水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

助かるユーモア短編集 (66)ようやく

2019年08月23日 00時00分00秒 | #小説

 日没が七夕(たなばた)前の7/6[2018]を皮切りに少しづつ早まるようになり、二月(ふたつき)もすると、猛暑日(もうしょび)と言うよりは酷暑日(こくしょび)と言った方がいいような夏の暑気も、ようやく下火(したび)の気配を見せ始め、人々は少なからず助かることになる。なにせ、それまでは日中に出歩こうものなら、天日干(てんびぼ)しに出食わしたような熱気で熱中症になり、そのままチィ~~ン! とお参りされるようなことにもなりかねなかったからである。日中に出歩(である)いて助からないよりは、出歩かない方が助かる訳だ。^^ この場合の[助かる]は、生命にかかわる事態だから、笑い話では済まされない。
 仲のいいご隠居二人が冷えたスイカを食べながら話をしている。
「ようやく熱気が和(やわ)らぎましたな…」
「はい…八月が始まったばかりですがな…」
「ようやくも、まあ形だけで、まだまだこれからですな…」
「そうそう! 最近のようやくは侮(あなど)れませんっ!」
「ようやく・・と思わせておいて、油断したところで猛暑をっ! ですかっ?」
「はい! なかなか強(したた)かですからな、最近の天気はっ!」
「日射病の頃が懐(なつ)かしい…」
「はあ…昭和三十年代ですなっ!」
「あの頃は、せいぜい31、2℃で、ようやくもようやくでした…」
「そうそう! 季節にメリハリがありましたな…」
 そう言いながら、二人のご隠居は、ようやく重い腰を上げた。数時間、飽きもせずスイカ数切れで語り合っていたのである。^^
 ようやくはメリハリがつかないと、実感が乏(とぼ)しいようだ。^^

                                


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