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豊田市の施政方針を読む・その2

2016-06-07 | 市民生活・企業都市

 その1は4月24日である。何やかやと忙しく遅くなってしまった。施政方針は豊田市及び市長、議会与党が今年度何をやろうとしているか。予算を何に重点に使うかをみるポイントがわかる。少し長くなるが、10項目の概要と気になる10のポイントを以下に掲げる。市民の暮らしを良くしようと考えている人のヒントになればありがたい。
第1は、「元気な高齢者が活躍するまち」の実現
 1点目は、高齢者の健康づくりから医療、介護まで。新たに地域包括支援センターに生活支援コーディネーターを配置し、高齢者の暮らしを支え合う活動を創出する。
 2点目は、在宅医療と介護を支える環境整備。豊田地域医療センターの再整備に向けた実施設計を進める。また、2か所の地域密着型特別養護老人ホームと、1か所の認知症高齢者グループホームの建設に対し補助を行う。
第2は、次代を担う子ども・子育てのまちの実現
 1点目は、「育児相談コールセンター」を開設
 2点目は、高嶺こども園の改築に着手するほか、私立こども園の改築支援や私立幼稚園の幼保連携型認定こども園への移行支援により、待機児童ゼロの取組
 「多子世帯の保育料の負担軽減」に向けた取組
 3点目は、学校教育の充実で、小学校4年生から6年生までを対象に新たにベテランの非常勤講師を配置
 4点目は、平成28年4月開校の浄水中学校を中心にして、校区内の3小中学校と地域の連携のもとで教育を進める豊田市版コミュニティ・スクールのモデル実施に取り組み、併設する交流館の機能も活用
第3は、「女性・若者がいきいきと活躍するまち」の実現
 1点目は、「第3次とよた男女共同参画プラン」の一部改訂に取組
 2点目は、若者の社会参加と自立支援
第4は、「都市と農山村が共生するまち」の実現
 1点目は、北地区市街地再開発ビルのH28年度オープンを目指し、市街地再開発事業を進める。平成31年度のラグビーワールドカップ2019の開催を始めとする国内外から多数の来訪者が期待できる機会を都心地区の活性化を進める。
 豊田市中央図書館については、ICタグシステム及び指定管理者制度の導入準備を開始し、専門性の向上や開館時間の延長。
 2点目は、おいでん・さんそんビジョンの移住・定住の促進
第5は、国際的なスポーツ・文化・観光交流のまち
 1点目は、2019年のラグビーワールドカップ開催、豊田スタジアム改修と周辺整備(9+3億円)
 2点目は、文化芸術振興、デトロイト博物館展、豊田市文化ゾーン見直し
 3点目は、観光振興
第6は、産業・ものづくり
 1点目は、産業用地確保、H29「仮・ものづくり創造拠点」、H32花本工業団地拡張
 2点目は、中小企業の「仮・豊田ビジネスカフェ」
 3点目は、H30年製材工場
 4点目は、地産地消、学校給食
第7は、安全・安心のまち
 1点目は、防災および地域防犯
 2点目は、交通安全
 3点目は、地域の生活環境、ごみ屋敷対策
 4点目は、南部に病院
 5点目は、障がい者福祉
第8は、環境先進のまち
 1点目は、西三河首長の誓約によるエネルギーの地産地消
 2点目は、次世代自動車の普及
 3点目は、エコフルタウンの活用
 4点目は、再生エネルギー、「あすけ水の館」
第9は、快適利便性のまち
 1点目は、幹線道路の整備促進
 2点目は、住宅の宅地供給、区画整理、調整区域の地区計画
 3点目は、公共交通の充実、リニア中央新幹線、名鉄三河線の高架・複線化
 4点目は、汚水処理場整備
第10は、信頼と共働のまち
 1点目は、「ミライの普通
 2点目は、市民参画と地域自治区、浄水モデル、地区カルテ
 3点目は、マイナンバー、「第2次地域経営戦略プラン」、効率的な行政経営と施設管理
 以上ポイントである。
 特に斜め文字が個人的に気になる点である。以下若干のコメントである。
①1-1豊田市地域医療センターの再整備について、豊田市の医療整備はベッド数の不足も事実を隠し後手後手であった。南部にやっと民間医療施設が予定されているが、駅前再開発や工場誘致などの補助に比べても、岡崎市の補助に比べても劣る。
②2-2公立保育園は民間へ順次無償で移譲し。保育の質の低下が懸念される。「多子世帯の保育料負担軽減」は3子目から無料で良いのでは?
