豊田の生活アメニティ

都市デザイン、街歩き・旅行、くらし

非正規雇用 負のスパイラル

2024-09-14 | 気になる本

NHKスペシャル取材班(2023)『中流危機』講談社現代新書

 以下その抜き書きである。(  )内は筆者コメント。

第4章 非正規雇用 負のスパイラルはなぜ始まったのか

 1990年代初頭に起きたバブル崩壊に端を発し景気低迷、好循環が逆回転を始める。そして経済のグローバル化と中国などの新興国の台頭である。日本企業の徹底した合理化で人件費の削減に着手し、お家芸だったエレクトロニクスや半導体など、中国や韓国に後塵を期す。製造業の海外移転が進み、産業の空洞化が進んだ。デフレ不況化において会社員の給料を一律引き上げるベースアップはなく、中間層の賃金減少、消費減、価格引き下げ、利益減と投資減、イノベーション減、賃金の更なる減少という負のスパイラルが継続してきた。

 1985年のプラザ合意をきっかけに、為替市場で円高ドル安の流れが加速した。「新しい日本的経営」の1995年には80円を切った。年功序列と終身雇用はコストが高すぎて持続できないという状況になってきた。競争に勝つためにはコスト削減しかないので、いかにコスト下げるかということが一番の問題だった。

 労働者派遣法の改正が雇用の劣化を生み、低賃金につながってしまうという懸念は、派遣法の生みの親ともいわゆる経済学者も、早々に指摘していた、派遣法の対象業務を専門的な知識、技術または経験を必要とする業務などに限定し、賃金相場を高めることだった。1999年改正の時に、理念が歪められ派遣法の立法の原点を忘れた。(2004年には製造業まで拡大した。派遣法と共に職安法も1999年に民営化等が改悪された。)

 2008年リーマンショックによる派遣切りが社会問題となり、派遣労働者が雇用の調整弁として扱われていたことが表面化した。

 そのツケが、今になって表面化している、と駒村教授は話す。問題は賃金だけに留まらず、将来展望がなくなれば消費控えや少子化にもつながり、不満が貯まれば自分よりも恵まれた人たちを引きずり降ろせばいいんだ、といういわゆるポピュリズム的な政治の動きにつながり、社会の分断が進むことになる。賃金が伸びず中間層が沈み込めば大きな会不安になると懸念する。

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 現在、少子化はアベノミクスの失敗と労働法制の改悪である。子育て支援、少子化対策は効果なく、豊田市でも出生数の激減と若者の市外転出である。2月の市長選挙では学校給食無償化、18歳通院医療費無料化など子育て支援が一歩前進した。しかし、非正規の削減、学生の奨学金援助、労働時間の削減など抜本策はこれからの課題である。

 非正規雇用の拡大が負のスパイラルを招き、日本経済の停滞の大きな要因であることの経過は理解できる。ではどうするか?誰が頑張るべきか、その処方箋がリスキリングではミスマッチである。アベノミクスの金融緩和、さらには日米安保と経済従属、武器爆買いなど踏み込まないと日本沈没である。

 この責任は労働法制を改悪した自公政権にある。また、国民がそれを選んだことにも、間接的に責任はある。では、労働組合はどうであった?連合は非正規の問題に取り組んだのか?中部産政研2014年春巻頭言で理事長の東政元氏が、「非正規労働について考える」で非正規労働者を削減する提言は、正論である。トヨタ労組も一時期は期間工の問題を取り組んだが、その後は無視した。長い目で見れば非正規削減は負のスパイラルにならず、会社の利益にもなったはずである。

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岸田政治を許さない

2024-09-04 | 平和・人権・環境・自治制度

9月3日豊田市駅で定例の統一行動を行いました。私も以下の内容で訴えました。

本日は作家の澤地さんが呼びかけた安倍政治許さないの統一行動です。

スーパーに行ったら米が棚からない。農林省は何と言っているか、新米がもうすぐとれる、から何とかなる。本格的に獲れるには、まだ1か月も2か月もかかる。ストック米があるから出せばいいのです。米は日本人の主食です。物価が高騰し米が相対的に安かったから、上がったわけです。

自民党農政の失敗である。車を輸出し、米の農産物を輸入する。米の価格保証を崩してきた。どんどん農家は減っている。そして国の食料自給率は38%、みよし市は9%です。豊田市に聞いても計算できない。農水省の倒壊農政局では計算式がHPにあります。しかし、式に入れる項目がわからない。愛知県に聞いてもわからない。戦争や気候危機になれば、食料品が外国から入らない。食料は自分の国で生産する。国民の命の保障です。戦争になったら、芋を作ればよいと、農水省はいう始末です。芋だって5月に苗を植えて秋にできる。半年、1年かかるわけです。自民党の農業政策が問題です。

