日々草

「つれづれなるままに・・」日々の事を記す。

幸福な王子様よ 至急!

2016-11-29 | Weblog
ある町のとても美しい王子の像。
瞳はサファイヤで体は金箔に包まれ、腰の剣にはルビーが埋め込まれ、それはそれは美しい姿で町の人々からも愛されているのでした。
しかしその美しい像は見た目もさることながら、困っている人に寄り添うことができるという美しい博愛という心をも持っていたのです。
一羽のツバメの助けを得ながら、困っている母を助け、飢えている作家を救い、幼い少女にも身を削って救いを差し伸べていく。
どんなに自分がボロボロでみすぼらしくなったとしても ・・・・・・幸福の王子の像は幸福なのであるというようなオスカー・ワイルドの短編。





ええとこれは何がいいたいかというと鏡に写ったあたくしが、あまりにボロボロでみすぼらしいっちゅう話です。
ついでに心が博愛の「は」、漢字で言うなれば博の「十」を殴り書いたぐらいの性根のあたしは身も心も金箔になんて元々ないのだから、ボロボロの幸福の王子像よりさらに荒んでいるのだなあと鏡の中の自分と思わず頷き合う。



あはは、はあ。




ということで幸福の王子よ、ここで苦しんでいる民草がおりますので、ツバメを寄越して下さい!至急!!


アンソロジーの大罪

2016-11-28 | リブレリア
パルコ出版のアンソロジー 食べ物シリーズ。


カレーライス
お弁当
おやつ
そば
ビール
餃子


こんな切り口で本をつくるとは、すごいーと思ったのはあたしだけじゃなかったようで、シリーズ化され、真似され、アンソロジーという分野の草分け的存在になった。
それ以来、詩文ではなく米だの、肉だのうなぎだの数多の食べ物がフューチャーされ、一冊の本になっていったのだ。
そして、食べ物の枠がいっぱいになるとミステリーだの、いろんな短編が探し出され、集められ、着々と一冊にまとまって本屋の棚に並ぶようになった。

アンソロジーの功績。
読んだことのないあの人や、この人を読むことができて、読む機会がなかったであろう一話に出会い、大好きな作家の掘り出し物に出会える喜びと楽しみ。
しかしアンソロジーは功罪 相半ばする。

絶対、自分の趣味嗜好では手にらないような一話と、是非読んでみたい一話がごちゃまぜになっていて、うっかりタイトルに気をとられていると、読むのがつらい、つらい、つらい、面白い、つらい、つらい、つまり総じてひぃ〜 ツマラナイ本というものに当たってしまうわけだ。
学術的な云々とか、論文のようなかんぬんとかは睡眠薬の効果を発揮する始末。




読み切ることができない本をまた買ってしまった。



空海曼荼羅
編著者は空海をモチーフにした小説もかいた空海大好き 夢枕獏
以下、松岡正剛、荒俣宏、清水義範、菊池寛という一家言ある大御所揃いでさらにはジョージ秋山(初めて知った漫画家だけど)の描く幼少の空海の漫画まで入っているとなれば、絶対面白いはず!と手に取ってみるとですね、これが空海LOVEでない凡人が読むと、いやあ馬の耳に念仏的な状態になるわけですよ。
クリスマスが待ち遠しく、お正月も待ち遠しいあたしみたいな人間に宗教、仏教や、密教と説明されてもね。



ほんで。




読み切れない本を買わせる罪。
これをアンソロジーの大罪と命名するのだ。
ゆえに罪深いアンソロジーは空海でも救えないことがわかって、無の境地へ。
ZZ・・・・・ZZZ・・・・・・。


柴錬と横尾と「うろつき夜太」と

2016-11-14 | リブレリア
リーサルウェポンが我が手のうちにある。
いや、アルティメット ウェポンかもしれん。
柴田錬三郎の究極作品 「うろつき夜太」
今夜も昨日に引き続きぬくぬくしながら、物語を読み進めている。
しかし、初にして究極のところに手を出してしまった感。
もう後戻りはできない。

柴田錬三郎の名前は時代劇 御家人斬九郎のテロップで始めて見かけて、読んでみなくてはいけない作家リストに名を連ねて早数年、それでも活字に手を出さずにいたのは圧倒的に映像作品が魅了を振りまいていたからだ。
活字を超える映像作品というものがあって、その最たるもの、最上級が時代劇 御家人斬九郎であったのだ。
だって、渡辺謙の出世作。
完璧に斬九郎は渡辺謙の声で、あの顔で出来上がってしまっている。
岸田今日子演じる母上との軽妙なやりとりや、若村麻由美演じる芸者蔦吉との恋模様も魅力で、鬼平以上に活字より映像で見たい作品。
個性的なキャラクター、魅力的な俳優が生き生きと交差して、挑戦的な演出。
最終回の雪降る濡れ場のBGMははまさかのQueenですぜ。
度肝を抜かれる演出とはこのことで、もう活字には戻らなくていいというところまで振り切っていたのだ。
Queenの名曲に負けない俳優 渡辺謙のすごさ、柴田錬三郎が作りあげた斬九郎のキャラクターのすごさ、乙甲つけるもんじゃあないと諦めて、原作は手に取らないと決めた。
よって柴田錬三郎とは

