原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

日本政府こそ“フクシマの影響”に本気で対処せよ

2012年10月22日 | 時事論評
(写真は、朝日新聞10月17日 「腕4本『フクシマの影響』」 記事より転写したもの)

 先だって仏国営テレビが、サッカー日本代表GK川島永嗣選手に腕が4本ある上記の合成写真と共に、司会者が「フクシマの影響」と発言した“事件”を皆さんもご存知であろう。


 冒頭から私論を述べるが、原左都子はこの“事件”に関して、仏国営テレビの放送内容を“ある観点より”好意的に捉えている。
 
 私がこの“事件”関連のニュースに最初に接したのは、NHK昼のニュースに於いてだった。
 確かに私も当初は、仏テレビが川島選手の腕4本の合成写真までわざわざ作成して「フクシマの影響」を語った事に多少の違和感を抱いた。
 ところが順を追いつつ仏テレビのニュース内容を把握するに、要は、川島選手の対フランス代表チーム試合における素晴らしい活躍ぶりを褒め称える趣旨と理解したのだ。 私はこのサッカー試合自体を見ていないが、川島選手の手が4本ある合成写真まで作成する程の“超人的なシュート防衛力”試合だったと重々把握できた。 
 しかも、司会者は「日本のGKはとてもすばらしかった」と褒め称えている。 これは娯楽番組のようだが、フランスが敵対チームGKの超人的な活躍をこのように取り上げる事は(川島選手ご本人が如何なる感想を持たれたかは存じないが)、日本サッカーチームにとって決してマイナスではないとの感覚を抱くのだ。

 ところがニュースの続きを紹介すると、このテレビ内容に日本政府が食ってかかったと言うではないか。
 まずは、在仏大使館がテレビ局に対し「放射能の被害を懸念する被災者の心情を害した」として抗議したらしい。 
 引き続き、民主党政権の藤村官房長官も16日の記者会見に於いて「福島原発事故に関し不適切な表現があった」と不快感を表明したとのことだ。 この直後に在仏大使館は、「被災した方々の気持ちを傷つけ復興に向けた努力を阻害するもの」との書簡を仏国営テレビ局へ送りつけたらしい。


 再び私論に入るが、私は「2011.3.11 フクシマの悲劇」は世界規模で永遠に忘れ去ってはならない地球上の大惨劇と捉えている。

 その意味でも、(合成写真を作られた川島選手ご本人には少し申し訳ないかもしれないが)フランスという我が国から遠く離れた国に於いて、このように3.11に我が国に勃発したレベル7放射能汚染事故を振り返る内容のテレビ放映が流れた事実は、今後の福島復興にプラスに機能すると捉えるのだ。 チェルノブイリもそうだが、それに匹敵する程の大事故だった福島原発事故の惨劇を世界人民が忘れ去らないためには、世界中のメディアが福島原発事故を幾度となく繰り返し取り上げてくれるのが一番の方策と私は考える。
 
 にもかかわらず、日本政府が何故即刻仏国営テレビに対して不快感を表明し、激しく批判したのだろう。  それは政府こそが福島原発事故をうやむやにしようと企み、矛盾に満ち満ちた「脱原発政策」を現在虎視眈々と進めているからに他ならない。


 本日(10月22日)の朝日新聞報道によると、野田内閣支持率は過去最低の18%にまで落ち込んでいるとの事だ。
 当然の成り行きであろう。
 今回の本エッセイ集テーマである「原発」に関しても、大震災勃発まもなくの時期に民主党政権は「原発ゼロ」を掲げていたはずだ。 それが大震災から1年も経過しないうちに、何故政権は事実上原発再稼働を容認するまでに政策転換してしまったのか??

 東日本大震災当時官房長官に任命されていた(現経済産業相)枝野氏だけは、とことんこの政策に反発するのかと私は個人的に期待していた。
 ところが「2030年代の原発ゼロ」を目指していたはずの枝野氏は9月中にもその方針書を作るはずだったのに、「新エネルギー基本計画」作成委員達から“方針があいまい”との理由で異論が出て、議論が進まない有様だ… 
 (民主党政権閣僚内で唯一原左都子が信頼している枝野さん、もっとしっかりしてよ!と言いたい思いだが、民主党政権自体に終末観が漂っている現在、既に救いようがないのかしらねえ…。) 

 片や、惨状の福島原発現場に目を向ければ、今現在尚何十ミリシーベルトとの高放射能を放出し続けている危険な状態だ。  これを何故今現在日本のメディアがもっと大々的に国民に伝えないのかに関しても不可解な思いの私だ。 
 メディアが現在伝えている情報とは、(市民が楽しそうな風景と共に)やれ福島県内では今秋は運動会が行われただの、(漁民の活気付いた影像を前面に出して)漁港では海産物が水揚げされただのの影像ばかりだ。
 なんで、日本のメディアとはこれ程までに軟弱なのよ…


 今一度、元医学関係者でもある原左都子が警告するが、放射能の影響とは人の目には見えないのに加えて、忘れ去った未来に被災の程が表向きに到来するのが特徴である。(一例として、チェルノブイリ事故後の実態を皆さんに参照して欲しいものだが。)

 自己の利益にがんじがらめになっている政治家達にその救済を求めても、何らのフィードバックがないのが現実であることは歴然としている。
 ここは科学者等見識者に頑張って欲しいと思っても、もしかしたらその分野の人々も「賞」をもらうことに躍起になっているのかもしれないしねえ…
 それでは市民活動に活気付いている市民達にその行方を委ねようとて、それらの人々も日々の生活に精一杯なのではあるまいか?

 ここはもう、自分自身で我が身を守るしかないような気がする。

 それにしても原左都子が一つだけ願うのは、国の責任として、福島原発及び瓦礫処理施設は元より、現在稼働している全国の原子炉の放射能排出量の正確なデータを今後何十年に及んで日本国中に日々報道し続けて欲しいということだ。

 これが庶民にとって我が身を守るための一番の指針となるのではなかろうか。