 岸田政権は支持率低迷で政権を投げ出しました。自民党の総裁選が始まりますが、看板の架け替えでは暮らしは良くなりません。企業から献金を受け、企業のために政治を行う。政治資金規正法は抜け穴だらけ、公明党と維新の賛成で形だけの改正を行った。同じ穴のムジナ3兄弟と言わずなんでしょうか。自民党総裁選にたくさん名乗りをあげていて、テレべで報道する。企業献金禁止を言わない。パーティ券禁止を言わない。裏金で脱税の疑いもあるわけです。

 そればかりか、憲法改悪をしようというわけです。憲法9条に自衛隊を書き加えようとしている。さらに、緊急事態条項で災害などを理由にして、ドイツのナチスのように国会を開かないようにする。台湾有事を口実に沖縄周辺をミサイル基地化する。沖縄が再び戦場と化すわけです。専守防衛から先制攻撃、敵基地攻撃の雨量と言い換えていますが、莫大な予算で軍事拡大をすすめている。5年間で43兆円を閣議決定しいている。来意年度は8兆5千億円と大幅増です。財源の裏付けもなく、借金は1千兆円を超えている。ウクライナでもパレスチナでも戦争がはじまると止まらない、止めれない。兵士以外でも市民が殺され、都市が破壊されています。戦争を起こさせない、外交努力が必要です。

最後に、市民と野党の共闘で、自民党政治を終わらせましょう。国民の要求を一致させ、野党共闘が大事です。1金権腐敗政治をなくす。2物価高です。これはアベノミクスの失敗です、消費税を5%に下げる。非正規を減らす。夫婦別姓を認める。気候危機打開で、原発を止めて再生エネルギ-拡大する。3つ目は、憲法9条を守り活かすことです。軍事を増やさない、核兵器禁止条約を批准する。平和外交を強める。国民のくらし、命、平和を守るために、総選挙で自民党政治を終わらせましょう。

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林他編「交通・都市計画のQOL主流化」と豊田市

2024-07-09 | 気になる本

林、森田、竹下、加知、加藤編(2,021)『交通・都市計画のQOL主流化』明石書店

先日の豊田市の新総合計画の中間報告会のシンポは、市長は挨拶だけで帰り、報告書の説明はなく抽象的で何が問題点なのか、参加した私には理解できなかった。

現在の自治体の総合計画・都市計画マスタープランの都市構造は、立地適正化計画後はコンパクトシティ+ネットワークで主である。つまり人口が減少し、経済成長も望めない、従って市街地を縮小し、駅周辺に住宅や都市施設を集約しようという発想である。それは今までの線引きを見なおし、さらに誘導的に集約することと、核となる地域拠点(駅や支所など)を交通ネットワークで結ぼうというものである。本では触れていないが、中山間地を抱える自治体では、過疎化とどう向き合うかというテーマがある。中山間地の人口減少は激しく、一定の住める人口維持をどう支えるか?学校、交通、営農林、自然エネ、コミュニティなど限界にきている。能登半島地震での復興の遅れに、過疎問題が大きな要因に思う。

QOL(quality of life生活の質)については、以前の豊田市の総合計画ではテーマになっていた。大企業のある豊田市では、一応不正があってもトップ企業であり、影響力は大きい。林、加藤さんは中部の人で、加藤さんとは以前会い、話を聞いたこともある。

この本で気になるポイントはQOLの評価である。2部ではヨーロッパの事例が中心にある。都市の事業の評価は難しくわかり難い。例えば、豊田市ではラグビー大会やラリー選手権などイベント起爆剤に、都心開発に多大な予算を使っている。市民の6割以上が、魅力と賑わいに疑問を持っている。しかし、市は経済波及効果や都心の歩行者交通量、住戸の増加をあげ効果があったと一面的に評価している。以下本書のポイントとコメントである。

はじめにで林は、「経済成長から個人の幸福」への移行を掲げ、その評価法を提案しているがやや専門的で理解しにくい。豊田市の解析を市が委託して報告して頂きたい。感じとしては豊田市の都市思想とは対立するようにも思うが、異なった意見が対比されれば市民も理解されやすい。豊田市長は中核市の中で幸福度1位と選挙公報で書いていたが、財政力、投票率など評価基準は何か、が問題である。

