豊田の生活アメニティ

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『野火』

2015-12-06 | 気になる本

大岡正平(1997)『野火』旺文社

 戦後70年、戦争法が強行可決されフランス、アメリカでテロが起き、日本でも起きないとは限らない。秘密保護法が施行され、マスコミが懐柔され、政治献金で企業のための政治が行われている。日本の未来はあるのか?吉永小百合をはじめ文化人も声を挙げた。立憲主義、民主主義、平和主義のために、太平洋戦争はなんだったのか。体験者の文献を読む必要を感じている。南京事件はなかった、従軍慰安婦に政府・軍は関与せず自主的な売春婦であったなどという政治家がいる。太平洋戦争は侵略戦争ではない、中国、韓国などの植民地支配はないと、歴史をねじ曲げようとするものである。父親が戦争に行かされたのは、中国とフィリッピンと聞いている。詳しい話は聞いていないし、今はもういない。来週、東京で戦争と住宅問題の会議がある。東京で一泊し映画を観ることにした。ネットで「野火」を上映しているのを見つけ、原作を読むことにした。

父親が中国からフィリッピンへ転戦し、命からがら帰国したので私が生まれた。思えば平和か戦争かは私のDNAである。レイテ戦記は読もうとして買ったが読んでいない。野火は3日ほどで読んだ。聞いた話を書いたフィクションと言っているが、著者は戦争体験者でリアル感がある。極限状態に置かれた人間が生きるためか人間の肉を食べるという、通常では考えられないことである。何の理由もなく熱帯の島へ、青年が軍の命令一つで帰るあてもなく送り込まれる、運命の不条理。敗戦濃厚となり米軍に追われ山中を彷徨う戦記は、父親はどうしたか、自分ならどうするか想像したくない世界である。風呂に入りながら父から聞いた話で、出撃した反は全滅、その時父は胃腸が痛く待機したそうである。帰れた人はわずかであり、記憶を話したくないのは理解できる。先日も戦争体験者の漫画家水木しげるが、また一人なくなった。戦争を知らない若者がいつの間にか戦時体制にならないために、今こそ、戦争の歴史を学び現地を訪問し、憲法9条の崇高な理想に少しでも近づきたいと思った。

 

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