稀代の文章家というのは言葉がたっぷり入った引き出しを持っているに違いない。
必要なときに必要なものをちゃんと取り出せる引き出し。
宝箱、戸棚、袋かもしれないけど。
読んでいて心地よいという言葉というのはちゃんとリズムを持っている。
口から出て行く言葉は必ず、リズムを持って吐き出される。
抑揚、声色、息遣いどれもが話し手の意図を明確に伝えるために最大限に使われているのだ。
残念ながら文字になってしまった言葉には音程が表記されていません。
だからこそ読んでいて、リズムを感じる文章は貴重だ。
リズムを感じる言葉
感じやすい言葉
音によって表現するということ。
久しぶりに読み直す。
平松洋子著 「平松洋子の台所」
丁寧につづられた文章はその先にある空気感までも感じさせてくれます。
鍋から立ち上げる湯気
探し続けていたものにであった時の高揚感。
旅先の日差し
麻布の触感
しゅんしゅんとあがる湯気
ドキドキとした高揚感
かあっと照りつける日差し
さらりとした麻の手触り
話し手の思いを伝えるオノマトペ
そして「好事袋」も「是知」もこのエッセイを通して馴染みとなった言葉です。
馴染みのない食材は美味しく料理をしてもらうと新しい発見があります。
見目麗しく、味わってよし。
雰囲気を楽しみ、香りに酔う。
料理も文章も五感をフル稼働して味わうべきものなのかもしれません。
平松洋子さん
お料理のプロですがドゥマゴ文学賞も受賞されておりました。
ああ、やっぱり。
どうりで文章も作るお料理と同じく味わい深い。
納得 納得。
そしてもう一つ大切な事。
いつ読んでも何度、読み返しても同じ感想を持てる本もそうそうありません。
そして初て読んだときと同じ瑞々しい明るさを感じます。
美味しい文章とはこういうことなのですね。
ごちそうさまでした!