コンパクト+ネットワークは対立するという見解はなるほどと思った。豊田市の場合はコンパクト(都心整備、幹線道路促進)が優先で、過疎対策は疎かでである。幹線道路は市に推進室を置くほど熱心であるが、生活道路は自治区を通さないと要望も受け付けない。ネットワークでは鉄道、バス以外にも多様な方法が模索されている。著者の指摘する通勤者だけでなく、高校生、高齢者の交通弱者の視点が重要である。

1-2 現行の費用便益分析による事業評価の矛盾 で、手法のミスマッチ、幸福要因の変化を指摘する。2章のQOLは本書の肝である。専門的であるが表2-3での評価指標、求人倍率、家賃、通勤・通学時間、買い物と病院と病院の所要時間、駅への所要時間、住宅の広さ、公園までの時間、騒音、自然災害の発生度、交通事故の遭遇頻度、大気汚染の度合い、交通手段のやさしさ、生物多様性、居住地区の清潔感など、具体的である。点数化してどう評価するかは不明である。交通具の質の評価指標では、所要時間、渋滞、乗り換え、自由度、安全性、料金などをあげている。また、別の表で運転しやすさ、歩きやすさの指標も示している。豊田市の都心整備の評価では、歩行者数が増加したとあるだけで、科学性もなく乱暴である。4章ではドイツのQOLの事例や、歩きやすさの指標がデータ整理されている。豊田市も参考にして数値で公表して欲しい。

名古屋圏の事例から、都市構造に関する課題として、拡散型都市構造が進展した理由を、①郊外地に手ごろな戸建て住宅が入手、②車を自由に使うライフスタイル、③自然の近くで子育て、④大規模集客施設や公共施設が郊外に立地、を指摘する。豊田市も労働力として流入した人が、郊外に住宅、団地、学校など作って、「低密度の分散型市街地」を形成してきた。そして、線引き都市計画でコントロールできたのか、立地適正化計画への連動などの評価・分析がされていない。国家高権の規制緩和(高さ、容積率、日照など)で建築自由が進み、デベロッパーの利益優先で都市の計画があるとは言い難い。表4-3-6では、QOLの評価要因が示されている。これを使って豊田市の都市を評価し、他市と比較すればわかりやすいのではないか?

都市構造のシナリオによる分析(4-3加藤、戸川)では、持続可能性評価システムを活用して定量的な評価を行う、としている。人口・世帯数の算定方法、将来人口の推計結果、人口の集約化シナリオをなど名古屋市でグラフの事例が分かりいやすい。シナリオ別CO2排出量とか住宅タイプ別割合、交通機関指標は分かりやすく、豊田市でも作成し学区別に説明して欲しい。わかりやすい資料で説明しないと行政の計画について、市民参加や意見が集まらない。表4-3-13事例として、住宅購入費等の助成と住宅整備支援で、富山市、金沢市、福井市、岐阜市がある。多治見市では公共住宅の補完として民間賃貸の補助制度が参考になる。

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諸富他「ゼロカーボンシティ」を読んで

2024-06-27 | 気になる本

諸富、藤野、稲垣編著(2023)『ゼロカーボンシティ』学芸出版社

 地球が温暖化し、気候変動、災害増加は誰もが感じる。SDGsも大事だとわかるが、生活に追われ身の回りでどうなっているか、効果が上がっているのか、自治体のHPでも見えにくい。CO2をどうやって計っているのか、原発、火力発電、再エネ、太陽光、EV化など問題は多岐にわたる。以下、本からのメモ書きと私のコメント。

この本のはじめにで、菅首相2020年に、2030年までに温室効果ガス排出削減目標を、2013年比で26から46%に引き上げ、対策予算を引き上げた。「脱炭素先行地域」は5年間で、3/4~1/2の補助がつくことで、関心が強まったとある。

1 岡崎市はこれに選定されたが、豊田市は?その計画内容はどうか?が、第1の関心である。この政策は生活の質を下げないことを前提としている。健康では、冬の部屋の温度を18℃より下げない。これには二重サッシに効果がある。

我が家も浴室改修と合わせ補助金がもらえた。1981年の古い家は無料診断で耐震改修補助がつくが、リフォームも合わせれば進み、町の建築業者も仕事になる、と思う。以前は豊田市も「生活の質」を問題にしたが、今はトヨタと同じように民営化、非正規などコスト削減を優先にしている。グループホームの「恵」の不正が2カ所発覚した。

2 奈良県の「自治体排出量カルテ」、環境省「地域経済循環分析」を、川崎市の廃棄物発電、真庭市のバイオマスがある。これら自治体のベテラン職員の提案が指摘されている。