③2-3「小4~6年生に非常勤講師を配置」とあるが、他の学年と同じ複数担任になぜしないのか。
④4-1「北地区市街地再開発」は民間施設だけなのに、公的な補助金が多すぎる。豊田市中央図書館を急遽民間に指定管理者制度とするのはなぜか?図書館のボランティアはじめ市民の会が納得できず、計画撤回の署名を集めている。
⑤5-1ラグビーのワールドカップでスタジアムの改修費が3億円である。
⑥6-3中核的な製材工場を誘致しようとしている。林業の活性化につながるか。小さな製材工場がつぶれないか心配である。
⑦9-2宅地供給は開発者優遇で住宅や宅地が安くなるのか。宅地や住宅購入者に直接補助した方が効果がでるのでは。地元木材を支給する自治体もある。市営住宅の入居待ちの人が多くいるのに、公的住宅は建設していない。民間賃貸住宅の家賃補助も有効である。住宅問題は非公開の住宅マスタープランを入手したので、近いうちに概要と問題点を指摘したい。
⑧9-3名鉄三河線の複線化・高架化について、事業費の9割が公的補助でたくさんの予算がかかる。その効果を検討する必要がある。
⑨10-1「ミライの普通」は何を意図しているか不明である。若者が正社員になりにくく、未来に希望を持てるようにして欲しい。
⑩10-2地区カルテを作ることは良いことである。中学校単位で地域会議があるが、地域のビジョンを持っていない。中学校単位で基礎データを提供することは良いことだ。また、浄水地区では中学校と交流館の複合施設ができた。今後のモデルケースになるか注視したい。
(写真は西尾市のある神社防災対策、豊田市の東庁舎角の石像は大丈夫だろうか)
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「豊田市の人口ビジョン」を読んで

2016-06-05 | 市民生活・企業都市

 「豊田市の人口ビジョン」は「まち・ひと・しごと創生法」に基づき、国においては2060年に1億人程度の人口を確保する戦略が示されたことにより、策定されたものである。愛知県人口ビジョンを参考に、豊田市の人口に関する5か年戦略や方向を示すもので、現在策定中の総合計画の重要なベースとなる。しかし、一言でいえば人口減少は必然で、現行の大企業依存策、農林業の衰退を是認し、人口減少の現象には触れているが、本質的な要因分析が無い。従って、解決策は対処療法の施策の羅列にしか思えない。批判だけでなく、いくつかの対案も提起したい。
 総人口および3区分別人口推移では、老齢人口が増加し、年少人口が減少している。山村地域では生産人口の減少も著しい。昭和55年より平成23年の人口の伸びは、1.33で隣接市と同程度であるが、長久手市、みよし市、日進市では2を超えている。
1 人口の自然増は縮小、雇用調整による社会減
 自然増減は総人口の増加に寄与しているが、縮小している。社会増減はリーマン・ショック後の09年より減少に転じている。
①合計特殊出生率1.60(P11、図表1-9、どうやって1.8~2.0にするか)
合計特殊出生率は平成26年愛知県1.46で、豊田市1.60と県平均を上回るが、隣接市の安城、知立、刈谷、みよしよりも低い。
②高い人口性比(P14、図表1-5)、高い中堅男性未婚率(P15)
人口性比は109.9と男性割合が高い。特に20~24歳は141.9、25~29は14⒈3と異常に高い。35~39歳の男性未婚率は36.4%で県平均より高い。製造業の会社に独身男性が多く就職し、男女交流の時間と場所が少なく未婚率が高くなっている。さらに、正社員になれない非正規労働者が増え、雇用調整で社会減になり、未婚率の増大、中堅世帯が市外に転出し定住できず、自然増の縮小、少子化に連動している。産業・労働環境と居住・子育て環境などの自治体政策と密接に関係してくる。産業都市では社会増減の原因分析と雇用・定住政策が最も重視されるべきだと思う。
2 人口の社会減の要因
① リーマン・ショック後に人口は社会減になった。トヨタはいち早く期間工を08年夏から8,000人ほど雇止めした。下請けなども派遣労働者・外国人を解雇した。愛知県内でも年越し派遣村が設置され、知立団地や保見団地で外国人の相談会も開催された。リーマン・ショックはアメリカのサブプライムローンを背景に住宅バブルの崩壊であった。そのため、2002年から2007年まではアメリカへの車の輸出は絶好調であった。小泉内閣と奥田経団連会長の時代、04年から製造現場に派遣労働者が改悪された。結果としてリーマン・ショック(トヨタ・ショック)の時から人口の社会減である。大企業が栄えれば地域経済も反映するというトリクルダウンは、それ以前から少なくなっていた。そして、エコ減税の名のもとに大企業支援、減税、リノベーション、単価引き下げでトヨタはV字回復した。しかし、09年3月期から13年の5年間は法人税を「免除」(繰越欠損税制や連結納税制度など)された。庶民の家計が赤字でもそのような優遇策はない。さらに、トヨタが新聞広告で14年4月からの消費税率の引き上げについて、「『節約はじつは生活を豊かにするのだと気がつけば、増税もまた楽しからずやだ』などと述べている。法人税が払われていなかったため、法人市民税が豊田市では激減した。大企業依存と自動車産業に特化した地域経済の脆弱性が露呈した。地域の内発的な地場産業、農林業、商業のバランスが欠けているなどリスクとして指摘されてきたが、失敗の予防線にしか聞こえない。地 方創生ならTPPに反対し、農林業の自立と食料自給率の数値目標を、カロリーベースであっても国並みの50%に設定すべきである。
