフガニスタンの忍耐力を引かなくてはならない。ベトナム戦争では、ザップと対談しその理由を述べている。

 日本がテロの標的になる日の項で、米国に追従の姿勢を続けるなら、いつか日本はさまざまなテロに見舞われることになる、と警告している。様々なテロの対策は講ずるが、なぜか根底にある原因を取り除こうとしない

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新・日米安保論

2020-01-09 | 気になる本

「柳澤、伊勢崎、加藤(2017)『新・日米安保論』集英社新書

 特に柳澤協二の著書に興味を持って、この本も読んだ。彼は防衛官僚の経験もあり、現実的で理論的な論理展開をしている。個人的には、積極的平和主義や抑止論、憲法9条、憲法と安保、侵略戦争の歴史、核戦争などに関心がある。これまでに、都留重人、森英樹、白石聡などの本を読んできた。安倍政権になって、秘密保護法、共謀罪、そして安保法制と憲法に逆らっている。この本は冷戦後の情勢変化を、トランプの戦略、中国の派遣、北朝鮮、日米地位協定、日本の国家像と展開している。特に関心を引いたのは、「同盟というジレンマ-結びにかえて」で、以下要約メモである。( )書きは、私のコメント。

 安倍首相は2017年予算委員会で、北朝鮮のミサイル発射の際、アメリカが報復してくれる。強固な日米関係が必要、と述べている。日本のミサイル防衛システムはアメリカ製でできている。撃ち漏らした場合、アメリカが反撃してくれることを、期待して信じている。が、回避はできない。何発かは落ちても国は滅びないから、耐えましょう。北朝鮮は体制の崩壊につながるアメリカの報復を招く攻撃はしないだろう、という思い込みだけである(イラクでは一方的に米軍に攻められたことから、核武装化に北朝鮮は進んだ)。報復の抑止は100%保証できない。アメリカが必ず報復することも確実ではない。北朝鮮はアメリカの都市に届く核ミサイルを開発中である。アベ首相は、防衛費増大の努力と安保法制による作戦面での対米協力によって、アメリカの日本防衛の遺志を確認しようとしている。アメリカにとって一番気を使うのは、勧告と日本にいる米国人の避難である。(「横田空域」と首都での米軍基地の意味から理解できる。)

 北朝鮮が最も怖いのはアメリカの核、2番目はグアムや日本にある米軍基地からの爆撃機の出撃である。北朝鮮は日本の米軍基地を標的にしている公表している。日米防衛協力指針では、実践的な訓練で相手に報復を恐れさせる脅威を与える演習を行う。それは相手が脅威を感じ焦れば、「やられる前にやる」という発想で攻撃することもありうる。石油制限を受けた日本が、真珠湾攻撃で勝機を早くつかもうとした。誤算を防ぐには、攻撃しなければこちらも攻撃しない、メッセージが伝わらなければならない。抑止は挑発の意味をも持つ。

 冷戦構造が終わり、アメリカの関心事は中東と中国である。日本がアメリカに貢いでも、日本防衛の保証もなく、防衛費も国力を超え際限がなく増える。日本がアメリカに対し、望む戦争と望まない戦争を仕分ける必要がある。覇権の戦争が日本を戦場にして戦うことは避けなければならない。アメリカの先制攻撃を制約しなければならない。(イラク戦争もイランの軍幹部攻撃も理由なき先制攻撃であった。日本はトランプに何も言えないばかりか、自衛隊の派遣を決めている。トランプが戦争拡大しない声明後に、首相はこれを評価すると事後声明でしかない。)南スーダンの駆け付け警護など検証する必要がある。(情報公開も必要である。イラク戦争支持も検証すべきである)。

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