 豊田市の様々な政策、環境モデル都市、CO2の現状と目標、補助制度など現状と課題はどうなっているのだろうか?特に、成果主義の導入から短期の成果とコスト削減が求められ、出来そうな目標しか掲げないこと、専門職員が育ちにくいことがあり、実現のプロセスが市民には見えない。また、迅速効率のトップダウンが増え、都心整備や中央公園など情報未開示も増えている。

3 再エネをどう進めるか、目標と計画は?再エネとビジネス、雇用につなげるかがポイントに思う。足助の三河の山里コミュニティパワーから学ぶべきであろう。

水素エンジンの効果と実現性は?下山ではテストコースが完成した。人口は増えたのか、スーパーが閉店したと聞く。中山間地の人口減少は止まるのか?足助、松平など3こども園が募集停止と聞く。ラリーで地域への経済効果はどこにあったのだろうか?諸富氏の「地域付加価値創造分析」でどうか

4 岡崎市の脱炭素先行地域の事例は?EVバッテリーの再利用、地域新電力「岡崎さくら電力、中央グリーンセンターのごみ発電?木質バイオマス発電?大規模太陽光発電1432Kw?ウオーカブルなまちづくり、など気になるところである。

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能登半島地震の今と課題

2024-06-02 | 都市計画・まちづくり

居住福祉学会の能登半島地震のシンポ感想

6月1日、室崎、田中、山崎、井上氏らの報告のあと、質疑がありました。その主な気になるポイントメモである。

・回復速度が遅い(道路寸断で陸の孤島、自治体が対応できない、政府の責任が曖昧)

・仮説建設戸数4千戸/6~8千戸希望、自主避難支援ない、避難所3000人

・ボランティアが少ない、受け入れ態勢がない、若者が少ない、国の誤った判断、1極集中、大規模開発など。行政が統括しすぎでは?職人が少ない(万博か?)

・県の創造的復興について、多様性、地域分散型

・被災地に夢のある未来が持てるか?

・和合温泉の復興の後れ

・過去の教訓が生かされていない(神戸、中越、東北、熊本など)

・パルス20秒、木造が共振し被害、耐震化率は低いが伝統的建築物、高齢化、家計、後継者などの問題がある。

・避難所整備が遅れている、遠くへ分散移動、運動不足、ウイルス、弁当冷たいなど

・現在直接死230人、関連死30人、2007年も被害

・1次産業をどう持続させるか、全国の共通課題

・住居観 後継者がいない、親族以外の継続 sustainable

・住居は人権、人権とは、社会意識が低い

・自助、公助、共助でなくイタリアは国が責任

 コメント

*復興が遅い、若者のボランティア不足、過去の経験が生かされない、県の創造的復興に住民参加がない、居住の人権意識、過疎化が全国共通課題であり継続調査

住宅以外では、原発対応、液状化(内灘町、新潟県江南区天野地区、富山県富山、高岡、射水、氷見)、津波、断層などの想定地震、遅れの口実に憲法の緊急事態条項は不要

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農地改革と「農業基本計画」改定

2024-05-30 | 気になる本

 戦後のGHQによる「民主化」政策で、小作農を廃止大地主を廃止した農地改革があった。また、先日食料・農業・農村基本計画が国会で改定された。農業者も減り食料自給率が低下する中、展望が持てる内容ではない。しかし、農協中央会山野会長は談話で、「将来にわたる食料の安全保障が確保図られるよう」計画策定に、期待しているが無理ではないだろうか!それに、農林中金は外債運用で巨額損失を報じられている。以下、本よりの抜き書きメモである。

 東畑四郎「農地改革この曲折したあぜ道」『昭和史探訪五』

マッカーサー自身がアジアにおいてやるべきことは、やはり農地改革だという考えを持っていることが出てきた。占領軍の日本民主化の方針と地主制を固めていくということは、矛盾しないじゃないか。実際の地主は猛反対、当時の国会は戦時中の翼賛議員が大多数だった。

 200万ヘクタール以上も農地を買って、さらに土地所有者の問題というのは極めて面倒なことであった。二次改革案は約一ヘクタールであった。データがあって占領下だからできた。ちょうど朝鮮、台湾から引き上げてきた役人も大勢いたからできた。国が特別会計を作って、農地証券を出して、全部買収した。

 日本の農業というのはやはり零細で、かつ兼業農家が非常に多くなり、都市所有者でありながら頭は脱農している。農業では飯が食えないという兼業農家が非常に多く、しかも農業規模を拡大しようと思っても地価が高くてなかなか流動しない。あの零細所有者にした農地改革に対する批判もあります。この一番難しい問題をどうするか、というところに日本は来ている。この問題を避けて牛を飼い、草を作れ、国内で自給しろ、何て言ったってこれは全く平面的な話しである。

