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米国の都市計画・住宅政策と都市再生

2006-03-24 | 都市計画・まちづくり
 都市計画学会中部支部の国際交流講演会に参加することができました。そのポイントとコメントをまとめました。
March16,2006
Presented by Kozo Aoyama
The Urban Policy Institute of New York
 講演のポイント(レジュメより)
1 「米国の都市問題・住宅問題をもたらした4つの人口流動」
その1つが「都心部から郊外への人口流出」です。
2 「米国の都市・住宅政策の流れと特徴」
1977年 コミュニティ再投資法(Community Re-investment Act)
1986年 低所得者向け住宅投資減税(Low Income Housing Tax Credit)
1995年 公営住宅新規開発の禁止
3 米国における主な住宅プログラム
 HOME:1992年 CDC(Community Development Corporation)などに対する住宅建設支援
 HOPEⅥ:1992年 公営住宅の改善プログラム  
 ビル建設で住宅建設とリンケージさせ低価格の住宅が義務つけられています。
まとめ(口頭報告)
① 民間活力を活かす
② 民間マネジメントを活かす
③ CDCの活用
④ 階層ミックス
⑤ プロジェクトの歯止めがかかる
コメント
 都市からの人口流出について説明がありませんでしたが、私の推測によれば階層分化による富裕層の流出でしょうか。背景は違いますが豊田市でも最近、近隣市への中堅の流出が問題となっています。なお、東京ではマンション住宅の人気があり、都心回帰の動きがあります。名古屋駅周辺では、構造特区で大手のビル建設で地価高騰が進んでいます。
 やや古いけれど大野・レイコさんの「都市開発を考える」(1992年、岩波新書)に、アメリカの都市の成長管理政策が紹介されています。バブル崩壊後でしたが、理念は今日でも通用すると思います。アメリカは自由の国で、「何でも規制緩和」の誤解が持ち込まれていますが、全く違うものです。日本では企業の都合・利益追求のみで、公共の公正なコントロールが忘れられています。
 質問でも出ましたが、タイトルにある「都市再生」で、日本では住宅が抜けています。豊田では市街地開発で公的補助金投入により、事務所、ホテル、民間分譲マンションが建ちますが、公平性、公益性が不明で、開発利益の市民還元がないように思われます。日本の民間活力は民間の金儲けがベースで、環境や景観も破壊されています。高度利用は高く建物を立て、「床面積を増やすことが中心で、オープンスペースを増やし、住環境を改善する」(大野)ことが行われるべきです。日本でもっとも重要な開発問題は、大型プロジェクトなどの採算性を考えず歯止めがかからないことです。赤字のときに責任の所在が曖昧なこと、環境アセスで経済アセスがないこと、代替案が示されないこと、公開議論がされないことが挙げられます。さらに、中立のNGOでCDCのような専門家のいる組織がないことです。神戸のまち・コミュニケーションなどが育って欲しいです。それにはNPO法の改正で、企業の寄付を税控除の対象にしなくては、専門家が雇えません。
 住宅政策ではフローからストックの時代ですが、再生や改修への助成、住宅金融公庫の縮小見直し、地価政策、都市計画・住宅政策などアメリカの政策を曲げずに、正しく学ぶべきでしょう。「都市開発が、これほど活発に行われながら、それが都市の魅力の向上や住民の豊かさに結びつかないのはなぜ」(前掲書まえがき)でしょうか。
<写真は栗林公園の松>
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3 コメント

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人を呼び込むためのインセンティブとは… (Shimazo)
2006-03-24 23:38:49
はじめまして。都市開発に関する学術的なお話、非常に興味深く感じました。

私は、大阪の田舎でまちづくり系NPO法人の理事をしていますが、「まちに人を呼び込むインセンティブ」は何かと良く考えます。

住宅開発や企業誘致というハードの整備から、行政サービスの向上、まちのブランドイメージの向上というソフトの整備まで、幅広い要因があると思うのですが、民間非営利組織が重視しなければどういう部分になってくるのでしょう。

団塊世代の取り込み合戦が、過疎町村ではじまりつつあるようですが、そのヒントなどいただければ幸いです。

突然おしかけて、質問するというのは不躾ですが、何卒よろしくお願いします。
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住んで楽しいまちづくり (amenity3355)
2006-03-25 08:37:49
私は定年になったらどこに住んで何をやろうか探すことも、アジアを含めて国内旅行の目的の1つにしています。旅行の目的のテーマとして、小京都、伝統的建築物、伝統文化、庭園、自然の美しさ、おいしい料理、ハイキング、温泉などです。しかし、国の借金が800兆円という中で、年金・医療の切捨て、地方の切捨てであります。ボランティアや旅行をじっくりできない状況に追い込まれています。もっと皆が旅行するには休暇を取りやすくすることで、景気拡大、リフレッシュになると考えます。

 大阪の田舎といってもイメージができませんが、企業や人を呼ぶためのインセンティブを探しているのでしょうか。お応えがミスマッチかもしれませんが、人口減少期に成長なくして人間が楽しく快適に暮らせることが大事ではないでしょうか。住んで楽しい町づくりは、地域の特性を生かすことで今ある地域の資源・宝を発見し、内発的に発展させることではないでしょうか。また、地域の社会構造分析、行財政白書、先進地域視察、外部講師の話、基礎学習など粘り強く続けることだと思いますが。最近では国の押し付け合併で、小さな町や村が消えていますが、それでも「小さくてもきらりと輝くまちづくり」を目指している町村も多くあります。

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ご返答いただきましてありがとうございました (Shimazo)
2006-03-25 21:07:25
丁寧なご返答をいただき恐縮です。

ご指摘の通り、「地域特性の再発見」が非常に重要なキーになってくるように私も感じます。

定年後の移住を考えていらっしゃる方、また地域に定住しそういった方を受け入れる立場にある者。まちづくりの担い手は、今後誰に託され、誰がリーダーシップを執るのか、非常に難しいところですが、私も粘り強く答えを求めていこうと思います。

当法人のホームページですが、お暇なときにでも見ていただければ幸いです。

NPO法人まちづくり岬 http://www.npomisaki.jp/
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