4章
・令和の晩鐘 平成の始めGDPは世界の16%が、終わってみたら6%。(4~6月期年率31%減)経済の埋没は政治の埋没に相関しており、この間、「アメリカを通じてしか世界を見ない」という米国への過剰依存構造に沈潜し、冷戦後の世界史に適応できていない。アジアのダイナミズムに突き上げられ、デジタル情報技術革命の中で日本の存在感は後退し、「日本を国連の安保理常任理事国へ」という声は消えた。SDGsのバッジをつけた経済人の本音の会話で、安倍外交の情けなさ、貿易協定で妥協し、防衛装備品を買わされ、米軍駐留経費の増額を強いられる。「日本はいまだに独立国ではないな」、中国の強大化に向き合うには、米国についていくしか選択肢がない、と自虐的である。(アベ政治を継承した菅亜流内閣も「日米同盟を基軸」とし、小手先で携帯料金の引き下げ、妊婦赴任治療など人気取りである。後は縦割り批判で横やりをいれる、遅ればせながらデジタル庁をつくる。)
・超低金利下の借金に慣れ切った政府や企業の体質を変え、金利上昇に対して虚弱になっている、危うさを内包した借金漬けなのである。
・米中対立は市場主義の中での覇権争いでああり、理念を賭けたたたきではない。しかも、米中共にうまくいっていない。米国の失敗に、中東政策は失敗の連鎖で、9・11と何の関係もなかったイラクを攻撃した。イラン核合意も離脱した。同盟外交を混乱させた。カネをめぐる取引で、NATOへはGDP4%、日本・韓国へ駐留経費増額である。中国の失敗に、2004年香港の雨傘運動(1国2制度の放棄、弾圧)台湾の独立阻止。中国の歴史は「異民族支配」である。元というモンゴル支配、清という満州族支配。海外に動いた漢民族が「在外華人・華僑」の源泉で、1949年共産党の支配を嫌って海外に移住した中国人も加わり、世界に7000万人、アジアに3300万人が存在する。
米中2極という立ち位置は正しくない。米中2極は理念をめぐる対立ではなく、利害の対立である。この大国主義の強い2つの国は、利害が一致すれば、手打ちして世界を仕切る可能性を内在する。
・在日米軍駐留費の75%は日本側が負担している。米軍は本土やハワイ、グアムに配備するより、日本に配備した方が安く済み、米軍基地固定化の要因になっている。1.5兆円の軍事協力、米国が見直すなら好機である。基地の順次縮小、地位協定など改定に踏み込むべきである。米中対立の中での日本の立ち位置は、非核平和主義を掲げアジア太平洋諸国の先頭にたち、成熟した民主主語国家として公正な社会モデルを作ることである。(米国との過剰強調や「積極的平和主義」の名による軍拡でなく、北東アジアの平和構想の下に、外交努力による軍縮が望ましい。)
・令和日本は、工業生産モデルを再考し、賢く「食と農の再建」を図らねばならないだろう。TPPとEPAに参加し、「自由化」の流れを受け入れ、食料自給率はさらに低下するだろう。東京と大阪は食料自給率1%、神奈川は2%、愛知は12%である。食料放棄地を活用する生産システムに参画し、食を支える関係人口としていく。日本の農業を再建すべき理由が、19年の台風災害である。被災地の上流や流域における山林・農地の疲弊によって、水を制御する保水力、治水力が虚弱化している。人類史は「狩猟採取社会」から農耕社会、そして工業社会、さらに情報社会と一直線に進化するものでない。バランスのとれた産業社会を創造する、食と農に真摯に向き合う、人間らしい社会の厚みを増す。