歴史小説に新風と一石を投じた小説家。
眠狂四郎 数々の剣豪小説を残す。
通称 柴錬(シバレン)





という一切の経歴と著作をなかったことにして御家人 斬九郎の原作者という認識でいたのに、さらに強烈なキャラクターが加わって、冒頭のため息とも決心ともつかない思いになるのだ。
もう、後戻りは出来ない。


面白いのに読了後の疲労感が半端ないのは本の物理的重量感だけでなく、画期的で実験的な演出にまみれても、横尾忠則にまみれても、個性が消えないキャラクターを練り出す柴田錬三郎という強烈なキャラクターが発する熱量なのかも。
ついでに若き横尾忠則も遺憾なく熱量を放射しており、やはりこの一冊は我が本棚のアルティメット ウェポンの名を欲しいままにすること間違いなし。
初にして究極。





















コートと本と

2016-11-14 | トラットリア
コートは私の身を暖めるが、よい本は私の魂を温める。





防寒として本を一冊。
インフルエンザも流行の兆しをみせている。
疲れているとインフルエンザや風邪にもかかりやすい。
心も同じだと言っていい。
きちっと季節にあった装いとケアが必要なのである。
そう、コートはその身を暖める。
暖めるべきは身だけよいのか?
弱った寒い心も風邪をひく。
温めるべきは心である。
よい本は己の心を、ひいては魂を温めるのである。



柴田錬三郎が描く「うろつき夜太」
幕末の日本を闊歩し、さらに島国 ジャパンを飛び出してフランス革命に巻き込まれる自由人である剣豪「夜太」の生き様を描いた異色の時代小説。
週刊 プレイボーイで連載され、しかも挿絵は横尾忠則。
どんだけ異色な作品か容易にご想像いただけるはずである。
闊達で妖艶で奇想天外。
物語もどこへたどり着くのか先が読めない展開で、装丁も黒字に水色の活字で初期老眼には目を凝らさないと先が読めないなんてところやら、柴錬先生すら夜太に翻弄されて原稿が間に合わないという言い訳が連なるクダリまであって、なんじゃこりゃな摩訶不思議な一冊。





絵草紙 うろつき夜太 初版本。
本を開けばぷんと古書独特の黴くさい匂いがして、それだけで、容易ないものが詰まっていると期待ができる本なのである。
古書店の片隅にひっそりと置かれていた本は冬の防寒具より高価で、買うことを躊躇わせる価格と妖気をまとって鎮座していた。
コートのように冬の寒さから私の身を守ってはくれないけど、この奇譚はなまじっかなコートなんかよりあたしを熱くさせるのである。寒さを吹き飛ばすぐらいに!












木枯し1号の勝者

2016-11-09 | Weblog
鉄人28号




そして本日、木枯し1号。

今日の寒さを鉄人化するなら28号より、1号の方が強いね。
よって木枯し1号の勝ち。








しかし、この木枯し1号より強かった人。






トランプ大統領誕生。
大方の予想と期待を裏切ってドナルド・トランプが大統領となった。
大荒れの予想の通り、冬の嵐。
イギリスのEU離脱といい、現実維持を望まない人がこれほどまでに多いとは。
トランプはないだろうと思っていただけに驚きをもってアメリカの大統領選のニュースを見ている。
世界各国はかつてないほど近くお互いがお互いに寄りかかっている中で、各々が主義主張を通そうとするときの軋轢は大きくなるというのは、あたしですら分かるのに火種をつかむ選択をする人のなんと多さに愕然とするのだ。


さて、アメリカはどこに向かうのか?
何をもって「勝ち」とするのか。
確実に断言できるのはトランプ氏の髪の毛は木枯しに翻弄されるとどエライことになるという一点。







皺さえ、味になるのだから REKISAMI

2016-11-01 | Weblog
雨雲が垂れ込めている。
大粒の雨が傘を叩き、時計は8:00AMをさすも、夕方のような暗さが広がっている寒くて、暗くて、湿っている朝。
例えばそれが、皆様が働いている日にお休みをいただけるという貴重な日だとしたら黒い雲の隙間から一筋の光が差し、天使の階段が現れるのだけど、蜘蛛の糸のようなほそーい光すら漏れでない11月の朝。
先日、会った友人の一言がリフレイン。


「今年の残り、何を楽しみにすればいいんだぁ」


ああ心の叫び、私も声を大にして叫んでおこう。
最近、いろいろと楽しみすぎちゃって、確かにカスカスで、スカスカでなーんも残っていない。
被害妄想的なしょうもない悪徳感情は売るほどあるのに。



そんな11月の曇りの重い灰色に、期待感をまぜこむ。
楽しみをまぜこむ、美味しいをまぜこむ。
するとどんよりした暗さが薄まって、ピリッとした冷たさをのこした薄墨色になる。
それはこんな色。




夏の暑さが残る時期に買ったREKISAMIのロングカーディガン。
後姿にはたっぷりとギャザーをよせたキュプラが風をはらむ。
微妙な季節の絶妙な羽織りもの。
それを引っ掛けて、出かけてきます京都まで。
あちこちに座って、着倒して皺になってもいいのが旅の装いの鉄則。
欲をいうならば皺さえ、味になってくれるこのREKISAMIのような一枚は重宝する。
皺の一つが、心の襞のひとつとなり。
素敵な洋服は旅に連れ出して真価を試してこそのもの。