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証言・町並み保存、足助

2008-03-19 | 気になる本
西村幸夫・埒 正浩編著『証言・町並み保存』学芸出版社、2007年
 この本は、町並みゼミの先進的な地域のリーダーと西村さんとの対談形式になっています。それぞれの共通項もあり、地域特性もあり先人からの教訓を受け継ぐ必要があります。特に、最初の「町並み保存運動」の由来記と足助について、要点を確認したいと思います。私も町ゼミには1昨年の八女福島に参加しました。由来記では、町並み保存が全国に波及する契機となったのは、1950年代末の「妻籠の町並み保存」からとしています。妻籠宿を守る住民憲章が、白川郷や竹富島に受け継がれました。妻籠の小林さんや、町ゼミの中心人物石川忠臣さんも、足助の町並み保存に影響を与えた人です。1975年に伝建地区の制度化がされましたが、地方では保存か開発か厳しい対立は続いてきました。楽しさを重視した倶楽部化の傾向を指摘しています。日本の町並み保存は欧米と違って、「制度を構築し、これを適用するといった計画技術的な側面よりも、地域住民の形成を進めるといった運動的な側面が強い」としています。そして強力なリーダーが存在し、人間的魅力と、先導する先見性が備わっていたのです。「傑出したリーダーの多くがその土地の生まれでない」という点も、興味深いです。町並みゼミの交流は足助のまちづくりに大きく影響しています。
 足助編では小澤さんと矢澤さんです。はじめは観光栗園の造成事業をし、香嵐渓の一季集中型の観光を周年型にかえるために、地域文化を大切にする施設を作りました。それが三州足助屋敷です。町並みは田口金八さんと共に進め、宮本常一、西山卯三など講師に勉強会をやりました。小澤さんは「江戸期の建物はほとんどなくなった」としていますが、西村さんは「そんなに変わっていない」としています。豊田市と合併して、お金は出してくれるが、急激な変化を心配しているようです。矢澤さんも、「勉強会を次の世代がもういっぺんやっていかないと」と、気にしています。これからは「建物の建て方のルールをきちんと作るべきではないかと思う」と、西村さんは指摘しています。これらの三方の意見は最もな意見ですが、2年先に整備ありきの豊田市の方針で、担当がどれだけ理解されているか疑問です。小澤さんと矢澤さんが三州足助公社を作って自立させたのは、合併を見越してなのか、指定管理者の制度の運用については、経営分析しないと評価はわかりません。足助川を守る会のろうそくで川沿いに浮かべるイベントや、鱸さんのおひなさんやカタクリの群落作りなど、「自然発生的」にやる力があったと、小澤さんは述べています。これからの地域づくりで、小澤さんは人口減少を食い止めようと、総合計画で取組んできたとしていますが、歯止めがかかりませんでした。大企業が近くにあり、賃金収入は確保できますが、農林業は衰退してきました。合併は過疎化と共に、国の財政危機による地方交付税削減が、合併へと追いやったのでしょうか。この点は住民アンケートで評価を聞きたいところです。次のステップに向けて、「よそもの」をどれだけ受け入れる制度ができるのか、デザインコードと、持続的に町並み保全するNPO組織ができるかが課題だと思います。
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