水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

助かるユーモア短編集 (60)交差

2019年08月17日 00時00分00秒 | #小説

 山畑は久しぶりに休みが取れたこともあり、とある保養地Aへ車の旅に出た。最初は順調に国道を進み、目的地のほぼ3分の2地点まで来たときである。道が二手(ふたて)に分かれていることを示す道路標識が前方に見えてきた。道路標識は心積もりをさせるから大いに助かる訳だが、どういう訳か、この地の道路標識は表示が余りにも簡略化し過ぎていた。
『…なになに? 右手がA方面で左手がBCバイパスか…』
 山畑は単純にそう思えたから、車線を右へと取った。ところが、である。二手に分かれた道は大きく交差し、右手車線へハンドルを取った山畑はBCバイパス方向へと入ってしまったのである。国道交差する段階で、BCバイパスは上方向の架橋上へ、国道はその架橋下を通っていたのである。
『こ、こんな馬鹿なっ!! 騙(だま)しじゃないかっ!!』
 いくら山畑が心の中でムカつきながら怒っても、すでに後(あと)の祭りで、車はスイ~スイ~と気持ちよさそうにBCバイパスの入路ゲートに向け走行していた。山畑は助からんっ! と思った。バイバス方向の道から何か抜け出せるいい方法はないか…と山畑がキョロキョロしていると、左前方に[A方面へ]の標識と下り道が見えてきた。山畑は、やれやれ…と、ようやく安息の息を漏らした。
 このように交差したからといって必ず逆方向へ行くとは限らないと心に留めておけば、間違いも少なくなって助かると、まあ話はこうなる。^^

                                


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