原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

実りの初夏 ?

2011年06月15日 | 雑記
 (この写真、薄暗い場所で撮影したため色調が悪いのですが、一体何だと思いますか?)


 その答えは「菌床しいたけ」である。

 実はこれ、先月末に娘と共に某大学の文化祭兼オープンキャンパスを訪れた折に「きのこ研究室」と称する学生グループが展開していた“まっしゅROOM”なる展示室で買い求めた菌床である。

 今時の世間の学祭における模擬店や訳の分からん素人パフォーマンス、そして“ミス美人コンテスト”等々、(まるでAKBなみの“体たらく”)自己満足企画が蔓延っている現状の大学文化祭の中において、このグループが展示室で展開する“きのこワールド”企画は原左都子から見るとその専門性も高くなかなかの充実ぶりだった。 食べられるきのこ、毒があって食べられないきのこ等々の数多いパネル写真展示があれば、自分たちで手作りした可愛いきのこのストラップを格安で販売していたりもした。 そろそろ“閉店”間際の時間帯に訪れた我々親子は最後の一つというきのこストラップを購入した。

 その“きのこワールド”極めつけは、この「菌床」であったのだ。
 「きのこ研究室」“マッシュROOM”展示の最終場面の菌床売り場には、輝かしく傘開いた「菌床しいたけ」が展示されていたのだ。 それに挽きつけられた私が、我が娘の存在など忘れ学生の店員氏を捕まえ尋ねて曰く「この菌床からこんなに立派なしいたけが家庭で育つのですか!!?」 (なんだか八百屋の店頭で値切るおばさんのごとくの勢いの私だったのだが… 
 と言うのも、そのサンプルを見ると直径10cm程に育った立派なしいたけが約30個程も菌床周囲に育っていたのだ。 その菌床の価格はたった300円! 通常巷の店でしいたけを買うと貧弱なしいたけが6個程度で200円程の価格であるのと比較して、これはお得!と咄嗟に判断した私は即刻購入する決断をした。
 学生氏よりの懇切丁寧な「菌床しいたけ」栽培方法を見聞し、説明書きまでもらってそそくさと帰宅した原左都子である。


 そして、早速「菌床しいたけ」家庭栽培に取り掛かることとなる。
 まずはバケツ一杯の水の中に菌床を沈めるのだが、菌床は軽量なためこれが浮いてきて沈めるのが困難である。2㎏ウーロン茶のペットボトルを上に置くとやっと沈んでくれた。 室内の陽が当たらず風通しのよい場所が生育環境とのことで、リビングのエレクトーンの薄暗い足元に設置することとした。(上記写真参照)  その後しばらくすると菌床から空気がポコポコと吐き出されるのだが、これがまるで“癒し系サウンド”のごとくでしばらく聞き惚れる私だった。
 翌日これを取り出し、同じ場所に設置して表面が乾燥しないよう霧吹きで水分を補いつつ数日が経過した。 その頃、学生氏の説明通りしいたけの小さい傘が菌床表面から出始めた時には我が家のメダカが誕生した時と同様に感激したものだ。
 その後底に多くのしいたけが傘を出し始めたため、上下を入れ替え10日程経過したのが上記の写真である。

 結局これ以上のしいたけは育成せず、私が買い求めた「菌床しいたけ」は17個のみが成長した結果と相成った。 大学で見た立派なサンプルとの格差を感じ多少残念ではあったものの、裏面が真っ白の綺麗なしいたけをその後一家で食したものである。


 ところで「菌床しいたけ」は現在巷で販売されているようだ。 以下にネット上で発見したその概要を引用して紹介することにしよう。

 キノコ類の人工栽培では、現在しいたけを除き原木を用いないいわゆる菌床栽培がほとんどを占める。 菌床栽培とは、しいたけの場合広葉樹のオガ屑(ノコ屑)と少量のフスマ、糖類など、栄養源を混合して固めたブロック状ないし円筒状の培地をいう。
 菌床しいたけの歴史は意外に古く昭和45年頃から試験されていたが、当時はまだ原木が比較的安価に入手できた時代であった。 その後、しいたけ農家の間で原木普及が進行しそれにつれて原木価格が年を追って上昇した。 品質面でも厚皮のものや形質の良くないものの自給が増えた。 最近では、原木の奥地化、伐り出し労働力の不足、運送事情の悪化という要因が加わり原木問題がしいたけ産業のネックとなっているのに加えて、原木栽培は高度化した技術社会、バイテク時代の農業にあって作業は決して楽でないことや、生産者の高齢化、後継者不足の進行と共に労働力の問題が大きな課題となっている。
 こうした背景の下に、昭和50年代の末頃から菌床しいたけの研究開発が種菌メーカーや食品企業、公立の試験会場などによってさかんに進められるようになった。
 菌床しいたけに関与する生産者の間では、原木問題に悩まなくてすむ、重労働が少ない、ある程度高年齢でも出来る、作業がきれい、後継者を育成しやすい、計画生産・計画出荷が出来る、回転が速い、収益面で期待できる、時代の流れである、などと評価する声が比較的強い。 国が最近、キノコ菌床を種苗法上の種菌として取り扱うことが適切であるとの判断を下した背景も加えて、菌床しいたけはハウス内での栽培が可能で、定量、低品質、低価格の販売が可能であるようだ。
 菌床しいたけはいわゆるしいたけ特有の香りが少ないことから、若い層や女性にも抵抗が少なく、洋食メニューにも合わせられる点でも評価が高い。


 等々の記述をネット上で発見したのだが、いやいや採れ立ての菌床しいたけはやはり美味だったものだ。 特有の香りもスーパーで購入したものよりも数段あったし、何よりもその新鮮な味わいは格別だった。

 巷では中国産の一見立派な輸入しいたけが格安で販売されているようだ。 その味と風味と添加物の程はともかく、もしもこの国の農家においてしいたけの原木が高価ゆえに容易に入手できない等々の事情があるのならば、今回私が訪れた大学の一グループが推奨するように「菌床しいたけ」を量産して採れ立てを国内で流通させることも我が国のしいたけ農家の未来に繋がるのではなかろうか?
 などと原左都子が無責任に思うほど、我が家で育ったしいたけは美味しかったよ!
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