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 食料自給率は国民の命や食の安全、物価の安定から極めて重要であるが、現在も結局アメリカの余剰農産物を買わされ、価格保障もなく生産がおぼつかず、生産者数は減り耕作地も減り、農山村を疲弊している。食料自給率は下がる一方で、輸入だよりでは飢饉や戦争で自国民の命は守れない。

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木村『平和日本の試練「戦後インフレ」』から学ぶ

2024-05-29 | 気になる本

1975『昭和史探訪―もう一つの証言』5 番町書房

日本の債務残高1300兆円、日米金利差、賃金減少、円安で弱い経済。武器の爆買い、自民党の裏金疑惑、経済も政治も未来が展望できない。景気は悪いが物価は上がり、スタグレーションともいえる。異次元の金融緩和を続けているアベノミクスの失敗である。しかし、利上げできない日本で、ハイパーインフレの危険性もある。戦後インフレはどうであったか?預金封鎖にデノミは行われるのか?以下、著書の拾い読みである。(  )内は私のコメント

p189 木村き八郎 平和日本の試練「戦後インフレ

 今まで辛抱していたものが、預金を引き出せるわけですから、食料の買い占めを非常に刺激した。(戦費調達の大量国債があり)悪性インフレに発展することは明白であった。戦後のインフレをひどくした一つの原因。それからもう一つの原因は臨時軍事費、昭和20年度で一年間850億円だったところが、終戦が8月だから七ヶ月残っている、それを全部使っちゃった。三番目は銀行の貸出が増えたんですね。軍需手形とか国債を日本銀行へ持って行って、新しいお札を受け取って貸すんだから、これはインフレになるんです。軍需生産はないんで、平和物資に転換するといったのですが、転換だってそううまくいってない、いわゆる横流し(利権)ですね。

 新円封鎖して、凍結しておいて、最後には補償打ち切りによって、軍備会社から取れないものを、結局国民の預金を捨て切り捨てて救済した。

 狭い国土に1億なんて人間は住めないんだと、何か4000万餓死するとかいうことを言ったことがあるんですよ。食料問題がものすごく重大化しちゃった。アメリカから食糧援助はなかったのです。その後ドッジになってから援助があったんです。結局戦後のインフレの悪化した要因の一つは、預金の引き出し。第二は臨時軍事費の850億の予算を、まだ七ヶ月も会計期間が残っているのに全部使っちゃった。それから三番目にはその銀行の貸出なんですよ。もう一つ原料がないということを忘れて、いくら金をだしたって生産が増えるはずもない、でも石橋さん大ミエ切ってインフレ政策を助長したのです。

 なんでも税金でまかなえと、いうことで民商が反対運動を起こした。それを基礎にして共産党がずっと伸びていった。昭和24年に中国に共産主義政権ができました。ソ連に対抗するアメリカの軍事基地としては中国だったのです。中国をソ連に対する反共の危機としておったから、日本は問題にしていなかった。日本から軍事基地を撤去しちゃう。それから陸海軍を解体する。パージをやって戦犯を追放させる、農地解放する。日本は極東のスイスみたいにする、とマッカーサーは言っていた。もう一つは、日本の工業水準を高める、これがアメリカの軍事経済力を、共産主義に対して強化することになる。そういう意味でアメリカは日本に援助したのである。インフレが収束したのはドッジさんが決め手だったのか?そうですね。超均衡予算でピタッとなったんです。アメリカの援助があったからよかった。その反動がくるはずだったが、その時に朝鮮戦争が始まった。

 経済産業の基本は重化学工業であるが、ネックは燃料だった。炭鉱は日本人よりも第三国人が多かった。それもものすごい悪条件でやっていた。それが終戦で朝鮮の人たちが引き上げちゃった。ドッジのやり方はドラスティックであった。ものすごい税金攻勢ですよ。所得税が増税された。困ったのは中小企業者です。商店の息子はものすごく共産党に行きました。

 新円切り替えのとき金融緊急措置令は準備しないと大混乱するのでは?証紙で対応した。月に500円位しか下せない。最後は預金封鎖した。例外措置をコネのある人(利権、裏金)はすり抜け、まじめな人が損をした。いままた物価安定(日銀の本来の役割すら放棄)と言われますが?1953年に360円を280円に、さらに切り上げろとアメリカは言ってきた。最初の切り利上げ以降、それでも輸出が増えドルがたまるので、アメリカの圧力高まった。しかし、円の再切り上げは防げなかった。アメリカがドルを10%切り下げちゃった。だから円は切り上げに、残ったのがインフレです。その後石油ショックから悪性化しちゃったのですね日本は。

