「まちづくりと景観」田村明、岩波新書、2005年
田村氏は今年で80歳になられる都市政策プランナーです。飛鳥田一雄横浜革新市長の時期(1968~81年)に、請われて部長になっています。「横浜の中心部を走る高速道路を地下にもぐらせ、都市を美しくするアーバンデザイン行政を市民と共に進めたこと、タテ割り行政を改め、企画調整という本来の市役所の都市づくり行政のモデルをつくったこと」(川瀬光一)などの実績があります。このことは「まちづくりの発想」(岩波新書、1987年)にまとめられています。私は97年19刷りを読みましたが、余り記憶にありませんでした。しかし、その延長線上にある今回の本は、国内外の豊富な事例があり分かりやすくなっています。また、まちづくりの単位を生活の小単位にすること、発想が現場から、行政の総合調整機能の重要性など体験からも、感動と納得の本です。豊田の市長も「公正」「市民」「現場」の視点を強調されますが、お勧めしたい本です。キーワードとしてアメニティ、歩行者空間、都市の風格、景観基準、事後解決の困難などが体系的に分かりやすく整理されています。アメニティについてはブログのテーマでもありますので引用します。イギリスの都市計画ではアメニティが大切にされていて、「どんなに単体としては優れたものでも、周りとの関係が場違いならばアメニティを壊す。つまり関係性の価値を重視するのがアメニティで、人間と周りの事物との関係がうまくいっていること、人間らしいゆとりをもち、安らかで、気持ちよく、穏やかでいられることを評価する。」としています。私も関わった1998年の、豊田市駅周辺のバリアフリーまちづくり計画のコンセプトを、「歩行者空間ネットワーク」としたことは評価されると思います。本では「愉しいのびのびした歩行者空間をつくるのは、クルマ社会にたいする人間社会の挑戦である。」と述べています。先日の犬山市長の話も「街を歩く」がキーワードでした。風格のある都市、「都市格」という言葉は宮本憲一氏が以前使っていたと思います。同時代のプランナーには美濃部都知事の下で活躍した、柴田徳衛氏がいます。また、西では京都の故西山卯三氏とその「門下生」が活躍されています。「妻籠の町並みに価値を見出したのは、南木曽町の職員小林俊彦」氏というのも印象的でした。自治体の景観政策は、「総合的な政策をおこなう調整部局が担当すべきだろう。」と、述べていますが、以前は豊田市役所にも「都市景観課」があったことを思い出します。また、建築確認が民間でもできるようにしたことについて、「民間事務所が機械的に確認し、責任所在を不明確にしてよいかは大きな問題」、「望ましいのは、建築確認ではなく、市民の承認という意味での建築許可にして自治体の責任にしてゆく方向だ」と述べているのは同感です。
田村氏は今年で80歳になられる都市政策プランナーです。飛鳥田一雄横浜革新市長の時期(1968~81年)に、請われて部長になっています。「横浜の中心部を走る高速道路を地下にもぐらせ、都市を美しくするアーバンデザイン行政を市民と共に進めたこと、タテ割り行政を改め、企画調整という本来の市役所の都市づくり行政のモデルをつくったこと」(川瀬光一)などの実績があります。このことは「まちづくりの発想」(岩波新書、1987年)にまとめられています。私は97年19刷りを読みましたが、余り記憶にありませんでした。しかし、その延長線上にある今回の本は、国内外の豊富な事例があり分かりやすくなっています。また、まちづくりの単位を生活の小単位にすること、発想が現場から、行政の総合調整機能の重要性など体験からも、感動と納得の本です。豊田の市長も「公正」「市民」「現場」の視点を強調されますが、お勧めしたい本です。キーワードとしてアメニティ、歩行者空間、都市の風格、景観基準、事後解決の困難などが体系的に分かりやすく整理されています。アメニティについてはブログのテーマでもありますので引用します。イギリスの都市計画ではアメニティが大切にされていて、「どんなに単体としては優れたものでも、周りとの関係が場違いならばアメニティを壊す。つまり関係性の価値を重視するのがアメニティで、人間と周りの事物との関係がうまくいっていること、人間らしいゆとりをもち、安らかで、気持ちよく、穏やかでいられることを評価する。」としています。私も関わった1998年の、豊田市駅周辺のバリアフリーまちづくり計画のコンセプトを、「歩行者空間ネットワーク」としたことは評価されると思います。本では「愉しいのびのびした歩行者空間をつくるのは、クルマ社会にたいする人間社会の挑戦である。」と述べています。先日の犬山市長の話も「街を歩く」がキーワードでした。風格のある都市、「都市格」という言葉は宮本憲一氏が以前使っていたと思います。同時代のプランナーには美濃部都知事の下で活躍した、柴田徳衛氏がいます。また、西では京都の故西山卯三氏とその「門下生」が活躍されています。「妻籠の町並みに価値を見出したのは、南木曽町の職員小林俊彦」氏というのも印象的でした。自治体の景観政策は、「総合的な政策をおこなう調整部局が担当すべきだろう。」と、述べていますが、以前は豊田市役所にも「都市景観課」があったことを思い出します。また、建築確認が民間でもできるようにしたことについて、「民間事務所が機械的に確認し、責任所在を不明確にしてよいかは大きな問題」、「望ましいのは、建築確認ではなく、市民の承認という意味での建築許可にして自治体の責任にしてゆく方向だ」と述べているのは同感です。