原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

高校無償化公約は安直過ぎる

2009年07月26日 | 時事論評
 民主党は本気でそのような公約を打ち出しているのか?

 その財源確保案に国民公平性はあるのか?

 そもそも高校無償化の前提として、現行の学校教育体系における“高校の義務教育化”の議論こそが優先されるべきではないのか?


 7月20日(月)朝日新聞一面トップ記事を目にした私は、“無鉄砲”とも捉えられる民主党の上記「公約」に一瞬我が目を疑った。

 その記事によると、民主党は総選挙で政権交代が実現した場合、来年度からすべての国公立高校生の保護者に授業料相当額として年間12万円を支給し事実上無償化する方針を固めたということだ。 高校進学率が98%まで達する中、民主党は学費を公的に負担するべきだと判断し、マニフェストにも盛り込む考えだという。
 その実現のために年間約4000億円の追加予算が必要と試算し、国の事業の無駄を洗い出し、「不要」と判断したものを廃止、縮小することで財源の確保が可能としている。
 他にも、中学生までの子どもがいる家庭に対し、月2万6千円の「子ども手当」を支給する方針で、その財源確保として配偶者控除を廃止するため、妻が専業主婦で子どものいない65歳未満の世帯は負担増となる、とのことである。


 どうやら、政治にも“流行(はや)り”があるようだ。
 政府が、マスメディアが、“少子化、少子化”と騒ぎ立て、それがこの世の“元凶”であるかのごとくの社会風潮が作り出されてしまうと、「子育て支援」する振りをして国民にお金をバラまきさえすれば手っ取り早く国民の人気が取れるぞ、とでも民主党は考えたのであろうか???
 総選挙で政権交代が実現しそうになった今、民主党が早い時期に国民に“迎合”しておこうと焦る気持ちはわからなくもないが、このような“安直発想”には嫌悪感を抱かざるを得ない原左都子である。

 
 いくら何でもこの公約は保護者を甘やかし過ぎであるし、“付け焼刃”的政策としか言えないお粗末さである。
 高校進学率が現在98%に達しているとは言え、現行の学校教育法の下で高校とは義務教育ではない。 小中学校に関しては、遠い昔に義務教育であるべき必要性が議論された上でその整合性が国民に容認されているからこそ、国民から授業料“無償”の同意が得られているものと推測する。 現在不況が深刻になって、高校生の子どもの授業料が支払えない保護者が激増しているとはいえ、“お金を配る”という至って安直な政策では「子育て支援」を果たし得ないことは明白であるし、ましてや全国民の同意を得られるとは到底思えない。
 それよりも今民主党が優先するべきなのは、経済情勢の如何にかかわらず、可愛い我が子にたかだが年12万円(公立高校の1年間の学費相当額であるが)の高校の授業料を3年間支払ってやれない保護者を量産している、行政の“醜態の現状”こそを見直すことではないのか。
 経済構造や雇用体制の見直し、また、現行の教育制度改革による“国民が将来に渡って生きる力や自分が産んだ子どもを育てる力のある”人材の育成等、次期政権を獲るべく目論んでいる政党が優先するべき課題は盛り沢山ではないのか。

 現役高校生の子どもを持つ私でさえ、この民主党の安直な“金配り公約”には辟易とするばかりであるが、この民主党の公約にはやはり反論意見が寄せられている。
 朝日新聞7月23日(木)「声」欄に掲載された“子どもいない家にしわ寄せ?”と題する民主党公約反論意見を以下に紹介しよう。
 中学3年までの月2万6千円の「子ども手当て」と合わせ高校卒業までに支給される金額は、子ども一人に対して500万円を超える。その財源確保のために配偶者控除を廃止する訳で子どものいない家庭の負担が増えることになるそうだ。子どものいない家庭とは皆余裕があるのだろうか。そうでなくとも子どものいない家庭とは、今の日本では肩身の狭い思いをしているはず。せめて財源は贅沢品の税率調整や公共事業の削減にはできないものか。

 まさにこの投書者のおっしゃる通りである。
 無駄な公共事業等、政府にとっての“強者政策”こそを早く見直して欲しいものだ。その方面を洗い直すことにより得る財源は“超膨大”であろうと私も推察するのだが…。 民主党には、今後“勇気を持って”その方面の“浄化”政策を展開して欲しいものである。


 とにもかくにも、8月の総選挙により政権交代が果たされるのであれば、次期政権を獲ると意気込んでいる民主党には、弱者の救済を“弱者の犠牲によって”果たすのではない政策を是非共期待申し上げたいものである。

 “金配り”などという、貧困にあえぐ国民をせせら笑うかのごとくの安直な公約はもう勘弁してもらい、長期展望に立った成熟した政策を実行して欲しいものである。
 これでは、自民党政権がこの春配った「定額給付金」などという安直で愚かな政策を模倣しているだけであろう。
(しかも今回の場合、配る範囲がごく一部であるが故にその他の国民の反発を食らうことに気付きましょうよ、民主党さん。)
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