豊田の生活アメニティ

都市デザイン、街歩き・旅行、くらし

「集団的自衛権と安全保障」その1

2017-03-04 | 気になる本

豊下樽彦、古関彰一(2014.7)『集団的自衛権と安全保障』岩波新書

 集団的自衛権の関連法が2015919日に、自公の強行採決で通過した。その1年前に書かれた本書は、安保法制に反対の立場の者にとっては、論理的には完璧である。南スーダンに自衛隊が派遣され、武器の使用が憲法違反であっても法的には認められている。稲田防衛大臣は戦闘行為を「武力衝突」と答弁している。自衛隊員が戦闘行為に巻き込まれないことを祈るばかりである。トランプ大統領の軍事力強化、強いアメリカに、アベ首相は追随の姿勢である。改めて、この本で安保、憲法、平和、戦争を学ぶ意味がある。以下そのポイントである。

 はしがきで、アベ首相が架空のシナリオで出した、朝鮮半島有事で米軍が邦人の救出に向かうことはない。自民党が政権によって憲法違反とされている集団的自衛権を、解釈改憲で帰ることが問題である。

安倍政権は軍事オタクで、現状分析が出来ていない。北朝鮮によるミサイルの脅威の宣伝と原発再稼働という根本的な矛盾が、リアリティを欠いている。「戦後レジームからの脱却」というアベ首相の宿願を果たすのが、不可欠の課題であるからに他ならない。アベ政権の「歴史問題」にかかる言動がいかなる影響を及ぼしているのか。2103年の首相の靖国参拝は、米国さえ失望させた。なぜ尖閣問題をめぐって日中関係がかくも先鋭化したのか、その契機はなんであったのか、という重要問題については触れていない。今日の国際政治の動向と日本外交のあり方考える上で決定的な意味を持つイラク戦争の総括を、完全に素通りしている。イラクはアメリカを攻撃していない。ブッシュの論理は「予防戦争」である。米国のイラク攻撃は憲章51条に違反する。米軍が主導した不正義の戦争であれば、事実上米軍の活動の一翼を担えば、自衛隊が米軍と一体と見做される。2004年米国調査団は、「イラクに大量破壊兵器」は存在しなかった。2010オランダ調査委員会は、「イラク戦争は国際法上根拠を欠いたものであった」。

1960年から何十年と政権を取ってきた自民党政権は、一貫して集団的自衛権は憲法に違反するとしてきた。集団的自衛権の行使は「必要最小限度」としたのは、憲法解釈に縛られているのだろう。イラク戦争などを総括すること、内外情勢を分析すること、歴史認識問題や北朝鮮のミサイル問題など掘り下げて、集団的自衛権の行使と憲法改正の緊急性を訴えれば世論の支持を得て(「安保法制懇」やアベ首相は)「やればできる」のである。(著者のニュアンスは微妙であるが、裏返せば集団的自衛権に賛成の人も違憲であると考える人は、反対の人も含めて憲法学者の大部分であった)。

集団的自衛権と安保条約について、安保5条は日本の「施政下にある領域」への武力攻撃が問題となる。(尖閣諸島も適用とトランプは認めたようだが、米軍が中国と戦う問題は別である)。第6条いわゆる「地位協定」の問題で、国連外で米軍が「一方的行動」をとる自由を認めている。安保は片面条約で「押しつけ」である。日本の自主性もなく「事前協議制」は発動されていない。ベトナム戦争で韓国軍は集団的自衛権の行使を迫られ、ベトナムへ派兵した。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 住宅の射程 | トップ | 「集団的自衛権と安全保障」... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

気になる本」カテゴリの最新記事