②社会減(P21)と地域的な人口移動(P22、図表1-13)、住みにくさ
人口移動の特徴は県外から転入し、県内の市外へ転出している。市外への転出超過が多いのは、名古屋市、みよし市、岡崎市、日進市、長久手市である。社会減の一番の要因は、非誠意労働者が定職につけず定住できないからである。さらに、住宅マスタープランやアンケートからも住宅取得費が高い、住宅取得者の支援がない、公営住宅が不足(市営入居待機者約300世帯、県営は保見団地に300戸ほど空きがあっても入居制限)している。市政は大企業優遇策、駅前再開発や自治体の市場化で、居住環境(住宅、公園、公共交通、文化)や子育て支援(保育園の民間移譲、介護・医療施設の不足)が太田市政から一層後退している。09年から外国人は帰国支援金で追い返した。さらには賃金、所得の低下、生活保護の増大などがある。これらの社会的な現状分析と市民の認識、周知が必要である。アパート経営や駐車場などの不動産収入も不安定化してきた。
 総合計画案では住みやすいが71.5%で過去最高としているが、「住めば都」でどこの自治体でも増える傾向にある。岡崎市の方が83.6%と高く、その違いを比較検討すべきである。
 豊田市の人口ビジョンではバブル崩壊、リーマン・ショックなど経済環境の周期的な変化だと他人事のように指摘するが、本質的な問題を見ていない。
③ 若者の移動
大学ではみよしの愛知大学が名古屋に移転したように、都心回帰と青年の減少がある。豊田市にあった大学も撤退や定員割れになっている。大学は交通の利便性、若者のバイト先、都市の魅力などが選択される。大学生は貸付奨学金とブラックバイトで苦労している。さらには就職先も不安定雇用の心配がある。
④就業構造
業種別は製造業の職業が圧倒的に多い。夜勤、残業、賃金など働き方は、住居や子育てに影響する。母親の就業は、小学生保護者でフルタイムが2割、パート、バイトの割合が5割弱、未就業が25%である。
⑤ 豊田市の人口動態に関する人口特性と課題
 ここでは自動車の国内生産の維持(300万台体制)と海外シフトの不安を挙げている。
3 人口の将来展望(P38~)
① 広域的な位置づけ
家族形成期の市外転出は、市の重要課題である。広域で人口集積を図るとしている。
② 山村の価値
③ 若年層の吸引力
④ 超高齢社会への対応
⑤ 豊田市で暮らし働きたいという流入人口の定着化
⑥ 将来の人口展望は、2025年、30年の43万人をピークに減少
4 総合戦略(P44~)
① 基本方針は、強い産業、若者が活躍する社会として、以下特性を述べている。
② 産業発展に支えられた行財政力、自治区組織、地域自治システムと見直し、TPP、国際競争力、国内生産拠点の分散化、法人市民税の一部国税化など強みと弱みがある。
5 基本方針と目標(P45~)
 基本目標は、仕事づくり、賑わいづくり、子育て環境整備、豊かさの実感できるまちづくりの4つである。具体的には「戦略的企業誘致」で既存大企業支援、新規に「中核製材工場の誘致による地域材の流通化」?を挙げている。農山村の林業が活性化できるのか、既存の小さな製材業との共生はどうか。「産業の強靭化では自動車産業の大企業依存」に変更はない。「ラグビーのワールドカップで賑わい」つくり、「リニア中央新幹線の開業に期待」し交流人口の増大と観光誘致である。「必要な住宅や宅地の供給をする」、とあるが公営住宅やアフォーダブル(低所得者向け)な住宅供給や、民間賃貸住宅の家賃補助による公営住宅不足を補う考えはない。住宅リフォームの助成事業の創設が各地で成果を上げているが、検討されていない。
現状の、非正規労働者の増大による社会減、不安定雇用による定住不可、未婚率の上昇、中堅世帯の市外転出、子育て環境の悪化など指摘されているが、方針、目標での解決策が噛み合わず、現在の政策を列記している感じが否めない。数値目標も実現可能性のあるもの、都合の良いものが目立つ。人口減少はやむを得ないという諦めがある。東京1局集中に対抗できる自治体からの人口ビジョンが望まれる。今後は他市との比較、地区別分析もしたい。(写真は遅ればせながら改修された豊田市美術館)
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