豊田の生活アメニティ

都市デザイン、街歩き・旅行、くらし

住宅の射程

2017-02-28 | 気になる本

磯崎、安藤、藤森、伊東(2006)『住宅の射程』TOTO出版

 4氏は現代の著名な建築家である。今日に通じる気になった点を、以下にメモする。

磯崎新は丹下健三とル・コルビジェの影響を大きく受けている。『ル・コルビジェ』の中で、「建築家は今世紀にいたって、大都市に敗北した」、「大都市に挑戦したル・コルビジェの英雄的な行動への私なりの愛着がある」、「彼が推進した理想の未来都市と語られた『ユートピアの死』の両方を見てしまった」、「これらの死を発現させる元凶、大都市が、いま溶けはじめている」。(大都市は多様な魅力がある。しかし、掴み難い、棲みづらい。アジアの大都市、東京、上海、香港、バンコックなど超高層建築群は、形は違っても同じような顔に見える。地方に住む私は大都市に興味がわかない)。

住宅のパターンは全てnLDKで収まる。(なるほど、戦後の西山三の「食寝分離」から、今日に引き継いだ基本形だ)

住宅は建築じゃない。(立場によるが今でもテーマだと思う。住宅設計は型が決まっているから、自由度は少なく「組み合わせ」かも知れない。でも、地形、家族、資産など多様である。木造と違って壁式RCは自由度がます。コルビジェの時代から鉄骨、RC,EV,ガラスが普及し、特に高層への自由度が広がった)

(*都市にとって住宅は最も重要な要素である。単体と集団との関係をどう構成するか。産業、所得、家族、場所を背景に、個人やディベロッパーの自由に任せるか。ルールに基づく温もりのあるまちづくりをすすめるか。都市計画の文献が2000年頃に叫ばれたが、今も続く「規制緩和」の濁流の中、そんなまちづくり思想は薄れていると思う。)

(時の話題)

森友学園の国有地払い下げ問題。時価9億円が実質200万円で取得。アベ首相夫妻の関与が問題である。値引きの根拠が曖昧、資料を「廃棄」、大阪府の学校認可も・・・

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地域再生の罠

2017-02-23 | 気になる本

久繁哲之介(2010)『地域再生の罠』ちくま新書

 なぜ市民と地方は豊かになれないのか?これがサブタイトルである。豊田市の「都心の顔」づくりも30年、綺麗になったが賑わいがない。金をつぎ込んでも魅力的な店がないのはなぜか。

 著者の「商店街再生へ4つの提案」で、空き店舗対策で最大の失敗は、「自治体と商店主の都合」のみで考えられていることとしてる。①車優先から人間優先へ、②市民が安心して出店できる店、③地域一帯の魅力を創造する、④物を売る場から交流・憩いの場へ、である。

失敗事例では「市民の足は切り捨て駅前開発を進める岐阜市」をあげ、43階建て超高層ビルは核のテナントが撤退、1階はもぬけの殻となった。コンパクト・シティを叫ぶ時代に、100年の歴史を持つ路面電車の廃止は残念だと嘆く。行政の縦割りに問題、職員が街を歩かない、街のことを知らない。人より車を優先する街は衰退する。豊田市はどうだろうか。商店街の要望で立体駐車場を4300台も造ってきた。車で都心に行けば、駐車代は3時間無料で、利便性はあるが回遊性はなく、お酒が飲めない。

 主要6都市の中心市街地の小売り販売額シェアは、-5~-9%である。豊田市はどうだろうか、調べてみたい。

 賑わいの基本は、需要を吸い取るだけの大資本・百貨店でなく、需要創出型飲食店をつくることであり、事例は那覇市の牧志市場、はこだて市場である。歴史のある都市では市場が街中にある。バルセロナやリスボンでは市場で新鮮な食材が食べられた。しじょうといちばの違いだろうか?やはり、路面電車と朝市のある歴史的な街は素晴らしい。

 リーマン・ショック以降、消費が冷え込み、「雇用の創出」が重要施策となるはずだが、自治体は一時的な措置しかしてこなかった。これまで工場に雇用を依存してきた地方都市ほど、「未利用状態」にある人が増え、雇用創出が求められている。

都心再開発など土建工学者が一面的に箱モノだけを作った、と著者は批判する。豊田市の場合はどうだろうか?中心市街地活性化計画など商業観光課がリードしてきた。美術館やスタジアム、そごう百貨店の建設は、当時の市長である。都市計画の観点から広井良則の本(「コミュニティを問い直す」)を引用している。アメリカの都市はハード面ではしっかりしていて景観は悪くないが、自動車中心、経済的格差など町が味気ないものになっている。もう一人磯崎新の文献引用で、都市計画がおかしいと感じる。その最大の原因が上から下ろしてくるマスタープランそのものにある。豊田市の場合、都市計画マスタープランは総合計画の一部で、理念が先にありきで地域説明会を開催したが、参加者はいずれも10人足らずでトップダウンの姿勢が問題である。

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アホノミクスへ最後の通告

2017-02-19 | 気になる本

浜矩子(2016)『アホノミクスへ最後の通告』毎日新聞出版社

 浜矩子は経済学者として、本音で発言している。沈黙するマスコミ、御用学者が増える中、日本の将来と国民の暮らし・利益を考えれば当然かもしれない。幼少期をイギリスで過ごし、その後もイギリスで仕事をしている。そんな経験が背景にあるだろう。

 「現在の日銀のマイナス金利政策は、何のためにやっているのか分からない。国債の利回りをマイナスにして、政府の債務負担を軽減するのが真の目的ではないか」。全く同感である。日本の経済・財政破綻を先送りして、将来の被害を大きくしているだけだと思う。「三菱東京UFJ銀行による国債のプライマリーディーラーとしての位置づけの返上で」、起こったのは当然でしょう。「企業の有り余る資金余剰と家計の細りゆく資金余剰で政府の強大な資金不足を吸収している」。国家は国民のために尽くすサービス事業者であり、国民に対する国家の背信行為である。「小さな政府の大きな赤字」である。無理に円安誘導しても持たないだけでなく、急速な円安が来て経済破綻の危険性を指摘している。この点も納得である。そのためには外貨を持つか、金を持つか庶民の対応も気にかかる。

 イギリスのEU離脱は、世論の予想に反して離脱が決まった。安倍総理の残留演説がかえって裏目に出たという説は興味深い。EUは戦争の歴史から反省して出来た要素もある。著者は通貨統一などEUに懐疑的であった。右翼的な潮流が伸びる中、EUの動向が見離せない。

 覇権国アメリカの衰退。戦後70年間、前半の冷戦体制化、後半の90年からのグローバル化に区分している。前半の71年のニクソン・ショックまでは「パックスアメリカーナ」が機能していた。EUも冷静構造が続くことを前提に、東欧諸国も無理やり詰め込み、ドイツ・マルクを封じ込めるためにつくられたため、ギリシャ問題でも矛盾が露呈している。社会主義体制は独裁体制になり、社会主義は計画経済ということを考えなおす時期にきている。「今はアメリカが繫栄したところで他の多くの国が幸せになるという状況にはない。中国もしかりだ。これからは国民経済のあり方にも変化が求められる」。「安部晋三首相は『戦後レジームの脱却』を標榜している。つまりは『戦前』に戻りたいということだが、まさに時代錯誤だ」。経済学は謎解きで面白い。

 

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