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 円安・インフレを止めるには利上げは避けられない。利上げできる環境づくりは、「最低賃議員全国一律1500円と中小企業支援」「消費税減税」「社会保障の充実」です。関野秀明「インフレ不況と出口戦略」赤旗5・28とある。岸田政権は武器爆買いの軍事費増大で社会保障削減である。自民党は金権腐敗政治である。出口戦略を国民的議論で、政権交代の政策にすべきではないだろうか。

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神野「地域再生と経済学」②

2024-05-20 | 気になる本

共同体の共同作業は、共同体の生産活動の前提条件を形成することにある。農村で言えば、水路を共同で建設して共同で管理したりすること、都市で言えば、街路を共同で建設して共同で維持することなどが、共同体の共同作業として実施されてきたのである。共同体の相互扶助によって担われてきた機能には、教育、、医療福祉サービスがある。

グローバル化、ボーダレス化に伴い、中央政府が張る現金給付による社会的セーフティ・ネットは綻びはじめている。それを地方自治体が現物給付による社会的セーフティ・ネットで張り替えなければ、産業構造を転換させて地域社会を再生することはできない。

人間の新しい欲求は、人間の生活から生まれる以上、生活に密着して観察していれば容易に把握できる人間の生活から遠い政府である中央政府では、こうした新しい欲求は把握しがたい。スウェーデンでは雇用と福祉を重視する伝統生かしながら、新たなヨーロッパ社会経済モデルを追求している。

「行政改革」といえば、内部効率性のみを追求しがちである。しかし地方財政では外部効率性の方が内部効率性よりも重要である。外部効率性とは、地域社会のニーズに合っているかどうかと言う効率性であり、ニーズに合ってない公共サービスをいかに安い価格で生産しようとも、それは無駄であり非効率である。(豊田市の「行政改革」は民営化や市民サービスのカットで、何億円経費削減されたかを競う。一方で、駅前開発は大金を使い綺麗になっても賑わいがない。市民の6割は効果がない、としていても失敗を認めず、今後の整備計画も「隠ぺい」である。)

地域社会の再生には二つのシナリオがある。一つは、あくまでも工場誘致という従来の戦略の延長線上で持続可能性を求めるシナリオである。しかし、工業分野では地域社会は新興工業国の新しい追い上げに直面している。もう1つは、地域社会を人間の生活の場として再生させるシナリオと言ってもよい。

日本でも環境と文化をキーワードとする地域社会再生が始まっている。1990年代から施行されている湯布院町の「麗いのあるまちづくり条例」は、湯布院町のかけがえのない資産である。高知市も人間の生活空間として都市づくりを目指している。ショッピングセンターの機能を併せ持つシネマコンプレックスの建設を拒否している。高知市は京都市について古くから路面電車を敷設した。(90年代地方からまちづくり条例ができた。真鶴町の「美の条例、豊中市、世田谷区の自主的なまちづくり協議会などである。都市計画の分権や景観法もできたが、規制緩和で容積率は緩和され高層建築は止まらず、「建築自由」で都市法は改悪され日照、景観、空地など居住環境は悪化している。)  

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神野直彦「地域再生の経済学」①

2024-05-19 | traveling, town walking

神野直彦(2002)『地域再生の経済学』中公新書

「財政と民主主義」を読んでの再読である。そこには財政あっての経済とある。国家債務が危機的な状態にある中、国の失敗を国民と自治体にしわ寄せする。それでも武器の爆買い、自民党の裏金である。国民の怒りは3補選で野党勝利に表れた。以下本の抜き書きである。(  )内は私のコメント。

 工業都市が衰退しているのも、歴史が工業社会から情報・知識社会へ転換しているからである。情報・知識社会になったからといって、ものづくりが終わりを告げるというわけではない。(ものづくりは農林業も含むべきである。)生産性の向上とは、人間の知識の向上のたまものである。工業社会から情報・知識社会へと転換するエポックに、工業都市は衰退し地方都市は荒廃する。そこで都市再生が課題となる。(全国的に工業都市は衰退したが、地方都市の豊田市の工業は衰退していないけれど、人口減や下請け企業と農林業の衰退などがみられる。)

