中島京子 『小さいおうち』を読む。
このタイトルを見た時、
バージニア・リー・バートンの『ちいさいおうち』という絵本を連想したのだ。
表紙が似通っていたからかもしれない。
それが物語の伏線とも知らずに。
戦時中のある家族の日常が女中、タキの目線でつづられていく。
華やかな在りし日の日本で、戦争の記憶。
華やかさも戦争も淡々と、淡々と。
そして時は流れ、時代は変わり甥の次男である武史の目線になって物語は動き出す。
タキの記憶、思い出に彩られた小さなおうちの出来事。
タキの色眼鏡を外してその出来事をみる武史。
主観と客観
過去、現代
嘘と事実
夢、現が混じり合って独特の物語が出来上がっていた。
ラスト、一気呵成に展開するストーリーは数々の可能性を含んでいて戸惑いが残るけど。
それは起伏もなく、穏やかに進む内容に惑わされて小さな毒を見逃すからだ。
作者の術中にはまる。
それは死体の出てこないちいさな推理小説。
ちいさななぞ
巧妙に混ぜられた事実と嘘をどう見極めるか。
独特の読了感を残して小さいお家の謎が明かされた。
山田洋二によって映画化されたこの小説、映画ではどんな終焉になるんだろうか。
勘ぐりだすととまらなくて映画をちょっと見てみたくなった。
その前に久しぶりに絵本 ちいさいおうちでも開いてみようか。