孫崎享(R2)『朝鮮戦争の正体』祥伝社
著者の「戦後史の正体」は有名である。朝鮮戦争は隣国であり、日本にとって「特需」という効果もあった。その位置づけを理解することは意義があると思う。この本では文献、回顧録などから論理構成されている。以下、本で気になったメモ書きである。( )内は私のコメント。
朝鮮戦争は1950年北朝鮮が38度線を越えて韓国に軍事行動を行った。釜山近辺まで迫り、米国軍を主体とする国連軍が投入され、押し返し中国国境線まで進軍した。中国が義勇兵を送り、実質的に米中戦争となった。境界線は、戦争前と戦争後は何もかわっていない。
ピカソは「朝鮮での虐殺」という絵を描いている。(ゲルニカは良く知られているが、この絵はほとんど知られていない。ネットでは公開されている。)
朝鮮戦争に関わった、金日成、トルーマン、毛沢東、スターリンの内、情勢判断を誤った。誰か一人でも的確に情勢判断すれば、戦争は起きなかったのではないか。
朝鮮戦争で何人の人が死んだのか?民間人106万人以上、軍関係者200万人以上。
サダム・フセインは自分の後ろにアメリカがいると確信していた。ところが、イラク軍がサウジ国境近くに来たら、米国は一変した。構図は朝鮮戦争と同じである。
日本の関与と、警察予備隊形成過程での日本の民主主義崩壊。戦後米国は占領軍の圧力で日本に対して、①国権の最高機関を国会とする。②すべての基本的人権を保障する。③戦争を放棄する、を押し付けたが、朝鮮戦争で、米国は逆に強権力でもってこれを引っくり返す。
この大変革の中で、報道機関は300人以上の人を「共産党員ないしその同調者」として解雇した。暴力革命を支持した人はわずかであろう。
朝鮮戦争で潤っていた日本は、スターリンの死で株価暴落した。戦争の継続を願っていたのが、日本の経済界であった。
ソ連が崩壊後、米国はイラン、イラク、北朝鮮を敵にすることで、国防政策を形成する。(イラク戦争の口実に大量破壊兵器があると言うことだったが、なかった)
北朝鮮の核兵器にどう対応するか?核兵器で攻撃される脅威の下にあったのは北朝鮮であった。北朝鮮の核兵器にどう対応したらよいのか?1つは「互いに武力行使をしない」という平和条約をつくればよい。
日本は1950年で「民主主義」と「自由主義」を根底から覆す国になったと強く感じた。