 ヨーロッパの地域再生とは、市場主義によらない地域再生であり、それは市民の共同の経済である財政による地域再生と言うことができる。都市再生のキーワードは環境と文化である。自動車の侵入しない人間が歩きたくなる市街地の地価は上昇し、高級ブランド店やフランチャイズ店が進出して商店街は活況を呈している。市場主義による都市再生によって市街地の地価が下落し、かつ商店街が荒廃している日本の現状とは好対照をなしている。(現在はEUでは移民が増え右翼ナショナリズムが台頭。豊田市では再開発で高層ビルが出来、人口が増えても既存の商店は追い出され、百貨店、スーパーも閉鎖に追い込まれている。それでもイベントを軸に都市整備をトヨタと進めている。)人間的都市に優秀な人間が集結し、新しい産業が芽生え、ストラスブール(フランス北東部の都市)では雇用も増加している。

 失敗に学習することなく、今また市場主義に基づく都市再生が展開している。大地の上に巨大な構造物が竣立するけれども、大地の上から人間の生活は奪われ、無機質な死せる都市が誕生するだけである。地域再生とは、人間の生活の場の創造に他ならない(豊田市では駅前再開発で高層マンションは増え、綺麗になったが賑わいがない。地元商店は追い出され、ついにメグリアまで撤退に追い込まれた。それでもイベント型の都市整備をすすめる。失敗に学ぶことがない)。サスティナブルシティは人間の生活の場としての持続可能性である。つまりサスティナブルシティとは工業の衰退によって、荒廃した都市の生活の場としての持続可能性(sustainable)を目指す都市に、再生しようとする動きである。(豊田市のすすめる「コンパクトシティ」は駅周辺に人口や都市施設を集約するが、農山村は放置し衰退している)。地域社会再生は帝国を目指す覇権国アメリカが、推進するグローバリゼーションへの対抗モデルでもある。グローバリゼーションこそ自然破壊の最大の脅威であり、人類の生存を脅かす破壊者でもある。良好な自然環境とともに人間的接触(交流)を可能にする公共空間が提供されなければ、地域文化を沸き立たせることはできない。(スタジアムのある中央公園は、農地を潰し洪水浸水区域に木をたくさん植える公園計画で、スタジアムのための大駐車計画でありPFIでトヨタ系会社が作ろうとするものである。市民に知られては困り、情報が未開示である)。市場主義を拒否した地域再生とは、市民の共同の経済である財政による地域再生であることを意味する。地域再生とは「公」を再生し大地の上に、人間の生活を築く戦略だと言うことができる。

 農業では生活の場は生産の場と一致する。農業社会の都市とは農村の余剰生産物が取引される市場であり、周辺に配置されている農村の交流の場ということができる。都市には、二つの顔がある。一つは市場という顔で、もう一つは自治という顔である。

 終わろうとしている大量生産・大量消費の工業社会は、国民国家の時代でもあった。このエポック(時節)には、国民国家の時代も激しく動揺しているということができる。国民国家が競争原理に基づく市場経済を、福祉国家を形成して制御することで実現した大量生産・大量消費の工業社会が行き詰まっているからといって、それが失敗だったというわけではない。歴史的使命を終えたということができる。

 生産性上昇の恩恵にあずかれるものは、企業に雇用されているものだけである。働いていない失業者や、働くことのできない疾病者あるいは高齢者などは除外されてしまう。そこで政治システムが所得再分配を実施する。例えば埼玉県が、所得再分配を強化すれば埼玉県に貧しい者が流入し、豊かなものが流出してしまう。これが地方自治体が所得再分配を実施しても意味がない、という理由である。所得再分配国家の前提だったブレトン・ウッズ体制は、1971年にアメリカの一方的な通告によってもろくも崩れることになる。一環としてドルと金の交換を停止し、実質的にドル切り下げとなる輸入課徴金賦課を発表したからである。

 工業では自然が排除され、合成ゴムに限らず自然には存在しない多くの合成物質が、現在では利用されている。そうした合成物質が自然の再生力を奪い、ひいては人間の生活を破壊して行くことになる。「ヨーロッパ・サスティナブル都市最終報告書」も「市場メカニズムに依存していたのでは、都市の持続可能な成長は実現できない、と述べている。

 リストから財政学が継承した思想は大きく二つにまとめられる。第一に、市場経済の外側にある非市場経済をも考察の対象とするということである。第二に、コミュニティつまり地域共同体を重視するということである。 1980年代になると、ブレトン・ウッズ体制が崩れ、金融自由化が進み、資本は一瞬のうちに租税負担の低い国民国家へとフライトしてしまう。逆に貧者に手厚い現金給付を施せば、貧者は流入してくる。そうなればたちまち財政は破綻してしまう。そこで第二次大戦後のブレトン・ウッズ体制の下では資本の自由な動きを制御する資本統制の権限が、国民国家に認められていたのである。

