金子、遠藤他4名(2020)『日本のオルタナティブー18の提言』岩波書店
遠藤誠二「東アジアに相互信頼のメカニズムをどうつくるか」
現状 軍事力強化を優先してアメリカへの従属を深める。
提言 専守防衛を基にアメリカに依存しない安全保障のメカニズムを目指す。
説明 アベ政権は、外交の議論もせず、軍事力偏重、専守防衛を捨てて他国への攻撃能力を保有する方向へ変化した。1つに、軍事力(日米同盟を基軸に、武器の爆買い)を背景に自国だけの安全を考える。さまざまなリスクや生活上の脅威(自然災害、気候変動)から、安全を高める「人間の安全保障」を進める。
集団的自衛権行使が可能となり、アメリカとの共同訓練が可能となり、アメリカ艦艇の護衛も可能となった。アメリカが「敵国」から攻撃をうけると、日本と共に反撃することになる。通商問題で負担を回避するために武器を買ってアメリカの圧力を軽減する。1980年代から繰り返された手法である。F35は1機115億円で、105機追加した。イージスアショアは1か所4500億円で2か所。(後に計画が杜撰で中止となった)
中国・韓国・北朝鮮に強行姿勢をとって、東アジアの国際関係を緊張させている。中国は軍事費を増大させ、南シナ海を自国の領海と主張し、そこの島々を軍事基地化している。敵基地攻撃論は専守防衛からの転換で、逆に攻撃を誘発する。(中国はマッハ5の極超音速兵器を開発した。これはアメリカのミサイル防衛網を潜り抜ける)もはや、軍拡路線の限界である。アメリカや日本は予算面で限界である。日本が攻撃能力を保有しても、アメリカのシステムの枠内での動きしかできない。中国はそれ以上強化する。
アベ外交は具体的に何も効果がない。それは、安倍政権が変化する現実を読み解けず、国家間の対立関係を前提に、軍事力重視という過去の枠組みに回帰していることに原因がある。アベ政権の外交政策では、政治・軍事面での対米重視と、中国に深く依存する経済的現実の間に、股先になるだけである。
専守防衛は、実際は、戦後日本で憲法の平和主義と自衛隊の存在で折り合いをつける妥協の産物である。日米安保があっても、日本自身は他国を攻撃しないし攻撃する能力も持たない姿勢を取ることは、日本に植民地化されたり侵略されたりした周辺国から日本の信頼を回復する効果を持っていた。これは安心の供与を通じて相互の安全を確保しようとする立派な安全保障である。
アメリカの核抑止力はどこまで信頼できるでしょう。日本が期待している核の傘では、日本が他国から攻撃を受けた時にアメリカが核兵器を含む手段で報復することが予定されている。アメリカは日本のために核兵器による報復を行うならば、自国への核攻撃を覚悟しなければならない。
(私の周りの人は、戦争はイヤだと言う人が多いが、戦争しないために抑止力は必要、アメリカに守られ日米同盟は必要など漠然と考えている。論理的な平和理念が必要である。また、歴史修正主義もフェイクを見破るための、現代史を学び直す必要があると思う。)