 社会的セーフティ・ネットが存在し、努力しないでいい敗者になったとしても救済されてしまうから、モラルハザードが働く。努力した者が報われる社会を形成しよう。効率の悪い者が破れ、効率のよいものが勝者となる 頑張った者は報われる、競争社会が活力を生む、という新自由主義社会である。

 やがて皮肉な事に、唯一の地場産業として地方には公共事業が残るだけになった。地方都市が唯一の地域産業である公共事業に、縋らざるを得ない状況が出来上がってしまったのである。(豊田市の財政は恵まれているが、ハードと大企業優遇である。自民党は普通建設事業300億円以上を要望し、市はそれを実施している)。

地域社会に根ざした食文化を失えば、自給率は急速に落ち込む。日本は食の文化を破壊して、食料自給率を落ち込ませてきたけれども、工業製品を輸出することで食糧の輸入を確保してきた。工業製品を製造する工場は1990年代に海外へとフライトをし始めた。(みよし市の食料自給率は9%と議会答弁しているが、豊田市で聞いても教えてもらえない。以前は15%と聞いたことがある)。

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神野「財政と民主主義」③

2024-05-14 | 気になる本

5章 人間らしく生きられる社会へー地域の協働と民主主義の再生

「量」の経済が「質」の経済へ転換するということは、交換価値よりも人間の生命活動という根底から見た使用価値を重視することを意味する。人間を含めて地球上の生命体は緑色植物が太陽エネルギーを捉えて蓄積したエクセルギー(exergy)を分かち合って生命を維持している。

持続可能な都市の創造は、地域の生活機能の再生から。生活様式とは文化である、ヨーロッパでは「環境」と「文化」を合言葉にした、生活の場としての地域共同体の再創造運動が展開して行く。持続可能な都市の模範生としてフランスのストラスプールでは、自然環境の下で営まれてきた伝統的な生活様式としての文化を復興させていった。ポスト工業社会では生活機能が生産機能の磁場となることを教えてくれる。水の都ストラスプールでは、1989年市長に就任したカトリーヌは市街地への自動車の乗り入れを禁止し、LRTを市街地に導入することに踏み切った。市内はいる路面電車の駅にはパークアンドライドで自動車の駐車場が設けられている。市街地を自動車が走らないので、歩きたくなるような公園のような都市になる。商店街は自動車で走り抜けられるよりも、歩いて訪れてもらった方が活況を呈する。ストラスブールの人口は23万人程度だが大学の学生数は5万5千人である。

(豊田市もバスの一部乗り入れを禁止し、市駅前広場を作ろうとしている。これまで駅前開発は30年1000億円以上投資してきたが、賑わいはない。しかし、中心市街地の空き店舗は増えるばかりである。イベントの時にスタジアムまで、市外の観客が歩ける街にするのか、整備方針が不明である。今後の整備計画について、市長の経営戦略会議の議事録を公開請求しても、全て非公開である。)

公園のような都市づくりが、ドイツの工業地帯ルール地方にある。公園のようなランドスケープを作り出すとともに、住宅を整備し、生活環境を整えていく。生活の場として地域共同体を再生させると、そこに新しいタイプの知識集約産業が展開してくことになった。(各務ヶ原市では「公園都市」を掲げていたが、市長が代わったせいか現在はトーンダウンしたようだ。)

日本では2007年に荒川区長は豊かさを示すGDPに代わって、幸福度という新しい社会指標を追求する「幸福実現都市あらかわ」を掲げ、都市開発によって無機質な高層建築物が林立し地域共同体における人間の絆を失われていく。存在欲求の充足を意図した2009年に荒川区自治総合研究所を設置して、荒川区民の幸福度を開発する。「幸せリーグ」に加盟している自治体は2023年78である。

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ポスト工業社会から知識集約社会へとあるが、豊田市は高収益をあげるグローバル企業トヨタのある都市では、まだ次世代が見通せない。未だに幹線道路の推進、都心整備でハード重視の企業都市まちづくりである。大企業のトリクルダウンが無くなり、車輸出の反動で農林業が衰退し、非正規拡大で若者が転出超過であることは、人口減少にも顕在化している。ものづくりは車だけでなく、米や野菜も含めるべきである。食料自給率の自治体目標を持つべきである。中小企業支援、非正規改善で定住が緊急課題である。総合計画の見直しの時期であり、人口減少を踏まえコンパクトシティからサスティナブルシティに変えても良いのではないか?スタジアムの駐車場に利用するような中央公園新設より、既存の毘森公園整備を急ぐべきである。何よりも中央公園の計画、都心整備の方針など、経営戦略会議の議事録を公開すべきである。豊田市の食料自給率の算定と公表、議事録の公開は住民参加、民主的地方自治の前提である。

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